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第五十四話 アスモディアの魔女アモール

2023.8.23 軽微な修正をしました。

 約半月ぶりのデモンズゲート処理依頼が来た。

 マカレーナから東へ百キロ、エンデルーシア区にあるドバルコという街の北にある山からデモンズゲートが発見されたらしい。

 エンデルーシアといえばルイスさんの領地で、ドバルコはラガからもかなり離れているので、リモン伯爵が管理を任されている。

 それを聞いたのはもう暗くなりかけた時だったので、明朝早く出発することにした。

 ジュリアさんはまだグラヴィティを覚え切れていないので、今回もエリカさんと二人で行動する。


「マヤ君と二人っきりなんて久しぶりね。ワクワクしちゃう」


「デートじゃないんだから、この前みたいに撃たれても守り切れるかわかんないよ」


「マヤ君を信じているから大丈夫よ」


 今まで周りの人が死ななかったのはたまたま運が良かっただけで、そもそも本当に運が良ければ撃たれるようなことも無いんだから、根拠が無い信用をされてもなあ。


 日が変わり、私たちはドバルコへ向けて出発した。

 約二時間かけてドバルコに到着し、リモン伯爵の屋敷へ行き挨拶をした。

 リモン伯爵は六十代後半のご老人で、物静かな方だった。

 場所の説明を聞いて、早速現場へ向かう。


---


 ドバルコの北の山へ到着し、早速魔素探査を行い、知らせがあったデモンズゲートの他に三つもデモンズゲートを発見する。

 だが幸いなことに魔物は出てこず、午前中だけで事が終わってしまった。

 リモン伯爵に報告し、出張作業みたいなことだけだったので、金貨三枚ずつ頂いた。

 それでも平民一ヶ月分の収入を半日で稼いだわけだから破格の報酬である。

 私たちは昼食も食べずにマカレーナへ向かった。


「いや~マヤ君。今回は珍しく楽勝だったねえ~」


「毎回こうだったら俺は部屋で昼寝をしていられるんだけどなあ。」


「ちょっと、私だけに行かせる気?」


「はっはっはっ」


 そんな話をしながらマカレーナがすぐそこの所まで帰ってきた。

 急にエリカさんが飛ぶのを停止した。


「は…… あの魔力の波長は…… かなり抑えているけれど、誤魔化せられないわ!」


「エリカさん、何なの?」


「はわわわわわわわわ…… あのババァが……」


 そうしていると、エリカさんが何かに引きずり込まれるように、屋敷のほうへ飛んでいったので追いかけることにする。


「いぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「おーい! エリカさん待ってくれー!」


---


 私が屋敷の玄関先に降り立つと、エリカさんはそこに落ちていた。

 魔物討伐の時はエリカさんにズボンを履いてもらっているので、でんぐり返しになっているがぱんつは見えない。良かったね。


「いててて…… あのババァめ。もっと優しく下ろせ」


「あの~ エリカさんにお客様が見えてますよ……」


 給仕服姿のスサナさんが苦笑いでそう言ってきた。


「わかってるわよ。でも何でこんなところまでわざわざ来たんだ?」


「一応、お茶を出して待ってもらってるので……」


 私たちが玄関の扉を開けて玄関前ホールに入ったら、アマリアさんがカルロス君の手を繋いで立っていた。


「なんですの? あの方のとんでもない魔力量は。

 あなたの師匠だと聞いて応接室へ案内したけれど」


「ババ…… いやお師匠様の魔力量はあんなものじゃない。

 抑えてるだけで、本当はあの何十倍か百倍くらいはあるんだよ!」


「あなたはあんな人に八年も魔法を教えてもらっていたの!?」


「そうだよっ! 人…… 人なんてものじゃないね」


 エリカさんの師匠のことは彼女から時々話を聞いていたが、魔族の国【アスモディア】の魔女がエリカさんに会いに来たようだ。

 確かに私の倍くらいの魔力量を感じる。でもそれの百倍くらいが本当なんだって!?

 ゾッとしてくる。

 アマリアさんはカルロス君をスサナさんに預けて、アマリアさん、エリカさん、私で応接室へ入った。


『久しぶりね…… エリカ』


「あのあのあの…… おおお久しぶりです…… どうしてこちらに?」


『可愛い弟子の顔を…… 見に来たに決まってるじゃない』


 やや野太い声でゆっくりとした口調の魔女に、珍しくエリカさんが狼狽(うろた)えている。

 エリカさんの師匠である魔女は、ティーカップを持ってお茶を飲んでいた。

 エリカさんがババァなんて言うから老女かと思ったが、雰囲気は三十代後半から四十歳くらいの女性で、瞳は黄色、金色混じりの銀髪ロングヘアーで、額には悪魔っぽい模様がある。小じわは全く無い。

 エリカさんから前に聞いたように、実際は七百歳くらいらしい。

 とんでもない美人で、アマリアさんが子供に見えるくらいの妖艶さだ。


 魔女はゆっくり立ち上がった。

 胸元がパックリ開いている赤と黒を基調にしたドレスで、横からぱんつが見えそうなくらい深く裂けている両側スリットスカートになっている。まるでコスプレだ。

 胸はFカップくらいでアマリアさんよりはやや小さいが、豊乳には変わりない。


『皆さん…… 初めまして。アスモディアの魔女…… アモールです。

 今日は久しぶりに…… エリカに会いに来ました』


「初めまして。この屋敷の主の妻で、アマリアと言います」


「初めまして。マヤ・モーリです」


『あら、エリカの隣にいた男の子…… 可愛いわね』


「お、お師匠様! マヤ君は私のですから取らないで下さいね!」


『ふーん、その子はあなたのいい人なのね……』


 アモールさんが私を見たとたん、身体が浮いてアモールさんに引き寄せられていった。

 私はアモールさんに抱きしめられ、ぱ◯ぱ◯状態になっている。

 むぐぅ…… でも気持ちいい。

 体温と匂いが無いのは何故だ?


『人間の男の子を抱くなんて何百年ぶりかしら……

 いいわねえ、若い男の子って……』


「おおおおお師匠様! マヤ君を返して下さい!」


『ふーん…… はい』


 今度は私の身体が勝手にエリカさんのほうへ向かって行き、エリカさんが私を受け止める。

 こっちでもぱ◯ぱ◯している状態になった

 いつものエリカさんの温かい胸だ。むふー


「お師匠様、わかってるじゃないですか。うへへ」


『それで、その子は何かしら…… 私の目はごまかせないわ……

 人間にしては魔力量が桁違いだし、あなたの魔力量も以前より十倍はあるわね。

 んん? その子の魔力の中に…… 神!?

 エリカ…… 説明してくれるかしら』


 マジックエクスプロレーションをしなくても私の中身がわかってしまうのか。

 さっきからあちこちへ飛ばされるし、グラヴィティとは違う…… 念動力?


「あの…… それは……」


「私が話します。アマリア様も聞いて下さい。但し内密でお願いします」


「マヤ様…… あなたって……」


「私は別の世界で生まれて不慮の事故で死に、その後天界へ呼ばれて女神サリ様の力によって生き返り、この世界にやってきました。

 女神サリ様に魔物討伐と、魔物が出てくる原因を探って欲しいとお願いされました」


『ふーん、なるほどねえ。あのサリが出てきたか……

 異世界人は五百年ぶりくらいかしら。

 アスモディアにも魔物が出てきているけれど、知性が無くて取るに足らないほど弱い魔物ばかりね。人間には大きな害だろうけれど。

 で、クローデポルタムを使ってるの?』


「はい、それで各地の穴を塞いでいってます」


『そう、頑張ってね……

 私たち魔族はあまり人間に干渉しないことにしているの。

 エリカから聞いていると思うが、数百年前までは我々が人間を襲うこともあった。

 今は人間の文明を利用するために私たちの魔法術式や薬を提供したり、多少の交易はしているけれどね。

 これだって…… 人間が作ったものを使っている』


 魔女はそう言うと、スカートのスリット上をピラッと(めく)って、サイドが細いレースの黒いぱんつをチラ見させてきた。

 うひょひょ。いきなりでびっくりしたが、なんてエロさなんだ。

 魔女が人間の国までぱんつを買いに来ているのか、魔族の誰かが仕入れているのか……


「おおおお師匠様! はしたないことをしないで下さい!」


『あなたは修行中によくコケて…… ぱんつ丸出しだったじゃない』


「ぐぬぬ……」


 エリカさんと最初に出会った時と似ている。

 今のエリカさんが変なのは、この魔女が元凶じゃないのかね。


『マヤ…… だっけ。あなた、さっきから私の身体が気になって仕方がないようね。

 存分に楽しませてあげたいところだけれど、この身体は仮の姿』


「それはどういうことなんですか?」


『転移する魔法がとても面倒で……

 魂の一部を分離させてそれだけこっちに飛ばしてから、仮の身体を生成して遠隔制御している。

 それでも魔法が複雑でね……

 だからこの身体であなたといいことをしても、つまらない……』


 なんて出鱈目(でたらめ)なことが出来てしまうのか。

 もし本物に会ったら大変なことをされそうな気がする……


『そんなことより、お腹空いちゃった…… 何か食べさせてよ』


 仮の身体なのに腹が減るのかよ。

 ツッコミどころがいろいろあるけれど、あまり考えるのはよそう。

 転移魔法ってあるのか。それが出来れば空飛ぶ乗り物はいらないんじゃないか?

 でも、大魔力の魔女でも面倒って言ってるくらいだから、そうたやすく使うのは無理だろうと察する。


「あの…… アモール様。

 ちょうどお昼時ですから私たちと昼食をご一緒しませんか?」


 アマリアさんが魔女に昼食を勧めている。

 そうだ。何も食べずにドバルコから帰ってきて、完全に忘れていた。


『人間の食べ物は美味しいからね…… 遠慮無く呼ばれるわ』


 そうして私たちは屋敷で魔女と食事をすることになった。


 エリカの師匠である魔女はずっと前から考えて温めていたキャラで、もっと後に出すつもりでしたが私自身が待ちきれなくて、今回こういう形で登場させました。

 次話も魔女の話です。

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