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第三百七十六話 パティとのキスと、セレナさんへのプレゼント

 ※今回は9千文字以上と長いです。やや過激な内容なので、それが苦手な方はご注意下さい。

 パティの十五歳記念パーティーは終了し、別室で歓談している招待客以外は帰宅し、ホールは静まりかえっている。

 そしてここは、ガルシア家のお屋敷にあるバルコニー。

 毎回誕生パーティーの終了後はここで二人っきりのダンスパーティーをしており、今回も例外では無い。

 で、私とパティは抱き合い、十五歳成人になって初めてのキスを彼女から求められている。

 こんな時に私の分身君はパンパンに(いきどお)っており、まだ理性があるので制御が出来るが、キスを始めたらどうなってしまうかわからない。

 彼女にとって今は大事なキスを求めているわけだから、やめるわけにもいかず……

 ええい、ままよ!


 目を瞑って私からのキスを待ち続けているパティの唇に、私はそっと唇を合わせた。

 いつも通りのぷるんと瑞々しい唇……

 でも、いつもより温かい…… いや、熱を持っている。

 彼女もドキドキしているのだろうか。

 私の左手は彼女のお尻に触ったままだし、拒否もされていない。

 この意味は…… 十五歳になったことで気持ちが解放されたのか。

 それに、ちょうど掴み心地が良い丸みで触り心地は良い。


 唇を互いに挟んで、はむはむと擦れ合う感触を楽しむ。


「ん…… ふっ……」


 パティの吐息を感じる。

 はむはむキスから、彼女の方からだんだん吸い付くキスに変わっていく。

 く、唇が吸われる…… いつもより大胆になっているぞ。

 こんなのどこで覚えたんだろ。

 BL小説ばかりでなく、恋愛小説も大好きだからなあ。

 彼女に限って浮気は考えられないけれど、もしかしたら誰か女の子と練習を?

 うーん、いや…… 万一そういうことをしそうな相手はカタリーナさんぐらいしかいないし、彼女は王都にいるから有り得ない。考えすぎか。


 ――ぺろっ ぺろっ


 ひえっ!? パティが私の唇をなぞるように舐めている。

 絶対何らかでキスの研究をしているぞ。

 彼女の舌先の感触が唇によく感じられ、これは愛情のキスを越えてエッチなキスだ。

 ややぎこちない動きが、いろいろ手探り状態で試しているように思う。この場合は舌探りか。

 それなら私も舌で応戦しよう。


 ――ツンツン ぺろっ


 パティの舌先を、私の舌先で(つつ)いた。

 彼女もその気で私の舌先を(つつ)き、お互い舌先だけクルクルと舐め合う。

 これ以上すると完全にベロチューになってしまい、別次元のキスになってしまう。

 アマリアさんとの初めてのキスはすごかった。脳みそが吹っ飛んでしまう勢いだった。

 これを今、パティと行うのはまだ早い。


「んんっ はぅ…… んんっ」

「うう…… パティ……」


 私は一旦、唇を離した。

 パティは目を開けたが、(うつ)ろな表情になっている。

 やはりここで()めておこう。


「パティ、大丈夫?」

「――はふ…… キスってこんなに熱くなるものなんですね……」

「う、うん……」


 まだ余韻が収まらない。私の分身君はまだパンパンだ。

 我が家のベッドに戻ったら、分身君を収めてあげないと。

 取りあえず、パティをギュッと抱きしめた。


「マヤ様…… 今晩、私ちょっと変な気分です……」

「本当に大丈夫?」

「このまま…… 抱きしめていて下さい…… はふっ はふっ……」


 本当に様子がおかしい。

 息づかいが荒くなっているようだ。

 病気では無さそうなので、このまま抱きしめている。

 パティは両脚をモゾモゾと動かしている。

 ちょっと…… 分身君が擦れてしまうじゃないか。


「ン…… ハァ…… ゥ……」


 えええっ!? この声って…… アレ?

 いやまさかね……


「マヤさまっ マヤさまっ……」

「うん……」


 パティが私の名前を呼んだ瞬間、彼女が少しよろめいたので、思わずお尻をギュッと掴んで体勢を整えた。

 だがその時、パティの身体がビクビクッと軽い痙攣を起こしたように感じた。

 その直後、ぐったりして私に体重を預けてしまう。


「あ…… ハァ…… ハァ……」

「あの……」

「ごめんなさい……」

「うん……」


 パティの顔が随分火照っている。

 彼女がどういう状態なのか察しはついたので野暮なことは聞かず、そのままパティが前に使ってた部屋へ送った。

 前にもこんなことが有ったような、無かったような……

 現在は私の屋敷にパティの部屋があるが、今のところガルシア家にも手を着けずに部屋が残っている。

 今晩はそこで就寝するということで、軽くキスをしてから別れた。


 さて、分身君をどう収めるかだ。

 そう。まだ元気なままで彼は落ち着く様子が無い。

 帰って自己発散させてあげるしかないか……

 パティの部屋の前から階段を降り、玄関ホールを抜けてパーティーホールを覗いてみると、メイド服隊のみんなはまだ片付けの最中。

 アムとアイミは集めてある残った料理を一生懸命口へ放り込んでいた。

 エコロジーなのは良いが、あいつらの腹はどこまで底なしなのか。

 入り口近くを通りがかったジュリアさんに声を掛ける。

 彼女は空いたお皿を、グラヴィティで浮かせて一カ所にまとめている作業をしていた。


「ジュリアさん、忙しいところ悪いけれど先に帰るね」

「わかりまスた。今晩はお皿を洗い場へ持って行ってホールを軽く掃除するだけでスから、私たちもすぐに帰りまスね」

「うん」


 ホテル勤務の職業病もあって手伝ってあげたいが、当主の子爵になってしまった立場上、この国ではあんまり手を出さない方が良いらしい。

 パーティーの準備をしたので、あれで十分だそうだ。

 あ…… ジュリアさんを見ていると、特大ケーキの切り分けの時に宙に浮かび、下からぱんつが見えそうなのを思い出した……

 ううう…… ますますムラムラしてくる。もうダメだ。


「ジュリアさん、ごめん! 五分だけでいいからちょっと付き合ってほしい!」

「えっ? えっ? なんでスか!?」


 私はジュリアさんの手を引っ張って、外の庭へ連れ出した。

 広い庭の隅にある木の幹にジュリアさんの両手をつかせて、彼女の後ろからメイド服のスカートをガバッと(めく)った。

 彼女は察しがついたのか、大人しく従ってくれている。


「どうしても我慢出来なくて……」

「いいんでスよ。どうぞ(わたス)を欲望の()け口に…… うへへ」


 彼女の笑いがちょっと不気味だが、遠慮無くさせてもらおう。

 夜の暗い庭の向こうにある、アンティークな街灯のような魔光灯の(あか)りがジュリアさんのお尻を薄く照らしている。

 白のTバック! それを見た私は、抑制が効かなくなり……


---


 事後。いきなり始めて、本当に五分で終わってしまった。

 誰かと屋外でこんなことをするなんて、久しぶりだ。


「あの…… 急にごめん」

「はふっ はふっ…… エヘヘヘヘ…… 嬉しいでス。いつかマヤさんとこんなシチュエーションでプレイをスるのが夢でスた。ウヘヘヘヘヘ」

「ああ……」


 と、ジュリアさんは木の幹に手をついたまま、だらしないメスの表情で言った。

 これが彼女の裏の顔である。

 彼女と最初に出会った時はすでに処女ではなく、後日になって、お金のために近所のオジサンに初めてを捧げ、それからもお金と快楽のためにオジサンと何度も行為をしたと告白があった。(第五十二話参照)

 このオジサンが彼女の性癖を目覚めさせてしまったわけで、悔しい気もするけれど済んでしまったことはどうしようもないし、ジュリアさんが一途に私のことを好きでいてくれているからあまり気にしていない。

 彼女は、私が求めても断ることは女の子の日以外には一切無い、私に都合の良い女であることを自ら望んでいる節がある。

 そういうことはヴェロニカやルナちゃんあたり、酷く嫌うだろう。

 だが彼女自身はそういった素性を表に出さないし、私もスケベ貴族みたいに堂々と求めることはしない。

 表面上の彼女は面倒見が良い性格なので、皆から好かれているのだ。


 ――ジュリアさんはスカートを直し、エヘエヘと薄笑いで屋敷内へ戻っていった。

 分身君はすっかり収まってくれたが、あの五分の出来事が彼女にとっては衝撃の思い出になっていることだろう。


---


 パティのキンセアニェーラから僅か三日後の午後。

 セレナさんをパティの部屋へ招待し、私も含めて三人でお茶会という名目で大事なお話をすることになった。

 セレナさんが私に告白をする話なのだが、私は三日前に彼女から告白されたことをパティの前では聞かなかったことにして口裏を合わせ、改めてパティと二人で聞くことになる。

 円いテーブルを三人で囲み、パティが入れたローズヒップティーと、ジュリアさん手作りのドーナツが皿に盛られている。ほとんどパティが食べてしまいそうだけど。

 始めは他愛のない歓談で、パティは以前から私のことをセレナさんによく話していたようだから、私から話すことがあまり無いくらいだった。

 パティと離れて活動している時のことは、やましいことも有り有りでうっかり話せない。

 おしゃべりなパティなものだから雑談が長くなり、セレナさんがだんだんヤキモキそわそわしてくる様子が(うかが)える。

 ちょっと間を開けてみようか。


「あー パティ。お茶のお代わりをもらえるだろうか? 今度はオレンジティーがいいかな。君が入れてくれるお茶は美味しいから」

「わかりました。うふふっ セレナ様もいかがですか?」

「はい、私もいただきます」


 パティは、キンセアニェーラ終了から、いや、バルコニーでの出来事の後から機嫌が良すぎてしょうがない程だ。

 だからこれからセレナさんが話すことについても都合が良い。

 パティは魔動ポットでお湯を沸かし、その間にお茶っ葉をガラスのティーポットに入れて用意する。

 その時もセレナさんは緊張しているようで、黙っていた。

 いよいよ腹を(くく)って、パティがお茶を持って来たタイミングで話す気だな。

 パティは、沸かしたお湯をティーポットに入れてそれを蒸らし、新しいティーカップにお茶を入れてテーブルへ持って来た。

 すると、セレナさんはすぐにオレンジティーを軽く口をつけて潤し、話し出す。


「パ、パトリシア様! マヤ様! ここで本題のお話をしようと思います!」

「あ、はいっ」

「はい」


 始まった。両手の拳を握り、僅かにプルプルと震えている。

 表面上は真面目なセレナさんのことだから、固い決意のうえでのことだろう。

 冗談めいた返答はやめた方が良さそうだ。


「――わ、(わたくし)…… 今からお二人に告白をします……」

「はい…… ゴクリ」

「――」


 パティは、告白という言葉を聞いて何かを察したのか、息を呑んだ。

 セレナさんが何を言おうとしているか私はわかるが、ドキドキするなあ。


「私は…… マヤ様のことが好きです。お慕い申し上げます」

「――ええええええええっっ!?」

「ほえええっ?」


 パティは一呼吸を置いて、驚きの声を上げる。

 私も演技で驚いたが、ちょっとわざとらしかったかな。


「セレナ様! それって…… マヤ様を尊敬なさっている意味ではなくて、愛してらっしゃるということですか?」

「はい。尊敬もしておりますし、異性として愛しております」

「むむむむむむむ……」

「あいや、ちょっと待って!」


 ひいいっ パティの顔が般若みたいに変わった!

 彼女は両手のひらで私のほっぺたを挟んだ。


「あちちちちっ! 熱い!」

「まーやーさーまあああ!! いつの間にそういう話になってるんですかああ!?」


 パティが火属性魔法で私の顔を焼こうとしているが、お互い魔法耐性が非常に強くなっているので、手のひらや顔が火傷になることはない。

 パティはそれをわかっててやってるが、耐性が無い人にそれをやったら熱したフライパンを当てたぐらいの火傷ぐらいにはなるだろう。

 でも熱い! 熱すぎる缶コーヒーがほっぺたに当たったような、火傷するかしないかの微妙な熱さである。


「ち、違うんですパトリシア様! (わたくし)の言い方が悪かったんです! マヤ様と私が個人的に二人だけでお会いしたことはありません。マヤ様がデザインされたランジェリーのデザインに私が憧れて、私から一方的に好意を持っただけなんです!」

「え? それはどういうことなんですの?」


 セレナさんが訳を話すと、パティが手を放してくれた。

 パティがこんなことして怒るなんて初めてだから、びっくりしたよ。


「それは…… 前にパトリシア様へお話ししたように、アリアドナサルダへ通う度に新商品が販売されて、ふんどしショーツやサニタリーショーツを始めとした、女性の身体のことを考えた機能性、そして繊細なレース、見たことも無い模様、女心をくすぐる可愛いデザイン、どれをとっても(わたくし)の心を奪う品ばかりでした。あああっ ロベルタ・ロサリタ…… デザインはきっと素晴らしい女性が考えてらっしゃると思っていました!」

「は、はあ……」


 セレナさんの熱弁に、パティは呆気にとられた返答しか出来なかった。

 えーっと、パティ。私のほっぺたがちょっとヒリヒリするんですが。

 と思いつつも、私自身に手のひらを当て、リカバリー魔法を掛けてさっさと治した。


「ですが…… ですがですが! たまたまパトリシア様とお話をした時、まさかいつもご一緒にいらっしゃるマヤ様がデザインをなさっていると伺い、(わたくし)はもうマヤ様しか目に見えなくなりました! ――そう、(わたくし)の両親の勧めで何人もの殿方とお見合いをしたんです。どなたも真面目そうで素敵な方ばかりでした。でも…… 彼らは違うと思ったんです!」


 続いてセレナさんは興奮気味に話す。

 この辺はだいたいバルコニーで話を聞いたとおりだが、歳が歳だけに一応お見合いはしていたんだな。

 でもねえ…… 私が真面目で普通じゃないように聞こえるのは釈然としない。


「それはつまり、マヤ様のデザインに惚れて、マヤ様にも惚れたということなんですか? ちょっと話が見えないと言いますか、繋がらないように思います……」

「先ほども申しましたように、女性の身体のことを思った下着、そして繊細なデザインから、マヤ様の素晴らしい性格がグッと滲み出ているように思いました。きっと私のことを理解して下さる殿方であろうと!」

「それは私にもわかりますわ! マヤ様の女性に対する思慮深さと、お気遣いはとても尊敬しているんですよ!」


 パティはセレナさんの言葉に、目をキラキラさせながら応えた。

 そうかな…… 繊細なデザインというのは、私が適当に描いた物をアリアドナサルダ専属のデザイナーが清書したものだから、実際に細かいことをしてるのはアリアドナサルダの女性社員なんだけれどな。

 思慮深いとか気遣いは、歳が五十も過ぎてホテルの支配人という管理職になっていれば普通のことなんじゃないか。

 本当の私はズボラで面倒くさがり屋なんだけれど。

 まあ、彼女らがそう思ってくれているのならば、そういうことにしておこう。


「――で、マヤ様はさっきから黙ってらっしゃいますが、セレナ様のことをどう思っているんですか?」

「え? ああ…… 綺麗で素敵な方だと思うし、私は彼女のことをまだよく知らないから、まずお友達から始めるのであれば良いかなと」

「き、綺麗ですか…… ポッ」


 セレナさんは顔を赤くし、両手を頬に当てている。

 彼女は自分の下半身を綺麗だと逆上(のぼ)せているが、顔の方は自覚していないようだ。

 長い髪の毛をお団子にまとめ、眼鏡を掛けてキリッとしており、漫画によく登場する美人風紀委員のように見える。

 童顔ではなく歳も二十一歳になっているので、女上司のような風格さえも感じる。

 雰囲気は、もう少し若くて細身のアマリアさんに近い。とても好みである。

 こういうキャラには黒いランジェリーにガーターベルトを装着させて、あんなことやこんなことをさせてみたい。


「わかりました。私はセレナ様と長い付き合いですから、とても素敵な方だとよく存じております。真面目で厳格ですがそういうところを尊敬しておりますよ。お友達からであれば私は構いません。決めるのはその後です。セレナ様、どうかマヤ様をきちんと教育して差し上げて下さい。うふふっ」


 意外にあっさり許諾された。

 パッと現れた女性と違い、パティがとてもセレナさんを信頼しているからだろう。

 ヴェロニカやセシリアさんたちがどう思うかが問題になるが、セレナさんは我が家にも度々訪問しているみたいだから顔見知りぐらいにはなってるかも知れない。

 しかしなあ、この国の一夫多妻制とサリ様の神力が合わさると、冴えないおっさんだった時の反動からあまりに非常識過ぎて感覚がおかしくなる。


「ありがとうございます、パトリシア様、マヤ様。私もパトリシア様のことは大好きで、ずっとお友達でいたいです。ですが…… 私には今までパトリシア様にずっと秘密にしていたことがあります。それを以前からお話をすべきか、葛藤して苦しんでおりました」


 ああ、素のセレナさんのことだな。いよいよこれから話すのか……

 あれをパティがいる前で、どうやって話すのだろうか。


「そうだったのですか…… 苦しいのであれば、無理にお話にならなくてよろしいんですよ」

「いえ、大好きな可愛いパトリシア様に嘘をついているみたいで、嫌なんです。本当の(わたくし)を見てもらいたいんです」

「本当の私?」

「そうです。それを今からご覧に入れます」


 セレナさんはスクッと立ち上がり、ワンピースドレスの後ろをゴソゴソとやっている。

 な、何をする気?

 セレナさんの異変に、パティも驚きの表情を隠せなかった。


「セ、セレナ様! 何をなさってるんですかっ!?」


 パティの言葉にも構わず、セレナさんは後ろのファスナーをスッと下ろす。

 すると肩からドレスを脱ぎだし、上半身を露わにした。

 むほっ 動作がなんて色っぽいのだろう。

 白い花柄レースのブラは半透けで、ピンク色のポッチが見えてしまう。

 確かにこれは私のデザインだが、いざ目の当たりにすると、しゅ、しゅごい……

 Dカップ相当のお胸は大きすぎず小さすぎず、矯正ブラではないので形もびっくりするくらい整っていた。

 こんな逸材が身近にいたなんて……

 ありゃ、デザイナー目線で彼女を見てしまっていた。


 ――パティはあまりのことに、言葉を失っている。

 私たちが固まってしまっているうちに、セレナさんはドレスをストンと落とすように脱いでしまった。

 まるで予め、脱ぎやすいようにしていたかのよう。

 現れたのは、半透け花柄レースのおぱんつ。

 細めのショーツなので、彼女の美しい鼠径部のラインが露出していた。

 確かに自分で下半身が大好きだと言うだけのことはある。

 そして…… ブラウンの髪の毛と同じ色のものが、形がわかるくらいはっきり見えていた。

 自分でデザインしてて何だが、アレが透けてるってとても興奮する。


「あ…… ああ…… セレナ様…… あなたは……」

「そうです。これが本当の(わたくし)です…… こんな格好ですが、お恥ずかしながら私は殿方の身体を知らないんです。嬉しい…… ハァ…… ハァ…… 可愛いパトリシア様と、このランジェリーをデザインなさったマヤ様に本当の私をご覧頂けたなんて…… ハァ…… ハァ……」


 セレナさんは興奮し頬を赤く染め、目が虚ろになっていた。

 ついでに処女告白までしてしまった。

 バルコニーでお尻ぱんつを丸出しにしたのも衝撃的だったが、まさかこれほどの思いとはなあ……

 このシチュエーション、ジュリアさんが告白してきた時と似ている。

 あの時、彼女もメイド服を脱いでランジェリー姿になったんだ。(第五十二話参照)

 違うのは、貴族か平民か、処女か非処女か、ぐらいである。

 この二人が似ている性格でも仲良くなれるかはわからないが、それは後の話だ。


 それにしても、お菓子の食べ過ぎでちょっとブヨブヨしてきたしたパティより、筋肉で身体が締まってるヴェロニカやエルミラさんより、ずっとランジェリー向けモデルの体型だ。

 肌には傷も出来物も一切無く、完璧である。なんて美しいのだろう。

 下着モデルをやってもらって、エリカさんの写真魔法でカタログが作れそうだが、カラー製本が難関だよな。

 いや、その前に彼女がモデルをやる承諾すらしていないのに、こんなことを考えてどうするんだ。


「セレナさん…… 綺麗だ。すごく似合ってます……」


 彼女の下着姿と完璧なプロポーションに見蕩(みと)れ、思わず声に漏らしてしまった。

 その途端、セレナさんの顔がバフンッと真っ赤に爆発した。

 そして鼻血がツーッと……


「マヤひゃまに褒められまひた…… 幸せでふうぅぅぅ……」

「あららっ!? いけませんわ!」


 セレナさんがヨロッと倒れかかったので、パティは急いでセレナさんを抱き抱える。

 パティが先に動いたのは、私にセレナさんを触らせたくないためだ。

 私は棚に置いてある高級ティッシュボックスからティッシュを取り出し、水属性魔法で軽く濡らしてから鼻血を拭いてあげた。


「す、すみません…… 嬉しすぎて興奮してしまいました……」

「セレナ様ったら…… びっくりしました。マヤ様はあんまりジロジロ見ないで下さいまし!」

「いやそれは……」

「いいえパトリシア様…… マヤ様には私の身体をしっかりご覧になって頂きたいのです…… パトリシア様に抱かれ、マヤ様に褒められて、私は生涯で一番の幸せと感じました…… ああっ パトリシア様、マヤ様、心から愛しております」

「ああ…… セレナ様……」


 何やら重い言葉でパティは返答に困り何も言えなかったが、それでも後ろから心配そうにセレナさんを抱いていた。


---


 セレナさんが落ち着いたところで、彼女には服を着てもらって改めてお茶会の続きを始める。

 お茶が冷めてしまったので、パティにはまたオレンジティーを入れ直してもらう。


「――コホン。ま、まあそういうことでセレナ様、これからもよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします!」


 パティの言葉の後、セレナさんはパティの手をしっかり握りしめる。

 私に対しては、男性とのスキンシップがまだ慣れていないようで、微妙に距離を取られている。

 結局パティはセレナさんの隠れた性癖を受け入れたようだ。

 パティ自身も私に対してややムッツリな傾向があるうえに、カタリーナさんやセシリアさんのような綺麗な女性が大好きだから、どこか分かり合える節があるのだろう。


「何はともあれ、私からもよろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いしますっ」


 私から握手を求めると、セレナさんは握手してくれた。

 手も、とても綺麗で、日本にもいた()()()()()さんのよう。


「私からセレナさんへ、一つプレゼントがあるんです」

「何でしょう?」


 私は懐からちょっと汚れている小さなノートを取り出した。

 すでに不要になってロレナさんから返してもらった、初代のランジェリーデザインノートである。

 記念に持っておくつもりだったけれど、平たく言えばただの落書き帳だし、セレナさんなら大事にしてくれるだろうと、プレゼントすることに決めて持って来たのだ。


「これは私が最初に使っていた、デザイン画を描いていたノートです。下手な絵で恐縮ですが、セレナさんへ差し上げます」


 セレナさんは無言で受け取ると、パラパラとページを(めく)って中を見ている。

 恥ずかしいのと、何だかデジャヴを感じる。

 ロレナさんかミランダさんの時だったかな……

 数十秒もすると、セレナさんの腕がぷるぷると震え、彼女の顔がクシャクシャに崩れて涙した。


「マヤさまあああっ こんな貴重な物を(わたくし)に下さるなんて! かかか家宝にします! 一生大事にしますうううううっ! うえぇぇぇぇん!」


 セレナさんは嬉しすぎて泣きじゃくっていた。

 それで喜んでもらえるのなら、プレゼントして良かった。

 パティは今日ばかり、セレナさんが感情を爆発させて本心を打ち明けてくれたことが友人として嬉しく思った日でもあったので、優しく微笑んでいた。

 アリアドナサルダの仕事を手伝ってもらえるかなどもっと話したいことはあるけれど、セレナさんと私は昨日の今日の関係なので、あれこれ詰め込みすぎるのは控えておいた。

 ヒノモトの国から帰ってきたら、改めて話すことにしよう。


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