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第三百二十五話 リーナが読んだ妖しい本

 アリアドナサルダで水着の試着をしていたら昼食を食べるタイミングを逃してしまい、その辺の店でボカディージョというバゲットサンドを頬張ってからエスカランテ家へ向かった。

 勿論飛んで行ってるぞ。◯空術みたいにキビキビと動けないので戦闘には向いてない。

 早速シルビアさんの部屋で二人と再会。


「みかんちゅわーん、久しぶりでちゅねー」

「わぅわぅ~」


 セシリアさんやマカレーナの屋敷のことで忙しく少し間が空いてしまい、久しぶりに会えた愛娘との再会に感激する。

 ちょっと会わないだけですくすく成長しているのが分かる。

 女になっても私がパパだと認識してくれているからとても嬉しい。

 抱きしめると、赤ちゃんの匂いってすごく良い匂いで癒やされるぅ。


「良かったわ、今日はとてもご機嫌がいいの。ゆうべは夜泣きをしてて……」

「そうか…… シルビアさんにばかり苦労を掛けてすまない」

「大丈夫ですよ。元々滅多に夜泣きをしない子だから…… それで今回はどういった御用件で王都へ?」

「今日は陛下と、マカレーナとラガの訪問について最終の打ち合わせをしてきたんだよ。実際はラガのビーチでバカンスしたいだけみたいね」

「例の話ですね。ロシータも大変ね…… 目に浮かぶようだわ。うふふっ」


 そんな感じで話をしながら、庭へ出てみかんちゃんを抱っこして三人で散歩をしたり。

 ああ…… 幸せってこういうのなんだろうな。

 地球での前世では有り得なかった現実。

 今は前世に何の未練も無い。

 確かにこっちの世界はネットも無ければ物に溢れているわけではないけれど、サリ様が間違って私を地球に落としてくれたお陰でお詫びの印に大きな力をくれた。

 周りには、前世のことを思えば考えられないくらい可愛くて綺麗な女の子がいっぱい。

 鼻の下が伸びるしかないよなあ。


 夕食はエスカランテ子爵夫妻と親子三代で。

 子爵は毎日、面白いくらいミカンちゃんにメロメロだそうだ。

 食事が終わったらシルビアさんの部屋でミカンちゃんをあやしながら寝かしつけた。


「今日は楽しくて疲れたのかしら。あっという間に眠ってしまったわ」

「寝顔が可愛い…… ずっと眺めていたい…… でも……」

「――今晩は陛下のお相手でしたわね。あの方も痺れを切らしたのかしら。うふふ」

「シルビア……」

「くふ……」


 私からシルビアさんにキス。

 受け止めた彼女の方が積極的だ。

 あの方も、と言ったのは自分も、ということだろう。

 ああ…… キスだけで頭がとろけそうだ。

 そういえば前はシルビアさんが陛下の相手をしていたから、女の私でもイケるのか。

 ああ…… 止まらない。王宮へ行くまで、まだ時間がある。

 もう最後までいっちゃおう。


 ――シルビアさんの舌技で、私のほうが三回も昇天してしまった。

 さすがベテラン。お見それいたしました。

 女の身体のほうが圧倒的に興奮と刺激が強くて体力を使うよ……

 ミカンちゃんが起きるといけないから、声を殺すだけで精一杯だった。

 明日は私のほうからシルビアさんを攻めよう。


---


 今度は女王の相手。

 女王がわざと開けている窓からこっそり侵入する。

 すでに赤い透け透けのネグリジェに着替えて、退屈そうにベッドで待っていた。


「あら、遅かったわね」

「いやー ミカンちゃんを寝かしつけるのが大変で。あはは……」


 そう言うと、女王が近づいて私の首元の匂いを嗅ぐ。


「くんくん―― シルビアの匂い…… そう。そういうことね。まあいいわ。あの子も溜まっていたんでしょう」

「あ…… ああ……」


 シャワーを浴びずにすぐ移動したから、匂いでバレてしまった。


「あなたも早く脱ぎなさい。我慢が出来ないわ」


 女王は自分でランジェリーを全て脱いで、ベッドの上で臨戦態勢。

 私もベッドの上で横になる。

 女王はまるで餌の小動物に巻き付いた蛇のように、舌舐めずりをする。


「若い女の子の肌っていいわねえ。私も若い頃はこんなに瑞々しかったのかしら。羨ましいわあ……」


 女王はそう言いながら、私の肌のあちこちにキスをする。

 ああっ 舌が私の胸の突起に……


「ンフフ…… 女の身体もいいものでしょ。これから女の喜びを完膚なきまでにたたき込んであげるわ」

「ひいっ!?」


 さっきシルビアさんに三回昇天されられたのに、女王には小波で七回、大波で五回も昇天されられてしまった。

 頭の中がトランス状態になってしまうのも、戦闘中ですら滅多に無かった。

 ぐったりした後、今度は私の口でご奉仕させられる。

 よっぽど溜まっていたのか私以上に昇天し、そのまま寝てしまった。

 道具は使われていないので、私の女の部分はまだ処◯である。

 セシリアさんだったらあげてもいいかな……

 私も身体が思うように動かず、女王の横で眠った。


---


 女王が起きる前に、シルビアさんの部屋まで朝帰り。

 シャワーを借りてゆうべの営みの汗を洗い流した。

 膨らんだ胸をしみじみと眺めた。

 この身体とはいつまで付き合うことになるのだろうか。

 生理があるのはちょっとつらいけれど、それ以外は悪くない。

 でもパティたちに子供を産んでもらわないくてはいけないから、エリカさんとセシリア産の協力の(もと)で男に戻りたい。


 家族の皆と朝食を頂き、しばらくの間は私がミカンちゃんの面倒を見てシルビアさんには休憩をしてもらう。

 メイドのパウラお婆ちゃんがいるのでシルビアさんが付きっきりで面倒を見ているわけではないが、少しでもパパらしいことはしたい。


「わぅー ぷー」

「ありゃ、そんなところ触って…… おっぱい欲しいのかな」


 ミカンちゃんが私の胸をモミモミしてる。

 頼むから女の子好きなエリカさんみたいにはならないでおくれ。


---


 シルビアさんと交替し、一度エスカランテ家を離れてガルベス家へ向かい、リーナの顔を見に行く。

 手土産に、パウラお婆ちゃんに頼んで焼いてもらった出来たてのオレンジタルトを持って。


 この時間はやはりエレオノールさんの授業で、二人とも部屋に居た。

 いつものように窓から入る。


「おおっ マヤ! 来てくれたか! まだ男には戻らんのか?」

「戻れるかも知れない算段が付きそうでね。ほらっ お土産のオレンジタルトだよ」

「ふぉぉっ 気が利くのう! ほれエレオノール! お茶を入れてたもれっ」

「はいはい。うふふっ」


 私がタルトが入った箱を開けてリーナに見せると、彼女の両目が☆になる。

 しばらく会えなかったご機嫌取りには良かった。

 ありがとう、パウラお婆ちゃん。

 早速エレオノールさんはお茶を入れる準備をしてくれている。

 胸がぱつんぱつんのコックコートは相変わらずだ。

 憧れのお姉様という感じで、膝枕をしてもらいたいなあ……

 可能であればマカレーナの屋敷で料理人として雇いたいけれど、ガルベスのおっさんが離さないだろうし無理に引き抜けば関係に不具合が出るだろう。

 何より給金はガルベス家のほうが条件良さそうだし、リーナが寂しがるのは良くない。

 もし結婚が出来ても、通い婚になりそうだ。

 それよりまだ正式にお付き合いが出来ていないから、もっとプライベートで時間を作らねば。


「さあどうぞ。とても美味しそうですね」

「お世話になってるエスカランテ家のメイドさんが作ってくれたんだ」

「まあ、有名なオレンジ農家の? それなら間違いなく美味しいはずですね」


 お茶が入り、エレオノールさんがオレンジタルトをお皿に載せる。

 リーナは今か今かとタルトばかり直視している。

 私のことなど目に入っていない。

 餌の前で待てと言われてバタバタしてる柴犬のネット動画を思い出して、クスッと笑ってしまった。


「さあどうぞ、お嬢様。うふふっ」

「女神サリよ、あなたのいくつしみに感謝してこの美味しそうなオレンジタルトをいただくのじゃ! バクッ んんん!! 美味いのう!」

「お嬢様、もう少しお行儀良く食べないとダメですよ。私もいただきます。モグモグモグ…… あら、本当に美味しいですね」


 一流の料理人にそう言われるなんて、パウラお婆ちゃんすごいなあ。後で伝えておこう。

 私もタルトを頂く。

 ううんっ 甘すぎず、オレンジジャムの味が口いっぱいに広がる!

 いくらでも食べられそうだ。だが……


「さてもう一つ……」

「お嬢様、お昼が近いから一つだけです」


 もう食べ終えたリーナが箱から直接、残っているタルトを取り出そうとする。

 当然エレオノールさんに止められる。


「あああ…… 頼むエレオノール……」

「いけません。それ以上食べたらお昼の食事を残してしまいます」

「うううっ」

「三時のおやつにまた出しますから」

「きっとだぞ?」


 うむ、エレオノールさんは良いお母さんになりそうだ。

 こうしてるとまるで夫婦と子供みたいな感覚だな。むふふっ


「ところでマヤ。母上の書棚にあった本でのう」

「何か面白い本か、難しくてわからない本でもあったのかな?」

「男同士でな、なんかキスをしてたり抱き合ったりしておってな。女同士でもそういうことが出来るものなのか?」

「おおおおおお嬢様っ!?」

「あ…… ああ…… そ、それは空想の話で、大人になったら読む物語なんだよ。あはははっ……」


 リーナの母上もBL小説の読者かよ!

 この国の女子はどうなってんだ……


「ふーん。で、や◯い穴ってなんだ? 男にはそんな穴があるのか?」

「ややややや…… 穴!?」

「な、無いってば。空想なんだから…… 全部読んだの?」

「いや、難しくて半分読んでやめた」

「半分も読んだのか……」


 や◯い穴か…… なかなかハイレベルな小説だな。

 男には現実、そんなもの無いっ

 半分も読んだって…… やはり才女だな。

 いやそうではなくて。

 パティやエルミラさんみたいにずっぽりハマらないようにしてもらわなければ。


「で、女同士の話はどうなった? するのか?」

「し、しないこともない…… いや、しないよっ うん」

「そうか。(わらわ)はマヤとエレオノールが好きだからキスがしたいんだがのう」

「お、お嬢様…… そういうことでしたか…… でしたら私としましょう」

「いいのか?」

「ええ」


 ああ、そういえばリーナはパティにもキスをしていたし、家族ともしていると言っていたからそういう家庭なのだ。

 さすがに祖父のガルベス公爵とはしてないようだが。(第百〇九話参照)


 エレオノールさんはリーナの背丈まで腰を下ろし、軽く口づけをした。

 リーナはにっこり。まだ十一歳だっけ。なんとも微笑ましい。


「さっ 勉強の途中でお邪魔しちゃったから、もう帰るね」

「そ、そうですね。お嬢様、お勉強の続きをしましょう」

「えっ あの…… キス……」

「マヤ様もお忙しいですからね。ああっ タルトご馳走様でした。作られた方によろしくお伝え下さい」

「はい、わかりました」

「キスは……」

「じゃ、リーナ、エレオノールさん。また来るからね」


 私はそそくさと窓から飛び出した。

 エレオノールさんの慌てっぷりは、私とリーナがキスをしているの見たくないのかも知れない。

 そういうところが可愛いな。

 リーナは私に吸い付きキッスをするから、私もエレオノールさんに見られていると恥ずかしい。

 今度来たとき、リーナに何か言われそうだけれど……

 エレオノールさんがたぶん良く言ってくれているだろう。


---


「ああ…… マヤともキスをしたかったのに……」

「お嬢様、あんまりご家族以外の方と簡単にキスをするものではありませんよ? 家族の好きと、他の人に対する愛してるは違うんです」

「エレオノールは家族でないのに、どうしてキスをしてくれたのか? 愛してるのか?」

「私はお嬢様と家族みたいなものですよ」

「うふふ…… エレオノール…… 好き……」

「まあ、お嬢様ったらそんなにギュッと抱きしめないで。うふふっ」


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