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第三百六十三話 お眠りミカンちゃん/第八章登場人物

 ガルベス公爵家の屋敷から南へ飛び、王都南にあるエスカランテ子爵家へ向かう。

 エスカランテ家は王都の南に広大なオレンジ畑を持っており、農業経営で築いてきた名家である。

 奥さんになったシルビアさんの実家なのでこっそり窓から入るわけにも行かず、素直に正面玄関から入るが――


「あのぅ、どちら様でございますか?」

「イヤだなあマノラさん、マヤですよぉ。ちょっと訳あって金髪になっちゃって」

「いえ…… マヤ様が女性だなんて…… ええ!?」


 マノラさんはエスカランテ家のおばちゃんメイド。

 ううっ もしかして私が女になったことも知らされていないのか。

 前にここへ来た時、マノラさんがたぶん休みで居なかったからなあ。


「パウラさんはいらっしゃいますか? 私の事情を知ってるはずなので……」

「私の名前やパウラさんの名前をご存じであれば…… ちょっと呼んできますね」


 マノラさんがパウラさんを呼んできてくれるので、玄関先で待機中。

 私が空からそのまま玄関先へ降りたものだから、エスカランテ家は門番が二人居るけれど護衛らしい護衛は彼らだけ。

 子爵家にしては防犯対策が弱いが、エスカランテ子爵は華美な生活を好まない貧乏性のため、あまり泥棒が入りたがる家ではない。

 ただ、シルビアさんのお爺さんがベラスケスというガルベス公爵家の家臣である男に毒殺されたという経緯があるので、今度エリカさんには私の屋敷と同じ、悪者が入ったら身体にカビが生えて腐る結界を張っておいてもらおうか。

 魔族の魔法ってエグいよな。


 ――待つこと五分足らず。

 マノラさんが連れてきたのは、パウラさんと子爵夫人のパメラさんも一緒だった。

 名前がよく似ているので、うっかり間違えそうである。


「マヤ様!? あらあら、まあまあ!」

「マヤさん、その髪の毛はどうなさったの?」

「いやあ、エリカさんが男に戻す魔法に失敗してしまいまして、こんなことになりました。あ、ご心配なく。次にお邪魔するときはきっと男に戻れそうです」


 パウラさんと夫人も、私の姿を見て目をパチクリし驚いていた。

 そんなに私の金髪が珍しいのかね。

 まあ、日本人の顔でそのまま眉毛も一緒に金髪だから、この世界では珍妙に見えるのだろう…… ぬくくっ


「とにかく、お入りなさい。マノラ、シルビアを呼んできてくれるかしら」

「はい、奥様」


 夫人にリビングまで通される。

 奥さんの実家というわけで、何度も訪れ子爵夫妻は温厚なので緊張感はあまり無い。

 だがガルシア家と比べたらヨソ様のお宅という感覚が強い。

 パウラさんもシルビアさんの部屋へ行ったようで、夫人とリビングで待つこと数分。

 その間、夫人はよく喋っていたが、おばちゃんには有りがちなことだ。

 ミカンちゃんの話ばかりだったので、私もウンウンと聞いていた。

 子爵のことを聞いたら、今日は農政局へ出掛けているそうだ。お疲れ様です。

 帰って来たら、私の金髪のことを話されてしまうのだろうか。


「――マヤさん? まあ、本当に金髪になってるんですね」


 シルビアさんがリビングへやって来た。

 ありゃ? ミカンちゃんを抱いていない……?


「ああ、いろいろあって…… これからまとめて話すよ。ミカンちゃんはどうしたの?」

「よく眠ってますわ。今は婆やが見てくれているので、後で部屋へ行きましょう」

「そっかあ。寝る子は育つって言うからねえ」

「そうですね。うふふっ」


 こうした他愛の無い話から始まり、夫人も一緒に三人で歓談をする。

 正式に自分の屋敷を手に入れたこと。ルイスさんの招待で女王らとラガのビーチへバカンスしに行ったこと。

 話すことに尽きることが無かった。

 そのまま昼食を頂いて、パウラさんと交替でシルビアさんとミカンちゃんの様子を見に行く。

 部屋のベビーベッドで、大の字でスヤスヤ気持ち良さそうに眠っていた。


「――よく眠ってるなあ。ちょっと残念だけれど、起こすのは良くないから」

「今朝は早く起きちゃいましたからね。お乳をあげたら眠くなって、それからずっとですよ」

「苦労をかけるねえ」

「婆やもいますから、だいぶん楽をさせてもらってますわ。うふふっ」


 私は、天使そのもののミカンちゃんの寝顔を眺め、小さな手をそっと握った。

 ああもうっ 寝顔も可愛すぎるうぅぅぅ!

 ミカンちゃぁぁぁん! 愛してるよぉぉぉ!

 さて、ミカンちゃんは大事だが、シルビアさんも大事な大事な奥さんである。

 たまにしか会えないからスキンシップをしておかなくてはならない。


「ねえ、シルビアさん。少し…… いいでしょ?」

「はいはい」


 私がシルビアさんの手を握ってそう言うと、ニッコリと笑って返事をした。

 二人でベッドに腰掛け、最初は唇の感触を楽しむように軽く何度も口づけ。

 それから唇をはむはむ挟むキス。

 さっきのリーナとのキスとは全く違う、大人のキスだ。


「愛してるよ、シルビアさん」

「マヤさん――」


 両手で手と手を繋ぎ、舌が絡み合うエッチなキス。

 子供が寝てる前で何となく背徳心を感じるが、身体の繋がりがそれを遙かに上回る大きな至福を感じた。

 一旦キスを止めて、気になっていることをシルビアさんに話す。


「あのね、お乳が出たのはあの時だけで、もう出ないんだ」

「まあ、どうしてかしら。子供が居る時だけとか……」

「そうか。今はどうなんだろう」


 私はブラウスとブラをたくし上げ、胸を絞ってみた。


「あっ 出た」

「不思議ですね。やっぱりミカンが近くにいるからでしょうか」


 シルビアさんがそう言いつつ、先っちょに滲んだ母乳をペロッと舐めた。


「ひゃうっ」


 シルビアさんの突然の行為にびっくりし、変な声が出てしまった。

 ミカンちゃん、起こしてないかな。うん、大丈夫。

 真面目なシルビアさんなのに、こういうことは女王の悪影響でこんなことをしてしまうんだからなあ。


「美味しいですよ」

「そう、そうか……」


 その後、ミカンちゃんが起きないように、静かに静かに、深く深く愛し合った。

 女性同士が慣れているシルビアさんは快楽のツボをしっかり把握しており、あまりの快感に声が出そうなのを手で押さえて我慢するしか無かった。

 涙が出るほどなのに、シルビアさんは私の顔を見てニコニコと微笑んでいた。

 おっ お姉さまぁぁぁ!


---


 スッキリした後は、ラガへ戻らなければいけないので王宮広場まで飛行機を取りに行く。

 お昼ご飯を食べて、シルビアさんとエッチなことをしていたからすっかり遅くなってしまった。

 眠ったままのミカンちゃんしか会えなかったのが心残りだが、また来週以降に王都へ行くことになるから、その時に元気なミカンちゃんに会えると良いな。

 機体が傷まないように急いでラガへ向かい、アマリアさんたちガルシア家とヴェロニカ、マルセリナ様をマカレーナまで送る。

 そして残ってまだ砂浜で遊んでいたビビアナやアイミたちを送ることになるが、初便で女王が買ったお土産をたくさん積んだので人をたくさん乗せられず、マカレーナまで一往復余分に飛んで輸送し、バカンスは終了した。

 第三便で運んだビビアナたちはモーリ家の厨房で早速夕食作りに取りかかり、花嫁修業のパティもそれに加わった。

 アニメみたいに鍋が爆発したり、得体の知れない物体Xが出来なきゃいいのだが……



 第八章二部 完


◇◇◇


 第八章登場人物設定


★サリタ(10) マカレーナ大聖堂の修道女見習い。

 乳児の時、礼拝堂に置き去りにされていた孤児。

 光と闇属性の魔力に目覚め始めている。

 マヤのマジックインクリーズにより、魔力が高まった。


★アーロン・モンタネール(故人/70代)

 男爵。マヤが金貨五枚の格安で買い取った屋敷の主人。

★オリビア・モンタネール(故人/幽霊)

 アーロンの夫人。若くして亡くなり、寝室の絵に取り憑いていた。

 神か魔族にしか見えなかったが、アーテルシアの術により具現化した。

★デボラ・サンチェス(30代)

 かつてモンタネール家のメイドだった女性。

 寝室で年老いたアーロンと行為をし、腹上死させてしまった。

 それから行方をくらましている。


★クルス・ロハス(50代) ロハス男爵 エリカの父親

★アウロラ・ロハス(50代) ロハス男爵夫人 エリカの母親


☆神様

★アンフィロギア(不明) 149cm Cカップ 通称アム。

 クリクリくせ毛のショートヘア。

 雰囲気は小猿っぽい少年風。

 アーテルシアの姉にあたるが、彼女は覚えていない。

 女の邪神であるが悪意は無く、アーテルシア同様に面白いことが大好きでマヤに興味を持つ。

 剣神アーレスから剣術を習っていた。

★フィロテス(不明) アイミやアムの叔母にあたる。

 淫欲の神で、外でもエッチなことをしている。


☆グアハルド家

★フローラ・グアハルド(3)

 グアハルド侯爵第二夫人オリビアの娘。彼女がそのまま小さくなった容姿。

★カサンドラ(22) グアハルド侯爵家のメイド兼、御者

★メラニア(21) 同上


★ベニータ・サルダーニャ(Benita Saldaña)

 アリアドナサルダ・ラガ支店の店長


★マノラ (Manola) エスカランテ家のおばちゃんメイド


☆国

◆シェフィード国 エトワール国の北西にある国。

 イギリスによく似た、ウスターソースの産地。


 長かった第八章二部が終わりました。

 次回、第九章ヒノモト国篇をお楽しみに!

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