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第三百二十四話 水着の試着

 セシリアさんがマカレーナへやって来て半月ほど。

 彼女は普段ラミレス侯爵の事務仕事を多少なり手伝っていたり料理もしていたのだが、マカレーナでは何か役目があるわけでもないので、ルナちゃんたちと掃除や料理を手伝ったり、事務職経験を活かしてガルシア侯爵邸でフェルナンドさんの手伝いをしていた。

 意外と言っては失礼だが頭の良い子で計算も速く、フェルナンドさんは喜んでいた。

 パティも元々そういった仕事をしていたので立場が無いのだが、彼女は現在私の屋敷で使う家具の調達やらで忙しい。

 ガルシア家や、カタリーナさんの実家バルラモン家、市内の大きな商家などから不要になった中古家具を選定してタダでもらってきたり安価で譲ってもらっている。

 パティは顔が利くし、これは本当に助かっている。

 私は成り上がりの貴族なうえに貧乏性だから、全て新品で揃えたいという見栄や面子も無い。

 女王の訪問日が近いので、ガルシア家で借りている部屋を空けるためにヴェロニカも私の屋敷へ引っ越した。

 といっても彼女はほぼ身一つでマカレーナへ来ているうえにあまり物に執着しないので、引っ越しの持ち物は最低限の衣類だけだった。

 王女様があまり質素な生活をされてもいけないので、新しいヴェロニカの部屋にはパティが調達してきたそれなりに質が良い中古家具や調度品を入れておいた。

 さすがに彼女のセンスは良く、中古家具故にやや年寄り臭いが豪華に見える部屋になった。

 しかしヴェロニカに見せたら……


「王宮の、私の部屋より華美ではないか? 私は使用人の部屋でも一向に構わんのだが」

「いやいや他の者の立場もあるでしょう。このくらいは王女様らしくしてくれ」

「そんなものか」


 これである。

 彼女は戦場でも兵士に混じってテントで寝ていることも多かったから気にしていないんだろうが、もう少し格好はつけてもらいたい。

 普段の訓練だけでは持て余しているので、ヴェロニカはエルミラさんを連れ出して馬に乗り、近隣の地域に潜んでいる魔物退治をしているそうだ。

 ゴブリンや虫系の小物がほとんどだが、数が多かったりするので大暴れしているのだろう。

 アーテルシアを退治してアイミになりデモンズゲートは存在しなくなっているのだが、僅かに残った魔物からまた繁殖しだしているので困ったものだ。

 アイミにも尻拭いをさせなければ―― と思っていたが。

 当のアイミは領地内の道路舗装や補修を恐ろしい勢いで進めており、その時に出てきた魔物ぐらいは退治していると言っていた。

 やることはやってんだな。


---


 女王のマカレーナとラガへ訪問する日程が近づいてきたので、最終打ち合わせのために私一人だけで王都マドリガルタへ飛び立った。

 二泊三日の予定。

 衣装は執事のシルビアさんのように、上下スーツのパンツスタイルだ。

 それから帰った後、ラウテンバッハで飛行機の重要部整備をしてから本番である。

 まず女王と執務室で面会。

 女王は訪問がどうかというより、ルイスさんのプライベートビーチでのバカンスが楽しみで仕方がないようだ。


「マヤさん、いよいよね。私の水着、楽しみにしててちょうだいね」

「あ、はい」

「なあに? あんまり嬉しそうに見えないけれど、やっぱり若い()たちのほうがいいのかしらねえ」

「そ、そんなことはないですよ。陛下が一番セクシーな水着を着られるだろうと楽しみにしております」

「そう? まあ、あなたがデザインした水着ですからそれは当然ね。ロシータにもすっごい水着を用意したから」

「へ、陛下…… アレはやっぱり恥ずかしいです……」

「男はほとんどいないんだから、マヤさんに見せつけてあげなさい」


 女王はランジェリーで見慣れてるから、それより際どい水着なんてほぼ紐の水着ぐらいしか無いんだが。

 男で参加するのはガルシア侯爵とルイス・グアハルド侯爵ぐらいかな。

 後はアマリアさんとローサさんの子供たちか。

 ロシータちゃんの水着が楽しみだなあ。

 あの清楚そうな顔立ちですっごい水着なんて、ワクワクするしかない。ぐふふっ


「あの…… 女性になったマヤ様の方がスタイルよろしいですから、どんな水着でもお似合いかと思います」

「えっ!? 私に振る?」

「そうよ。あなた水着はどうしたの? 自分でデザインしてるんだから、どうせとっておきのを決めてるんでしょ?」

「いえ、まだです……」

「何ですって? せっかくここへ来たんだから、今日中に決めなさい!」

「はい……」


 なんで私が水着で怒られなければいけないのだろう。

 女王はそんなに私の水着が楽しみなのか?

 後でどうせアリアドナサルダの本店へ行って新しいデザイン画を渡さないといけないから、その時に選ぶとしよう。

 あまり適当に選ぶと女王が失望するから、前に渡したデザイン画の中で、水着の試作品が出来ていると良いなあ。


 マカレーナ、ラガへの訪問日程は今日からさらに半月後。

 女王を始めとして、付いてくる者でロシータちゃんは当然として、他にお世話役としてモニカちゃんとフローラちゃんも。

 本来のお世話役で、モニカちゃんの上司であるおばちゃんメイドが付いていくはずだけれど、女王の強い意向で若い二人が付いていくことになった。

 私の進言で、久しぶりにこの三人をルナちゃんに会わせてあげたいという気遣いと、可愛い女の子の水着をみたいという下心からである。

 王宮からは僅かにこの四人で、護衛は私を中心に元邪神のアイミや魔法使い最強クラスのエリカさん。

 パティも十分強いし、屈強なヴェロニカ王女、エルミラさん、スサナさん、マイ、オフェリアの錚々(そうそう)たるメンバーもいる。

 私たちに向かって襲ってくる輩がいたら、ただの命知らずだ。

 そしてこの全員、アマリアさんとローサさん、そしてルイスさんの六人の奥さんたちも水着を着るから、昔日本のテレビ番組でやっていた丸ごと水着女だらけのようになってしまう。うひょひょーっ

 話はこれで終わったので、執務室から失礼する。

 早くみかんちゃんに会いたいよー


「ではこれで失礼します。予定通り半月後に伺います」

「待ちなさい」

「はい?」


 女王がズカズカと私の方へ歩いてくる。何事だ?

 彼女は私に耳打ちで話しかけた。


(もう何ヶ月、我慢出来ないの。女でいいから今晩相手をしなさい)

(あ、はい……)


 何てことだ。四十代女性の性欲をなめていた。

 今晩はエスカランテ家で泊まるつもりだったけれど、夕食まで一緒にして王宮で寝るしかない。

 飛行機開発の金銭面などで世話になりすぎているから、私が女王の世話をするのは断れないのだ。


---


 アリアドナサルダの本店。

 ロレナさんがいるレジ裏の執務室にて。

 新しいデザイン画を描いたノートをロレナさんに渡すと、それを見て毎度のごとく鼻血が出そうなリアクションをしてくれる。

 今日のは特に変態、いやセクシーな反応だった。

 私の脳内にたくさん残っている日本のランジェリー販売サイトに載っているものを描き出しているので、私も大概であるが。


「あっ ハァ~ン ハァハァ…… ウッ はふぅ…… マ、マヤ様…… いつもながら最高です…… ビクビクッ」

「そ、それは良かったです……」


 プルプル震えちゃって、娘のレイナちゃんには見せられない姿だな。

 いやもう、わかってるのか。

 ありゃ妄想が爆発して、何もしていないのに昇天してしまっている。

 美人な貴族夫人が(もだ)える姿、なんて淫靡(いんび)なのだろう。


「それはそうと、陛下と遙かラガまで訪問されて、そこの領主様のプライベートビーチでバカンスをされるとか。良いですわねえ~ (わたくし)も行ってみたいですぅ」

「そうなんですよ。その打ち合わせのために今日は王都まで来たんです」


 地方の訪問を秘密にしているわけではないのだが、女王がアリアドナサルダの水着を買っているのだから、それをロレナさんに話すのは自然だろう。


「それで、先日水着の試作品が出来たところなんですよ。今出しますからね。ルンルン」


 いい歳してルンルンだって。

 そんなに出来が良かったのだろうか。

 ロレナさんはデスクの引き出しから箱を取り出し、蓋を開けて三着の水着を順番に掲げて見せた。

 水着のデザインは後でお楽しみということで、ここから音声のみ。


///


「どうでしょう? 素敵でしょう?」

「お、おおっ 絵から現実になるとすごいものだなあ。うーん、ここはちょっと際どいかもしれない……」

「そんなことありませんわ! 女でも見蕩れてしまいます!」

(女じゃなくて、ロレナさんが見蕩れてるだけじゃないかな)

「こっちは…… ほぼTバックのハーフバックか…… お尻の形が良くないと似合わないかな」

「マヤ様は素敵なお尻ですから絶対似合います! 是非履いてみて下さい!」

「えっ? 私が履くんですか?」

「どうぞ試着を! フンスッ」

「まあ、次のを見てから…… これは大人向けだな。アマリアさんやエリカさんが似合いそうだけれど、これはなかなか大胆。むふーっ」

「マヤ様でも似合いますよ! 何でも似合います! 完璧な、女性の皆が憧れる女体です!」

「あはは…… そうですか?」

「そうなんです。ささっ 今度は試着してみましょう! お手伝いしますぅ!」

「あああのっ ここでですかあ?」


 ロレナさんはデスクから飛び出し、興奮しながら私の上着に手を掛けた。

 ここで着替えるの?

 まあ、他に誰もいないし、ロレナさんと初対面で男の下半身を見られながらぱんつを着替えさせられたのだから、女性同士なら今更だろう。(第九十八話参照)

 この世界に来て、女性に裸を見られるのもだんだん抵抗が無くなって来てる。

 外でアーテルシアに尻を見せた時はまいったよなあ。

 後でサリ様までやってきてバカにされるし。(第百二十七話参照)

 いやしかし、慣れとは怖いものだ。

 ロレナさんは手際よく私の服とズボンを脱がし、ブラもパチンと一瞬で外し、次は両手でぱんつを下ろそうとしていた。

 ちなみにぱんつは白いスポーツタイプのTバックだ。


「フンガフンガッ ここにマヤ様の未知の世界がっ」

「女同士だからどうでもいいでしょう。自分で脱ぎますって!」


 と言ってるうちに下ろされてしまった。

 まじまじと股間を見られると、けっこう恥ずかしい……

 イスパル国では珍しい東洋系の身体だから、女の身体でも珍しいのだろうか。


「ああ…… 若い女の子って…… 良い香り……」

「完全におっさんじゃないですか。もう、自分で水着を着ますからっ」

「あら…… 残念です……」


 私はロレナさんから離れて一着目の水着を着る。

 うわー やっぱり股間が際どいなあ。

 ちょっとズレたら見えちゃいそう。


「あああっ なんてセクシー…… レイナにも着せてみようかしら」


 危ないことを言っているロレナさんは放っておいて、二着目に着替えた。

 姿見があるので、Tバックのようなハーフバックを履いている私の後ろ姿を見る。

 おお…… お尻がほぼ丸見えだ。

 自分で言うのもなんだが、これを外で履くのはエ・ロ・い。


「はぅぅぅっ 赤ちゃんのお尻みたいに食べちゃいたいくらい。顔を(うず)めたい……」


 もう知らん。三着目。

 こちらは大胆だけれど、他の二着よりは何というか常識的な範囲。

 自分で着ていて何だが…… むひょひょ。これは胸が大きい人向けだ。

 持って帰ってアマリアさんに奨めてみようか。


「美しいです…… 私ではとても着こなせません……」

「そういうことで、この三着は持って帰っていいですか?」

「はい、そのつもりでしたから。むふ」

「ではビーチで評判が良かったら商品化をお願いしますね」

「承知しました。むふっ むふふっ」


///


 スーツに着替え直して、アリアドナサルダを後にした。

 ロレナさん大丈夫かなあ。

 あの母親で、よくレイナちゃんや妹のアイナちゃんみたいな良い()が育ったものだよ。

 女になってからレイナちゃんたち三人娘と話していないから、また時間を作らなければ。

 さて、お次は(いと)しのみかんちゃんとシルビアさんに会うぞ!


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