第三百二十二話 セシリアさんの決断
9ヶ月半ぶりに連載を復帰しました。
今現在、ちょこちょこ読んで下さいっている読者様がいらっしゃるので、また書きたいという気持ちが湧いてきました。
新作の「二十五年後の勇者ヴァルデマール ~ビーチェと幼なじみジーノの成長~」が更新の中心になりますが、「俺も結婚したかったなぁ。~ランジェリーデザイナーになった異世界転生勇者の話~」もぼちぼち書いていきたいです。
同時進行はあまり良くないと聞いていますので、無理なくやっていきます。
2025.5.31 しじみ汁
私の現状を整理してみよう。
魔女アモールの性転換魔法で一時的に女になった私だが、男に戻るにはその魔法が人間には効かないとわかり途方に暮れた。
男から女になった時は触媒として、人間の女であるパティの唾液を体液として取り込み性転換が出来た。
戻るときは元々男の私は触媒を必要しないはずだったが、アモールの魔法ではそれが無効で女のまま男へ戻ることが出来ない。
アモールの話では恐らくこの魔法は魔族に最適化されていて、人間だから不具合が出たのではないかと言う。
ならば人間の男性の体液を摂取してやってみたらどうかという話に。
それをやるのは性転換魔法を人間向けに最適化する性転換魔法の書き換えが必要になり、それをやるためにアモールはエリカさんへ押しつけた。
元男の私自身が男性の体液を取り込むことは、気分的に遠慮したい。
エリカさんが実験する度にガルシア侯爵か誰か男性の血を抜かなければいけないというのも迷惑になるだろう。
そこで、セレスに住んでいる男の娘セシリアさんにお願いしてマカレーナへしばらく滞在してもらい、エリカさんの実験に付き合ってもらうことにした。
セシリアさんはまだ私が女になっていることを知らないが、彼、いや彼女の性格なら快く承諾してくれるだろう。
お礼はたっぷりしないとね。何を求められるのか若干不安ではあるが……
パティは間もなく十五歳。初めて出会ったのは十二歳だったから早いものだ。
おっぱいも母親のアマリアさんのように、だんだんとはち切れんばかりに成長している。
この国では十五歳になったら結婚出来る歳になるので結婚式の日取りまで計画していたのだが、私が女になってしまったことで式の話は一旦中止になってしまった。
私は子爵となり、幽霊が住み着いているとはいえ立派な屋敷が手に入った。
女のままでは結婚出来ないのでパティに申し訳ないし、ガルシア侯爵にもよく世話をしてもらっているので、その手前にも早く男に戻らなければならない。
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まず男へ戻るための第一段階として、セシリアさんをマカレーナへ連れてくること。
セシリアさんへ前もって手紙を出し、セレスへ訪問することを伝えていた。
だが私が女になっていることは伏せている。
手紙で私が女になってしまったと書いても意味が分からないはずなので、大事なお願い事があるとだけ伝えていた。
同行はパティのみ。セシリアさんと仲良しになったルナちゃんも連れて来たかったが、引っ越しする屋敷の片付けが忙しいし、セシリアさんがマカレーナへやって来たらいつでも会えるからと、遠慮するとのこと。
この日は朝から飛行機でひとっ飛びでセレスの屋敷に到着。
庭へ飛行機が着陸する音に気づいたラミレス侯爵夫妻と執事のロドリコさん、そしてセシリアさんが玄関まで出迎えてくれた。
私がこんな姿なので、まずはパティから挨拶。
「ご無沙汰しております、ラミレス侯爵。奥様とセシリアさんもお元気そうでなによりです」
「ようこそいらっしゃいました、パトリシア殿。あの、マヤさんは……」
侯爵がパティの隣に私がいない不自然さに気づく。
私が機内で荷物の整理をして先にパティが出ることはよくあるが、相手は侯爵だからさすがに毎度そうしていては失礼だろう。
「はい。先だってマヤ様から大事なお話があると手紙を差し上げたことなのですが、結論から申しますとこちらの女性がマヤ様です」
「どうも、マヤです。魔女アモールの魔法で女になってしまいました。あははは……」
「ま、魔女!?」
「まあ!」
「ああっ なんとおいたわしやマヤ様!」
「マヤ様…… なんてことでしょう……」
アモールの名を出せば、デタラメな魔法でもたぶん信じてくれるだろうと思っていたので、四人の反応を見ると嘘ではないと受け取ってくれたようだ。
何故かロドリコさんが一番びっくりしていたが。
「パトリシア殿がまさか嘘を言うわけがないし…… しかしあの魔女アモールが…… 何がどうしてこうなったのかね? いや、ここで話もなんだから中へ入ってくれたまえ」
「はい、お邪魔させていただきます」
こうして屋敷の応接室へ案内され、ロドリコさんを除いた五人でお話。
ちょっと変わったベテランメイドのローサさんがお茶を入れてくれたが、男の私がいないことで不思議な顔をして応接室から外す。
「それで早速だが、君が女になってしまった経緯を話してくれるかね?」
「はい、承知しました」
私はこう説明した。
屋敷で働いているサキュバスメイドの性的な攻撃を避けるためにアモールの提案で一時的に女になったが、男には戻れなかった。性転換魔法が魔族向けで、人間に使うには一部問題が発覚したということを。
実際は性的な攻撃を受けまくっていたのだが、言えるわけがない。
ましてパティが横にいるのでは。
「な、なるほど…… 魔族の国とは想像以上なのだな……」
「よくお顔を見ると、マヤさんの面影がありますのね。それにしても可愛らしくなって……」
「お母様、私もそう思います。ポッ」
セシリアさんが顔を赤くしてるが……
あれ? セシリアさんって女の私でもイケるの?
確かに男と女で正常な感覚ではあるが、私たちの事情はいろいろと複雑である。
「そこでセシリアさんにお願いしたいことがあるんです」
「はい、お手紙で伺っておりましたが、それは何でしょう?」
「詳しいことは後で二人になって話したいのですが…… 私が男に戻るにはセシリアさんがどうしても必要なんです。そこでセシリアさんにはマカレーナへ来て頂き、しばらく滞在して下さいませんか?」
「えっ? 私がマカレーナへ?」
「そうです。前に来たエリカさんが魔女の性転換魔法を改良するので、セシリアさんに手伝って欲しいのです」
「私がですか? 私は生活魔法しか使えないのですが……」
「魔法のレベルはこの際関係ありません。何と言いますか、私に対するセシリアさんの気持ちが魔法の改良に大きく作用されるんですよ」
「私の気持ち…… そんなことが?? 魔女の魔法とは不思議ですね……」
セシリアさんは少し間を置いて、自分の両親に話しかけた。
「お父様、お母様…… 私、マヤ様の所へ行こうと思います! よろしいでしょうか!?」
「おまえはずっとここにいたんだ。別の場所でいろいろ見て経験を積んでみてもいいと思うよ」
「そうよ。あなたが強く言うなんて、少しびっくりしたわ。私も賛成よ。マヤさん、パトリシアさん、娘をよろしくお願いします」
侯爵夫妻は二人して私とパティに頭を頭を下げた。
セシリアさんは彼自身の事情でいじめられた経験があり、あまり外へ出てみようという気持ちが湧かず箱入り娘ならず箱入り息子状態だった。
それが初めて、家から出て別の土地へ行ってみようという気持ちになったのだから、ご両親としても嬉しかったのだろう。
「どーんとお任せ下さい! 帰って来る頃にはもっと素敵な淑女になってますよ!」
と、パティがやる気満々で夫妻に言う。
彼女はセシリアさんとルナちゃんと一緒に買い物へ出掛けて(第百二十四話参照)、それで仲良しになったらしい。
マカレーナでの私生活はこの二人に任せてもいいだろう。
「うふふ、よろしくお願いします」
「実は最近マカレーナでお家断絶した男爵邸を手に入れることが出来てね。大分片付けが進んでいるし部屋がたくさんあるから気兼ねなく暮らせるよ」
「まあ素敵! 楽しみです!」
「おお、ついにマヤさんも屋敷を。叙爵してからなかなか屋敷に住まわれないから心配しておったところだ」
「いやー ようやく夢が叶いましたよ。ハッハッハッ」
幽霊女が住み着いていることは黙っておこう。
セシリアさんは今日のうちにでもマカレーナへ行きたいというので、飛行機に入りそうな洋服ダンスは丸ごと持って行くことにした。
ベッドはこちらで用意できるので持って行かない。
セシリアさんも、タンスの引き出しの中がぱんつのコレクションのようになっているのを、私は見てしまった。
「キャッ マヤ様ったら…… イヤですわ」
それをセシリアさんは恥ずかしがってるのか喜んでいるのか…… わからん。
グラヴィティで浮かせて運ぶだけなので、楽々である。
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せっかくなので昼食を呼ばれてからマカレーナへ帰ることにした。
息子、いや娘の門出なので母親のイメルダさんが腕を振るうらしい。
料理を作ってくれている間、私はセシリアさんと部屋で例の話をする。
魔光灯が光ってるものの、薄暗くて何となく妖しい雰囲気だ。
二人きりになって、セシリアさんはその気になってしまうかも知れない。
その時はなるようになれである。
セシリアさんとは分身君をクロスした仲だし、女性より綺麗なのだから私はだんだんと抵抗が無くなってきている。
腰回りなど体つきが女性に近く、胸と股間さえ見なければ女性そのものだ。
「それでさっきの話の続きなんだけれど……」
「はい」
「その性転換魔法には触媒が必要なんだ」
「はい……」
「その触媒とは、男の体液が必要で……」
「たた、体液!?」
「血液とか、唾液とか…… 血液の量はそれなりにたくさんいるらしいから、必然的に唾液ということに……」
「まあ!」
「血液を抜くのは大変だから、唾液を…… 男で頼めるのはセシリアさんしかいないんだよおおっ」
半分演技であるが、セシリアさんに泣きつくように懇願してみた。
彼女にもこれに反応できる母性本能があるのだろうか?
「そういうことでしたか…… 元々男性のマヤ様が他の殿方の唾液を摂取するのはお嫌でしょうね。それで私と……」
「話が早い! さすがセシリアさん!」
「つまりマヤ様とたくさんキスが出来るのですね! 勿論承諾しますわ!」
「ありがとうございますぅ! たくさん唾液が必要ですから…… あはは」
「そうなんですね。それでは早速……」
「え?」
セシリアさんは私の両肩を押さえ、積極的に顔を寄せてきた。
いや今しなくてもエリカさんが魔法の施術をする時に…… あっ
――むちゅうぅぅ
キスしちゃった。
私が女の状態でセシリアさんとするのは初めてで、それは全く自然なことなんだけれどやっぱり複雑な感じ……
それにしても今日のセシリアさんはグイグイと来る。
荒々しく舌が入ってくるが動きは未熟。
さすがに女王やアマリアさんの熟練キスのようにはいかないが、頭がとろけてきそうだ……
――ジーーーーッ
ん? 急に気配を感じたぞ?
「むふーーーぅ むふーーーぅ」
え? 誰かいる?
私はセシリアさんを引き離した。
「はふっ マヤ様……」
「誰かいる……」
私は気配を感じた方へ目を向けた。
見慣れた顔が……
「パティ!?」
「キャッ?」
「私に構わず、どうぞ続きを! むふーっ むふーっ」
「えええ?」
パティが私たちのすぐ横でしゃがんでいて、キスしている様子を観察していた。
これはきっと潜伏の魔法【レーテント(Latent)】を使っていたに違いない。
気配も魔力も感じなかった。まるで路傍の石だった。
しかし、あれほど他の女と仲良くしているのを焼き餅してるのに、どうして?
あっ そうか!
「パティ、もしかしてアレな小説の……」
「そうです! 美しい男同士のイチャラブは歓迎です! むふーっ」
「いや私、今は女だし」
「マヤ様の精神は男ですから、セシリアさんも男で美男子同士の愛なんです! むふーっ」
「そ、それにしたってパティがいると恥ずかしいよー」
「あら、私はパトリシア様に見られていても大丈夫ですよ。うふふ」
「えーっ!?」
「そういうことです、マヤ様。さっ セシリアさんとベッドへ!」
「ちょちょちょちょ待ってえ!」
なんて言ってるうちに、二人にベッドへ押し倒されてしまった。
二人の女の子…… いや、一人は男の娘なんだけれど、これは喜ぶべきなのか?
「パトリシア様、私にマヤ様とのキスをご教授下さいますか?」
「まあ! そういうことでしたら喜んで!」
「ええっ?」
パティは私の腰の上に乗っかり、私の顔を掴んで一目散にキスをした。
今日のパティはらしくないよお。
――むっちゅううぅぅぅぅぅっ
パティの髪の毛が私の顔にかかり、イイ匂いがする……
彼女もキスは上手くないけれど、一生懸命唇に吸い付いてきて頭の中がフワッとする。
私たちの顔のすぐ近くで、セシリアさんがジーッと観察していた。
「ああっ 私も興奮してきました。あら…… マヤ様のお胸が素晴らしいです。私も欲しいですわ。羨ましい……」
と、どさくさにセシリアさんは私の胸を揉んでいた。
ううっ 気持ち良い……
もうどうにでもなれ……
そんなことが昼食時間の直前まで行われた。
さすがに裸にはなっていなかったが、呼びに来たベテランメイドのローサさんに見られてしまう。
「お楽しみのところ申し訳ございませんが、昼食のご用意が出来ました。むふふっ」
むふふってなんだよ!
まったく変わったメイドさんだ。
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(ローサ視点)
まさかセシリアお嬢様があそこまで進んでおられるとは。
しかしあの女性、マヤ様によく似ている……
そうですか! マヤ様はきっとお嬢様に合わせて女装しているのですよ!
ああっ 何てお嬢様思いの素敵な方なんでしょうか。
マヤ様の女装もお嬢様に引けを取らずなんて可愛らしい!
どんなぱんつを履いてらっしゃるのでしょう……
マヤ様がもし女物のぱんつを履いていたら……
想像しただけで香しいニオイがしてきます。くんかくんか
いけません、食事の準備の途中でした!




