第三十三話 エルミラさん愛しています/ビビアナとデート
2022.9.11 軽微な修正をしました。
2025.7.16 一部改稿、付け足しを行いました。
これからしばらくの間、エリカさんと二人だけの行動が多くなるだろう。
スサナさんとエルミラさんは毎朝の訓練があったり街の中で魔物の襲撃があったときは一緒にいるけれど、プライベートの機会がなかなか無い。
パティとビビアナはプライベートの時間を作らないと普段は食事の時しか顔を合わすことが無いから、極力この二人を優先に時間を割こう。
そうだ、前にビビアナの家の近くの丘で弁当を食べようと話したことがあった。
あれからずいぶん経ってしまったが、今できることをやろう。
夕食の片付けの時にビビアナを呼んで話してみた。
「ねえビビアナ。前に話していた、丘の上で弁当を食べてみたいんだがどうだろう?」
「やっと思い出したかニャ。ずっと待っていたニャ」
「あー、ごめんごめん。この前弁当で持って行ったハムサンドとビスケットがとても美味しくてね、それで思い出したんだ」
「し、仕方ないニャ。今度はもっと美味いものを作って持って行くニャ」
ビビアナはいつからツンデレ風味になったのだろう。
デレてから、表情がニコッと変わる。
「それで、いつがいい?」
「明後日ニャ。明後日が休みだから出かけることにするニャ」
「わかったよ。楽しみにしてるから」
「絶対だニャ~ ニャふふ」
ビビアナはとても機嫌良く、ダイニングルームから出る私に手を振ってくれた。
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そして晩はパティの部屋へ。
彼女の顔がややツンケンしている。
「ビビアナとデート、いいですわね」
部屋へ入った一声がこれである。気になって仕方がないのだろう
「次はパティだから、楽しみにしておいてね」
そういえば前に二人で出かけたのって劇場を出てから魔物の大群が現れた日だったから、中途半端に終わってしまったなあ。
パティには北の森の出来事について話しておいた。
「そういうわけで、当分の間はイスパーナ国内で見つかった穴の情報を元にエリカさんと二人で移動して行くのだけれど、一日で帰って来られないことはたくさんあると思うんだ」
「寂しいですわね……」
「だからビビアナと前にデートしてからずいぶん間が空いたから彼女を先にして、次がパティということにしたのさ」
「今度のお休みはお願いしますねっ」
その晩、パティと私は思う存分ラブラブちゅっちゅをした。
十三歳なので軽いちゅっちゅだけである。
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翌朝、訓練にスサナさんが出てこなかった。
エルミラさんが言うには、珍しく風邪を引いて寝込んでいるらしい。
起きた時に布団を被ってなかったので身体を冷やしたらしい。
そんなに寝相が悪いのか。
そういうことで、今朝はエルミラさんと二人だけ。
剣術の訓練でいつもは木刀を使うが、今日は体術の訓練をすることにした。
エルミラさんはスタイルが良く背が高いしリーチが長ければ脚も長いから、日本人体型の自分は本当にやりにくい。
だがエルミラさんの腕を取ることが出来て、柔道技の大内刈りで決められそうだったが、体勢を崩してそのまま私がエルミラさんに覆い被さってしまった。
「すみません、エルミラさん。今退きますっ」
「待って! このままで……」
「誰かに見られちゃいますよ」
「こんな朝早くにここで見られることなんてないよ」
確かに、物音で迷惑がかからないよう庭の建物から離れた場所で訓練をするように変えたのだが……
それにここは木陰でどこからも死角になっていた。
運動後のエルミラさんの吐息と汗の匂いがとても艶めかしい。
「マヤ君とこうしてみたかった…… なかなか二人でいる機会が無いし、恥ずかしくて……」
ええっ? なに? 今朝のエルミラさん、どうして積極的なの?
これもサリ様の神通力なのか?
神の力、強力すぎないか?
――そう思っているうちに、エルミラさんからそっと唇を近づけ、私の唇を塞いでしまう。
何秒だろう。私より暖かくなっている唇の感触。
でもちょっと乾いていて硬かった。
「嬉しい…… スサナに先を越されちゃって悔しかったんだ」
「あれは酔っ払って、ノーカウントみたいなものですよ」
私はエルミラさんを抱き起こして、もう一度キスをした。
今度は大人のキスで――
エルミラさんも舌先を大胆に動かす。
「マヤ君…… キスってこんなに熱くてドキドキするものなんだね……」
私はキスを続け、右の胸を優しく揉んだ。エルミラさんは拒まない。
なんとノーブラだった。
「エルミラさん、愛しています。もう我慢できない――」
「マヤ君…… いいよ。愛してる」
キスをしながら両胸の愛撫を続け、ベルトに手を掛けてズボンを半分脱がしてしまった。
「マヤ君…… こんな…… 恥ずかしい……」
エルミラさんを立たせ、ズボンを脱いでもらった。
試着室の時と同じ、白いスポーツタイプのショーツだ。
前に試着室であった体勢、それから先日エリカさんにもした行為。
すぅ~はぁ~ エルミラさんの三角地帯に鼻を当てて深呼吸をした。
これだ! これをしたかったんだ!
エルミラさんの肌の匂いと、エルミラさんの女の子の匂い……
彼女は顔を真っ赤にして強く目を瞑っている。
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憧れのお姉様且つ男友達のようなエルミラさんと、とうとう最後までいたしてしまった。
しかも家主の庭で。
外でスルなんて前世も含めて初めてだったが、なかなか開放感があるものだ。
「私…… 初めてがこれで良かったのかな……」
「森の中でのエルミラさんは綺麗でしたよ。良い思い出になりそうです」
「今度は、ベッドの上で…… ね」
私は優しくキスで返事をした。
今度と言った。
彼女がこの先も、私とこういう関係でいたいという意志があるのを確信する。
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訓練とは別の運動で汗を掻いてしまった後に朝食で皆と顔を合わせると、何とも後ろめたい気分になる。
この日の午前はローサさんを加えた三人で訓練、午後はエリカさんと魔法の勉強をした。
風属性の上位である雷魔法も出来るようになり、攻撃方法の幅が広がるほかに、せっかく電気を使っていた文明の世界から来たのだから、この世界にも電気を使った魔法から何か文明に繋がる糸口がないか探ってみようかと思っている。
さらに翌日、スサナさんは風邪が治ったようで、昨日のことは何事も無かったように三人で早朝訓練をした。
だがエルミラさんを意識してしまい、服の下はああだったんだなと思い出す。
アスリートのように引き締まっていて、且つ女性の柔らかい曲線のボディはとても美しかった。
二人は、午後から侯爵の来客で準備もあり、夕方までメイドにチェンジする。
そして私はビビアナとわくわくデートだ。
お昼前に賃走馬車でビビアナと東の街へ向かう。
この前ビビアナに買ってあげた白いブラウスにとスカートをやっと着る機会が出来て、彼女はウキウキと喜んでいる。
彼女の手にはバスケットがあり、勿論弁当だ。
ビビアナは隣に座っているので、何となく頭を撫でてみたらごろにゃーんみたいにスリスリしてくる。
髪の毛を手で梳いてみると見えるのが、人間ではあるべき場所に耳が無いのは、猫耳だから当たり前なのだが、どういう進化過程で耳族が現れたのかやっぱり不思議だ。
東の街に到着するが、まだお昼には早いので屋台街をぶらついてみた。
あちこちからいいニオイがしてくるが、ビビアナの弁当が食べられなくなってしまうので、帰りに食べられそうなら寄ってみたいな。
「あ、お姉ちゃんだニャ」
声が横の方から聞こえてくる。
「おー、エリアナじゃないか。久しぶりだニャ。マヤさん、紹介するニャ。あてしの妹ニャ」
妹さんは白毛でややタレ目。すまん、ビビアナより美少女かも知れない。
「隣の人はお姉ちゃんの旦那様かニャ? 初めまして、エリアナですニャ」
エリアナちゃんはぺこりとお辞儀をする。
しかしいきなり旦那様って、どういう感覚なんだ?
「初めまして、マヤです。旦那様になるのはもうちょっと先かな。ははは」
ビビアナより大分大人しそうな雰囲気で、後で聞いてみたら十歳だそうだ。
「エリアナは買い物かニャ?」
「うん、ママに頼まれたニャ。デートの邪魔をしちゃいけないニャ。頑張ってね、お姉ちゃん」
「ありがとニャ~」
エリアナちゃんは、白い猫しっぽをみょんみょんと動かしながら去って行った。
か、可愛い…… モフモフしたぃ…… いや、ダメダメ!
「エリアナはパパ似だニャ。すごく可愛いけれど大人しいから将来ゴミ虫男がつかないか心配だニャ。あっ エリアナもマヤさんの嫁にどうかニャ?」
「いやぁ~ ははは。さすがにそれはどうかな」
もしかして姉妹丼かあ……
と、不純な妄想をしてしまった。
時間も良い頃なので、丘の上に上がってお弁当を食べることにした。
おお、生ハムチーズ玉子サンド、こっちはトマトレタス玉子サンド、鶏肉の照り焼きサンドもある!
なかなか豪華なサンドパンが揃っていて食欲がそそる。
「ビビアナ、これはすごいねえ。とても美味そうだ」
「そうだニャそうだニャ。休みでも朝早く起きて作ったんだニャ」
早速照り焼きサンドから食べてみた。
うむぅ、これはどこかの照り焼きバーガーより数段美味いじゃないか。
ビビアナの料理だけでなく、この地方の食べ物は美味いものが多くて、日本の食べ物があまり恋しくないと思ってしまうのは良いのか悪いのか。
あっという間に腹の中に入ってしまった。水筒の紅茶も美味い。
「そんなに美味しかったかニャ? また作らないといけないニャ」
ビビアナは得意げな笑みを浮かべていた。
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ん? あれは…… 遠くに飛んでいるのが見えるのは、魔物か!?
ガルーダが十体近くいる!!
なんだってこんな時に…… くそっ
「魔物だー! 魔物がまたやってきたぞー!」
「キャー!!!」
ガルーダが東の街へ降りようとしている。いかん!!
「ビビアナ! 片付けてくるから木陰に隠れているんだ!」
「わかったニャ!」
私は直ぐさまグラヴィティと風魔法で飛んでいき、エリカさんが使っていた瞬間凍結魔法【ナイトロジェンアイス】で凍らし、落下した魔物が街に被害を及ばさないよう高圧空気圧縮砲の【エアーキャノン】で街の外へ吹き飛ばした。
攻撃が漏れたガルーダ一体が丘の方へ飛んでいく。
まさかビビアナのところへ!? ま、間に合わない!!
脳裏に、ボロボロになったパティの姿が浮かんだ。
そんなことさせるか、二度とそんなことさせるかぁぁぁぁぁ!!
私は【ライトニングアロー】でガルーダに狙いを定めた。
「当たれ! 当たれ! 当たれ!!」
ライトニングアローは一閃の光を発し、光速でガルーダを射止めることが出来た。
ビビアナ! ビビアナ! ビビアナ!!
私はすぐにビビアナの所へ飛んだ。
「ビビアナ! 良かったぁビビアナぁぁぁぁぁ…… ウウウッ」
私は泣きながらビビアナを抱きしめた。
パティが大怪我した時の光景がフラッシュバックし、胸がギュッと締まる感覚に……
「そんなに泣くニャ。マヤさんのおかげでここにいるニャ」
ビビアナは私の頭を撫でてくれた。
「朝と逆になったね。ははは」
ビビアナは膝枕をしてくれた。
見晴らしの良い丘の木陰で、可愛い女の子にされる膝枕。
そして目線の先にはお椀が二つ。
なんて良いシチュエーションなんだろう。
「ビビアナからいい匂いがするなあ」
「何だニャ? 食べ物の匂いでも着いてるかニャ?」
「女の子の優しい匂いだよ」
「ニャふふっ そんなの恥ずかしいニャ」
と言ってビビアナはにっこり微笑んだ。可愛いなあ。
「で、あそこに転がってる魔物はどうするかニャ? 」
「ガルーダって食べられるのかな?」
「前に倒された魔物をお店で出したことがあって、なかなか好評だったニャ。あ、マヤさん、お店へ持って帰れるかニャ?」
私はグラヴィティでガルーダの死体を、前にビビアナが働いていたお店【カマールムーチョ】へ持って行き、提供した。
早速解体してもらった一部の肉はビビアナの実家へお裾分けして、夕方までしばらくチビにゃんたちとモフモフし、夕食はカマールムーチョでタダでご馳走してくれると店長の計らいで、鳥肉料理を存分に味わった。
あれ? 魔物の肉は耳族が食べると媚薬になってしまうんじゃないのか?
さり気に聞いてみたが、ガルーダの肉を食べても何もならなかったそうだ。
大猪の魔物だけなのか。
しかし魔物の肉を最初に食べた人って勇者だよね。
――そしてお腹いっぱいになり、屋敷へ帰った。
自分の部屋へ帰る別れ際、ビビアナがほんのり顔を赤くして微笑みながら話しかけてくる。
「あのー ニャー…… 後でマヤさんの部屋へ行っていいかニャあ?」
「う、うん。いいよ」
その晩、二人でにゃんにゃんと楽しんだ。
部屋の外へ声が漏れないように彼女は必死に耐えていたが、それでもか細く出る声が余計にエロスを感じる。
猫娘って、あの声は普通の人間と変わらないのね。
【第二章 了】