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第五十七話 マルセリナ様の危機

第四章一回目のクライマックスです。

2023.8.22 微修正を行いました。

 大聖堂から屋敷へ戻った後は、いったん休憩だ。

 そのままカタリーナさんも一緒に、庭のテーブルでパティと三人でお茶をすることにした。

 向こうのテーブルではエリカさんが本を読んでいるが、ミニスカでわざとらしく脚を組み直してぱんつを見せびらかすようにしている。

 ちなみに赤いぱんつだった。エリカさんはチラッと私を見て、私の視線を確認したらニヤッとして本を読み続ける。

 単に私へのサービス精神なのか、自分に関心を持って欲しいのか、夜の運動をしたいサインなのかわからん。

 今晩はパティと二人でお茶会をするのだ。

 それでパティにお茶会のお誘いをしたら、大喜びで承諾してくれた。


 ジュリアさんが給仕服で、ハーブティーとチュロスを持ってきてくれた。

 彼女が作ったチュロスはとても美味しいからパティもお気に入りで、カタリーナさんにも「毎日食べたいですわ~」と好評だった。


 屋敷の外が騒がしい。空を見ると、魔物!?

 そして次々にその魔物達が屋敷の庭に降りてきた。

 緑色のゴブリンが人間サイズになってコウモリのような羽が生えた姿の魔物が二十体くらいいる。


『ココ ツヨイヤツ タクサン。ミンナ コロス…』


 魔物の一体が言葉を喋った! 知性が無い魔物ばかりと思っていたのに。

 今まで一番知性がありそうなゴブリンでもギャーギャー言うだけだった。


「エリカさん、あれはなんだ!? 魔族か?」


「いや、あれは魔族じゃない。あんな汚らしいのはいないよ。

 それにしても喋る魔物って私も初めて見た!」


「わざわざ屋敷に集まってきたのは、こいつら私たちの魔力を感知したのか」


「そうだねえ。そうとしか考えられない。

 それにマヤ君やお師匠様の影響で高魔力の持ち主が屋敷に大集合しているからね」


 スサナさんとエルミラさん、ローサさん、アマリアさんも駆けつけてきた。

 この場にいるのは他にパティ、カタリーナさん、ジュリアさん、エリカさん、私だ。

 ビビアナは高魔力を持っていても魔法が使えないので、屋敷の中にいるのを魔力感知できた。


『オマエラ ジャマ コロス コロス コロス……』


 さっさと始末しなければ!

 前にいる五人で一斉に魔法攻撃する。

 私はライトニングアロー、エリカさんとカタリーナさんがアイシクルアロー、パティとジュリアさんがエアーカッターを魔物達に食らわせた。

 だが、全く効かない。エリカさんが叫ぶ。


「こいつらかなり強力な魔法障壁を使っている!

 生半可な魔法では効かない!」


「ならばこいつはどうだ!」


 私は細かいライトニングカッターを大量に発動させた。

 だが結果は同じで、全て魔法障壁で跳ね返され消滅してしまった。


『オマエラ ヤッパリヨワイ シネ シネ シネ……』


「まずい! みんな逃げろ!!!」


 私がそう叫んだ直後、後ろから颯爽とスサナさん、エルミラさん、ローサさんが魔物へ向かって飛び込んだ。

 スサナさんとエルミラさんは給仕服でそれぞれ双刀と槍、ローサさんは貴族ドレスのまま刀の白百合で互角以上の戦いをしている。

 アニメでも見たメイド戦士が二人とドレスの剣士、めちゃくちゃかっこいいぞ!

 スサナさんは給仕服のロングスカートで器用に回し蹴りをして、エルミラさんは槍をぶんぶん回して魔物に切りつけている。

 ローサさんは初めて実戦の姿を見たが、私と訓練をしている時とは比べものにならないくらい迫力と華麗な動きで魔物をぶった切っている。

 三人とも今まで私に手加減をしていたんじゃないかという強さだ。


 おっと、見入っている場合じゃない。

 飛んですぐ窓から入り、自室に置いてある八重桜を持って来て、斬りかかった。

 幸いなことにこの魔物は魔法障壁が極端に強力なだけで、魔法攻撃をしてこない。


 スサナさんは双刀でくるくる回転しながら切りつけ、エルミラさんは槍の連続突き、ローサさんは【白鶴】という鶴が舞うような美しい型で魔物を次々に斬っていた。

 私はローサさんから習った【隼】という高速で真っ直ぐ切りつける型で斬っていった。

 魔物は一回斬りつけたぐらいでは倒れなかったが、それでも四人で五分ほどかけて殲滅させた。

 屋敷の庭が戦場になり、バラバラになった魔物の死体が散らばっている。

 楽しくお茶を飲んでいたのに台無しだ。


 魔物はもういないのか…… 高魔力…… まさか!!


「マルセリナ様が危ない!!」


 私はそう叫び、大聖堂へ猛スピードで飛んでいった。


 大聖堂の階上にあるマルセリナ様の私室部分の窓と壁が壊されている。

 遅かったか!? 希望を持つんだ!俺!


 壊された部分からマルセリナ様の私室に飛び込むと、屋敷の庭に現れた同じ魔物一体が、腕でマルセリナ様の上腹部を貫いていた。

 マルセリナ様の白い司祭服は血で真っ赤に染められている。

 私室のドアの横にはいつもマルセリナ様の世話をしている若い修道女が二人へたり込んでおり、一人は気を失い、もう一人は足下が濡れていたので恐怖で失禁してしまったのだろう。


『ウボエェェェ…』


 魔物は気味悪い声をだして、マルセリナ様を投げ捨てるように下ろした。


「貴様ああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」


 私は八重桜で瞬時に魔物の首を切り落とした。

 そして私はマルセリナ様を抱きかかえ、すぐにフルリカバリーを掛けた。

 またこんな思いをしなければいけないのか!

 すると顔見知りになっている神父さんがその時駆けつけてきた。


「こ、これは一体!?」


 私はマルセリナ様の患部に手をかざし、魔力を注ぎ込んだ。

 患部はみるみる回復し傷が塞がった。

 だが息をしていない。


「ダメか… くっ」


 私はマルセリナ様をしっかり抱いて、一意専心に魔力を発動させた。

 私の周りが光った。あの時は自分でも気づかなかったが、これがパティを回復させたときの現象だったのか。


「カハッ ゴホッ ゴホッ……」


 血を吐いた。息を吹き返したか!


「ゴホッ うぅ…… マ…… ヤ……様……?」


 マルセリナ様は薄らと目を開けながら声を出した。


「良かった! 良かった! 良かった………」


 私は安堵し、マルセリナ様を抱いたまま気が抜けて目を回してしまう。

 何とか気を持ったが、敵に対する恐怖耐性は強くなっていても、こういった不安耐性は無くて昔と変わらない。

 アマリア様を求めてしまう所以である。


「私は魔物に襲われて……」


 マルセリナ様は自分の血まみれになった姿を見てゾッとした。


「もしや…マヤ様のフルリカバリーで私は助かったのですか?」


「はい、間一髪の所で間に合ったようです。」


「神父様、シスター。私がフルリカバリーを使ったことは秘密にしておいて下さい」


「事情は存じております。承知しました。おまえも黙っていてくれないか」


「はい…… 神父様……」


 へたり込んでいる修道女にも約束してもらった。


 私は魔物の死体を凍結させ、グラヴィティで浮かせてこいつが開けた部屋の穴から外へ出し、後ほど処分することにする。


 マルセリナ様は、やはり私のフルリカバリーだと襲われる前より力がみなぎっているらしい。

 気を失っていた修道女が気がついたので、私と神父さんは一旦退室してマルセリナ様に着替えてもらった。

 失禁していた修道女についてはそのことを私は見て見ぬふりをしたが、彼女がマルセリナ様の私室出てきたときは少し違う修道服に替わっていたので、マルセリナ様は自分の修道服の古着を貸してあげたのだろう。なんてお優しい。

 こんな時に『ぱんつも貸してあげたのかな』と思った私は低俗な人間だと自覚している。


 マルセリナ様が着替えている間、大聖堂の中ではマルセリナ様の次に偉いらしい、先ほどの神父セベロ・イグレシア様と相談する。

 彼女を魔物から匿うために当分の間は屋敷に滞在してもらうことが出来るか提案し、部屋が使える状態ではないし、事情が事情なので大聖堂の他の人たちにも承諾をもらってくれることになった。

 私室から出てきたマルセリナ様にも説明し、快く了解してくれた。

 大聖堂にどうしても行く必要があるときは、スサナさんかエルミラさんに護衛を頼むことになるだろう。


---


 屋敷に帰ると、庭は綺麗に片付いていた。

 エリカさんたちが魔物の死体を凍らせて、騎士団に片付けてもらったらしい。

 仕事が早いね。


 騒ぎを聞きつけて、ガルシア侯爵とフェルナンドさんが帰宅していた。

 事情はパティやアマリアさんから聞いたらしいので、私はマルセリナ様の件についてお願いしたら、大司祭様がうちに滞在するなんてとても栄誉なことだと歓迎してくれた。

 部屋も用意してくれるらしい。

 同じく魔力量アップしたカタリーナさんも当分の間はパティの部屋へ滞在することになり、二人とも大喜びしていた。

 何とも賑やかになりそうだが、恐ろしい魔物の登場からある意味では好転する結果になってしまったのは、女神サリ様が仕組んだシナリオのような気がして不気味だ。

 マルセリナ様が大聖堂へ一時的に帰るときは、スサナさんかエルミラさんが一人護衛に付くことになり、私も空いていれば二人の代わりに行くことにした。


 時間を見て私自ら馬車で大聖堂までマルセリナ様を迎えに行き、マルセリナ様を降ろしてその脚でいったん帰宅して準備が終わったカタリーナさんをバルラモン家まで迎えに行ってきた。

 マルセリナ様は荷物が僅かだったが、カタリーナさんは持参の服が多すぎるのでどうしようか。

 身長はローサさんに近いけれど胸のサイズはローサさんが圧倒的な上に服の趣味も違うから貸して貰うわけにもいかないだろうと、馬車に入りきらない荷物はグラヴィティで浮かせて持って行った。とても便利な魔法である。


 夕食の時間。

 マルセリナ様とカタリーナさんも一緒で、賑やかな食卓になった。

 カタリーナさんはすぐ馴染んでパティの隣の席で二人してキャッキャうふふだ。

 一方マルセリナ様は…。


「あの…… 私がこの場でご一緒に食事をしていてもよろしいのでしょうか……?」


「とんでもない! 大歓迎です!

 まさか大司祭様が我が家にいらっしゃるなんて、大変名誉なことです」


 ガルシア侯爵がそう応えた。


「ありがとうございます。料理もとても美味しいですね……

 私は一人で食事をすることも多いので、こんな温かい食卓なのは何時以来でしょうか。

 しばらくお世話になります。よろしくお願いします」


「マルセリナ様! よろしければこの後私の部屋でお茶会をしませんか?」


「私がお邪魔してもよろしいのですか?」


「勿論ですよ。ねっ カタリーナ様も」


「ええ。大司祭様とお茶なんて私も光栄ですわ」


「最初にマヤ様がお茶会をしようと誘って下さったんですから、マヤ様もちゃんといらして下さいね!」

「そ、そうか。お邪魔します……」


 エリカさんは浮いた感じで静々と食事をしていて、ちょっと寂しそうな表情をしていた。

 お茶会が終わった後、エリカさんの部屋へ行ってみるかな。


---


 夕食から時が過ぎ、お茶会の始まり。

 私はビビアナからクッキーをもらってお茶会へ持って行った。

 ビビアナは自分で作ったクッキーをついついと言って自分ですぐ食べてしまうので、食べられる機会が少ない。

 よく太らないな。

 ビビアナはジュリアさんが作るおやつが気に入ってしまったので、今回は私たちがクッキーにありつけることが出来た。


 私がパティの部屋にお邪魔した後にパティがマルセリナ様を迎えに行って、カタリーナさんと私が二人きりになって少し微妙な空気になる。

 しばらくするとパティがマルセリナ様を連れて入ってきた。

 パティとカタリーナさんはすでにパジャマ姿になっており、マルセリナ様は修道女用の白いシュミーズに着替えている。

 シュミーズといっても、現代世界のシュミーズとは別物だ。


「まあ、可愛いお部屋ですね」


「マルセリナ様にそう仰って頂けるなんて、とても嬉しいです!」


 可愛い部屋だけれど、部屋の隅にはカタリーナさんのドレスがずらっと掛けてある。

 パティの部屋は広いから良かったね。

 今更の話で当たり前に私たちは暗い夜にお茶会をやっているが、私たち魔法使いがいる家庭では灯りの魔法で光りのボールが部屋の上に浮いていて、現代文明の蛍光灯のように部屋が明るいのだ。


「こんな格好で恐縮ですが、私をお茶会に呼んで頂いてありがとうございます。

 初めてでちょっと緊張していますが、楽しみですね。

 それからマヤ様、まだちゃんとお礼を申し上げておりませんでした。

 私の命を救って頂き、ありがとうございました。

 私が本来フルリカバリーをかけて救う立場なのに、私がフルリカバリーを掛けて頂くなんて思いもしませんでした。

 どれだけ感謝をしてもしきれません。

 私は一生を掛けてマヤ様に恩返しをします……」


「大事なマルセリナ様ですから当然のことです。

 私はマルセリナ様を縛るようなことはしませんし、あなたの気持ちは大事にしたいと思います」


「大事だなんて…… ポッ」


 マルセリナ様は頬を赤く染めて、両手で頬を押さえた。


 あれ? 社会的に大事なマルセリナ様の意味で言ったんだがなあ。

 それが翌晩、思いも寄らないことになるのを私は知る由もなかった。


 パティとカタリーナさんは感激してうるうるしている。

 あまり堅苦しくなってもいけないので、いつものように楽しくおしゃべりの空気に自然となっていた。

 お茶会というよりは女子会の中におっさんが一人という感じで、マルセリナ様じゃないけれど私のほうがここにいてもいいの?という気分になった。

 マルセリナ様はどちらかと言えば聞き手になって、ニコニコと微笑んでいた。

 彼女の過去は全くと言っていいほど知らないけれど、教会の中でずっと生きてきたのだから、今ここにいる環境がとても新鮮なのかもしれない。

 気疲れもあるだろうからと、お茶会は早めに解散となった。


 その後私は、エリカさんの部屋に行った。

 鍵は開いていた。ノックして遠慮無くお邪魔する。

 エリカさんはごろ寝で本を読んでいた。


「あれ? マヤ君本当に来てくれたの?」


「もしかして、ぱんつを見せてきたのは本当にサインだったの??」


「わかってるじゃな~い! マヤ君だぁ~い好き! 好き好き!」


 エリカさんは私に抱きついて、むっちゅう~とキスをしてきた。

 そしていそいそと上着を脱ぎ始め、私が一番大好きな白いレースのランジェリーを披露。 エリカさんは早速私の腰の上で馬乗りになり、夜を楽しんだ。


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