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第三百五十四話 イスパル風たこ焼きだ!

 オフェリアの腰に巻いていたタオルが偶然落ちて、生の股間を見てしまった私は彼女に蹴飛ばされ、砂浜の波打ち際へ頭から突っ込んでしまった。

 さっきのアムとアイミと同じになってしまったではないか。

 しかしこんなことをされても怪我ひとつ無いなんて、アスモディアの大帝のパワーアップ術のおかげなんだろうなあ。

 あの激痛を耐えた甲斐があったもんだ。

 私はスポンと砂浜から頭を抜く。


「ペッペッ 口に砂が入ってら」


 そこへやって来たのがビビアナとマルヤッタさん。

 しゃがみ込んで私を見つめている。


「マヤさん、何やってるニャ? 最近はそういう遊びが流行ってるのかニャ?」

「いや、遊びじゃないよ。いろいろあって…… アハハハ」

『マヤさんは変わったことばかりやってますからね。何があっても驚きませんよ』

「そう言われると否定出来ない……」


 おお、水着のマルヤッタさんをこんな至近で見るのは初めてだ。

 オーソドックスな水色のワンピースが、長い銀髪と真っ白な肌によく似合う。

 つい股間をチラッと見てしまう。おお…… このスジは……

 ん? そういえば……


「マルヤッタさん、ここは日差しが強いけれど日焼け大丈夫なの?」

『問題ありません。エルフ族には昔から日焼けガードの魔法が伝わっていますから。たぶん人間用にもあるはずですよ。というかパトリシアさんが使ってるんじゃないですか?』

「そうなのか…… 後で聞いてみよう。話は変わるけれど、もうすぐたこ焼きの材料が届くから二人にも調理を手伝って欲しいんだけど」

「おー、どんな料理か楽しみだニャー」

「大蛸の脚を一部冷凍してマカレーナへ持って帰ることにするから、二人にもまた作ってもらえたらなと思ってね」

『わかりました。マヤさんの故郷の料理ですよね。すごく楽しみにしてます!』


---


 そういうことで、バーベキュー小屋へ戻る。

 すると、ショーツを履き終えているオフェリアが申し訳なさそうな顔をして私を見つける。


『ももももももも申し訳ございませーーーーん!!』


 予想通り、ジャンピング土下座。

 大きな図体でされると余計に目立ち、向こうにいる水着メイドさんたちがヒソヒソ何かを言ってる。


「ああ、謝罪は受け入れるからそれはやめなよ」

『うううっ このままでは申し開きもございませぬ(たてまつ)(そうろう)!』


 ぶっ 言葉が滅茶苦茶でどこの国の人なのかわからない……

 面倒だから、私はオフェリアの耳元でこう(ささや)いてみた。


(オフェリア、大好きだよ。愛してる)

『ぶひっ!?』


 オフェリアの顔がみるみる溶岩のように真っ赤になり、火山のごとく爆発した。

 気絶しているので、お姫様抱っこ…… ではなく、グラヴィティで浮かせて近くのデッキチェアへ寝かせておいた。

 たこ焼きが出来るころには目が覚めるだろう。


 さてと。五メートル近くある大蛸の脚は、グアハルド家向け、マカレーナ向け、王宮向けに三分割し、マカレーナと王宮向けは氷結魔法で急速冷凍し、帰るまでに調理室で保管してもらう。

 残ったグアハルド家用の脚だけでもかなりの量になってしまうので、たこ焼きで使う分だけここに残して他は調理係に任せることにした。

 とてもグアハルド家だけで消費しきれないと思うので、たぶん半分以上は市場へ卸すことになるだろう。

 マカレーナ用は、食いしん坊がいっぱいいるので全部自分達で食べてしまいそう……


 水着メイドさんたちが、調理場から要らないフライパン二枚と、大型の鉄板グリルを持って来てくれた。

 これをパティの土属性魔法で加工し、たこ焼き用の穴を作ってもらう。

 元々イスパル国でこういった調理器具は鋳造や鍛冶をする専門業者がいて、魔法で加工することはあまり聞いたことが無い。

 魔法使い人口が一割しかいないことと、産業を潰してしまいかねないので魔法使いによる量産と販売は厳しく制限されているのだ。


「パティ、たこ焼きというのは球形の食べ物でね。半球状の穴に水や玉子で()いた小麦粉を流して、それが焼けたら裏返したらまた焼くんだ。そのイメージで、このフライパンと鉄板に底が半球の穴をたくさん作って欲しいんだ」

「大きさは具体的にどのくらいなんですの?」

「直径が4.5cm、半球の感覚は5mmくらい空けて出来るだけたくさん半球の穴を作るんだ」

「なかなか細かいですのね。でもやってみますわ」

「じゃあ最初はこのフライパンで頼むよ」

「温度が上がりますから、火傷をしないようにお気を付けなさいまし」


 パティに一枚目のやや大きめなフライパンを渡す。

 何も測ることをせず、フライパンを手に持って念じ始めた。


「むぅぅぅぅぅぅ……」


 おっ? フライパンの底がぐにっと形が変わってきた。

 それと同時にフライパンから熱が発せられる。

 それでも金属が赤くなるほどの状態変化は無く、半球の穴がいくつも形成されていく。

 原子レベルでの加工なんだけれど、高度な魔法なので私には理屈がどうなっているのかよくわからない。


「ふぅ、出来ましたわ」

「おおおっ これだあ! たこ焼きプレートそのものじゃないか! さすがパティだあ! うほほーっ!」

「これで良かったんですか? マヤ様に喜んでもらえて良かったです。うふふ」


 まだ熱いフライパンをパティから受け取り、わくわくして眺めた。

 フライパンの基本形も大きく変わり、六角形になってたこ焼きの穴が14個もある。

 非常に効率が良い形だ。

 パティは普段、露骨に秀才っぷりを見せないからイヤミが無くて、そういうところが好きなんだよなあ。


「次は…… あの鉄板をお願い出来るかな? 同じように4.5cmの穴で」

「わかりました。ここでは危ないですから、炉の上でやりましょう」

「じゃあその上へ持って行けば良いんだね」


 私は鉄板をバーベキュー用の炉の上に置いた。

 これなら高熱になっても問題無いだろう。


「ニャニャ? 何をやるんだニャ?」

「さっき言ったたこ焼きを作る調理器具を作っているところなんだよ。ちょっと危ないから近づいたら駄目だよ」


 砂浜で遊んでいたビビアナがもうやって来た。

 ビビアナどころか、マルヤッタさん、ジュリアさん、セシリアさんら料理組に、水着メイドさんたちも、ギャラリーがいっぱい。


「それでは鉄板に魔法を掛けますので、とても熱いですから皆様気を付けて下さいね」


 パティの魔力が上がり、精神集中する。

 鉄板の温度が徐々に上がってきた。

 水着だから直接肌に熱が当たるので、こりゃ熱いわ。


「むむむーっ」


 今回は鉄板がちょっと赤くなってきた。

 500から600℃あたりだろう。

 パティは距離を取りながら魔法をかけ続ける。

 彼女は火属性魔法が一番得意なので、高熱に対しては心得があるはずだから、この土属性魔法も同じ事だ。


「ギャー 熱いニャー!」

「だから言ったのに」


 前で見ていたビビアナが私の後に隠れるが、ベッタリと引っ付いているのでおっぱいのふんわりが背中に伝わる。

 パティは集中して気づいていないので、このまま感触を楽しもう。

 うおっ!? 鉄板には、一気に穴が現れた。


「「「「わぁぁぁぁぁっ」」」」


 周りのメイドたちから歓声があがる。

 高度な魔法の実演が見られるのは珍しいのだろう。

 これでたこ焼きプレートがほぼ出来上がり、日本の業務用並で16×6の一気に96個ものたこ焼きが作れるようになっていた。

 これならアムたちが食べてもすぐには無くならないだろう。


「こんなもので如何でしょう?」

「すごいよパティ! どうしてこんなに私が思っていた通りに出来るの?」

「うふふ…… それは愛なんでしょう。ポッ」


 パティは両手で頬を押さえて照れ照れしている。

 機嫌が良い流れで、残ったフライパンの加工もしてもらおう。


「じゃあ最後。このフライパンは4cmの穴にしてくれるかな?」

「はい! わかりました!」


 パティは一枚目のフライパンと同じように、今度は小さめの穴の物を作ってもらう。

 あっという間に、4×4の16個用のたこ焼きプレートが出来上がった。


「ありがとうパティ! お疲れ様!」

「どういたしまして。うふふっ」

「よしっ 次は私の番だぞぉ!」


 たこ焼きの材料と一般の調理器具もメイドさんたちが用意してくれていた。

 たこ焼き屋や鯛焼き屋で使う()()()()()なんて便利な調理器具はここには存在しないので、涙みたいな形のおたま、()()()()()()で代用する。

 チャッキリの形を思い出して、いつか土属性魔法で作ってみたい。

 いや待てよ、グラヴィティを応用して材料を入れたボールから直接流し込めるのかな。

 これも実験してみよう。


 そのままバーベキュー小屋の中で、調理をビビアナ、ジュリアさん、マルヤッタさん、セシリアさんに手伝ってもらう。

 ジュリアさんには、鰹節の出汁を作って玉子と水、少量の牛乳で薄力粉を溶いて生地を作ってもらう。

 ビビアナとマルヤッタさんには大量のキャベツを細かく切ってもらう。

 セシリアさんには、調理場にあった甘酢漬けの生姜と青ネギを切ってもらう。


 私はすでに三分割しておいた大蛸の脚を、さらに細かく刻んでたこ焼きに使えるようにする。

 分割した脚でも有り余るので、取りあえず両手で持てる量だけを準備した。

 これを光属性魔法のライトニングカッターを応用し、茹でるために一旦大きめに切る。

 調理場で用意してもらった炭酸水と水を1:1で茹でると、柔らかくなる。

 日本酒も少々入れるのだがここには存在しないので、白ワインで代用。

 茹でた後に再びライトニングカッターで細切れにする。

 こんなのを包丁で切っていたら日が暮れてしまう。


「よーし! これで仕込みが出来た! これから焼くぞう!」


 まず一枚目の14個用フライパンで試作をしてみる。

 一旦解散した水着メイドさんのギャラリーが集まってきて、周りはざわついている。

 フライパンを炉にかけて、サラダ油を()()()の筆で満遍なく塗布する。

 この油ひきがあるのは有り難く、フライパンに薄塗りする時に使うそうだ。

 そして横口レードルで、キャベツや甘生姜を混ぜた生地を投入!

 次はタコの欠片を一個ずつ入れる。

 これで半焼きになるまで待つ。


「うううんっ いい匂いがしてきましたね!」

「まだ焼いてる途中でもニャんだか美味そうだニャー」

「こ、これがさっき(わたス)に巻き付いていた脚でスか……」

『こんなふうに作る食べ物を初めて見ました。人間の料理はますます興味深いです』

「マヤ様の故郷の食べ物、不思議な作り方なんですねー」


 皆がそれぞれ見た感想を述べる。

 だが見せ所はこれからだ!

 たこ焼きがそろそろ半焼きになった頃――


「ふっふっふ。みんな、私の技の見せ所はこれからなんだよ」


 私はバーベキューの鉄串二本を使って、たこ焼きを次々とひっくり返す。

 3分の2回転ほどさせ、中身がとろっと下に落ちる。

 みんなが注目する中、丸い形が出来上がったところで歓声があがった。


「「「「「わぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」」


 まだ終わらない。

 少しずつたこ焼きを回し、丸く形を整える。

 これで見た目がたこ焼きっぽくなってきたぞ。


「素敵ですわ! マヤ様がこんな面白そうな料理をお作りになるなんて!」

「そうだニャー! マヤさんが初めて料理するの見たけれど、こんなに動きが鮮やかなんてびっくりだニャ!」

(わたス)もびっくりでス! これならあの大蛸でも食べられそう!」

『へぇー! 小さなボールみたいなお菓子のようです!!』

「これは私にも作れますでしょうか。難しそうですね……」


 水着メイドさんたちも興味津々で覗き込み、周りは女の子が密集し甘い香りがムンムン。

 たこ焼きなんかどうでも良くなってきそうだ。うへへへ


「もう良い頃合いかな」


 私は用意した一枚の皿にたこ焼きを一つずつ取って並べる。

 マヨネーズに良く似てパンチがあるニンニクベースのアイオリソースをぶっかけ、鰹節をパラッと、刻みネキもパラッと。


「で()たああああ!!」


 バイトで技術を培ってから何十年ぶりに作ってみたが、思っていたより上出来だ。

 味はどうだろうかなあ。アイオリソースならハズレではないと思うが。

 キツかったらマヨネーズだけでも良いが、それだと日本のたこ焼きソースが欲しい。

 取りあえず、みんなに試食してもらう。

 爪楊枝が無いのでフォークを使い、一人一個ずつ。


「すごく熱いから、ちゃんとフーフーして食べて下さいねえ! 一気に口へ放り込むと火傷するから!」


 私が言ったとおり、みんながフーフーしている姿が可愛らしい。

 そして少しずつ口に入れた。

 まだ残ってるから私も食べてみる。


「ホクッ ホクッ あつつっ でもマヤひゃま、美味(おい)ひいですよお!」

「はふはふっ モグモクモグ…… くううう…… まだ(あちゅ)いニャー!」


 ビビアナはまだ冷めないうちに口へ放り込んだから、涙しながら食べてる。

 耳族はやっぱり猫舌なのか?


「はひはふはふふっ アイオリ()()ースが合いまふねっ 美味スいでスよ! あの蛸の足がこんなに甘いなんて!」

『ほふっほふっ モグモグ…… ごくん。トロリとした舌触り、蛸の甘み、隠し味の甘生姜、そしてニンニクソース。何ですかこの最高の食べ物は!』

「ホクホクッ…… ごっくん。マヤ様がこんなに美味しいお料理をお作りになれるなんて、私ますます掘れて……、いえ、惚れてしまいます。ポッ」


 セシリアさんがよくわからないことを言っていたが、皆には好評のようで良かった。

 私も食べてみて、ジュリアさんが言うようにアイオリソースが思っていた以上に合っていて良かった。

 これならマヨネーズがいらないかな。

 大蛸うまあ! こりゃ女王が言うように高級食材で間違いない!

 水着メイドさんたちもはふはふニコニコ食べているから、みんなに美味しく出来たようた。

 よっしゃあ!

 次は本番! 鉄板でたこ焼きを焼いて、()()()()をするぞお!!


 たこ焼き作りについては多少の語弊があるかも知れません。

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