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第四十八話 ジュリアさんの旅立ち

2022.11.22 微修正を行いました。

 グラドナの村長宅へ戻ったら、道の周りがお祭りになっている。

 なんだこれ?

 外に村長がいたのでデモンズゲートを塞いだことを報告する。


「おお、マヤ様。おかえりなさい。」


「村長、これはいったい…」


「大猪の肉を集落の皆に振る舞っているのと、ジュリアの門出を祝うことになったんでスよ。」


 門出って…、もう結婚する方向へ持って行かれているのか?

 とりあえず、デモンズゲートを塞いだことと、魔物は見つからなかったということを村長に報告した。


「ありがとうございまス。

 マヤ様にはお世話になりまスた。

 暗くなったら宴が始まるので、どうぞそれまで休んでいて下さい。」


「はい。その前にジュリアさんのお宅へ行ってきます。」


 これはジュリアさんと話をする必要があるな。

 身体の変調についても少し気になる。

 私はジュリアさんの家まで向かった。


---


「おかえりなさい、マヤ様! 今美味しい料理を作っているんですよ。」


「あの、ジュリアさん。ご家族も交えて大事なお話をさせて下さい。

 少しの時間でよろしいですから。」


 食卓にて、ジュリアさんと、ご両親が集まってくれた。

 お兄さんは外で宴の準備をしているらしい。

 私は、ガルシア家の現状と、私が今は平民だけれど間もなく男爵へ叙爵する予定はあるが確定ではないこと、婚約確定が一人、他に恋人が三人いることも話した。

 当然ジュリアさんはびっくりした後、不安げな表情になる。

 ご両親も戸惑っている様子だ。


「そ、そういうことだったんでスね…。貴族様かと思っていまスた。

 結婚できなくても、お(めかけ)でもいいのでマヤ様の側に置いて下さい!

 わたス、この村にいたらいつ結婚できるかわかりません。

 このチャンスを逃したくないんでス。

 マヤ様は私の命の恩人で、とても好きになりまスた。愛していまス!」


「ジュリアさんの気持ちはわかりました。

 私はジュリアさんのことを気に入っています。

 命をかけてお母様を庇った優しい女性なんですね。

 ですが少し時間を下さい。

 気持ちがいろいろ整理できなくて、即答できません…。」


「ジュリア…。父ちゃんもあまり無理言っちゃいけないと思う…。」


「マヤ様…

 ジュリアは小さい頃から本当に優しい子で、いつも私たちに気を遣って助けてくれるんでスよ。」


「お父ちゃん、お母ちゃん…。

 わたスが強引で我が儘なことを言っているのは承知していまス。

 でもマヤ様は明日お帰りになるんでしょう?

 今度いつお会いできるか…。」

 ジュリアさんは目が潤んでいる。


「そこで、もう一つお話があります。

 私がフルリカバリーを掛けた後に元気になったと言われましたが、その他に身体の変調はありませんか?」


「私、お料理で水属性の魔法を使ったんですが、魔力が全く減った感じがしないんです。

 あと魔法のコントロールがしにくくなって…。」


「そうだ。ジュリアさんはどの属性の魔法が使えるんですか?」


「土、水、風が使えます。

 あと魔素探査は勿論ですが、眠り、テレスコープもつかえますよ。」


「それだけ使えればすごいじゃないですか。」


「これでも村一番の魔法使いなんです。えへへ」


 村の討伐隊として雇われているならば村一番の人を使うのは当然だよね。

 やっぱり魔力量が増えていそうだし、魔法のコントロールがしにくくなったというのがわからない。

 これは魔力量測定器で測ってみて、エリカさんか誰かにマジックエクスプロレーションを掛けて見てもらうしかないだろう。

 魔法もそれなりに使えそうだし、私と同じ侯爵家の直属兵として雇ってもらえるか侯爵閣下に聞いてみようか。


「わかりました。結婚云々は別の話として、ジュリアさんをマカレーナへ連れて帰りたいと思います。

 身体の変調が気になりますから向こうで診てもらって経過観察することと、私と同じ侯爵家の直属兵として雇ってもらえるか、ガルシア侯爵に頼んでみます。」


「え!? ホントでスか?」


「良かったなぁ~ ジュリア!」


「母ちゃんも安心スたよ。頑張っておいで!」


 ジュリアさんとご両親は、張り切って宴の準備を再開した。

 マカレーナへ連れて帰るだなんて私も安易に事を進めてしまったけれど、なるようになれだな。

 私も適当な人間だ。


 集落の祭りになってしまい、大猪の肉が振る舞われた。

 ほとんどおっさんおばさんで、若い人は私とジュリアさん兄妹だけだった。

 お兄さんは二十二歳らしい。彼もお嫁さんを探すのは大変だろう。

 おばさんたちはジュリアさんの門出を「ジュリアちゃんあっちでも頑張んなよ、元気でね」と、おっさんたちは「勇者と仲良くやれよ、子供は何人になるかね」とからかっていた。

 実に昔の田舎らしい近所づきあいだ。


 みんな大猪の肉をガツガツ食べちゃっている…。

 夜遅くか明朝になって元気になりすぎるんだよなあ。

 十ヶ月後は村の人口が増えるかも知れない。


 私も調子に乗っていろいろ食べてお腹いっぱいになり、お酒も飲まされ、どのみち疲れ気味だったので村長さん宅で早めに休ませてもらった。


---


 朝になった。

 大猪の肉は控えめに食べたけれど、分身君が元気良すぎて暴発しそうになっていた。

 トイレに行けばたぶん治まるが、おしっこをするには大変なのである。


 朝食も村長さん宅で頂いた。

 もはやこの国定番の生ハムサンドだが、それぞれ違いがあって美味しい。

 村長夫婦は終始ニコニコしており、仲よさそうだ。

 え? もしかしてそうなの?

 五十代半ばの夫婦でも普通に現役だという話は聞いたことがあるからなあ。


---


 村長夫婦にお礼を言い、お暇した。

 ジュリアさん宅へ向かう。


「あ、おはようございます!」


 迎えてくれたのはジュリアさんだった。

 肉を食べたはずなのに意外に普通で、ちゃんと言うこと聞いて控えめに食べたそうだ。

 ご両親は…、ニコニコ仲良くしている。あなたたちもか。

 お兄さんは早朝から畑仕事に行ってしまった。発散するためか?


「ジュリア。今度帰ってきた時は弟か妹がいるかもね。うふふ」


「お母ちゃん、マヤ様の前で恥ズかスいこと言わないでよ!」


 うーむ、宴の時に思った十ヶ月後には村のベビーブームが本当に来るかも知れない。

 それはそうと、出発のためにジュリアさんには身支度をしてもらった。

 と言っても、飛んで行くにはあまり荷物を持っていけないので、ほぼ身一つ状態で行くことになった。

 服を買うお金ぐらいは出して上げないと。


 飛んでいくにしても、ジュリアさんは闇属性魔法のグラヴィティが使えない。

 畑へ飛んで向かった時のように、私がジュリアさんにグラヴィティを掛けて飛ぶしかないが、本当は本人が掛けないと安定性が悪くなる。

 私の荷物は八重桜しかないので、八重桜をジュリアさんに背負ってもらい、私がジュリアさんを背負って飛ぶことにした。


 朝の十時になり、そろそろ出発しようと思う。

 お昼には間に合わないかも知れないが、ジュリアさんが乗り物酔いするかもしれないので、遅くなるが着いてから食べてもらうことにした。


「ジュリア、元気でな。たまには手紙を書くんだぞ。」


「病気しないで、街は怖い人がたくさんだから気をつけるんだよ。」


「お父ちゃんお母ちゃんこそ、病気にならないで元気でね。」


「マヤ様、どうか娘のことをよろしくお願いします。」


「任せて下さい! 娘さんは命に代えてもお守りします。」


 ジュリアさんがご両親と抱き合っている。

 そして私はジュリアさんを背負い、出発した。

 ゆっくり浮かび、加速も緩やかにして進んだ。


「お父ちゃあん! お母ちゃあん! 行ってきまあす!!」


 ジュリアさんはご両親が見えなくなるまで手を振っていた。

 泣けるなあ…。目がうるうるしてきた。

 畑の家を飛んでいると、お兄さんが見えた。


「お兄ちゃ~ん!! 行ってくるねぇ!!」


 お兄さんはジュリアさんの声に気づき、手を振り返している。


 荒野の上空二十メートルぐらいのところを、いつもよりスピードを落として時速三十から四十キロぐらいで飛ぶ。

 時々休みながらジュリアさんに負担をかけないようにしている。

 彼女のゴーグルも用意が無いので、どのみちスピードは出せない。


 いつもエリカさんを背負っているから気にしていなかったが、私があんまり当たり前のようにジュリアさんを背負ってしまったので、後になって今更のように恥ずかしがり、ぎこちなく抱きついている。

 ロングスカートだし人目がつかないところを飛んでいるので、下からぱんつが見えることはないだろう。

 行きは一時間半かけたのを帰りは四時間かけてマカレーナにたどり着いた。


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