第三百二十七話 ローサさんの水着/みんなの生活
アマリアさんとお昼前にあんなことをしていたものだから、私がお口サービスをしている時はシルビアさんと同じように彼女も口を押さえて声を出すのを必死に我慢していた。
私の顔が下にあるので、サービス中はその顔をじっくり見ることが出来ないのは残念だったが。
女同士だから不貞ではないよね。入ってないし、入れるものが無いし。
今までマッサージだけをしてたまたま見えちゃいけないところを見てしまうだけだったのに、ついにその見えちゃいけないところまでゴニョゴニョ出来た。
最高に美味しかったです。ご馳走様でした。
そのままガルシア侯爵邸で昼食を頂く。
私の屋敷では厨房の整備がまだ完全ではないので手の込んだ料理は出来ないが、それでもガルシア家で食事をする機会が減っている。
アマリアさんはさっきまであんなだったのに、食事が始まるとケロッと澄まし顔。
ローサさんと、間もなく四歳になろうとしているアベル君も同席。
アベル君にもそろそろ弟か妹が―― という気配は今のところない。
ローサさんの教育が良いのか、彼はぎこちないながらもナイフとフォークを使って行儀良く食べている。
「マヤさん。水着の試作品がもう一着あったと思うけれど…… ローサさんに見せてあげてはいかが?」
「ああ、はい。でもあれはローサさんに似合うかなあ」
「まあ。まだ用意をしていないので、ちょうど良かったです。食事が終わったら見せて頂けますか?」
「わかりました」
残った水着をローサさんにプレゼントするとは考えていなかったけれど、清楚なローサさんに似合うだろうか。
色は白で、脇まで上がってる超ハイレグワンピースで、腰回りは後ろから前へ細い金属チェーンで留めるデザインになっている。
これを選んでくれたら嬉しいなあ。
食事中なのに、エロい妄想が止まらない。
「アマリアさん、マヤさんにあのことを話してもよろしいですか?」
「あのこと…… ああ、わかりました。いいわ、話してちょうだい」
「はい。あの、マヤさん…… そろそろと思い…… 折れた八重桜を直すことと、私の刀も手入れをするために、東の国ヒノモトへ一緒に行きませんか?」
「ヒノモト! そうか、そのことがありましたね。今は一時的な平和になっているけれど、エリサレスがいつ復活するかもわからないから……」
正直言うと、すっかり忘れていた。
八重桜はエリサレスとの戦いで折れてしまい、そのままにしていた。(第百七十二話参照)
いつかヒノモトへ行って直さねばと思っていたが、飛行機製作やミカンちゃん誕生、アスモディアへの渡航で忙しくて後回しになっていた。
「すぐ行って帰るわけにもいかないので、この先もある女王陛下の各領地訪問スケジュールとも調整が必要になります。落ち着いてからになりそうですが、なるべく早く行っておきたいですね」
「はい。私の師匠や刀鍛冶師の都合もありますが、滞在は恐らく半月から一ヶ月になりそうです」
「けっこうかかるなあ。そうそう、アベル君はどうするんですか?
「私が面倒見るわ。カルロスが幼稚園に行っててあまり手が掛からなくなってるし、メイドもいるから問題無いわ。ねえ、アベル。ママはちょっとお出かけしてても、私と一緒なら寂しくないよねー」
アマリアさんはニッコリ、アベル君に向かって話す。
小さな子供と話すときはこの人もお母さんっぽい表情をするんだよね。
パティの歳になると厳しいけれど。
「うん、アマリアママだいしゅき! おっぱいおっきい!」
「――おほほほほ」
「こら、アベルったら……」
「ママもおっぱいおおきい! あれっ? マヤもおっぱいおおきいねー!」
「あ…… あはははっ ほーら大きいおっぱいだよー」
私は自分の胸を両手で支えて突き出すように、アベル君に見せた。
アベル君は無邪気におっぱいおっぱい言ってるが、将来はおっぱい星人にならないでほしいな。
やや空気が寒くなったが、食事が終わるとローサさんとアマリアさんにはこのまま待ってもらい、元いた私の部屋へ水着を取りに行ってダイニングルームへ戻った。
そして二人の前でハイレグ水着を掲げて見せた。
「これです。ローサさんどうですか? 格好良いでしょう!」
「こ、これは…… 私が履くんですか? 随分大胆ですね……」
ローサさんが顔を真っ赤にして言う。
か、可愛い若妻…… ドキドキ……
そうだよねえ、こんなハイレグ。
やっぱりギャルっぽい、マイかモニカちゃん向けかなあ。
ジュリアさん向けかと思ったが、やっぱりハミ出るのはまずい。
「ローサさん。この水着は、この国最先端のデザインですよ。マヤさんがデザインした、まだこの世に一つしか無い試作品の水着です。とても光栄なことなんですよ」
「はぁ…… それは私もそう思いますが……」
アマリアさんが煽るが、ローサさんは困った表情。
でもローサさんが着ると、女の子からでも絶対注目の的だろう。
ここは私も推してみよう。
「ガルシア侯爵も喜ぶと思いますよ。ぜひっ」
「そうね。あの人が…… そう、あなたも二人目が欲しいときじゃないかしら? ふふふふっ」
アマリアさんが魔女っぽい笑いでさらに煽る。
二人目の子供と来るかあ。
ローサさんの気持ち次第であるが……
「それは考えていましたけれど、タイミングはヒノモトから帰って来たら…… って、やだ私ったら……」
ますますローサさんの顔が赤くなり、両手で頬を押さえている。
くううっ 可愛すぎるっ
あの髭ヒゲおやじがなんでローサさんとっ
あいや、私が言えたことじゃないか。
「あなたも試着して、マヤさんに見てもらいなさい」
「えっ ええー?」
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やや強引なアマリアさんの勧めで、ローサさんの部屋まで来てしまった。
アベル君は勿論、アマリアさんもいる。
彼女の部屋へは初めて入る。
うーんっ いいにおーい!
香水とかじゃなくて、ローサさんの身体のにおいだー!
若妻のにおい…… すうぅぅぅぅはぁぁぁぁ……
ミルクっぽい香りと、ほんのり石鹸の香りもあるかなあ。
シルビアさんの部屋に近い香りだけど、微妙に違う。
歳の差のせいじゃないと思う……
「あ、あの…… このまま着替えるんですか?」
「ああっ ごめんなさい! いったん部屋の外へ出てますぅ!」
「女同士だし、いいんじゃない?」
「さすがにそれは…… 中身は男だし……」
「――」
アマリアさんがまた何か言いたげだったが、私は慌てて部屋を飛び出した。
ゴソゴソ―― ローサさんは観念したのか、素直に着替えているようだ。
約五分後、部屋の中からアマリアさんが呼ぶ声が聞こえた。
「ど、どうでしょうか……」
ローサさんは、白い超ハイレグ水着を着てモジモジと動いていた。
股間部分の水着が細いので、股関節から鼠径部のあたりがはっきり見えている。
色白ですんんんごい綺麗! 若妻のハイレグですぞ!
水着のパールホワイトがまた、肌の色と差が小さくてセクシーさを際立たせている。
もう注視して、水着の下がどうなってるか想像しちゃうでしょ!!
胸は谷間が強調されているが、それはローサさんの胸は張りがあるせいだ。
ガルシア侯爵、羨ましいぜっ
「――と、尊いです…… 思っていた以上に似合ってます…… 是非ビーチで着て下さい……」
興奮しすぎて鼻血出そう…… フガフガ
「どう? アベル。ママ綺麗?」
「うん、ママきれいー 妖精しゃんみたいー」
「ああ…… ありがとうアベル……」
良いぞアマリアさん! 息子を使って納得させるなんて。
ローサさんはまさに妖精。
子供目線ではそう見えるんだねえ。私の目は汚れている。
「じゃあマヤさん、これを使わせて頂きます」
「どうぞ喜んで!」
ビーチでエリカさんの写真魔法で撮ってもらわなきゃ!
みんなの写真も撮ってもらって…… ぐふふ
それだけでカタログが出来そうだけれど、身内の水着写真を外で見せるのは嫌だから、モデルを雇った方がいいな。
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王都からのフライトとアマリアさんとの付き合いやらで少し疲れたので、自分の屋敷へ帰って昼寝をする。
みんなどこかへ出掛けてるのかなー
魔力探知では、エリカさんが地下室にいて、ビビアナが自分の部屋で昼寝をしている。
ルナちゃんとジュリアさんは食材の買い物かな。たぶんマルヤッタさんも一緒だ。
ガルシア侯爵邸ではスサナさんが館内を掃除していたけれど、エルミラさんを見かけなかった。
ヴェロニカの気配も無いから、エルミラさんとデートだったりして。
マイとオフェリアは人間の街が珍しくて、よくつるんで出掛けている。
面倒なことは起こさないでくれよー?
パティはどこだろう。
家具集めは落ち着いていると思うから、きっと大聖堂に行ってる。
セシリアさんは―― 仲良しのルナちゃんかパティのどちらかと一緒か。
アイミはいつも通り、神の力を使って道路の補修と建設だろう。
事業がかなり進んでいるのでそろそろ許してあげたいが、あいつはやることがないと暇をもてあそんで要らないことをする。
何か別のことを考えておかないとなあ。
――みんなそれぞれの生活があって動いているが、みんな私の家族だ。
ということは、私を除いて今は館内に二人しかいないってことか。
不用心と思われるかも知れないが、エリカさんが魔法で罠を張っている。
泥棒が入ろうとしたら、そういう邪な心を感知してその場でぶっ倒れるそうだ。
幽霊屋敷の噂もあってか、幸いそのような者が今のところ引っかかっていない。
アイミやエリカさんみたいな邪な心とは違うので、彼女らが自分で引っかかることはない。
幽霊…… あっ 忘れてた!
もう一人住人がいたんだよ。
不審な様子だったからこっそり部屋へ入ると幽霊夫人オリビアさんが部屋で自分を慰めていて、それを見たジュリアさんまでそんなことをしちゃうから見つかっちゃうなんて、もう滅茶苦茶。
それ以来会っていないから、どうしているだろうか。
ちょっと部屋へ行ってみるか。
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――コンコン
反応が無い。
女性の部屋へ勝手に入るのはおこがましいが、今の家主は私だし住人の様子を見るのも私の責任だ。
点検として入らせてもらう。
まさかまた自分で慰めていないよね?
「うーん、誰も居ないなあ」
部屋には大きなベッドがあり、そのオリビアさんの肖像画が飾られてある。
屋敷からは出ていないはずなんだけれど。
(シクシクシク……)
え? なに? 誰かがどこかで泣いている。
なに、怖い……
(シクシクシク……)
まただ。でも聞き覚えがある声……
やはり…… 絵の中からその声がする。
(シクシクシク……)
「オリビアさん、そんなところでどうして泣いているの?」
『絵から閉じ込められて本当に出られなくなってしまいました。前は出られたのに、誰も来ないし…… 寂しくて……』
「出られなくなったのはわからないけれど、アイミが使った具現化の術が切れたんだろうか。後で連れてくるから」
『ありがとうございます。それで、デボラ・サンチェスの件はどうなりました? 気になって気になって……』
「まだ調査中みたいだよ」
『そうですか……』
デボラ・サンチェスは、モンタネール男爵とイチャコラして腹上死させてしまった元メイドの女だ。
亡くなったのは仕方がないとして、そのまま逃げてしまったのが問題だからガルシア侯爵に話して探してもらっているのだ。
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夕方になる前にアイミが帰って来たので、早速オリビアさんの部屋へ連れてきた。
彼女に事情を話す。
『あー 疲れて腹が減ってるのに、世話が焼けるのう』
「頼むよ。これも仕事だと思って」
『はー』
まるで疲れて帰宅してきたサラリーマンおやじのようだ。
姿は子供の魔法使いだから滑稽である。
(シクシクシク……)
『泣くな! 今出してやるから。ほれっ』
アイミが小さなステッキを振ると、具現化されたオリビアさんがそのままペッと絵から排出されるように出てきて、ベッドに転がり落ちた。
冗談みたいな術だ。神の力はわからん。
『あ痛たたたた!』
『終わった。腹減った……』
ああ、思い出した。
さっき良い匂いがするから厨房を覗いたら、買い物から帰って来てたジュリアさんがドーナツを揚げていた。
「ジュリアさんがドーナツを作ってたぞ。ダイニングルームに置いてあるから食べていいってさ」
『おおそうか! 早速食おう!』
おやつのことになると途端に機嫌が良くなる。
子供そのものだ。
「んじゃオリビアさん、ごゆっくり。また様子を見に来るからね」
『ありがとうございます。助かりました……』
オリビアさんが深くお辞儀をする。
お辞儀で上半身を前に倒したとき、ドレスのパックリ開いた胸元の、胸の谷間を無意識に覗いてしまう。
私は女になってもむっつりだ。




