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第三百五十一話 海から現れたトンデモないもの

 私たちは市場で食べ歩きして楽しんだ後、アリアドナサルダのラガ支店へ挨拶しに行く。

 その前に服が魚臭いので、パティに消臭の魔法を皆に掛けてもらった。

 アムとアイミも連れていくのは躊躇したが、あまり野放しにはしたくないので仕方が無い。


 店長はベニータ・サルダーニャさんといい、細身で四十歳くらいの品が良さそうな美人おばさんといった雰囲気で、おっぱいも大きくて私からすればなかなか好みである。

 胸に視線が行ったのをパティが気づき、私の二の腕を(つね)った。痛い……

 おばさんでも駄目なのかよ。

 店長は私が男とばかり思っていたので、アスモディアについて事情を話したが困惑されながらもパティのフォローで何とか信じてもらえた。

 結局サインをねだられたので、渡された紙にアルファベットで私の名前を書いただけだったがそれでも喜ばれた。

 今後もそんなことがあるかもしれないから、もっと格好いいサインを考えておこう。

 その間、アムとアイミ、ルナちゃんとモニカちゃんで店内の商品を物色していた。


『おおおお…… 人間が履くぱんつはすごいね。こんなに透けていては履かないのと同じだろうに。こっちは切れ目があって、いつでもカモーンじゃないか』

『ふーん、これはマヤがデザインしたぱんつだぞ。アムよ、履いてみるか? いっひっひ』

『やだよ。普通のでいい…… そもそも私らは術で形成するからいらないだろ』

『パクって形成すればいいんだよ』


 酷い会話が向こうから聞こえる。

 意外にこっちのほうはアムが常識なんだな。


「モニカちゃん…… こ、これ…… 本当にマヤ様が考えたんですか? 普通のショーツの縁だけ残った紐だし、クロッチも無いじゃない!? こんなの履いてる意味ないよお!」

「ふっふっふ…… それは普段履く下着じゃないの。大好きな殿方に自分を見てもらうための、所謂勝負下着なんだよ。ルナがマヤ様へ突撃するときに履いてみたら? クックック……」

「こここここんなの無理だったばあ! マヤ様のエッチ!」

「マヤ様がエッチなのは最初からじゃない。ルナだって心当たりあるんじゃない? いっしっしっし」

「ばふっうぅぅぅ!!」


 ルナちゃんの頭が火山のように爆発してる。

 そりゃ最初に出会った時、王宮のお風呂でルナちゃんに洗ってもらってたからなあ。当時彼女が純真すぎて、あの時やっていたことが今頃になってわかったのかも知れない。

 確かにあの紐パンは私がデザインしたものだが、ルナちゃんが履いているのは想像したことが無かったな……

 どれどれ―― モコモコ――

 ルナちゃんのムチムチボディに……

 ああっ ルナちゃんの裸をちゃんと見たこと無いから脳内の映像が中途半端だああ!


 お昼は外で取ることにしていたので、御者をやっていたメイドさんも誘って一緒に昼食。

 昨日はビーチで見かけた二十代半ばの眼鏡メイドさんで、今はメイド服だが水着姿と重ね合わせて妄想してしまう。でへへー

 グアハルド家のメイドさんは容姿のレベルが高いよなあ。


 ロベルタ・ロサリタブランドの売り上げが良く懐が温かいので、眼鏡メイドさんの案内でアリアドナサルダからほど近い、ちょっと良い料理店へ。

 高級料理店というほどでもないが、ナイフとフォークを使う。

 メイドさんが言うお勧め料理が美味しいと聞いて、カラビネーロのガーリック焼きというラガの名物料理とのことでそれとパンのセットを頼んだ。

 カラビネーロ(Carabinero)とはエビの種類で、地球でも欧州でよく食べられている真紅の大きなエビだ。

 確かボタンエビと同じくらいか、もう一回り大きいぐらいかと思う。

 だが――


「おまちどおさまです。たんと味わってくださいね。うふふ」

「おおっ ありがとうございます」


 店員のおばちゃんによってテーブルに料理が次々と運ばれる。

 胴体背中の殻を剥かれた、真っ赤で巨大なエビの姿に皆が驚愕する。


『うっひょー こりゃ食べ甲斐があるねえ!』

『ふむ、想像より随分大きいな。マヤよ、よくぞこの店に連れて来てくれた』


 神の目にも叶うか。

 アイミの態度がちょっとデカいが、普通に感動しろよ。

 というのもカラビネーロの頭から尻尾まで優に八十センチくらいあって、皿からハミ出ている。

 女の子たちは全部食べきれるだろうか。

 パティは目をキラキラさせているから大丈夫だろう。


「ふわぁぁぁっ エビとガーリックの香りが食欲をそそりますわあっ」

「とても美味しそうですけれど、私にはちょっと多いかも……」

「ハァァァンッ ()っきい! こんなの初めて見たぁ!」


 モニカちゃん、聞きようによっては妖しいセリフだよ。


「皆様、パンをこうやってソースに着けたり、エビ味噌にも着けて食べると美味しいんですよ」


 眼鏡メイドさんがそう説明してくれた。

 旅にはやっぱり現地の人がいると有り難い。

 確かにエビ味噌を着けたパン、これは至高の味じゃないかい?


 ――結局ルナちゃんとモニカちゃんは食べきれず、アムとアイミが始末してくれた。

 フードロス撲滅には良い人材、いや神材だ。


---


 グアハルド家へ帰り、腹ごなしのために一旦部屋で休憩。

 その後で、ビーチで遊ぶことになっている。


「ただいまあ!」

「おかえりなさい。うふふっ 皆さん楽しまれたようですね」


 部屋の開いた窓から海風がそよぎ、セシリアさんが読書をしていた。

 エリカさんはどこかへ外出中らしい。

 眠くはないがベッドの上でゴロ寝をする。

 ぐーたらするのって贅沢だなあ。


 ガルシア侯爵夫妻と子供たちは私たちの後でラガの市内観光とショッピングに馬車で出掛けたようで、お付きにはフローラちゃんと御者のメイド一人。

 子供たちの面倒を見るには一人くらいついていないと、アマリアさんとローサさんがショッピングに夢中になってる時にガルシア侯爵が身動き出来なくなるもんね。

 夕方までには帰ってくるようで、今日はビーチに行かないそうだ。

 明日、またアマリアさんとローサさんのスーパーボディを拝むとしよう。

 いや、今日もお風呂でもっとすごいものが見られるかな? ぐふふふふ


---


 マルティナ女王やビビアナたちのグループも帰ってきて、おやつの時間に合わせてビーチへ突撃する。

 私やパティ、女王、セシリアさんも出てきてトロピカルジュースを飲みながらパラソルの下のデッキチェアでのんびり。

 ヴェロニカら体育会系メンバーはビーチボールや水泳を楽しんでいる。

 私も誘われたけれどかったるいし元々体育会系じゃないから断った。

 右隣のデッキチェアにはパティが寝転んでジュースを飲んでいる。

 花柄ビキニから、溢れんばかりの山が二つ。

 ビキニなんてほぼ下着みたいなものだから、普段見られないパティの下着姿を妄想してしまう。


「イヤですわマヤ様。そんなにジロジロ見ないで下さいまし。うふふっ」

「あはっ いやあ……」


 いつものように頭を掻いて誤魔化す。

 だが嫌がるどころか、むしろ見られるのを喜んでいる。

 左隣のデッキチェアにはルナちゃん。

 彼女もまた黒ビキニから美味しそうな山がボイーンと。

 褐色の素肌に、パティより若干(ふく)よかなボディがとても美味しそう。

 はぁ…… いつかあの太股とおっぱいに挟まれたい。


「マヤ様のエッチ……」

「ああ……」


 こっそりチラ見したつもりだが、すぐにバレた。

 女の子は男の視線に敏感過ぎるんだよ。

 でもルナちゃんの恥じらいがまた可愛いくてゾクゾクする。


「マヤ様はエッチな視線があちこち行き過ぎですぅ!」

「やーい! マヤ様のエッチぃ! あっひゃっひゃっひゃ!」


 パティに怒られ、ルナちゃんの向こうで寝転んでいるモニカちゃんに冷やかされる。

 そこへ、私の前に、正確にはデッキチェアに寝転んでいる私の足下にヌッと立っているのがマルティナ女王。


「今日は水着を替えてきたのに、あなたは何も言ってくれないのね」


 九十年代に日本のグラビアモデルで流行っていたスーパーハイレグで、サテンシルバーのビキニ。

 鼠径部周りがエッチすぎる……

 て―― これも私のロベルタ・ロサリタブランドの水着。

 これも手に入れていたのか……

 歳を考えろよ。

 ボディはさすがにパティたちピチピチギャルと比べたらややくたびれが見えるが、四十代になると足回りのスジが目立ってくるはずが、女王にはそういうところが無い。

 しかし四十(しじゅう)も過ぎて私に何を求めているのか。


「と、とても似合ってますよ。腰回りがセクシーでお綺麗です……」

「ふーん、それだけ? まあ良いけれど。若い女の子に囲まれていいわね」

「はぁ……」


 構って欲しいんだろうなあ。

 しばらく相手をしてあげてないから、こじれてきたんだろうか。


『――おおおおおおい!!』


 アムの声だ。

 ずっと向こう、海の方から聞こえる。


『――ひゃっほう!!』

『――はっはっはっはっ! こいつは面白いな!』


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」


 アムとアイミが(はしゃ)いでいる様子を見て、皆がびっくりして立ち上がる。

 砂浜で遊んでいたヴェロニカたちもそれを見て呆然と立ち尽くしていた。

 驚くのも当然――

 高さが二十メートルもあろうか、巨大なタコがアムとアイミを捕まえて砂浜まで近づいている!

 アムとアイミの身体にはタコの脚が巻き付いている。


「何やってんだああああああ!!!???」


『沖で大蛸(おおだこ)を見つけて遊んでいるところだーーーー!!』


「アホかああああああ!! そりゃ捕まってるって言うんだああああ!!」


 私の問いに、アイミが応えた。

 あいつら、沖まで泳いであんなものを見つけてきたのか?

 あの二人…… もしや魔物なのか?

 いや、あの大蛸(おおだこ)からは魔力を一切感じない。


「何だってんだありゃああ!? 魔物じゃないのかあ!?」

「マヤ様! あれは魔物ではありません!」

「えええっ!?」

「あれはこの国の近海にいるグランド・オクトパスです! あの大きさでも魔物じゃないんですよ!」

「ひえぇぇぇぇ!!??」


 パティがそう答えてくれた。

 ここってそんなものがいる世界だったの?

 

 本当に漫画みたいな展開になってきた。

 まさか昨日思ったことがフラグになってしまうとはな……(第三百四十一話参照)


「私も見るのは初めてよ。捕まってる二人が危ないわ!」

「あいつらは大丈夫と思いますが…… 大蛸(おおだこ)がヴェロニカたちへ向かってきてるので退治してきます!」

「気を付けてね!」

「マヤ様あ! ご無事でええ!!」

「大蛸なんてマヤ様ならすぐぶっ飛ばせますよね!」


 ルナちゃんやセシリアさんは(おび)えてるな……

 女王やパティたちが心配する中、私は大蛸に向かって駆けだした。

 ヴェロニカたちが触手プレイに犯されてクッコロになったら大変だ。


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