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第三十七話 スライムまみれになって

2023.9.2 微修正を行いました。

 翌朝、セレスの宿で借りている部屋にて目が覚める。

 うつらうつらと目をゆっくり開けたら、隣でエリカさんがジッと私を見つめていた。

 二人とも裸のままだ。


「おはよう、マヤ君」


「あぁ…… おはよう……」


「あなた…… すごいのね」


「ええ~? 何が……??」


 寝起きで寝ぼけているので、余計に何だか理解が出来ない。

 いや、エリカさんの片手は朝で元気もりもりの分身君を握っていた。

 それのことなの?


「まさか姿見鏡を使ってあんなことをしちゃうなんて、エッチ過ぎるよ……」


「あぁ…… そっちか。うーん……

 近頃エリカさんはねぇ、私の前では恥じらいが足りない。

 だから、丁度いいんじゃないかなあ。

 片手でしれっと握ってるのが何よりの証拠だよ」


「なっ…… ぐぬぬ……」


 エリカさんの裸を見ていると朝はいつも元気な分身君がさらにイキリだしてきたので、せっかくだから軽く寝起きの運動をしてしまった。

 勿論またサイレントの魔法で黙ってもらう。

 朝からの仲良し運動で、エリカさんはとてもご機嫌良くなったとさ。


---


 さて、宿で朝食を取って、お昼のお弁当に生ハムサンドを別に頼んだ。

 今日はデモンズゲートを塞ぐ本番の作業。

 予定通り二カ所を塞ぐことが出来るだろうか。


 私たちはまず北東の森を攻略することにした。

 ひたすら飛ぶこと約一時間、途中に小さな村がいくつかあったが、魔物に遭遇すること無く森が見えてきた。

 思った以上に森が大きく、周回してみたが魔物が通った痕跡がよくわからない。

 魔素が一番濃いところが恐らくデモンズゲートがある場所ということなので、エリカさんが森の真ん中あたりを魔法でサーチしてみると、該当の場所を発見できた。

 恐らくメリーダのデモンズゲート捜索隊にも魔法使いがいて、そうやって探し当てたのだろうけれど、こんな広い場所からよく見つけるものだと感心した。

 エリカさんとその場所へ向かう。


「うわっ スライムだらけだ! 気持ちわるぅぅ……」


「あそこにゲートみたいなものが見えるわ。行ってみましょう」


 スライムだらけでとても歩いて行けないので、木の間をゆっくり飛んで進む。

 前にもスライムと遭遇したように、有名RPGみたいな可愛いものではなく、ベトベトの不定形生物である。

 ついでに何とも言えないツンとした臭いがしてたまらない。


「マヤ君、先にデモンズゲートを塞いでからスライムを退治しよう」


「わかった。魔力を集中するよ……」


 私はクローデポルタムの魔法を唱える。


「我、彼方より来たる…… ぶわぁぁぁぁ! ぼへっぼへっ ぺっぺっ」


「きゃぁぁぁぁぁ! マヤ君!!」


 デモンズゲートから突然、スライムが勢いよく噴き出すようにあふれ出てきた。


 私の身体はスライムまみれになってしまった……


「うぇぇぇぇぇ マヤ君、くっさい!」


「俺の方がもっと臭いわ!」


「それより早くもう一回クローデポルタムをかけてよ」


「はいはい」


『我、彼方より来たる魔を討つ者也。美しき世界を我は望む。地獄の不浄なる門を清め給え。再び開くこと無かれ。クローデ ポルタム!!』


 デモンズゲートは一瞬にして塞がった。

 後はスライムの掃討だ。

 私はスライムまみれのまま、エリカさんとフリージングの魔法をかけてあちこちにべたついているスライムを退治をし、意外に早くお昼前には全て終わった。

 さて、問題はベトベトのままの私だ。

 このままではエリカさんを背負って帰れない。

 風魔法は燃費が良くないので、エリカさんの魔力量ではギリギリ街へ帰れるかどうかだ。


「マヤ君、途中に川があったでしょ。

 あそこで服を洗濯しましょ。

 あの距離なら私も単独で飛んで行けそうだ」


「わかった。そうしよう」


 だいたい女神様から貰ったこの服、汚れが着かなかったんじゃないのかね。

 性能に対して許容を超えたのか。


---


 十分ほど飛んでいくと幅が十メートルほどの川が見えて、林で囲まれている河原へ降りてみた。

 ここなら服を脱いでも人に見られることがないだろう。

 幸い今日の気温はやや高めで少し暑い。

 私は服も下着も全て脱いで素っ裸になった。

 エリカさんに見られても今更恥ずかしがる間柄ではないが、エリカさんがまじまじと股間を見つめてくる。

 分身君は何もなっていないし、だいたいあんたは今朝見たばっかでしょ。


「マヤ君、この川の水はとても綺麗ね。暑いから私は水浴びするわ」


 エリカさんも服を脱ぎだしだ。

 (またた)く間に全裸になり、美しい身体を自然の中でさらけ出す。

 こうしてみると絵にしたくなるくらい綺麗なんだがなあ。

 カメラがあれば写真集が出せそうだ。

 それより、私は服を洗わなければならない。

 川の水でじゃぼじゃぼと、服にしつこく着いたスライムのベトベトを洗い流す。

 エリカさんは無邪気に裸で、アハハと笑いながら私に水を掛ける。

 私が美女と河原で裸になって水遊びをするだなんて、前世では想像だにしなかった。


 一生懸命手洗いしていたが、私自身水魔法を使えるのをすっかり忘れていた。

 川の水を使って【ジェットウォーター】の高圧水でしっかり洗う。

 この服の元々汚れが付きにくい能力もあって、臭いもすっかり消えてくれた。

 ちょうど大きな石があったのでそこで服を乾かす。

 この暖かさならば短時間で乾くだろう。

 おっと。すっかりお昼ご飯を忘れていた。

 身体は若いのに何故か忘れっぽい。


「エリカさん! お昼ご飯を食べようよ」


「そうね。お腹空いたね」


 水浴びしていたエリカさんがこっちにやってきて、裸のまま二人で大きな石の上に座って弁当の生ハムサンドを食べた。

 飲み物は持って来た水筒に紅茶を入れてもらっている。

 大自然の中で裸になって食べる生ハムサンドの味は格別だ。


「ねえマヤ君。愛してるよ」


「え? 何なの突然」


「マヤ君とこうしてると、ほんと幸せを感じるの。

 何というか、君と一緒にいると気持ちがのびのびしてくるんだよ」


 確かに誰もいない大自然の中で素っ裸ならばのびのびするよね。

 エリカさんが言ってるのはそういうことではなく、私と一緒にいると気楽だということだろう。

 女性が男である自分に対して完全に気を許してくれているというのは嬉しいことだし、私なんかを信用してくれているんだから、彼女は大事にしてあげないとね。


「エリカさんは私の大事な人。いつでも(まも)ってあげるから」


「改めてそう言われると照れるなあ。」


 エリカさんは顔を赤くしてモジモジしている。


「ねえマヤ君。帰りの魔力の余裕が欲しいから、マジックアブゾープションかけてもいいでしょ?」


「いいけれど、魔力吸収だけだよ」


「えー、せっかくこんな大自然の中で滅多に無い機会よ」


 やっぱりそれか。だが私が意志が弱かった。

 正確に言うと、いつの間にか私の分身君のほうが元気いっぱいもりもりになっている。

 さっきからエリカさんは私の分身君が気になって仕方がないようだ。


 まずエリカさんが私に抱きついてマジックアブゾープションをかけて私の魔力を吸収する。

 彼女はまた大きな声を出して気持ちいいと言っているが、そんなに魔力吸収することが気持ちいいのだろうか。

 以前より吸い取られる気怠さが減ってきている気がする。

 もしかしたらまた魔力量が増えているのかも知れない。

 最初に魔法が使えるようになってから百倍は優に超えている感覚だ。

 少なくともこの国は、RPGのようにマジックポイントにて魔力量を数値で表す概念が無いようなので、それがどれだけあるのかはっきりわからない。

 ちなみにまだエリカさんと抱き合ったままである。


「ねえエリカさん。今更聞くけれど、魔力量の測定って出来るの?」


「この国はあまり魔力量のことを気にしていないけれど、魔族式ならあるわよ」


「その方法って?」


「私の部屋に魔力量を計る物があるから、帰ったら見てみるかい?」


「ほほぅ、それは見たい。お願いしようかな」


「魔法の発祥は魔族だから、魔法のことについては先進的だよ。

 ああ、魔力量については普通の人間では似たり寄ったりだったから、そのことについては教えてなかったね。

 人間の魔法使いでは初心者から中級者で100から200、アマリアさんで300、魔族の国で鍛えた私でも1000ぐらいなんだ。

 だが君は一万よりもっとあって上級魔族並の魔力量だと思うんだよ」


「ひぇぇ 自分でも知らないうちに……」


 そんな真面目な話をしていても、エリカさんと私は裸のままで彼女に魔力を吸い上げられている。


「ねえ、そんなことよりさあ……

 ねぇぇ もう魔力吸収が終わったから、ねぇぇ」


「そんなに大自然を満喫したいですか」


 エリカさんと私は自然の中で溶け込むように愛し合った。

 彼女の色っぽい声が川と林に響き渡る。

 その声に反応した動物に見られているような気がしたが……


「満足したようだね。

 服はもう少しで乾きそうだし、休憩したらセレスの宿へ帰るよ」


「はぁ はぁ はふ……」


 お昼もだいぶん過ぎて、もう一つの森を攻略するには余裕が無い。

 今晩は宿に泊まるが、一日延長して明日の晩はラミレス侯爵家にお世話になることにしよう。

 今日の帰りに報告とお願いをすることにした。


---


 何事も無くセレスへ帰着し、いったん宿に戻りエリカさんと一緒に風呂へ入った。

 彼女と一緒にいる当たり前の時間というのは、実は貴重で幸福なときなのかも知れない。

 このままずっと続いてくれればいいと思った。


 夕方、ラミレス侯爵邸へ向かう。

 門番を通じてロドリゴさんが玄関で出迎えてくれた。


「エリカ様、マヤ様、お疲れ様でございました。

 ご夕食はいかがいたしましょうか」


「侯爵にご報告だけなので、今晩はお構いなく。

 あと、明日の晩はこちらでお世話になりたいと思います。

 北東の森が少し難儀でしたので一カ所しか攻略出来ませんでしたから」


「かしこまりました。それでは応接室にてお待ちください」


 応接室で待っていると、ラミレス侯爵が一人でやってきた。


「おぉ、二人ともご苦労だった。

 ロドリゴから聞いたが、大変だったようだね」


「申し訳ありません、閣下。

 北東の森でスライムが大量に現れて、手こずってしまいました。

 デモンズゲートは塞いで、周りのスライムは全て退治しましたのでご安心を。

 それで南東の森は明日攻略することにしました。

 明日の晩だけ、お言葉に甘えてお世話になりたいと思います」


「よしわかった。

 君たちにしか出来ないことだから全面的に協力するぞ。

 食事は本当にいいのかね?」


「はい、少し疲れていて失礼があってもいけませんので」


「そうか…… セシリアがマヤ殿のことを気に入っているようなんだ」


「えっ そうなんですか?」


「うむ。だから明日は会ってやってくれないか?」


「わかりました」


---


 侯爵への報告が終わり、宿へ戻る。

 エリカさんがさっきからジト目で私を見つめている。


「ねえマヤ君、また女の子が増えるの?

 ガルシア家の子たちだけでもう十分でしょーに」


「ラミレス侯爵の顔を立てているだけですよ。社交辞令」


「それならいいけれど……」


 夕食は、宿の酒場で済ませた。

 大きめのマッシュルームに生ハムが入って揚げてあるものや、イカリング揚げ、牛串などなかなか美味くて気に入ってしまった。

 お腹いっぱいになってしまって気分がいい。

 宿で食事が出来るとすぐ横になれるので気楽だ。

 無論その晩もエリカさんに求められて、楽しんだ。

 いつも思うが、若い身体って無限に性欲が(あふ)れてくるからすごいよね。


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