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第三十六話 空飛ぶ馬車構想/ラミレス侯爵家

2023.8.31 全体的に文章を見直しました。

 今日から少なくとも三日間は屋敷を留守にして、隣のメリーダ区へ出かけて二カ所のデモンズゲートを塞ぐ仕事をしに行く。

 勿論エリカさんと一緒だ。

 ガルシア侯爵から国王へ、それから国王から各領主へ通達があり、メリーダ区領主のラミレス侯爵からガルシア侯爵へ手紙が届いたからだ。


 私はいつもの上下黒、エリカさんは前回と同じお団子頭に、作業着のような服装。

 朝食を食べたら早速出発で、ガルシア家の皆に見送られて飛んだ。


 行き先はメリーダ区セレスの街だ。

 マカレーナから北へ約三百キロの所にあるが、グラヴィティと風魔法で飛んでも時速五十キロから六十キロまでの速度が限度で、単純計算でも五、六時間はかかる。

 今回は、ゴーグルのような眼鏡を貴族の商店街で見つけたので、二つ用意したから幾分ましになるだろう。


 魔法でバイクのカウルみたいな風防でもっと速度が上げられないかと考えたが、確か速度を上げ過ぎると中の方で真空状態が発生するんだったかな。

 新幹線みたいにエアロ・ダブルウィング形状にして気密構造で覆うんだったら時速三百キロで進んでも楽勝で、一時間余りで着くかも知れないが、新しい風魔法を作り出さないと無理だろう。

 新幹線車両の技術ってすごいよね。


 いや待てよ。二十メートルまでしか浮かすことが出来ないから、あまり速度が速いと背が高い木などの障害物を避けきれないので危険だ。

生憎スマホから何もかもこの世界へ持って来られなかったので、自分の曖昧な知識しかないのが非常に残念だ。

 若い頃からしっかりと自分の頭に知識を入れておくのが大事だと身にしみた。


---


 エリカさんにもグラヴィティを自分でかけてもらって浮いているが、背負ってもらってるほうがかえって負担になるので、一時間ごとに小休止を行った。

 その休憩中の話で。


「ねえマヤ君。これって馬車みたいなものでそれに乗って浮かせることは出来ないかしら?」


「浮かせるのはたぶん簡単だと思いますが、風魔法の風をどうやって噴き出すか考えないといけませんね」


「マヤ君だけ外に出て押してもらえば簡単よ」


「それねえ……」


 理屈だと、ジェットエンジンのような噴射口から高圧の空気を出せば、前に進めるわけで。


「エリカさん、自分から数メートル離れた位置から風魔法を発生させることが出来ますかね?」


「ああ、それだったらちょっと魔法を作り替えれば可能だよ」


「よし、エリカさん!

 もしかしたら王都へ日帰りも夢じゃなくなるかも知れません!

 馬車の形を空気抵抗が小さくなるように作り替えて、それに風魔法を噴射させる物を取り付けるんですよ」


「え!? マヤ君どうしてそんなことを思いつくの? すごいよ!」


 こうして空を飛ぶ馬車を作る構想が持ち上がった。

 たぶん馬車の工場へ特注しなければいけないが、問題は私のお金だけで作ることが出来そうにない……

 白金貨がいったい何枚いるんだろう。帰ってから考えよう。


---


 道沿いに飛べばテリオ、バロス、メリーダの街を通ることになるが、ゆっくり道草を食うときりが無いので、外へ迂回して進んだ。

 昼食はいつものビビアナ特製サンドイッチだ。美味いぞ。

 帰りは弁当が無いから、どこかの街へ寄ることになるだろう。


 メリーダ区セレスに着いたのは夕方で、三百キロを八時間くらいかかった。

 馬車なら一週間はかかるだろう。

 エリカさんは疲れてげっそり。とりあえず宿を取ろうか。


 私たちは、あまり庶民的な宿屋も立場上アレなので、街のほどほどなレベルの宿屋を選んだ。

 この世界に来て十ヶ月くらいになるが、宿屋で泊まるのは初めてになる。

 受付は金髪ボブヘアーの綺麗なお姉さんだった。


「今日から二泊で二人、部屋は空いていますか?」


「はい、一人部屋、二人部屋のベッド二つ、二人部屋のベッド一つのどの部屋もご用意できます」


「じゃあ……」


「はいはい! 二人部屋ベッド一つの部屋で!!」


 横からエリカさんが鼻息荒くしてそのタイプの部屋を取ってしまった。

 本当はベッド二つの部屋で良かったんだが、まあいいか。

 さっきげっそりだったのに、なんで元気なの?


「それではお会計ですが、銀貨四枚お願いします」


「領収書を下さい」


 公式に出張費として精算されるのだ。

 その辺はクリーンな世界だね。


「エリカさん、そんなに元気だったら今日の内にラミレス侯爵の屋敷へ挨拶に行きますよ」


「えー、めんどくさいなあ」


「面倒だからさっさと済ませた方がいいんですよ」


「はーい」


 どっちが年上なんだろう。

 ああ、私は中身が五十歳というのを忘れていた。


 ちょうど宿が貸衣装もやっていたので、ラミレス侯爵に失礼が無いよう、ジャケット、ズボン、ドレスを借りた。

 明日まで借りて銀貨三枚。ドレスが高かった。


 部屋に入ると、ほどほどだけにほどほど良い部屋だ。

 この世界の技術レベルで、ちゃんとお風呂まで付いているのがすごい。

 ベッドはクイーンサイズロングぐらいだろうか。けっこう大きい。

 エリカさんはすでに、ベッドを見て興奮している。

 今晩はどんなエッチなことをしようか妄想しているに違いない。


 早速衣装を着替える。

 エリカさんは私の前で何の気兼ねも無くぱんつとブラだけになった。

 私もその場で着替えたが、私のぱんつのほうを凝視している。

 勿論テントは張っていないぞ。

 さっきから露骨に性欲をむき出しているが、エリカさんとのアレは間が空いてしまったからなのかなあ。


---


 着替えは何事も無く、賃走馬車でラミレス侯爵の屋敷へ向かった。

 門番を通して玄関まで馬車で向かうが、ラミレス侯爵家の屋敷は大きいなあ。

 エリカさんが言うには、侯爵家の屋敷ならばこれくらいの大きさが普通で、ガルシア侯爵がただ質素好きなだけだそうだ。


 若いメイドさんに応接室まで案内され、少し待っていたらラミレス侯爵と執事がいらっしゃった。


「やあやあ、よくぞ遠くから参られた。

 私はマルコ・ラミレス。これは執事のロドリゴだ」


「初めまして。マヤ・モーリです」


「エリカ・ロハスです」


 ラミレス侯爵は五十歳くらいかな。

 頭が薄いが立派な髭を蓄えており、威厳がある。

 ロドリゴさんは若くて二十代後半ぐらい、背が高く黒髪直毛のイケメンだ。

 エリカさんが何かしら反応しそうだったが、そうでもなかった。


「早速でありますが、どこにデモンズゲートがあるか教えて頂けますか?」


「うむ、わかった。ロドリゴ、地図を」


「はい、旦那様」


 ロドリゴさんが地図を持って来て私に渡してくれた。


「説明しようか。見つかったゲートは二カ所ある。

 セレスから北東へ五十キロほどの森の、すでに印が付けてある真ん中当たり。

 もう一つは南東三十キロ先の森の南の端にあった。

 この地図は君たちに差し上げよう」


「ありがとうございます。この距離ならば、うまくいけば一日で終わりますね」


「なんとたった一日で!? どうやって移動するのかね?」


「闇属性の魔法で浮いて、少し高いところを鳥と同じくらいの速さで風属性魔法を使って飛んでいきます。

 北東の森ならば一時間ぐらいで着くと思いますよ」


「すごい魔法があるものだなあ」


「実はマカレーナを今朝出発して、セレスには夕方に着きました」


「手紙を出してからずいぶん早く着いたなと思ったが、そういうことだったのか!」


「さすがにくたびれてしまいましたけれどね」


 ラミレス侯爵は感心して私の肩を叩き、ハッハッハッと笑っている。

 ガルシア侯爵同様に話しやすそうな印象を受けた。


「おお。それでは今晩私たちと夕食を食べていかないかね?

 何だったら泊まってくれてもかまわないぞ」


「ありがとうございます。

 宿は取って宿賃を払ってしまいましたので、夕食だけご馳走になってもよろしいでしょうか」


「わかった。すぐ用意させよう。ロドリゴ!」


「かしこまりました」


---


 夕食が出来るまでそのままラミレス侯爵と歓談しながら待っていたら、用意が出来たようだ。

 私たちはロドリゴさんの案内で食堂へ移った。

 すでに女性が二人、着席している。


「紹介しよう。妻のイメルダと、娘のセシリアだ」


「イメルダです。セレスへようこそ」


「セシリアです。遠いところからよくおいで下さいました」


「初めまして、マヤ・モーリです」


「エリカ・ロハスです」


 イメルダさんは五十歳くらいか。見た目は年齢なりだろう。

 貴族婦人らしい品の良さで、落ち着いた感じだ。


 娘のセシリアさんは二十歳ぐらい。

 ブロンドのナチュラルボブで、清楚で和やかな顔つきだがドキッとするような美形だ。

 胸元をカットしていないドレスなので胸の大きさはよくわからないが、巨乳には見えない。


「あとセシリアの兄になる息子が二人いてな。

 それぞれ独立していていずれは一人に後を継いでもらおうと思っている。

 そうだ。マヤ殿はマカレーナを大量の魔物から救った勇者という話は聞いている。

 今度男爵になるそうじゃないか」


「いえ、まだ手続き審査中のようで、私からは何とも……」


「ガルシア侯爵は王からの信頼が厚いが、彼はあれで厳しいから君はよほどの人間だからだろうよ。安心していいんじゃないかね」


「ありがとうございます、閣下」


 そういえばラミレス侯爵は第二夫人はおられないようで、実際に一夫多妻になっている貴族は多くないんだろうか?

 もし私がみんなと本当に結婚したら、よほど好色に見られるのか。


 ラミレス侯爵夫妻とセシリアさんとは、食事をしながらどうやって魔物を倒しただとか、デモンズゲートは古代魔法で塞ぐとか、いろいろ話をした。


「ふーむ、そんなに魔力がたくさんいるのか。

 マヤ殿とエリカ殿に頼るしかないのだなあ」


「デモンズゲートは他にあるかも知れませんが、まずこの二つを塞げばこの街の周りの魔物は幾分減ると思います。

 また他にデモンズゲートが見つかりましたらガルシア侯爵までお知らせ下さい」


「お二人にばかりご負担をかけて申し訳ないですわ。

 今回は宿をお取りということですが、次回はご遠慮なさらずうちへ泊まっていって下さい」


「ありがとうございます、イメルダ様」


 食事は、海から離れている地域なので肉と野菜中心だが、煮込み料理や好物の生ハムはとても美味い。

 この国の料理は本当に自分の口に合って良かったよ。


「そんなに美味しそうに召し上がっているなんて、我が家の料理をお気に召したようで良かったですわ。

 トマトの煮込み料理はお母様が作ったんですよ」


 セシリアさんがにっこりと話しかけてくる。

 笑顔美人とはこの人のことだろう。


「食事は一日の楽しみの一つですからね。美味しい物が頂けて本当に嬉しいです」


「はっはっは、気に入ったぞマヤ殿。

 明日の晩も是非食べていってくれたまえ」


 今晩はそんな感じで、食事は美味しかったし、セシリアさんはとても素敵だったし、いい夢が見られるかも知れない。

 そしてラミレス家の馬車で宿まで送ってもらった。


---


 馬車の中にて。


「マヤ君。セシリアさん綺麗だったね。まんざらでもなさそうな顔をして」


「あれ? エリカさん珍しく気になるんですか?

 でも今晩やりたい放題するつもりなんでしょ?

 何なのチェックインの時のアレは」


「ぐぬぬ……」


---


 宿に帰った。そしてエリカさんは部屋に入るなり……


「さあ、やりたい放題なんだから。

 せっかく二人きりなんだし、一緒にお風呂へ入りましょ」


 エリカさんはさっさと服を脱いでしまった。

 確かに今まで見た女性の身体の中では最も整っていて綺麗なんだがなあ。

 最初の頃と比べて、私に対してすっかり恥じらいが無くなってしまった。

 いつも彼女主導のくせに知識は耳年増の少女並だから、今晩は私主導で……


 お風呂の中ではプロのお姉さんのように手のひらで身体を洗ってもらう。

 エリカさんは声が大きいので宿に迷惑だから、【サイレント】の魔法で口封じをした。

 そして用意したのが部屋にあった姿見鏡。

 鏡の前でぱっくり脚を開かせたり、もうアレやコレやでさすがのエリカさんは恥ずかしすぎて手で顔を隠していた。

 ふふ、勝った。


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