第四十四話 ルイス様と六人の奥さん
2024.7.22 微修正を行いました。
エリカさんとマカレーナから二時間半ほど飛んで、ラガの街に着いた。
――なんだこれは!?
ムーダーエイプがあちこちで建物を壊しているが、人々はどこかへ避難しているようだ。
騎士団や魔法使いも応戦しており、見たところムーダーエイプの死体は少ない。
退治しきれず苦戦しているのか。
「マヤ君、手分けしてムーダーエイプを片付けるよ!
何かあったら、君が魔力を高めるんだ。私が魔力探知して駆けつける」
「わかった。エリカさんも気をつけて!」
落ち着け…… 落ち着くんだ。
前にマカレーナで、私がライトニングカッターによって倒したムーダーエイプの死体はかなり臭かったとスサナさんたちから聞いた。
最初から凍結魔法を使った方が効率良いだろう。
私は最近使えるようになったナイトロジェンアイスと、体内から凍らせることでより殺傷力を強くしたフリージングインサイドを使って、空中から一体ずつ凍らせた。
とくに人を襲っているときはフリージングインサイド使った方が、人を魔法に巻き込ませずに済むから安全だ。
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――そうやって、二時間は過ぎただろうか。
ムーダーエイプを殲滅することが出来た。
全部で三十体ぐらいだったが、街のあちこちに分散しており時間がかかった。
被害は多かったが、街が機能しないほど壊滅はしていない。
エリカさんはどこにいるんだろう。
フンッと魔力を高めてみた。
「お~い…… マヤく~ん……」
しばらくすると、ひょろひょろと飛んでくるエリカさんが来た。
「魔力がすっからかんだよ。マジックアブゾープションをさせておくれ……」
「あぁ…… じゃあこの下の路地裏で……」
私たちはしゅるるると路地裏へ降りたら、早速エリカさんが私に抱きついた。
「大きな声を出さないで下さいよ」
「わかってるってば…… クッ あっ んん……」
うーん、小さな声だと余計にエロく思えてしまう。
そんなに気持ちがいいのだろうか。
私は体感的にいくらも魔力が減っていないので、魔力を吸収する側になることもないだろうが。
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私たちはグアハルド侯爵の屋敷へ向かい、魔物討伐完了の報告と魔物を片付けてもらうことにする。
市街地の南部にあり、敷地が海辺に面している白い大きな洋館がそれだ。
建物の裏には砂浜がある。
早速玄関前に着地したら警備の騎士にびっくりされたが、私たちについて察してくれたようでメイドを介してグアハルド侯爵を呼んでくれた。
「おお! あなたたちがガルシア侯爵の精鋭、エリカ殿とマヤ殿ですね!
お噂は兼々聞いております。
遠いところからこんなに早く、助かりました!
私がエンデルーシア領主のルイス・グアハルドと申します」
ずいぶん若い。二十代前半に見える。そして金髪美男子。
嫌みを感じなさそうな好青年だ。
「初めまして、マヤ・モーリです」
「エリカ・ロハスです」
「それでグアハルド侯爵。急ぎでご報告申し上げます。
魔物については全て討伐しました。
魔物のムーダーエイプの死体は全て凍らせてあります。
死体が腐り始めると酷い悪臭が街の中へ立ちこめるので、今から私たちが魔法で魔物の死体を浮かせてきます。
浮かせた死体から順に、騎士団らに街の外へ持ち運んで処分をしてもらいたいのです」
「そうですか、わかりました。
確かマカレーナはあれと同じ魔物に襲われて、あなたたちが退治したと聞いています。
魔物の処分についてのご教授、ありがとうございます。
早速騎士団に指示します」
もう暗くなり始めている時間だが、片付けだけは早くやっておかないと街が臭すぎて大変なことになる。
エリカさんと手分けして、ムーダーエイプの死体にグラヴィティをかけて浮かせる作業のため街を飛び回った。
終わった頃はすっかり暗くなり、後は騎士団が街の外から少し離れた拓けた場所へ魔物の死体を持って行く。
そして火属性の魔法が使える魔法使いが焼却処分するという手順だ。
そのへんは彼らに任せて、私たちはグアハルド侯爵の屋敷へ戻った。
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「おかえりなさい!
お風呂を用意させておりますので、食事の前にどうぞお入り下さい。
あなたたちは恋人同士とお見受けしましたので、ご一緒に」
「あぁ…… ありがとうございます」
「ねえマヤ君。グアハルド侯爵わかってんじゃない。にひひ」
うーむ、私たちの仕草でそう思われてしまったんだろうか。
さすがイケメン侯爵。
メイドさんに寝室を案内された後、私たちはお風呂を呼ばれた。
脱衣所でエリカさんがせっせこと服と下着を脱いであっという間に素っ裸になる。
どんだけ楽しみにしているんだ。
浴室に入ると…うわっ プールみたい!
ラミレス侯爵のお屋敷のお風呂より広いかも知れない。
白を基調に大理石をふんだんに使っている。
あれ? 風呂場の扉の向こうから話し声が聞こえる!?
すると突然、グアハルド侯爵と六人の女性が裸でお風呂に入ってきた。
「やあ~! エリカ殿、マヤ殿!
私たちもお風呂に入りに来ました!
彼女らは皆、私の妻なんです」
「アブリルです」
「オリビアでございます」
「バネッサです」
「ダリアだよ」
「プリシラで~す!」
「あ、アナです……」
ろ、六人!? 奥さんがそれぞれ名乗ってくれた。
エリカさんはグアハルド侯爵に裸をもろに見られたようで、顔が真っ赤。
手で胸を隠してモジモジと恥ずかしがっている。
前から思っているが、女の人は股間を隠すより胸の方が大事なんだろうか。
それにしても、むひょ!
お姉様から、プリシラちゃんだっけ。
倫理的にまずそうな体型の女の子まで揃って堂々と裸を見られるとは!
結婚しているなら最低でも十五歳ということか……
グアハルド侯爵は細マッチョで女性ウケはいいかもしれないが、ぶら下がってるアレのサイズはすごいなあ。
「あの…… これはどういう……??」
「仲良くなるには裸の付き合いが良いって言うじゃないですか。
私はマヤ殿に以前からすごく興味を持っていまして、是非親しくなりたいとこのようにさせてもらいました」
「や、やり過ぎです……」
「エリカ殿はとても美しいですよ。
こんな綺麗な女性が相手だなんて、マヤ殿が羨ましいです」
「そうですか…… フフフ」
なんだかんだエリカさんは褒められて、悪い気はしてなさそうだ。
とりあえず軽く流してお風呂に浸かる。
「ああ! こんな魔物が襲ってきたときにこんな脳天気なことをやっていてもいいのかと思われているかも知れませんが、ご心配なく!
市民は全て避難して死者はおりませんでした。
わずかに軽傷の者がいるだけという報告を受けています。
我が街は以前から避難マニュアルを市民に徹底させておりますので、比較的強固な建物である公的庁舎は広く作ってありますし、教会や劇場、我が屋敷にも別棟で避難の市民をかくまっております。
被害に遭った建物の修繕は、領地の税収や交易品収入で賄うことにしています。
お風呂は大事ですからね。
後で避難の方々にもこのお風呂を使ってもらいます」
歳の割になかなかの有能な領主というか、恐らく彼の父親以前の代から受け継いできたやり方なのかも知れない。
ラガは海に面しているし周りも肥沃な土地で非常に裕福だろうから、納得いく。
社会保障についてなかなか先進的な街だ。
「とはいえ、エリカ殿とマヤ殿の助けがなければ、私たちだけでは到底討伐することは叶いませんでした。
改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。
どうか今晩と明日だけでも、こちらでごゆっくりなさってください」
という真面目な話を湯に浸かって聞いたが、グアハルド侯爵は両側に三人ずつ奥さんを侍らせている姿は滑稽だ。
私は隣にエリカさんがべったり。
「いやぁ~ 美しい女性と一緒にお風呂へ入るというのは気分がいいものですね!」
「ええ、そうですね。はっはっは……」
「ルイスさまぁ~ お身体を洗いましょ」
「うんうん、オリビアお願いするよ」
グアハルド侯爵の周りに寄ってたかって六人の美女が身体を使って彼を洗っている。
あのアブリルというお姉さんとオリビアという気品高そうなお姉さんが彼の太股を股に挟んで洗っていて、体育会系のバネッサさんとボーイッシュなダリアさんが両側で腕や背中を洗っている。
大人しそうなアナさんが頭を洗って、プリシラちゃんがアナさんたちの背中を洗っている、なんだか凄い光景を目の前にした。
近頃はお風呂ネタが多いよね。
「ねえマヤ君。ああいうことをセレスのお屋敷のお風呂で私にさせたよね。
前にそういう経験があったのかしら」
「えー、それはその……」
「え!? マヤ殿もこのようなことがお好きなのですか?
私たち気が合いそうですね! はっはっは!」
「私たちも負けていられないわ。こっちへいらっしゃい!」
「いやいや勝負してるわけじゃないし」
エリカさんは、前にセレスでさせたことをよく学習していて、それはそれは見事な泡のご奉仕だった。
椅子に座った後は湯船の際に寝そべって、あれやこれやと。
まるで◯ー◯ランドである。
「おおお!! 素晴らしい! あんな技があったとは!
エリカ殿はマヤ殿にしっかり心を込めて尽くされているのですね!」
「うふふ。いやぁそれほどでも」
エリカさんはともかく、グアハルド侯爵も頭の中身がどうなっているのだろうか。
そんなハチャメチャなお風呂であったが、暖まって身体も綺麗になったので皆でお風呂を出た。
脱衣所も一緒。
しゅ、しゅごい。アブリルさんの下着は黒い透け透けTバック。
オリビアさんは赤いフリルで飾ってるぱんつ。
バネッサさんは面積少なめの、ベージュのビキニショーツ。
ダリアさんはグレーの、女性向けボクサーブリーフ。
プリシラちゃんはクマさんぱんつ。
アナさんは白の正統派綿ぱんつ。
ぱんつで、それぞれの性格がわかりやすいよね。
エリカさんは赤紫の紐パンだ。
多量のぱんつコレクションになっているようで、サイクルが長いから同じぱんつをなかなか見ない。
「エリカ殿、マヤ殿。それでは後ほど夕食会場で」
グアハルド侯爵ご一行はぞろぞろとバスローブ姿で脱衣所を退出していった。
私たちもバスローブを着て寝室へ向かった。
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寝室に戻り、しばらくしたらメイドから食事の案内があった。
備え付けの、何故かサイズがぴったりのブラウスとズボン、エリカさんはドレスに着替えて夕食会場へ案内された。
食事会場にはグアハルド侯爵が上座に、六人の奥さんがずらっと。
私たち二人はグアハルド侯爵の近くの席で、対面に奥さんたち。
執事はいないようだ。
気になったので事情をいろいろ聞いてみた。
「執事はこのアブリルがやっています。
彼女は元から執事をやっていて、一緒にいるうちに好きになって結婚したんです。
息子は三歳になりますが、オリビアとの一歳の娘と一緒に乳母へ預けています。
あぁ、どうか私のことはルイスとお呼び下さい。
あなたたちにはとても親近感を持ちました」
ルイスさんの歳は二十二歳と聞いて、ちょうど私ぐらいの歳でアブリルさんが妊娠したんだなあ。
私に子供だなんて…、エリカさんと私の子供なんて想像が出来ない。
出来たらどんな子になるんだ?
エリカさんがアレだから、教育はしっかりさせないとなあ。
夕食のメニューは、さすがに海沿いの街だけあって魚料理が多い。
エビのパエリア、魚の揚げ物、鰯の酢漬け、鱈の干物のスープなどスペイン風のメニューで、美味そうなものばかり。
「マカレーナでは珍しそうなメニューを用意させました。
どうですか? 美味しいでしょう」
「ルイス様、これは私の口にすごく合います。
特にこの鰯の酢漬けなんて私の国の食べ物によく似ていますね」
「マヤ殿のお姿から察するに、東にあるヒノモトご出身とお見受けしますが、そうなんでしょうか?」
「そこではないのですが、近いところです。
いろいろ事情がありまして。ははは」
「そうですか。詮索はよしましょうか。
私はこの魚の揚げ物に目がないのですよ。
ん~ うまい!」
そういった他愛ない会話をしながら食事が進む。
猫だけに、ビビアナにここの魚料理を食べさせたらすごく喜びそうだ。
食事では奥さんたちがルイスさんに『あーん』でもしそうかと思ったが、意外に静々と食事をしている。
席を離れて行儀が悪いことをしないのはさすが侯爵家だろうか。
「あの…… エリカ様にお伺いしてもよろしいでしょうか?」
声を発したのは、オリビアさんだった。
六人の奥方の中では唯一、貴族令嬢っぽい雰囲気の女性だ。
「はい、なんでしょう?」
「エリカ様は、あのご高名な魔法使いのエリカ様でいらっしゃいますか?」
「ええ、あまり自覚はないのですが、そういうことらしいです」
「まあ! あのエリカ様にお目にかかれるなんて光栄ですわ!
私も魔法が使えるのですが、エリカ様に憧れていたんです!」
雰囲気がカタリーナさんによく似ている気がする。
金髪ロングヘアーの美人さんだ。
「オリビア様は、どの属性をお使いになられるのですか?」
「私は、火、風、光の魔法が使えますの。でも中級魔法しか使えなくて……」
「三属性も使えれば立派ですよ。あとは鍛錬しかないです。」
「ありがとうございます! エリカ様はどういった修行をなされたんですか?」
「十三歳で学校を卒業してから、魔族の国へ八年くらいいたんですよ。
怖い怖い魔女のお師匠様にこっぴどく鍛えられて…… ぬ…… ククク」
「エリカ様? どうかなさって?」
「いや、こっちのことです。ははは」
エリカさんはあまり魔族の国でやっていた修行のことを話したがらないが、彼女の様子を見ていれば酷い目にあっていたんだろうと察しがつく。
私も成り行きでいつか行くことになるかも知れないな。
それにしてもオリビアさんの裸を見ちゃった後にドレス姿を見ていると、さっきから妄想が止まらない。むふふ
アブリルさんは、スラッとしていてスーツとズボンが似合う。
オリビアさんは、アマリアさんのドレスと同じよう、胸の部分がパックリ開いていて大きな胸が強調されている。
バネッサさんは、キリッとしててやや筋肉質で、強そう。
ダリアさんは、小柄なエルミラさんっぽい。生意気少年風。
プリシラちゃんは、どう見ても小学生にしか見えないが、やはり十五歳らしい。
アナさんは、頼りなさげな雰囲気でどうしてルイスさんの嫁になったのか想像が出来ない。
「何となく気になったことなんですが、ルイス様はアナ様とどうやって知り合ったのですか?」
「うん。去年孤児院へ慰問した時に彼女を見つけてね、私が一目惚れしたんだ。
彼女は小さい子の相手にも世話上手で評判良かったしね」
「ルイス様はとても優しくて良くして下さってますから、まるで夢のようです……」
「はっはっは!
私は身分関係なく綺麗で可愛くて性格が良い女性は大好きだ!
これでも女性を見る目はあるつもりですよ。
アブリルは先ほど申し上げたとおり私の執事で昔は教育係だったんです。
オリビアは男爵令嬢として昔から交流があった幼馴染みです。
バネッサは騎士団の元幹部で強さに惚れました。
ダリアは船団の乗組員で、船旅の時にいろいろ助けてもらいました
プリシラは取引がある商会の娘で計算や商談が凄く上手だったんです。
みんな様々な出身だけれど、とても有能で私の助けになってるんですよ」
奥方たちは皆、顔を赤らめたり微笑んだりしていた。
エリカさんと私の馴れ初めなんて、酒場でエリカさんのパンチラを見たから闇魔法が漏れてしまったのがきっかけだなんて言えないよ。
「そうだ。魔物について一段落したら、ガルシア侯爵家の皆さんを私のプライベートビーチにご招待したいのですが、いかがでしょう?」
屋敷の裏に見えた砂浜がそうなのか。
現在は季節外れで海へ入るのはちょっと寒い。
「それは楽しみです。是非にとガルシア侯爵へお話ししておきます」
この世界はぱんつがあれほど繊細なのだから、水着ぐらいはあるんだろう。
石油工業製品っていったいどこで作っているんだろう。
私のぱんつはタグを見たら、綿百パーセントの国内産だった。
そういえば女性のぱんつを手に取ってまじまじ見たことないから、今度エリカさんのぱんつを見てみよう。
お腹がいっぱいになったし、面白い話も聞けた夕食会はお開きになった。
寝室へ戻ったら、もう寝るだけだ。
エリカさんはお疲れで私も疲れたから、夜のお楽しみはやめておいた。
それでもエリカさんは人肌が恋しいのか二人とも裸になって寝た。
寝ながらそこを握らないで欲しい。