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第三百二十九話 女王陛下、飛行機で出発

 ラフエルからマカレーナへ戻り、屋敷の引っ越し整理をしながら時が過ぎた。

 合間を見つけてはランジェリーデザインを描く仕事もしているぞ。

 王都へ女王を迎えに行く三日前に飛行機の整備が完了し、ラウテンバッハへ引き取りに行く。そしてテスト飛行を成功させた。

 整備代がバカにならないので、半分公用だから女王や王子に大分助けてもらっている。

 それには私が女王のベッドの上で身体を張ってるおかげもあるが、本当に娼婦や男娼をやってる気分になるよ。

 痛いことしないしまだ優しいから嫌いではないんだけれどね。


 ――女王をマカレーナまで迎える当日。

 王宮で昼食を用意してくれるということで、それに間に合わせるために飛行機は離陸した。

 搭乗員は私とアイミ、それからヴェロニカも僅か数時間の帰省をする。

 公式的にヴェロニカはマカレーナに滞在していないことになっているが、パレードには参加することになっているのでバレないだろうか。

 まだ写真らしい写真がない世界だし、エルミラさんと外へ出歩くときはせいぜいブラウスとテーパードパンツなので、周りの人たちは王女様だと気づいていないだろう。


 アイミは万一私が飛行機の操縦が出来なくなったときにやってもらう非常時要員。

 文句が多いやつだが欲しい食べ物には十分応えてやってるつもりなので、この仕事も素直に引き受けてくれた。

 実際やってるのは料理やおやつを作ってるビビアナやジュリアさんだけれど。

 だが――


『早く男に戻らんのか? 女では出来んから溜まってくる』

「性転換魔法の解析が始まったからいずれ戻れるよ。女の私のサービスじゃ駄目なのか?」

『私はそういう趣味はない。男のおまえの尻が欲しい』

「あ…… そう」


 アイミはアーテルシアの姿に戻って、早く私の尻で遊びたいようだ。

 以前、私が尻出ししてからどんだけ尻好きなんだよ。(第百二十七話参照)


 飛行機へ搭乗。

 アイミは私の臨席。久しぶりに軍服姿になったヴェロニカは客室で一人だけ。

 ややムスッとした表情だがあれは彼女のいつもの顔だ。

 退屈そうだしエルミラさんも一緒に付いてきてもらえば良かったけれど、彼女はガルシア家の仕事があるので無理は言えない。

 長らく住んでいたジュリアさんたちが私の屋敷へ引っ越したので、ガルシア家の従事者が私が来る前の人数に戻ってしまったからだ。


「さて、サッと行って美味い料理を食べさせてもらいに行こう」

『そうだそうだ。腹が減ったぞ』


「まったく…… おまえたちの頭の中は食べ物のことばかりだな」


 ヴェロニカが後ろの席でぼやいているが放っておく。

 機嫌が悪いわけではないのだが、元々の性格があるので何か言わないと気が済まないだけだ。

 実は先日の飛行機の整備で、一番前の二席だけグレードアップしてもらった。

 その一席にヴェロニカが座っている。

 私の飛行機にも二席だけのファーストクラスが出来たのだ。フフフ……

 フカフカのフルリクライニングだが、そのために後ろの二席分は撤去して定員が減ってしまった。


---


 一時間半ほどで王宮前広場の玄関前へ着陸した。

 予め時間を伝えておいたので、赤絨毯が敷かれ近衛兵が玄関口までズラッと並びヴェロニカ王女を出迎える。

 おっ 前にアウグスト王子とカタリーナさん、マルティン王子もいる!

 私とアイミが最初に降りてタラップの両側にそれぞれ立つ。

 それから軍服姿のヴェロニカがドアから姿を現し、手を振った。


「「「「ヴェロニカ王女殿下、お帰りなさいませ!!」」」」


 近衛兵たちが一斉に挨拶をする。

 ヴェロニカが降りたら王子ら三人がヴェロニカの前にやってきた。


「おかえり、ヴェロニカ」

「ぉかえり~」

「おおおかえりなさいませ、ヴェロニカ王女殿下」


 アウグスト王子はともかくマルティン王子は相変わらずマイペースなしゃべり方、カタリーナさんは立派なドレスを着ているが緊張しているようだ。

 彼女はまだ花嫁修業の身でこの出迎えも王族兄妹の私的な理由が強いんだけれど、この列に加わることが出来ているのは王室や大臣周り、門閥貴族にも認められつつあるのだろう。

 すごいよカタリーナさん!


「ただいま戻りました兄上。それからカタリーナ殿」


 ヴェロニカは三人と握手を交わす。

 彼女は今日初めてここで笑顔になった。

 久しぶりに会えた彼女の家族だし、ましてアウグスト王子は憧れの兄様だ。


「マヤさんとアイミさんもご苦労様です」

「お久しぶりです、アウグスト王子殿下、マルティン王子殿下、カタリーナさん。なかなかお忙しそうですね」

「いやあ、相変わらずでね。昼食を用意していますのでその時いろいろお話ししましょう。さっ 中へ」


 私とアイミは王子らの後ろについて王宮の中へ入った。

 赤絨毯の上を歩けるなんて、私も偉くなったものだな。

 飛行機はこのまま駐機するので、赤絨毯は女王を送るときにも使われる。


---


 王宮の小さなダイニングルーム。

 ここで王族の三人とカタリーナさん、私とアイミでささやかな昼食会が行われる。

 老若のメイドさん四人が控えており、他にも料理を運んでくる係もいる。

 私は何度も王宮に出入りしているので、見た顔ばかりだ。

 料理はコース式になっており、テーブルの上の様子にアイミはワクワクが止まらない。

 頼むからしっちゃかめっちゃかしないでくれよー


「改めてお久しぶりでございます。カタリーナさん、その後はいかがですか?」

「はい、教わることが多すぎて大変です。一人前になるにはまだまだ先ですね。オホホホッ」


 カタリーナさんはチラッと横目で周りを見る。

 そうか、きっとメイドの中に教官がいるんだな。

 あの眼鏡のおばちゃんなのかも。怖そう……


「カタリーナは良くやってくれていますよ。私の仕事も手伝ってくれていて、とても助かっています」


 アウグスト王子の言葉を聞いて、カタリーナさんは顔がポッと赤くなる。

 国の仕事は機密事項もあるだろうに、もう部外者ではなくなっているのだな。

 公には騒がれてないが、二人の結婚は決まりと言って良いだろう。


「マヤさん、女の子のほうが素敵だな。スカートは履かないの?」


 と、マルティン王子が言う。

 褒められるのは嬉しいが、下心的な発言はちょっと嫌だなあ。

 今日の服装は、シルビアさんが着ていたようなパンツスーツである。

 スカートはやっぱり落ち着かないので、最近は外より部屋着として履くことが多くなった。

 私の屋敷は女の子ばかりだし、大股拡げて座りパンチラになっても問題無い。

 たまにそれをパティやヴェロニカに見られると怒ってくるが……


「今はエリカさんに性転換魔法の改良をしてもらってるから、近いうちに男へ戻りますよ」

「ふーん、そうなんだー」


 マルティン王子はつまらなそうな反応をする。

 私と同じオタク気質だから最初は仲良くなれそうかと思っていたけれど、だんだん苦手になってきている。

 野心は感じないから安全だけれど、適度に距離を取りながら応対するしかないな。


「マヤさん、男に戻れるんですね。これでヴェロニカも結婚出来るから安心しましたよ」

「ああ、兄上……」


 ヴェロニカも顔を赤くする。

 こういう時は可愛いんだけどねえ。

 てな話をしているうちに、メインの肉料理がやってきた。

 牛フィレ肉のステーキ…… 美味そう。

 アイミは目をキラキラさせながら、皿が置かれたらすぐに食べ始めた。

 食べることに夢中で大人しくしているから助かる。


『柔らかくて美味い…… 噛みしめる度に肉の旨味がジュワッと口の中に広がる…… まるで肉汁がデザートのようだー』


 何か、料理評論家かレポーターが言う定番のようなセリフを言ってる。

 いつの間にそんな言葉を使うようになったんだ?


「ハッハッハッ 美味しそうに食べてくれて良かった。今日の料理は私も美味しいと思う。私たちも、いつもこんな料理を食べているわけではないから」

「へぇー 王宮では毎日フルコース料理が出ていると思いました」

「パーティーや、お客さんが来た時ぐらいですよ。私など、お昼は執務室で右手はペンを、左手で生ハムサンドをかじってます。ハッハッハッ」

「それはそれは……」


 うーん、王子は本当に社畜だった。

 彼は特に事務処理能力が長けてるから女王が仕事を放り投げているけれど、カタリーナさんと結婚した先が心配だなあ。

 仕事詰めで家庭崩壊になったらカタリーナさんや出来た子供も可哀想だ。

 秀才パティの能力があればきっと楽になると思うけれど、王都への移住は前から考えていたことなので、近いうちにパティやみんなと相談することにしよう。

 マカレーナの屋敷が勿体ないけれど……


「ところで、肝心の陛下は今何をしてらっしゃるのですか?」

「母上…… 陛下はまだ準備中なんですよ。持って行く衣装やらてんてこ舞いで…… 申し訳ない」

「ええ…… 荷物がたくさんありそうですね。大丈夫かなあ」


---


 食事が終わり、私とアイミは飛行機の中で待機。

 ヴェロニカはアウグスト王子と一緒にどこかへ行ってしまった。

 アイミは退屈だと文句を垂れていたが、腹一杯で満足しておりファーストクラスの席で昼寝をしてしまった。

 その二席は女王とヴェロニカが座るので、後で起こそう。

 

 しばらくすると、メイドたちがぞろぞろと革のスーツケースをたくさん持って来た。

 あれが全部女王の荷物なのか?

 十ケースほどだから十分積めるのだが、ラガも合わせて一週間の行程だからそのくらい衣装や生活用具がいるのかな。

 私はスーツケースをまとめて受け取り、浮かせて飛行機の後部座席部分へ放り込んだ。

 後は女王とモニカちゃんたちを待つだけだ。

 おや…… 一人でこちらへ歩いてくるのは…… カタリーナさんだ。

 食事中はあまり話が出来なくて残念だったけれど、来てくれて嬉しい。

 パティも連れてくれば良かったかなあ。

 私はタラップから降りてカタリーナさんと立ち話をする。


「マヤ様、短い時間で先ほどは失礼しました」

「いえいえ。お元気そうで良かったです。パティも相変わらずですよ」


 違ってきたのは背の高さとおっぱいのサイズ、あとBL本にハマったことだ。

 成長がすさまじいのでカタリーナさんが次に会ったらびっくりするだろう。


「あの子と会いたいですわあ~ 王宮ではまだお友達と言える人がいなくて寂しいです……」

「この前は連れてきたんですが、カタリーナさんのスケジュールが詰んでてとても残念でした。また連れてきますよ」

「その時は楽しみにしておりますね。うふふ」


 ああ…… 素敵な笑顔。

 アウグスト王子が一目惚れしちゃうのはわかるよ。

 王子とカタリーナさんもラガのビーチへ連れて行きたかったけれど、同じくスケジュールが立て込んでいて無理だった。

 新婚旅行があれば私がラガへ連れて行ってあげたい。


 そのままカタリーナさんと歓談していると、近衛兵が赤絨毯沿いにズラッと並び出しだ。

 いよいよ女王のお出ましだな。

 私はアイミをたたき起こし、寝ぼけたままタラップの横で私の横へ並ばせる。

 各大臣らや他のお偉いさん、メイドたちも多く出てきた。


 玄関口に女王が現れた。

 少し後ろにヴェロニカや王子たち。

 さらに後ろには、スーツ姿のロシータちゃん、メイド服姿のモニカちゃんとフローラちゃんが歩いている。

 女王の服装は派手だなあ。

 ジャケットスタイルのスカートなのは日本の皇后様も同じだけれど、上下ワインレッドで帽子も同じ色のトークハット。

 まあマルティナ女王らしいロイヤルコーディネートである。

 もしかしてぱんつとブラもワインレッドだったりして。

 階段でコケてパックリなんてしないで欲しい。


「マヤさん、今日からよろしくね」

「はい。安全に努めてまいります」


 などといつもの会話らしくなく、社交辞令的な返事をした。

 ここで女王とヴェロニカ王女が並び、送ってくれる皆の挨拶を受ける。


「「「「「国王陛下マルティナ様、王女殿下ヴェロニカ様、いってらっしゃいませ! どうぞお気を付けて!」」」」」


 一斉に声があがると自分までゾクゾクとしてきた。

 女王は前に、飛行機が完成したときに機内を見学してもらったのだけれど、座席が変わったので私は先に機内へ入って、女王が来たらシートベルト着用の手順を教える。

 女王とヴェロニカがタラップを上がり、手を振ってから機内へ入った。

 外は皆の歓声がすごい。

 ヴェロニカが先に座り、次に女王が座りシートベルトの着け方を教えた。


「椅子がフカフカに変わったわね。これ…… どうするの?」

「こうして、こうします」――カチャ


 ほぼ密着状態で、香水の匂いが強い。

 ディ◯ールの香水でこんな香りを嗅いだことがあるが、嫌いではない。

 クンクンしてしまいそうなので、早めに離れた。

 続いてモニカちゃんたち三人が搭乗。

 彼女らの荷物はスーツケースを一つずつで意外に少ない。

 まあ、ぱんつとブラの替えぐらいはいくらでも用意してあげるからね。ふふふ


「マヤ様、久しぶりぃ! へぇー すごいねえ。これが飛行機の中かあ~」

「素敵な部屋ですね。思っていたより広いです」

「わあ、馬車より豪華ですよ。これであっという間に南の地方へ行けるなんて夢みたいです」


 ヴェロニカが三人で最初にしゃべったモニカちゃんの態度についてジロッと見たが、子爵である私の周りの女の子は皆がそうなので何も言わなかった。

 以前のヴェロニカであれば激怒していたであろう。

 スーツケースを女王の者と一緒に後ろへ置いてもらって、魔法で動かないように固定。

 三人も同じようにシートベルト着用の手ほどきをする。

 モニカちゃんは慣れてるからともかく、フローラちゃんとロシータちゃんに密着状態でほんのり良い匂いだー

 私がいま男だったら、セクハラで怒られていたかも……

 最後にアイミが乗って、ドアを閉めて操縦席に座った。


 グラヴィティの魔法でゆっくり垂直離陸。

 女王たちの後ろに座っているモニカちゃんたちはびっくりして大騒ぎ。


「ぎゃー! 浮いてる浮いてる! ひいぃぃぃぃ!!」

「こここ怖いですうぅぅ! 落ちるうぅぅぅ!」

「はわわわわっ サリ様どうか私たちをお守り下さい。ダノスアモール……」


 女王は何故か落ち着いていて、窓から見える皆に手を振っていた。

 さすが一国の王は心がどっしりしてる。

 おっぱいもおしりもどっしり。ああ…… 私、頭おかしい。


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