第三百四十二話 バーベキュー大会とFカップ
夕方にさしかかり、今日はこれからが本番である。
そう、バーベキュー大会だ!
今、向こうのバーベキュー小屋で水着メイドさんたちが準備してくれている。
それを観賞しているだけでも目の保養になる。
メイド服風ビキニ、いいよなあ。うへへ
水遊びしないのに水着というのは、場の雰囲気と私たちお客と合わせているだけなのだろうが、素晴らしいサービスだ。
ルイスさん、ありがとう!
――おっ 肉と野菜が焼ける良いニオイがしてきた!
「みなさーん! そろそろ食事にしましょう!」
既に小屋へ行っているオリビアさんが、こちらへそう叫んだ。
小さなお嬢さんの手を繋いで。
『うっひょー! 待ってました!』
『うーむ、肉の香ばしさがたまらんのう!』
アムとアイミがまるで子供のように、我先にと駆けて行った。
肉ばかり、美味しいところばかり食われては困るぞ。
「パティ、肉があいつらにみんな食べられてしまうから早く行こう!」
「慌てなくてもルイス様がたくさん用意して下さってますよ。うふふっ」
パティの考えは甘い。
ただでさえウチらは体育会系女子が多いのに、あの神様二人の腹は常軌を逸している。
唯一の救いは食べ方が綺麗なことだ。
それはともかく、私たちはバーベキュー小屋へ向かった。
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広いバーベキュー小屋。
レンガ造りの立派なバーベキューコンロがいくつもあり、そこで水着メイドさんたちが串に刺しているたくさん食材を一生懸命焼いている。
また、串に食材を刺す作業をしているメイドさんたちもいる。
「おお…… なんだこの肉と野菜の山は」
「だから言いましたでしょ? たくさんありますって。うふふっ さっ 焼き上がった物から頂きましょう!」
「うん!」
台の上には屋敷の調理場で串刺し作業をしきれなかったと思われる牛肉、豚肉、鶏肉、野菜各種がてんこ盛りになって、ずーんとそびえ立っていた。
どう見てもアムやアイミの身体より大きい山だもんな。
いや待てよ。あいつら神の腹って異空間になってるのかも知れん。
やっぱり美味しい高級肉はさっさと食べてしまったほうが正解だろう。
――皆も小屋へ集まって、わいわいガヤガヤと食事を始めている。
王族や貴族の女性が串焼きの肉をガブりついている様を見るのは珍しい。
ヴェロニカは元々兵舎の食堂でワイルドに食べていたし、出征先で野外泊をしているのだから抵抗はないだろう。
「陛下、たまにはこうやって無作法に食事をするのもよろしいですわね」
「ええ。この牛肉、串焼きにするには勿体ないくらい上等で柔らかいのに、こうして食べるのもおつなものね」
アマリアさんが女王に話しかけている。
二人ともいろんな意味で肉食オバさ…… いや、口元を見ていると熟女のエロチシズムを感じるな。
「あら……」
アマリアさんが食べている串焼きのタレが、おっぱいの上に落ちて着いてしまった。
この中の女性で一番のGカップだからどうしてもそうなってしまうだろう。
Bカップのスサナさんとか…… チラッ
着きそうにないよね。
「失礼します」
「――ありがとう」
水着メイドさんの一人がサッとやってきて、おしぼりでアマリアさんのおっぱいについたタレを拭いてあげている。
さすが、グアハルド家メイド隊は訓練されているな。
「おおっ この豚肉の串焼きは美味いな。こりゃ豚トロか!」
「このピンチョ・モルノ※も美味しいですよ。タレがよく染みこんでいて最高に美味しいんですのっ」
※スペイン風焼き鳥
パティは美味しい物を食べている時が一番幸せそうな顔をしているな。
しかしこのペースで食べていると、歳を取って代謝が落ちたときが心配だ。
私も二十代後半で腹がプヨッてきたからな。
「ヴェロニカ様、野菜もたくさん食べて下さいよ」
「わ、わかっている! モグモグ……」
エルミラさんに言われて串に刺さっている赤いパプリカをモソモソと食べているヴェロニカ。
エルミラさんが言うことならば素直なんだよなあ。
だんだん姉と妹みたいな関係になっている気がする。
ガルシア侯爵はビキニパンツ一丁でルイスさんと串焼きを食べながら何か歓談している。
県知事クラスの偉い人たちがそうしている様は滑稽に見えるな。
エリカさんは初めてラガへ来た時に仲良しになったオリビアさんと楽しく話していた。
あっ エリカさんがしゃがんで、オリビアさんの娘さんに串焼きを食べさせてる。
あの人それほど小さな子供が好きではなかったと思うけれど、今は目覚めているのだろうか。
彼女は当分の間は私と恋人気分でいたいと言っていたので、そのうち気が変わって子供が欲しいと思うようになってたりして。
だが彼女は魔族の身体になっているので、エッチなことをしても子供が出来るかはまだ不明である。
――パティがマルセリナ様のところへ行って食べながらおしゃべりしている。
今のうちにアナちゃんとお近づきになってみようかな。ぐふふ
いつもセットのプリシラちゃんがいなくて、ちょうど一人になっていた。
これはチャンス!?
「あの、アナさんとお話しをしてみたいのですが、いいですか?」
「え? はい! よ、よろしくお願いします…… マヤ様のお噂は兼々伺っております」
何の噂だろうな。
若いけれど丁寧そうな人ではあるな。
私は彼女が元孤児だということと、おっぱいが大きいということしか知らない。
「いやあ、広い海を眺めながら美味しい物を食べて、こんなに楽しい思いをさせてもらってどうもありがとうございます」
「と、とんでもございません! ルイス様のお計らいで私は何もしておりませんので……」
「そんなことないですよ。アナさんの水着、とても似合ってます。今日来られなかったら見ることは無かったはずですから」
ああ…… いきなり水着の話へ持って行くのはエロオヤジくさかったかな……
アナちゃんは沸騰したやかんのようにピューッと顔が真っ赤になっていた。
「あああありがとうございますっ 殿方に…… あああいえっ 今マヤ様は女性ですけれど男性にそう言われたのはルイス様だけでしたから、嬉しいです…… で、でも…… 恥ずかしい……」
いい、いいぞ! やっぱり女の子は恥じらいがあってこそ魅力が引き立つ。
そして未開発の神秘さを感じるのだ。
いや、アナちゃんはもうルイスさんに開発されてしまっているだろうが……
彼女を見ると人妻だなんて思えないよな。
「もしルイス様とご結婚されていなかったら、一目惚れしちゃうところでした。それぐらいアナさんは魅力的なんですよ」
「――そうなんですか? 私自身、未だに何故ルイス様が私のことを好きになってくれたのか、未だに実感が湧かないんです」
「きっとアナさんのお人柄が良かったからだと思いますよ」
「確かに人柄も気に入ったと仰ってくれましたが、こんな地味な性格でどうして……」
身体は地味どころかとても派手に成長しているけれどな。
うーむ、日本にいた時によく聞いた自己肯定感というやつかな。
それがアナさんは低いのかも知れない。
幼少時にいた孤児院で、あんまり褒められたことが無かったのだろうか。
もっと自信がついてくれたら良いのだけれど。
「アナさんのような控え目な性格も美徳ですよ。私もこう見えていろんな人と接してきましたけれど、アナさんってとてもお話しがし易いんですよ」
「私…… 大人の方と話すのが苦手で…… 孤児院の子供たちとならたくさんお話しが出来るんです。あれ? マヤ様ともお話しがこんなにたくさん出来てる? どうしてなのかしら……」
もしかしたら私が子供っぽいからだったりして。
まあ、否定はしない。
五十年生きてきても、とっちゃん坊やだったのは自覚してたしなあ。
アナちゃんが言う大人が苦手というのは、やっぱり孤児院で先生と何かあったのかも知れない。
私から野暮なことを聞くのはやめておこう。
「それはきっと、私とアナさんの気が合っているからですよ」
「そ、そうですよね。歳も近いみたいですし…… うふふっ」
「その笑顔、とっても可愛い!」
「はっ はうううっ」
また、ぷしゅーっと顔を赤くしてお湯が沸いたやかんみたいになっている。
これでは、ルイスさんとベッドの上ではどんなことになってるんだろうな。
――さっきから足の裏とサンダルの間に砂が入り込んで気持ち悪い。
アナちゃんのやかんが冷める間に、取ってしまうか……
「ちょっと失礼」
私は上半身を屈ませて、サンダルを脱いで砂を払った。
そしてサンダルを履き直そうとしたら……
――ドスンッ
「キャッ?」
「おおっ!?」
どうやら、アイミが後ろへ下がったときに気づかないでアナちゃんへぶつかったみたいだ。
それでアナちゃんはバランスを崩し、サンダルを履いている途中の私の方へ倒れ込んだ。
アナちゃんの身体を受け止めようとしたとき――
――ぽにゅんっ
アナちゃんのおっぱいを私の顔で受け止めてしまった。
つまり、ぱ◯◯ふっ
私のほっぺたにふわっと感じる感触……
顔が優しく包まれていくぅ……
肌のニオイが心地よい……
『おっ? 悪かったな、娘―― んん? そこにいるのはマヤではないか。さすがに人妻の胸に挟まるのはマズいんじゃないか? うっひっひっひ』
「フガフガッ フガッ」
「はわわわわわわ……」
「ぷはーっ」
ちょっと息の根が止まりそうだったので、アナちゃんの上半身を離す。
アナちゃんはまた顔が真っ赤になってしまった。
女同士なんだから気にしなくてもいいのに、彼女はそんなに私を男と意識していたのか?
「す、すみませんっ」
「アナさんが謝ることはないですよ。アイミ、何してたんだよっ」
『いやなに、アムがアクロバット食いをしておったものでな』
「はあ?」
アイミがそう言うので、アムの方を見たら……
串焼きをお手玉みたいに三本、空中へ投げてそれをカプカプカプッと口で受けて食べていた。
何やってんだよ……
ビビアナとスサナさんも手を叩いて喜んでいる。
「アム、行儀が悪すぎるからやめろ」
『あぐっ? モグモグモグッ……』
「見てるビビアナとスサナさんもダメだろっ 煽ってアムを調子に乗らせちゃ」
「うへー ごめーんっ」
「ああっ ごめんニャー」
当面の問題児はこの四人だな。
今晩泊まってあと二泊もあるのだから、羽目を外させないようにしないと。
幸いアマリアさんやヴェロニカたちもこっちを見ていない。
「あの、ごめんね。ウチの者がふざけてて……」
「いえ、お客様がこんなに楽しくしておられる食事会は初めてですよ。うふふ」
ああ…… 可愛い。そして純粋。マジで惚れちゃいそう。
アイミの言葉ではないが、人妻に手を出すのはマズいよな。
でも、アナちゃんは恐らくFカップクラス。
禁断の人妻の巨乳に挟まれるなんて、幸せだよ……
「マヤ様、どうなさいました? お酒は飲んでおられないから酔ってないですよね……」
「ああっ? いやあ、ちょっと別のことを考えていたもので。アハハハ」
いかんいかん。また妄想でスケベ顔になっていたのかも知れない。
うううっ アナちゃんのFカップがいけないんだ!
――それからもアナちゃんと話が弾み、彼女の方から身の上話をしてくれた。
やはり孤児院の先生から鈍くさい、ノロマみたいな言葉で抑圧された扱いをされて、大人と話すのが苦手になったそうだ。
アナちゃんはマイペースな子だろうから、そういう言われ方をされていたのか。
私も子供の時に似たような経験があるからわかるよ。
我慢して、つらいよね。
今は別の孤児院で働いていて、他の先生や子供たちとも仲良くやっているそうだ。
――そうしているうちに。
「ええっ!? 山がこんなに小さくなってる!」
あれだけあった肉と野菜の山が、いつの間にか二割程になっていた。
アムの大食いも然る事ながら、やはりヴェロニカやオフェリアたち体育会の食いっぷりもすごかった。
食べ終わった串を入れる口が広い壺には、鉄串が数え切れないほど入っていた。
まだ食う勢いが止まらない。
水着メイドさんたちは今もどんどん新しい串焼きを作っている。
ご苦労様です……
――食材が切れ、間もなくお開きになる感じだ。
水着メイドさんの何人かは向こうでぐったり座り込んでいる。
すまん、一日目でこんなことになるとは思わなかった。
「皆さん、初日は楽しんで貰えて良かったです。まさか全部召し上がって頂けたなんてびっくりですよ。アッハッハッハッ」
ルイスさんの言葉は、おもてなしをやり遂げた、そんな感じだった。
まだ三日もあるのに、こちらが食費を払わなければ申し訳ない気持ちだ。
本当にそんなことをするとかえって失礼であるが……
アムに聞いてみる。
「なあ、アムとアイミの大食いはどうかならんのか?」
『ええ? だって出されたものは全部食べなければ失礼なんじゃないの?』
「それはそうだが…… 普通の人間が食べる量では満足出来ないの?」
『うーん、まあおまえたちが食う量でも腹減って困ることは無いけどね』
「ええ…… そうなの…… あれだけ食ってちょっとしか腹が膨らんでないように見えるが……」
『大食いをしてはいかんのか?』
「いやさ、食べるのもお金が掛かるじゃん。マカレーナへ帰ってからも私、そこまでお金持ちじゃないから毎日あんなに山盛り食べさせられないよ」
『ああ、そういうことか。わかった』
つまり必ず大食いをしなければいけないわけではなく、与えれば与えただけ食ってしまう。
アイミも普段はそんなに大食いではないしな。
明日からは自重してもらうが、アムが物分かりよくて良かった……
「それでは皆さーん、今日のバーベキュー大会はこれでお終いです! 一時間休憩した後、お風呂タイムですからねー!」
オリビアさんが大きな声で言う。
彼女はみんなのお母さん的な存在になってるのかな。
――それよりもお風呂!?
前回はあの広いお風呂でルイスさんも一緒に混浴したけれど……(第四十四話参照)
あの時もう、アナちゃんの生おっぱいを見ていたの忘れてた。
ということは、ここに居る全員!?
ええっ? ガルシア侯爵も一緒に入るの? ヤダなあ……
ちょ…… パティも? 十五になるまではケジメとしてそれはマズい。
一時間後、どうなってしまうんだああ?




