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第三百五十三話 タコの料理と言えば?

 グランド・オクトパスは、ヴェロニカたちから剥ぎ取った三枚の水着ショーツを、足先で振り回しながら喜んでいる(ように見える)。

 おいたが過ぎるので、ここは私の水属性魔法でこの大蛸を水玉で取り込んでやろうという作戦を始めている。

 アイミが蛸は真水に弱いと言うから、そのアドバイスにのってみた。

 その間にも大蛸はウネウネと飛びかかろうとしているので、マイが時々(オーラ)パンチを当てて牽制してくれている。

 マイとの連携戦闘は、アスモディアでのインキュバス戦以来だろうか。

 彼女は上手いことやってくれているので有り難い。


「くぉぉぉぉぉぉ!!」


 水玉は空気中の水蒸気を集めて形成する。

 アニメみたいに水分が湧いて出てくるわけではないから、だから乾燥地帯では使い物にならない魔法だ。

 幸いなことにここは海なので水蒸気を集め放題なので、広範囲から水蒸気を集めて巨大な水玉を作っている。

 ただ集める指向性に融通が利かないので陸上の、後ろにいるパティたちや街にも影響し乾燥してしまう。

 極力影響が少なくするために精神力を使うので、結構疲れるんだよな……

 エリカさんが居てくれたら楽だったのに、どこへ行ったのやら。

 でも彼女に頼ってばかりではいけない。


 ――グロロロロロ グニュニュルルン


『うりゃうりゃうりゃ!!』


 マイは(オーラ)パンチで大蛸を軽く叩き、こっちへ向かってこないようにしている。

 気功波の一種なので、触れずとも攻撃出来るのだ。

 大蛸の周りには小さな水玉が無数に出来上がり、水分が集まるにつれて水玉同士がくっついて水玉が大きくなる。

 理屈で言えば、冷たい飲み物が入ったグラスや、外が寒く部屋が暖かい冬の窓ガラスについている水滴と同じだ。


 ――グボォォッ ゴボゴボッ


 大蛸が弱り始めてきた。

 確か真水と海水の浸透圧差で細胞が壊れてしまうからと聞いている。

 あまりやり過ぎないように、早めにショーツを取り返して終わらそう。


「とうっ!」


 私は飛び上がり、ショーツを持っている足先へ向かう。


「ゴボゴボッ ゴボッ」


 くぅ…… 当たり前だけれど、水玉だらけの中ではほとんど息が出来ない。

 さっさと済ませてしまおう。

 最初はオフェリアのちょっとデカいぱんつぅぅぅ!!

 足先の吸盤に引っ付いているのを、伸びないように丁寧に剥がす。

 よしっ! 奪い返した!

 これは私のショーツの横に挟んでおく。

 次は…… ジュリアさんのローライズぱんつぅぅぅ!!

 これも奪い返せた!

 最後はヴェロニカのスポーツぱんつだぁぁぁぁ!!


「ゴボッ (ぐる)じい……」


 今更だが、独りで高速飛行するときに使う、空気バリヤ魔法を縮小して使えば良かったな。

 八本の中で一番上に挙げてる脚先の吸盤に付いてるヴェロニカのぱんつを……

 よし、取り返した!

 私は急いで水玉群の外へ飛び出し、砂浜へ降りた。

 早速ヴェロニカとジュリアさんの元へ駆けて行く。


「おーいヴェロニカぁぁぁ!! ジュリアさぁぁぁん!! ぱんつ取り返したぞぉぉぉ!!」

「バッ バカァァァ!! そんなもの振り回すんじゃない!!」

「さすがに(わたス)も恥ずかスいでスうぅぅ!!」


 おっと、嬉しくて無意識にショーツを振り回してしまった。

 やってることが大蛸と変わらないな。

 まず、ヴェロニカとジュリアさんに水着ショーツを手渡した。

 すぐ彼女らはショーツをごそごそと履こうとするが、ヴェロニカが怖い顔半分恥ずかしそうな表情で私を睨む。


「こ、こっちを見るな……」

「ええ? 今更……」

「おまえは女に対するデリカシーがまだわかっていないようだな」

「ああ、ごめん……」


 ヴェロニカの言うとおりだ。

 男でも、ぱんつを履くときにジーッと女の子に見られたら恥ずかしいもんな。

 私はあっちを向いたついでに、大蛸の後始末をするためそちらへ向かった。


(マヤさん…… (わたス)はマヤさんだったらいくらでも見られて良かったんでスよ。ズっくり大事なところを見えやスいように観賞されて…… ああ、興奮スてスまいまスぅ。ふひひ)


 そして、暢気(のんき)に傍観しているアムとアイミの元へ。

 大蛸は水玉に囲まれてぐったりしたままなので、早く海へ戻してやりたい。


「ねえアムとアイミ、あいつを元いた沖へ帰してあげてよ」

『えー、やだ。せっかく遊ぼうと思って連れてきたのに』


 アムが応える。

 この状況でまだ遊ぶって言うんかい!

 そこで私が思いついたのがこれだ。


「こんなのいても邪魔なんだよ。ああそうだ。あそこに転がっている大蛸の脚で美味いもん作ってやる」

『あれで? 気持ち悪くないか?』


 私は、マイが斬った後のまだウネウネしている大蛸の脚を指さした。

 何とかしてたこ焼きを作れないか、今頭の中でグルグルと回転しているところだ。

 果たしてこの国の具材で作れるのか?

 土属性魔法って、金属も変形させられたはず。

 フライパンを変形させてたこ焼きプレートへ改造出来たら!

 後でパティかエリカさんに聞いてみよう。


「たこ焼きと言ってね。小さな玉にタコとかいろいろ具を入れて焼くんだよ。おやつみたいで、ホクホク熱くて美味いんだぞお?」

『おやつ……』

『ホクホク……』


 私の言葉を聞いて、アムとアイミはタラッとヨダレを垂らした。

 ハッハッハッ チョロすぎて笑ってしまいそうだ。


「そういうことだ。大蛸を沖へ連れて帰ってよ。あ、ここから投げ飛ばすってのは無しね」

『わかった……』

『必ずだぞ?』


 話はあっさりとまとまり、私は大蛸の周りの水玉魔法を解く。

 そのまま解除すると砂浜までザッパーンと水浸しになるのは目に見えているので、指向性にして海側へ水玉を放出する。


 ――シュシュシュシュシュシュッ ザパパパパパパパパーンッ


 大蛸の周りは何も無くなり、すっきりした。

 すぐには元気にならないようなので、後はアムとアイミに任せる。


『じゃあ行ってくるからね! そのたこ焼きっての、絶対だよ!?』

『うほほーっ 楽しみだのう!』

「よろしく頼むぞーっ!」


 アムとアイミは蛸の頭の上に乗っかり、そのまま大蛸に浮遊術を掛けて沖へ向かって行った。

 さてと、これで大蛸についてはオフェリアの紐パン水着を返したらお終いだ。

 私はそこに転がっている、大蛸の脚を持って帰ることにする。

 まだウネウネ動いてるし、そのまま抱えると吸盤に吸い付かれるのでグラヴィティで浮かせて移動する。

 ヴェロニカとジュリアさんも一緒に、パティたちがいる休憩所まで戻る。


「おまえ…… そんなもの持って帰って何をする気だ?」

「私の故郷でたこ焼きって料理があってね。それの材料にするんだよ」

「うぐっ それをか? あんな屈辱的な思いをさせられたクソダコなど食いたくないわ!」

「美味いのに…… まあ、代わりに小さいエビを入れても良いよな」

「そうしてくれ」

(わたス)も食べたくないでス……」


 結局()()()()()()()()も作ることになりそうだ。

 小さな牡蠣を入れてもいいな。

 材料が無かったら、さっと市場へ行って買ってこよう。


---


「いやー、あの二人のせいでとんだ騒ぎになりましたが、大蛸を元の場所へ戻すことで一件落着しましたよ」


 休憩所で、女王らに報告をする。

 それを聞いて皆はホッと胸をなで下ろした。

 おっぱいだらけ、だけに――


「で、マヤ様。どうしてそれを持って来たんですか?」

「ああ、うん。食べようかと思って」

「ええ…… これをですかあ?」

「でもね、パトリシアさん。グランド・オクトパスは高級食材で、私も王宮のパーティーで一度しか食べたことがないの。味がしっかりしていて、甘みがあって美味しいわよ?」

「そ、そうなんですか?」


 パティが大きなうねうねタコ足を見て不気味がっていたが、女王の説明でピクッと反応する。

 食欲には勝てないのかねえ。うぷぷっ

 この大蛸の脚ってそんなに美味いのか……

 それならば余計に作りたくなってきたあ!


「それで私の故郷の料理のたこ焼きというのを作ろうと思うんだけれど、丸い凹みがたくさんある特殊なフライパンか鉄板が必要なんだ。パティは土属性魔法で鉄を変形出来るんだったよね?」

「はい、薄い鉄板くらいならば可能ですわよ」

「よし。じゃあメイドさんに余ったフライパンか鉄板があるか聞いてみよう」


 休憩所に居た美人メイドさんに頼み、調理室で要らない器具が有るか聞いてきてもらうのと、たこ焼きの材料になる薄力粉、紅生姜が無いので甘酢に漬けた普通の生姜、この国にも少量ながらある鰹節、玉子、牛乳、刻み青ネギ、キャベツ、ヴェロニカが希望する小エビ、マヨネーズもこの国にはあるので貰ってくるようにお願いした。

 そして肝心のソースは、さすがに日本のお◯ふくソースのようなものは無いので、ガーリックベースのアイオリソースを代用として使う。

 それからトマトとアーモンドベースのロメスコソースもポピュラーなので持って来てもらうことにした。

 この二つのソースなら、イスパルの人たちの舌に合うだろう。


 そういうわけで、そこにあるバーベキュー小屋で突発のたこ焼きパーティーを始めることになった。うひょー!

 おじさん、これでもたこ焼き屋のバイトをしたことがあるんだぜー

 久しぶりに腕が鳴るぞお!

 その前に他のメイドさんたちにバーベキュー小屋の準備をしてもらう。

 他のみんなはまた海で遊んだり休憩を始めている。

 あと、オフェリアに水着ショーツを返さなくちゃね。

 独りでデッキチェアに座っていたので、そこへ行く。


「おーいオフェリア! 水着を返しておくね!」


 私は自信のショーツの横に挟んであったオフェリアのショーツを手渡した。

 彼女は顔を赤くしている。


『ありがとうございます……』

「どういたしまして」

『あの、見てましたよね?』

「何を?」

『何をって…… 私の…… 私の……』

「ん?」

『私の…… 股の間です……』

「あ……」

『――やっぱり見てたんじゃないですかああ!!』

「ごめんごめん! 仕方がなかったんだ!」


 うっ オフェリアが大蛸に捕まってるとき、やはり気づかれていたか。

 オフェリアは半泣きで私に叫ぶ。

 でもあれは偶然見えただけだ。

 と言っても、見てしまった事実には変わりない。


『ジッと見てましたよね?』

「それで、私にどうかして欲しいの?」

『――いつか…… その……』

「うん」

『マヤさんが男に戻ったら、いつか…… 責任取ってちゃんと最後まで……』

「最後?」

『もうエッチなマヤさんだからわかるでしょうに! 交尾です交尾!』

「ちょちょちょちょちょ、声が大きい!」

『はわわわわっ』


 エッチなマヤさんはさておき、交尾って、動物じゃあるまいし……

 しかしオフェリアってそんなに貞操概念が強かったのか?

 スヴェトラさんは堂々としすぎだから、オーガ族もそれぞれなんだよなあ。


「まあ、その話はまた後日で…… でも、私でいいの?」

『だって…… 五十年生きてて、男の人はマヤさんとしか仲良くなれなかったし……』

「一つ聞きたいんだけれど、オーガ族って思春期は何歳ぐらいなの?」

『だいたい二十五歳から三十歳……』

「そ、そうか……」


 人間より十年以上遅い……

 とは言え、五十歳で異性と何も無いのは相当こじれてるよな。

 オフェリアと出会ったときも、少女の反応そのものだった。(第二百五十話参照)

 魔族は寿命が長いので、それぞれの種族の年齢で一定のところで見た目の成長がほとんど停まってしまう。


「アスモディアの屋敷で聞いた、君の初恋の気持ちは覚えているよ。わかった、君の気持ちを受け入れる」

『マヤさん…… ありがとうございます……』


 オフェリアは立ち上がり、私を強く抱きしめる。

 身長差で、まるで母子のようなんだが……

 おっぱい柔らかーい! ぱ◯ぱ◯ぅ

 ――ぐはっ ちょっと強すぎない?


「おほっ ガッ ぐふっ」 ゴキャポキッ


『ぎゃぁぁぁぁ! マヤさんごめんなさーーい!!』


 なんか骨が鳴ってた……

 オフェリアは叫んだ勢いで、抱っこしていた私を放す。

 ふぅ…… 助かった。大蛸を倒すより命の危険があったかも。

 私はオフェリアの足元にへたり込んだ。

 すると、オフェリアの腰に巻いていたタオルがハラリと下に落ちる。


「おおぅ…… 芝刈り……」

『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』


 ――ドカァァァァァァ!! ヒュルルルルルルルッ


 私はオフェリアに思いっきり蹴られ、ヴェロニカたちが遊んでいる波打ち際まで飛ばされてしまった。

 またオフェリアの連続土下座が始まるかな。ハハハハ……


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