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【210万字!】ロベルタ・ロサリタ ~ランジェリーデザイナーになった転生勇者が女の子たちに求婚され苦悩する?~  作者: しじみ汁
第三章 悪魔の門

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第三十九話 セシリアさんはセシルさん?

 2026.3.20 全体的に見直し、加筆修正を行いました。情景描写を細かくしました。

 ラミレス家で用意してもらった部屋で、誰かに起こされる。

 どうやらベッドの寝心地が良すぎて、眠りこけてしまったようだ。


「マヤ様…… マヤ様……」

「ううん…… パティか…… んん??」

「マヤ様、夕食の時間でございます」


 セレスへパティを連れて来ていないから彼女のわけがないし、そもそも声が大人っぽい。

 寝ぼけが過ぎるな……

 その声の主は、脱衣所で着替えの手伝いをしてもらったローサさんだった。


「お疲れでしたか? 着替えをお手伝いします」

「あ、あぁ…… ありがとうございます……」


 ローサさんにバスローブを脱がされ、素っ裸にされてしまった。

 そこまでするのか? と思いつつも、半分寝ぼけているのでされるがままだ。

 彼女は淡々と私にパンツを履かせ、シャツを着せる。

 上着まで着るのを手伝ってもらい、びっくりするくらいスムースに着替えが終わった。

 スーツのズボンに白いブラウスというコーディネートで、メジャーを使っていないのに何故かぴったりである。

 もしや目測か?

 恐るべし、ラミレス家のメイド。


「服は全て差し上げますので、どうぞお持ち帰り下さい」

「えっ? どうもありがとうございます」


 こんな良い服を貰えてしまうのか…… ラミレス家は太っ腹だな。

 この世界に来てあまり服って買ってないから助かった。

 と思うのは貧乏くさい前世の(さが)が抜けていない。

 私は日本でも年に数度だけ「ファッションセンターしまばら」でサッと買い物をするだけだったから。


---


「それではダイニングルームまでご案内します」


 ローサさんに付いて行き、昨日も夕食を御馳走になった場所へ。

 ラミレス家の三人とエリカさんはすでに席に着いていた。

 執事のロドリゴさんと、眼鏡を掛けた三十代半ばくらいの給仕係、さっき背中を流してくれたアナベルさんとロレンサさんが給仕服で、横の壁際で控えていた。

 アナベルさんとロレンサさんは緊張して縮まっている。

 雇い主と上司、そして彼女らのサービスを受けた客である私たちがいるのだから、無理もない。


「今日一番の主役がやってきたな。お風呂のほうはいかがだったかな?」

「ええと…… あの…… とても広々としたお風呂でゆっくりくつろげましたし、サービスのはとても献身的で素晴らしかったです。お二人には感謝していますよ」

「テオドラ、そういうことだ。二人を褒めてやってくれ」


「はい、旦那様――

 エリカ様、マヤ様、申し遅れました。

 給仕長のテオドラと申します。

 この度は二人の奉仕に満足して頂いて私も嬉しいです。

 突然のサービスにて恐縮でございましたが、ラミレス家では特別なお客様には気持ちよくお迎えし満足して帰って頂くことを心得としております。

 何分、今回は殿方に対して初めてのサービスでございましたから、粗相が無いか心配で心配で……」


 平たく言えば大人の接待そのものだが、良い思いをさせてもらったから深く考えるのはよそう。

 願わくばこの先も嫌なお客に遭わないよう、アナベルさんとロレンサさんに(さち)あれ。


「ほんっとうに二人のサービスは素敵だったわ。ハマっちゃいそう。可愛い子たちだし、身も心も綺麗になって最高よ」

「サプライズサービスというのも面白いと思います。お二人とも綺麗で、思い出になりました。どうか彼女らには報いてあげて下さい。あと、大切なお二人ですからこの先も無理な接客はなさらないようお願いします」

「承知しました。マヤ様のお心遣い、感謝致します。二人とも、お礼を」


 緊張していたアナベルさんとロレンサさんのお顔がパアッと明るくなった。

 若い子は笑顔が一番だよね。


「「ありがとうございます!」」

「ありがとねーん! またよろしくぅ!」

「また? ああいや、こちらこそ」

「アナベル、ロレンサ、下がってもいいわ。片付けまで休んでいなさい」

「「はい」」


 このテオドラという三十代半ばのメガネお姉さんが給仕長で、二人に直接命令していたのか。

 綺麗だけれどお局教育ママふうで厳しそうだ。

 なのに()()お風呂のサービスなのか。

 給仕長も誰かにお風呂でおもてなしをしたことがあるのかな?

 ベテランのねっとりサービスをしてくれそうで、可能であれば受けてみたい。

 今度ラミレス侯爵にこっそり頼んでみようかな……

 二人のサービスは不満な点が全く無かったし、戦いの疲れも吹き飛んだ。

 アナベルさんの開脚…… むふふ

 いや、顔に出るから今は思い出すのをやめよう。


「それでマヤ殿、エリカ殿から聞いたが偵察しに行ったんだってね。また魔物が出たから遅くなったと聞いたが」

「では詳細を報告します。

 もう一つオオムカデの群れが草むらに隠れていたのが見つかりまして、全て退治しました。

 その後も南東の森を往復しながら周辺を隈無く飛んで偵察したところ、魔物の群れは確認出来ませんでしたので、穴を塞いだことですので当分は大丈夫と思われます」

「そうか…… そうだったのか。マヤ殿には街を助けてもらったばかりか、苦労をかけてしまったな。ありがとう」

「いえ、これも使命だと思っております。それに普段は楽しく生活させてもらっていますので、ありがたいことです」


 ラミレス侯爵は安堵する。

 私も仕事をした達成感があった。


「また明日の朝、話をしたい。明日はもうマカレーナへ帰るんだろう?」

「ええ、特に何も無ければそのお話を伺った後に帰るつもりです」

「わかった。ロドリゴ、そのように取り計らってくれ」

「かしこまりました、旦那様」

「さあ、話が長くなってしまうから食事をしよう。エリカ殿、マヤ殿、存分に味わってくれ」


 そういえばお腹が減っていたのを忘れていた。

 食事はコース式で、前菜、マッシュルームのアヒージョ、ハチノスの煮込み、パエリアと運ばれてきて、ワインを飲みながらとても美味しく頂けた。

 食事中の話は、今回の魔物退治の様子や変な盗賊の話、マカレーナでの生活の話など私やエリカさんの話で持ちきりだった。

 最後のデザートは苺のババロア。

 とても美味しくて、パティが好きそうだ。


 ――食事がそろそろ終わるころ、セシリアさんの目線が私のほうをチラチラと向けている。

 そうだ、彼女は私とお話がしたいんだっけ。


「ご馳走様でした。とても美味しかったです。素晴らしい料理をありがとうございました」

「喜んでもらえて何よりだ。今晩はゆっくり休んでくれたまえ。あぁ、マヤ殿はセシリアの話し相手をしてあげてくれないかな」

「わかりました。勿論そのつもりでございます」

 

 それを聞いてセシリアさんは目がキラキラとしていた。

 ラミレス侯爵はあれで娘思いなんだろうね。

 エリカさんは口がεの形になっていたから、また何時でも相手をすると目でサインした。


「マヤ様、私のお部屋でお話ししましょう。ご案内します」


 夜に女性の部屋で、しかも親公認だなんてドキドキ……

 何かが起こることを期待してしまう。


---


 セシリアさんの部屋へ。

 白と淡いピンクが基調の女の子以上に女の子らしい部屋で、良い香りがする。

 動物のぬいぐるみもいくつか置いてあり、微笑ましい。


 小さなテーブルがあり、セシリアさんに勧められ椅子に腰掛ける。

 彼女はお茶をを入れてくれた。

 この色と香りはラベンダーかな。

 睡眠に効果あるのでベストチョイスだ。

 今更だが、この世界は地球にある物だらけで安心する。


 セシリアさんは私のことを聞きたがっていたので、無難なところを話した。

 東の国よりさらに遠いところから旅をしてきて、今はガルシア侯爵にお世話になっている身の上話から、屋敷でやっている訓練や魔法の勉強など、夕食での話の延長だ。

 うんうんと一生懸命聞いてくれるのが健気で嬉しい。


 セシリアさんも少しだけ魔法が使えるようで、水属性の魔法と極初歩的な火の魔法が出来るそうだ。

 戦闘が出来るほど強力な魔力ではないので、普段は生活魔法として使っているとのこと。

 このラベンダーティーも、魔法で水を出して湧かしていた。


「とても楽しいお話をありがとうございました。マヤ様って、とても女性にお優しいですのね」

「いやあ、周りにいる女性が人間として出来てる方ばかりだからそうしているだけですよ。相手に問題があれば厳しくします」


「マヤ様…… マヤ様を見込んで私の大事な秘密を聞いてもらいたいんです。

 私、わかるんです。

 初めて会っても目や表情、話し方でその人と()()が。

 子供の時からあることで学校でもいじめられていて、友達も出来ませんでした。

 でもマヤ様はお話がしやすくて、びっくりでした。

 もしマヤ様だったら……」

「何か深刻な悩みをお持ちのようですね。私で良かったら聞きますよ」

「それでは、お言葉に甘えて…… まず、私の本当の姿を見て頂けますか?」

「――? 本当の姿?」


 ――シュルシュルシュル

 セシリアさんは席から立ち上がり、可愛らしいワンピースのパジャマを脱ぎだす。


「あらら…… あの……」


 何故脱ぐのか理解出来ないが、本当の姿を見せたいと言うのなら止めることは出来ない。

 ドキッとするような、色白な美しい身体…… 肌も綺麗……

 生まれたままの姿という表現は彼女の身体のことなのかと思う。

 本当は人に見せたくない傷がある、というわけではなさそうだ。


 ――って、あれ? あれれれれ?

 胸がぺったんこ。AAAカップサイズですか?

 そもそもブラをしていない。

 ま、まあ胸が無いのは仕方が無いことだよね。

 彼女はこのことを言いたかったのか?

 だが無言のまま(うつむ)き加減で静々とパジャマを脱ぎ、身に着けているのはショーツだけになる。

 どうやら胸のことではないみたいだ。

 ショーツはちょっと高そうでワ◯ールで売られているような、しっかりした作りだ。

 そして両側をレースであしらった、純白のセクシーおぱんつである。

 うひょほっ 女性らしく良い腰つきと細めの太股。お腹には無駄肉が無い。

 細身の身体によく似合うデザインだ。

 ここで飛びつきたいけれど、我慢する。

 でも…… ここまで脱ぐ必要があるのか?


「あれ?」

「――」


 ――股間がややふっくらとしている。

 ぱんつを、顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに下ろし、ハラリと足元に落ちた……

 あ…… あれれれれれれれれ?

 見慣れた(きみ)がそちらにもいる!?

 肌の色と同じ白く、とても形が整っていて可愛らしいサイズ。

 その(きみ)は金髪の()()()を被っている。

 と、頭の中では思っていても、驚きのあまり口が固まったままだ。


 ――はい、セシリアさんは男の子でした。

 現代日本風に言うと、男の()か。


 それにしても―― 骨格からして女性のように丸みをおびた身体つき。

 色白で肌がきめ細やかでありとても綺麗だ。

 くるりと回り、後ろ姿も見せてくれた。

 お尻はツルツルで丸っとしており、腰は綺麗にくびれている。

 後ろから見たら全くの女性だ……


 ――ムクムクッ


 えっ? ちょっと待て!

 私の股間にいる君が元気になっている?

 ハァァァァ…… 男に反応するとは、私の分身君はなんと無節操な……

 いやいや、仕方ないでしょ?

 彼女、いや彼の後ろ姿はどう見ても彼女でしょ?

 理性がとんだらむしゃぶりついてしまうよ?

 それに声が女性そのものだから、女ものの服を着ていたら男性だなんて絶対にわからない。

 男性だけれど、骨格から肉付きは女性寄りの特異な身体なのだろうか……

 彼が再び前を向くと、やっぱり見慣れた君が付いているので現実に戻らされる。

 相棒のムクムクも収まった。棒だけに。

 彼は申し訳なさそうに俯いて話し始めた。


「――マヤ様…… こういうことなんです。私の本当の名前はセシルといいます」

「セシルさん。いや…… やっぱりセシリアさんですよ。わかりました。セシリアさんは身体が男の子で、心が女の子なんですね」

「ええっ? なぜそれがすぐわかったのですか?」

「私が昔いた土地では、そういうことについての理解がだんだん進んできたからですよ」


 元の世界では実際、トランスジェンダーについて世間の話題になってきていたし、とてもデリケートなことだ。

 それに、ホテルのお客さんの中にもそういった方たちが時々いらっしゃったんで、特別に珍しいことではなかった。


「マヤ様にお話をして良かったです……

 もしかしたら気味悪がられて…… 嫌われてしまうかと思っていました。

 私、男の子でもないし女の子でもない扱いをされて、学校では相手にされず今まで友達が全然出来ませんでした…… グスッ……

 理解してくれるのは、家族とお屋敷の皆さんだけでした。

 でも、身内以外で私のことを理解して下さるのは、マヤ様が初めてです…… グスッ……」


 セシリアさんは過去の嫌なことを思い出したのと、私がトランスジェンダーに理解があったことで悲しみ半分嬉しさ半分で、半泣きになっていた。


「あ…… あの、とりあえず服を着ましょうか。お茶を飲んで待っていますから」

「――はい、失礼いたしました」


 セシリアさんをこのまま全裸にしておいてはいけない。

 彼女に促すと、下着を着け、ワンピースのパジャマを着直す。

 ふぅ…… ラベンダーのお茶が美味しい。

 お茶を飲みながらついチラ見をしてしまう。

 着直したパジャマ姿を改めて見ると、とても可愛くて女の子そのもの。


「あの…… マヤ様。こんな私ですが…… お友達になって頂けますか?」

「勿論! 喜んでお友達になりましょう」

「ありがとうございます。嬉しい……」


 セシリアさんは目が潤み微笑んだ。

 そういう表情もまた可愛らしい。


「もう一つ、お願いが…… いえ…… そんなことまでは……」

「言ってみてもらえますか? 怒ることはないですから」

「はい…… 私はまだ一度もしたことがなくて…… その…… キ、キスをしてもよろしいでしょうか? きゃっ」


 彼女は今の発言に、恥ずかしくて顔を塞いでしまった。

 あうう…… そう来たか。

 男性とキスをするのは……

 思い出したくなかったが、若いときに飲み会で騒いでいて悪友が酔ってふざけて私にキスをしてきたことがあったっけ。

 ま、若気の至りだ。


 だがセシリアさんにとって、恐らく人生の一歩を踏む大事なことだろう。

 自分で裸になってまで勇気を出して打ち明けてくれた。

 私のことを信用してくれたんだ。

 私が、人の心を少しでも救う助けになるのならば……

 彼女の性格も押しつけがましさは感じられない。

 よし。ここは私も決心しよう。

 裸だったら躊躇(ちゅうちょ)したが、可愛いパジャマを着ていればいいんじゃないか。


「セシリアさん、いいですよ」

「え!? 本当にいいのですか?」


 私は立ち上がり、無言でセシリアさんに近づいてゆっくり抱き寄せる。

 緊張するな……

 イイ匂い。そうだよ、女の子じゃないか。と、自分自身に言い聞かせる。

 私の唇が、そっと彼女の柔らかい唇に触れた。

 男とキスをしている感じがしないから、私もドキドキしてしまう。

 抱いている身体は華奢(きゃしゃ)で、女の子と変わらない感じだ。

 彼女は興奮しているのか、スースーと鼻息が当たる。

 唇に触れるだけのキスだったが、彼女の唇の感触がはっきり覚えられるくらいの長いキスになってしまった。

 

「ありがとうございます。マヤ様…… うぐ…… ぐすん…… うっ うっ……」


 セシリアさんは思いあまって泣き出してしまった。

 私は再び彼女を抱き寄せた。

 何だか年下のか弱い女の子みたいに愛おしさを感じてしまう。


「グスッ…… すみません。取り乱してしまって……」

「いいんですよ。私もいろいろあって、泣くことはあります」

「え? 私と同じくらいの歳なのにすごくしっかりしてらっしゃるから、そうは見えないのに……」

「私は十八歳ですが、セシリアさんは?」

「私は十九歳なんです。私のほうが年上だったんですね」


 中身は君のお父様とあまり変わらないおっさんだけれどね。

 さっきの雑談で歳まで聞かなかったけれど、それで学校を卒業してからラミレス侯爵の執務の手伝いをしているということか。

 さて、お名残惜しいが自分の部屋で帰って寝るとしよう。


「マヤ様は明日の朝にお帰りなんですよね。寂しいです……」

「はい。でも私は一日でマカレーナからここへ来られますから、また近いうちにお会いできますよ」

「お手紙書いてもよろしいですか?」

「勿論です。私も書きますね」


 セシリアさんはにっこり微笑んだ。

 うう…… 何度でも惚れてしまいそうなくらい可愛い。

 さっき股間に見えたものは幻だったかのよう。


「それでは、お休みさせて頂きますので失礼します」

「お部屋までご案内いたしますわ」


 セシリアさんは私の手を繋いで部屋まで案内してくれた。

 彼女は部屋の前で挨拶に頬へキスをしてくれ、顔を赤くして部屋へ帰って行った。

 とてもいい子過ぎる……

 男とわかっていても、女性として好きになってしまいそう

 今日はよく眠れそうだ。


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