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第三百二十一話 久しぶりの耳年増三人娘

 翌日にかけて私はエスカランテ家で親子三代水入らずで過ごすことが出来た。

 一夫多妻制じゃなくパティたち他の女の子に対して責任がなければ、このままエスカランテ家へ養子に入って生活しても良いのではないかとさえ思う。

 それくらい子爵夫妻も温和で居心地が良いのだ。


 ミカンちゃんはおっぱいを飲んだらベビーベッドでお(ねむ)の時間。

 シルビアさんも育児の疲れがあってかベッドでお昼寝。

 その間、私はシルビアさんの部屋でアリシアさんのランジェリーのデザイン画を描くことに没頭することが出来た。

 この調子なら明日にでもアリアドナサルダへ提出が出来るだろう。


---


 一晩過ごし、お昼までにはデザイン画が完成。

 見た目はローライズのセクシーなランジェリーに見えるが、クロッチの部分を薄い布で重ねてブリーフの穴のようにしてある。

 だから常用の下着としても使えるので、これが標準になっても良いくらい。

 夕方に王宮へ行く前に、出来たデザイン画を持ってアリアドナサルダへ行くことにした。


 アリアドナサルダのレジに行くと店長のアリシアさんに会うことが出来たので、そのままデザイン画を描いたノートを手渡した。


「――それでは拝見させて頂きますね」


「どうぞ」


 アリシアさんはノートを開いて穴開きパンツの絵を見ると、わなわなと手を震わせ目がいってしまい、ヤバげな顔になっている

 デザインを考えるためアリシアさんにスカートを上げさせあんなことをしたのに、期待外れだったのだろうか。


「ここここれは…… はふはふはふ…… きゅうぅぅぅぅん!」


「ちょちょっと…… お客様の目がありますよ」


 アリシアさんは興奮して(もだ)えるように声を上げた。

 近くで会計をしているオバサン客とレジ係のカロリーナさんはギョッとしてこちらへ振り向いた。


「ああっ 何でもございません。失礼しました……」


 アリシアさんはオバサン客や店内に向かってペコペコ頭を下げていた。

 ロレナさんといい、アリアドナサルダの人はどうしてぱんつの絵を見ただけで妙な反応をするのだろう。


---


 ちょうどその頃、学校帰りのレイナちゃん、レティシアちゃん、エステラちゃんの三人娘がアリアドナサルダにやって来ていたが、私は知るよしも無かった。

 彼女らがいる売り場は勿論ロベルタ・ロサリタブランドのブースである。


「あーん! ピンクいちごかわいい! こっちのヒラヒラもかわいいですわあ!」


「はわわっ レイナちゃん、このメロンとトマトもかわいいよお!」


「二人ともまだまだ子供ね。私はこういうのを選ぶわ」


 レイナちゃんとレティシアちゃんは年齢に相応しい可愛いランジェリーを手に取りながらはしゃいでいた。

 エステラちゃんは三人の中でも特に耳年増(みみどしま)なので、露骨にセクシーなランジェリーを選ぶ傾向がある。

 ポルラス家のメイドさんは洗濯の時にどう思っているのだろうか。


「わっ 前がほとんど透けてる……」


「はわわっ こっちは前の三角がすごく小さい……」


「ふふふ…… マヤ様を振り向かせるためにはこれくらいの物を身に着けないとね」


 エステラちゃんは二つのセクシーランジェリーをレイナちゃんとレティシアちゃんに見せつけた。

 レイナちゃんはロレナさんの娘ということもあってセクシーな下着自体は見慣れているが、友人であるエステラちゃんがそういうのを履いて私を誘惑しているのを想像して顔を赤くしていた。

 この子もむっつりスケベだから…… 分身君も見られたしな。(第九十八話参照)

 レティシアちゃんは元々ウブなので、顔を赤くしていてもレイナちゃんとは違う意味である。


「お母様からマヤ様が魔族の国からもうお帰りになったと聞いたけれど、早くお会いしたいなあ」


「そうね。今頃マカレーナで向こうの人とイチャイチャしてるんだわ」


「はわわわ…… マヤ様……」


「もうエステラちゃんったら……」


 露骨に嫉妬しているエステラちゃん。

 こうして三人は好きな下着を選び終えて、レジへ向かった。

 ちなみにレイナちゃんは身内でも試作品以外はちゃんと払っている。


「え? 今レジ前にいる人、マヤ様じゃないかしら?」


「レイナったらよく見てよ。体つきがどう見ても女の人よ」


「はわわっ あの…… マヤ様はお尻が綺麗だからあの女の人はよく似てる……」


「なあにレティシアったらマヤ様のそんなところを見てたの? スケベねえ」


「はぅぅぅ…… エステラちゃん、違うよお……」


「ああっ あの方が店長とお話ししている声は―― やっぱり女の人よね。

 でも本当にマヤ様に似てる……」


---


 私がレジで店長のアリシアさんと離しているところをレイナちゃんたちに見つかってしまった。

 だが、私が女になっていることなんて考えもしていないはず。

 いや、ロレナさんは知っているから娘のレイナちゃんにも話が伝わっているのは十分に考えられる。


「じゃあ店長。私はこれで失礼します」


「まあ、今日は代表がおりますけれどお話されていかれませんか?」


「これから王宮へ行かねばなりませんので、またの機会に」


「そうでございましたか…… この試作品は早めに作るようにします。フフフ」


「ははは…… 良い物が出来るよう期待しています」


 アリシアさんに挨拶をして後ろへ振り向くと―― ギョッ!?

 レイナちゃん、レティシアちゃん、エステラちゃんが立っていて私をジッと見ていた。

 まさか私と気づいて? 

 いや、あの表情は疑っている表情だ。

 ここで捕まると王宮へ行くのに遅れてしまうから、他人の振りして自然に去ろう。


 ニコッ


 私は三人娘に軽く営業スマイルをして、スタスタと店外へ出た。

 追いかけてこない。うん良し!

 さっさと王宮へ向かおう。


---


「見た!? マヤ様にそっくりだけれど、可愛い~」


「はわわわっ 私はすごく綺麗で格好いいお姉さんに見えたよっ」


「あんなに胸が大きいなんて、悔しいわっ」


「エステラちゃん…… そこなの?」


 と、三人娘は口々に私のことを言いながら、下着を持ってレジへ向かった。

 高位な貴族令嬢でも、はしゃぎっぷりは女子学生らしい。


「あら、お嬢様と皆様。いらっしゃいませ」


「店長。さっきいらした女性のお客様はどういった方なんでしょうか?」


「お嬢様、代表からお聞きになりませんでしたか? マヤ様ですよ」


「店長―― 意味がわかりませんけれど……」


「正真正銘のマヤ様なんです。

 魔族の国で魔女に魔法を掛けられて女の子になったそうですよ。

 何でも、魔法が失敗して男に戻らなくなったとか……」


「「「えええええええええええっっっっ!!??」」」


 三人娘が大きな声で叫ぶので、またカロリーナさんや会計中のオバサンがびっくりする。

 レジ裏の部屋からドタバタと駆け寄る音がする。ロレナさんだ。

 叫び声に気づいてレジまで出てきた。


「何事ですの!? あら、レイナいたの?」


「お母様! マヤ様が女の子になったなんて全然聞いてません!」


「え? マヤ様どこどこ!?」


「代表…… マヤ様は先ほどまでいらっしゃいましたが、王宮へ急ぎの用があるとのことでもうお出かけになりました」


「そう…… 残念ですわ……」


「マヤ様は私のためにデザインして下さり、このノートをお持ちになりました」


 アリシアさんが私のデザイン画ノートをロレナさんが受け取り、直ぐさま新デザインの穴あきぱんつを絵を見る。

 ロレナさんはいつも通りの反応で、ノートを持っている手を震わせながら鼻の穴が開いて興奮していた。


「なっ…… マヤ様はどこまで最高のセンスと才能をお持ちなのかしら!

 アリシアさん! すぐに作らせますわよ!」


「はい!」


 二人ともレイナちゃんたちの存在を忘れ、すぐに執務室へ引っ込んでしまった。

 仕事熱心―― というより、欲望に駆られて目の色を変えているだけである。

 本当にこの国の女性と来たら……


「ああっ もうお母様ったら……

 マヤ様がデザインした下着のことになると夢中になるから……」


「はわわ…… 魔族ってすごいのね。人間の性別を変えてしまうなんて……」


「確か男に戻れないって聞こえたわよ! 私困るわ!」


「エステラちゃん、さっきのマヤ様の様子では問題にしていないかも知れないよ。

 何か戻る方法を画策(かくさく)されてるのかしら?」


「そうだといいのだけれど……」


「ま、マヤ様も女の子だから、やっぱり可愛い下着を着けているのかな……」


「わっ レティシアったらまたそんなことを考えていたのね。スケベ」


「ふぇぇ…… そんなんじゃないよお」


「マヤ様のことだからきっと、ご自分でデザインしたすっっっごいランジェリーを着けてらっしゃるに違いないわ」


 などと三人娘は好き放題言いながら、カロリーナさんに会計をしてもらってガヤガヤと店を出た。

 ちなみに私が今履いている下着は、アスモディアで手に入れた白の綿パンとブラである。

 まだ持っている数が少ない上に、洗濯済みですぐ使える下着が少なかっただけだ。


---


 再び女王の執務室。

 ガルシア侯とグアハルド侯に渡す二通の親書を受け取った。

 これで用は済んだので、エスカランテ家へ帰って翌朝マカレーナへ向けて出発する。

 その前に、女王にお願いをしておく。


「陛下のお世話役に、モニカとフローラを連れていくことは出来ませんか?

 せっかくマカレーナにいるルナとも再会して、四人が揃いますから」


「そうね…… 私は構わないけれど、給仕長がうるさいのよ。まあ掛け合ってみるわ」


「ありがとうございます」


「それで昨日、ロレナに水着のカタログを持って来させて注文したのよ。

 とってもセクシーだから楽しみにしてなさいね」


「はあ…… まあ……」


 どうせ歳に似合わない水着だろ。

 それに下着姿も裸も見慣れてるから何とも思わん。

 ホクロやどこかのシワの数すらわかるくらいだ。


「なあにその反応。あなたにはやっぱり若い()のほうが良いのね。」

 ロシータにはもっと刺激的な水着を選ばせたから期待してなさい。ふふふ……」


「へ、陛下! ううう…… 恥ずかしい……」


「ルナちゃんたちにもすごい水着を着てもらおう。四人揃って…… ぐふふ」


「マヤ様は女の子になってもスケベなんですね!」


「マヤさんを知ってる女性はみんなそう思ってるでしょう。オッホッホッホッ」


「はぁ…… つい口に出てしまった。自重します……」


---


 何やかんやで、王宮の用事はこれで完了。

 今晩は女王から夜のご奉仕を命ぜられるかと思ったがそんなことは無く、エスカランテ家へ戻りシルビアさんとミカンちゃんとでゆっくり過ごせた。

 ミカンちゃんは産まれてから夜泣きはあまりしない子だそうで、シルビアさんの負担が軽くて安心した。

 ああ…… 寝顔が天使過ぎて私はメロメロだ。

 毎日ミカンちゃんの顔を見たいけれど、パパはお仕事を頑張らなくてはいけない。

 なるべく時間を作って会いに行くからね。

 

 ――他の女の子たちと結婚して子供たちもたくさん出来たらどんな生活になるのだろう。

 サリ様の神通力のせいか、所構わずたくさんの女の子と責任を取らないといけないほど仲良くなってしまった。

 パティと出会った当時、一夫多妻制は単にハーレムみたいでウハウハだろうと思っていたが、そればかりでは無いことがよくわかった。

 一人一人平等に愛することに気苦労があったり逆に助けられたりもした。

 エリカさん、ルナちゃん、モニカちゃん、リーナ、エレオノールさんについては将来をはっきりさせておく必要があるが、パティ、マルセリナ様、エルミラさん、ビビアナ、ジュリアさん、ヴェロニカ、シルビアさん、この七人はお互いが結婚の意思をはっきりと示しており、絶対に幸せにしてあげたい。

 あれ? セシリアさんはどうしよう?



 第八章一部 完


 ここまでお読み頂いてありがとうございました。

 2024年8月14日現在、どうしても新作を書きたい気持ちが湧いてしまい、この『俺も結婚したかったなぁ。~ランジェリーデザイナーになった異世界転生勇者の話~』をいったん更新休止すべきかローペースで更新すべきか悩んでいます。

 練習のつもりで書いたつもりが157万字という大作になってしまいました。

 この物語の主目的は邪神エリサレスを倒すことにあり、すでにラストの構想は考えていますので、きちんと終わらせたいですね。

 新作はファンタジーものですが異世界転生ではなく、チートやスキルなど流行りのワードを使うのは極力避け、きちんと話を練った物にしたいと思っています。

 今後とも【しじみ汁】の作品をよろしくお願いします。


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