第三百六十話 激甘お菓子とハチャメチャ展望露天風呂
三十数分後に、眼鏡メイドさんが戻って来た。
底が深い大皿にいっぱい盛られている『ペスティーニョス』を持って。
「今日のティータイムはこれで決まりですね。他の皆さんにも召し上がって頂きたいと思うので、今調理の者が追加のペスティーニョスを作っておりますから、ご遠慮なくどんどん召し上がって下さい」
『良い匂いだねえ? 何の匂い?』
「それは、上に掛かってるシナモンパウダーの香りでございます」
『おおおおっ! 甘ったるい香りが食欲をそそるのぅ!』
アムとアイミはニヤニヤ意地汚そうな笑いで大喜び。
おやつで連れる神様は扱いが簡単で有り難い。
しかし、本当に甘ったるい匂いが漂っているが、イスパル国の人たちはだいたい甘い物が大好き過ぎて、糖尿病にならないか心配になってくるほどだ。
だがそれで病気になってる人は見かけたことがなくて、日本人の私と身体のつくりが違うのだろう。
みんなを呼ぶ前に一個食べてみる。
――おおお…… 美味しいけれど甘い。すごく甘い。
シナモンとレモンの皮スライスが無かったら飽きてしまうところだ。
アムとアイミは、ばくばく口に放り込んでる。
第二弾が出来る前に無くなってしまうんじゃないか?
甘さの口直しに、水着メイドさんにグラスへ注いでもらった冷たいお茶を飲む。
よく焙煎したマテ茶っぽいが、この苦みならペスティーニョスが何個も食べられそうだ。
さて、砂遊びしているパティたちや、ビーチボールをしているヴェロニカやマイたちを呼ぶ。
セシリアさんはデッキチェアで本を読んでいたので、寝てるジュリアさんとマルヤッタさん、ガルシア侯爵を起こす。
女王たちはメイドさんに頼んで呼んでもらった。
エリカさんはまだ向こうの岩場に魔力を感じるが、彼女を呼びに向かった。
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なだらかな砂浜の向こうは険しい岩場で、簡単には人が入って行けない。
エリカさんならグラヴィティムーブメントが使えるので問題無く行けるはずだ。
私もグラヴィティムーブメントで岩場を移動してみる。
「♥♥♥…… ♥♥♥……」
えっ? 視界にない岩陰の向こうから、聞いたことがあるエッチな声がする。
モニカちゃん!?
冗談のつもりだったけれど、エリカさんとまさかまさか!?
陰からソーッと覗いてみた。
「♥…… エリカさん♥♥…… ♥♥……」
ゲゲゲゲゲッ!?
岩場の地面が安定している少し広い場所で、水着同士のエリカさんとモニカちゃんがすごいことをしていた。
エリカさんがしゃがんでモニカちゃんのお尻を♥♥♥♥してるうぅぅぅ!
二人とも私が何度も相手をしているけれど、他人同士の情事を覗くのって興奮するよな……
それと、何となく寝取られ気分。
モニカちゃんのムッチリおちり、美味しそう……
うっ…… いつの間にか自分の手を股間に当てていた。
二人が集中して楽しんでいるのだから、ここで私が出るのは野暮だ。
おやつのことを告げるのは放っておいて、私はパティたちがいるところへ戻る。
まるでエ◯ゲ的な展開だったな。
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バーベキュー小屋付近に戻ったら、すでに第二弾の山盛りペスティーニョスの大皿がテーブルに置かれていた。
第一弾はアムとアイミが早々に食い尽くしてしまったらしい。
想像はしていたが、よくあんな甘い物を大食いできるな。
女王やロシータちゃんも降りてきており、お茶を楽しんでいた。
女王は薄いピンクのタンクトップと白いショートパンツに着替えており、水着同様にムチムチとした肌をさらけ出していた。
結局水着を三着も着たのに海水には一度も浸からず、明日帰っちゃうんだよな。
足ぐらいは浸かってたと思うが……
そう、楽しいバカンスは今日で終わってしまう。
来年も行けたらいいなあ。
人数も多いので、山盛りペスティーニョスは第五弾まで作られた。
マテ茶がそれに合うとはいえ、みんなどんだけ甘い物が好きなんだよ。
アムとアイミはお腹ポンポンになって満足げにデッキチェアで寝転んでいるが、夕食の頃にはまたばくばく食べるだろう。
――そしてみんなは、海のバカンスの最後の日をを夕方まで目一杯楽しんだ。
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夕食の前にお風呂だ。
ダリアちゃんが仕事から帰ってくる前に、さっさと入ってしまおう。
みんなの前でおっぱいをいじられてはたまらん。
体育会組は、みんなもう入っていた。
ヴェロニカとエルミラさんはジャグジー風呂がお気に入りのようで、ブクブクとお湯に浸かっていた。
ああ…… MYお屋敷にもジャグジー風呂を作る話になっていた。(第二百四十五話参照)
帰ったら建築施工業をやってるカタリーナさんの実家へ聞いてみよう。
スサナさん、マイ、オフェリアは仲良く大風呂に浸かっている。
このバカンスでスサナさんとオフェリアの裸をとうとう見てしまった。
特に長らく一緒に生活していたスサナさんは家族みたいなもので、何だか照れくさい。
さてと…… 私は奥の展望露天風呂へ行ってみよう。
「あっ――」
展望露天風呂には、エリカさんとモニカちゃんの二人が仲良くくっついて入っていた。
さっき覗いていたばかりなので、ちょっと後ろめたい。
私は知らないフリして、声も掛けずに掛け湯をしてから彼女らと離れた位置でゆっくり風呂に浸かった。
すると、エリカさんが向こうから声を掛けてきた。
「マヤくぅーん」
「な、何かな?」
「エッチ」
「いきなりエッチとは…… 私は元々エッチだけどね。それがどうかしたの?」
「マヤさまー あたしたちを見てたでしょ。にひひ」
モニカちゃんがニヤニヤしながら言う。
うげっ あの時バレてたのか?
エリカさんが夢中にプレイしていたとはいえ、私の魔力に勘づいていたかも知れないな。
彼女は恐らくイスパル国一の魔法使いだ。
魔力感知など造作も無いことだろうが、取りあえずとぼけてみる。
「何の話なのかさっぱり。あたしたちって、何かしてたの?」
「まーやくんったら、知らんぷりをキメる気ね」
「ああっ エリカさまの―― 最っ高だったわあ」
「何が最高なのやら。エリカさんのバカっぷりが最高なのかな」
「マヤ君、そういうこと言う。だったら…… モニカちゃん、行くよ!」
「はい!」
うわっ 二人がこっちへ来た!
両手を挙げて、いかにも私を捕まえようとするポーズだ。
に、逃げよう!
私がグラヴィティムーブメントを使って露天風呂から脱出しようとしたら――
「それっ」
「あぎゃああっ!!」
エリカさんが掛け声を上げてビリッとした瞬間、身体が動かなくなった!?
その後痺れは無いが、力が急に抜けた感じがしている。
下半身が湯に浸かったまま、私はお風呂の際でうつ伏せになってへたり込むしかなかった。
エリカさん、私が知らない痺れ魔法を使ったな?
何て強力な!
大帝の強化術が掛かった身体でもあっさり効いてしまうなんて、
「ほーらモニカちゃん! 私があの時やっていたことをマヤ君にやってみてよ」
「イエス! マム!」
「はっ!?」
エリカさんは私を風呂場の床へ引っ張り上げ、モニカちゃんは私のお尻にしゃぶりつく。
目の前で何も着けてないエリカさんがしゃがんでるから、いろいろ見えちゃってるぅ!
アモールがエリカさんに与えた魔族の生成身体、こんなとところまで人間そっくりですごいよな。
いやいやそんなことより――
「わあああっ マヤ様の女のお尻、ふわふわで気持ちいいっ」
モニカちゃんは、私のお尻でぱ◯◯ふをやっている。
うわああっ くすぐったい! シャレじゃないが、鼻が花に当たってるって!
「モニカちゃん、どう?」
「マヤ様の、すっごいイイ匂い!」
「ふふーん、そうなの?」
「イイ匂いって、知らんって!」
知らんといいつつ、この匂いはアモールが最初に性転換魔法を掛けた影響である。
アモールと同じ匂いだから、エリカさんが嗅いだら青ざめるやつだ。
「へぇー! マヤ様のここ、男の時と変わらないんだねえ。可愛い! ペロっ」
「あひいっ 男女共通のところって、どどどどこ見てんだああ! うひいっ!」
「モニカちゃん、もっとやれやれーー!」
「あひっ あひっ くすぐったい! ひぃぃぃぃっ!」
エリカさんがモニカちゃんを煽って、私へのいじりがますます激しくなる。
本気でそこはくすぐったい!
「どうよマヤ君。観念して本当のことを言いなさい」
「知らーーーん!」
「そうかそうか。モニカちゃん、やっておしまい!」
「アイ、マム!」
「いーっひっひっひっひ! 本当にソコは勘弁!」
動けないし、どうしよう……
今オナラしたらモニカちゃんに嫌われるかなあ。
変態エリカさんだったらクンカクンカして喜びそうだけど。
そこへ、正面にある戸がギイッと開いた。
「あっ! マヤさんここにいたんだー! なんか楽しいことしてるう!?」
あちゃー! ダリアちゃんだ。
もう仕事から帰って来たのか!
私を見つけるなり、遊び相手を見つけて喜ぶ子供のような笑顔で、私たちに突進してきた。
「エリカさん、ちょっとそこ交替ね!」
「えっ! ああ……」
エリカさんに代わり、ダリアちゃんが強引に入ってきて私の手を掴み、身体を裏表反転させて私をぺたぺたちゅーちゅー。
「マ、マヤ君…… これどうなってるの? いつダリアさんと仲良くなったの?」
「あひっ いやまあ、いろいろあって…… おうふっ」
エリカさんが質問してくるが、ヴェロニカのことを話すわけにはいかない。
いや、エリカさんたち身内だったら良いのか。
でも夜中に砂浜でイチャイチャしてたのを見られたって言うのはイヤ!
「なんかよくわからないけれど、あたしはこっち!」
「あーん! 私のところがないよー! ふぇーん!」
「モニカちゃん、こんなところでソコはマズいって! あーーーーっ!!」
モニカちゃんが私の脚の間へ顔を突っ込んで……
ウウウッ 快感で正気が保てず、アヘってしまいそうだぁぁぁ……
身動き出来ないから為す術も無く…… にゅうふーっ
エリカさんは仲間はずれになって、半泣き。
「泣いてる暇があるなら身体が動かないの、解いてよー!」
「いや、見てても面白いからもうちょっとこのままね」
「ひーーーーーっ!?」
ダリアちゃんとモニカちゃんの攻撃が増し増しで、私が限界に達しそうだったその時――
「きゃっ!? マ、マヤさん!? 皆さんどうしてこんな!?」
「ええええっ!? ダリア! 何やってんだああ!」
アナちゃんとプリシラちゃんも展望露天風呂に入りに来た。
彼女たちなら助け船になるのか?
「おおっ アナとプリシラじゃないか! マヤさんとお楽しみをしてるんだよ」
「あああああんた! そういうことをする人だったのかあ!?」
「――」
プリシラちゃんは、ダリアちゃんが私にペロチューしてるまさかの有様を見て、指さしてビックリ仰天。
アナちゃんは言葉さえ出ず、両手で顔を塞ぎつつ隙間から覗いていた。
やっぱり彼女もムッツリなのね。
で、私がお風呂よ床の際で仰向けになってるものだから、アナちゃんとプリシラちゃんの大事なところがとても良い眺めで、ダリアちゃんとモニカちゃんの攻撃がどうでも良くなるほど。
素晴らしい…… この状況、ラッキースケベってレベルじゃねえぞ!
と、どこかの販売行列で誰かが言っていた風に。
「そうだ! アナがいるんだ!」
「はははっ はいっ!?」
ダリアちゃんは私へするのを止めて、別の獲物を見つけた猫のようにアナちゃんへ飛びついた。
「ダリアあああ! 何やってんだあ! アナはあたしんだああ!!」
「プリシラちゃぁぁぁん!? ああああああっ!」
ええええええっ!? 今度はプリシラちゃんが左のおっぱいに吸い付いた!
何がどうなって!?
あっ それよりちょっとモニカちゃんの攻撃が!?
あややややややっ
「もういいでしょ? 麻痺魔法解いてよ」
「わかったわ。はい」
エリカさんが私の額に手を当てて声を掛けたら、一瞬で動けるようになった―― わけでもない。
モニカちゃんの攻撃のせいで、グッタリだ。
人様のお風呂でこんなことを…… ハァ……
「――で、何なのさっきの麻痺魔法? 私があっさり掛かってしまうなんて……」
「ふふふっ それはディープパラライシス (Deep paralysis) というお師匠様特製の超上級魔法よ。元々男を性的に屈服させるために作った魔法みたいなんだけれど、それをこの前教えてもらったの。初めて使ってみたけれど、効力抜群ね」
「なっ…… アモールの…… 魔法の無駄遣いだ……」
エリカさんの言葉を聞いて、魔法も掛かっていないのにドッと力が抜けた。
そのままズブズブとお風呂へ浸かり直す。
エリカさんとモニカちゃんもそれ以上何もせず、私の両隣で大人しく湯に浸かった。
それで、被害にあってるアナちゃんは――
「ああああ二人ともっ やめてくださあああいっ」
「アナのおっぱい、マヤさんのよりすんごくやわらかあああいっ!」
「ダリアいい加減あっち行け! アナの身体はみーんなあたしんだ!」
「プリシラちゃぁぁん! 私の身体は私のモノだよぉぉぉ!」
二人ともアナちゃんのおっぱいに顔をスリスリと感触を楽しんでおり、プリシラちゃんはダリアちゃんを押しのけようとしているが、船員だったダリアちゃんは力が強くてビクともしていない。
まるで姉妹喧嘩である。
そこへ私たちが入ると余計にしっちゃかめっちゃかになりそうなので、アナちゃんには悪いが向こうは向こうの家族のことなので触らないことにした。
ああ…… いい湯だな……
そこへ、また出入り口の戸が開いた。
「騒がしいと思ったらあなたたちっ! 何をしているの!」
「「「ひゃいっ!?」」」
ルイスさんの執事で第一夫人でもある、アブリルさんだ。
彼女は無駄肉がない均整が取れた身体を惜しげも無く晒し、三人に対して怒鳴った。
小学校の時にいた怖い女の先生のようである。
アブリルさんの声を聞いた三人はビクッと身震いし、動きが止まる。
きっとこの三人、アブリルさんに怒られるのは初めてじゃないな。
「三人ともそこへ正座しなさい」
ゆっくりだが重く強い口調で三人に言う。
三人は風呂場の硬い床の上で正座をさせられてしまう。
完全に逆らえないようだ。
「何なんですか! お客様の前ではしたない! あなたたちはもう社会に出ているのに、まったく子供みたいに―― ガミガミ!」
説教が始まった。これは長くなりそうだな……
内容を聞いていると私たちにも実に耳が痛い話で、エリカさんもモニカちゃんも表情が固まり黙っている。
私なんて日本から数えたらそろそろ五十三歳になる。はずかしー!
あと五分も早くアブリルさんが展望露天風呂へ来ていたら、私たちもまとめて六人が正座させられていたであろう。
――お説教が出入り口の戸の前でやっているものだから、私たちが横を通って出られそうな空気ではない。
結局アブリルさんのお説教は三十分ほど続いて、私たちはのぼせる寸前まで展望露天風呂を堪能した。
小説家になろう版は、表現をソフトにしてあります。




