第三百二十話 甘いジュレのような唇
ガルベス家、リーナ嬢の部屋にて。
私とエレオノールさんはリーナにおっぱいを揉まれてびっくり。
リーナはエレオノールさんのおっぱいがトロリとしているというので気になって仕方がないが、それ以上のことは当分お預けになるのが残念でならない。
「ああ、まあ…… そういうことで今日は二人の顔を見に来ただけなので、これで失礼するよ」
「なんじゃ。もっとゆっくりしていけ」
「お勉強のほうが大事でしょ。また会えるし、今は身内の大魔法使いに早く男に戻れるように魔法を改良してもらっているところだから。リーナは男の方が良くない?」
「うーん……」
「お嬢様、マヤ様を困らせてはいけませんよ」
「――わかった。マヤ、私の前に座れ」
私はリーナに言われたとおり、彼女の前に跪いた。
するとリーナは私の頭を掴んで、おでこにむっちゅううぅぅとキスをする。
おでこにキスマークがついたらどうしようと思うくらい吸い付かれた。
リーナは寂しげな表情でこう言う。
「また会える日を楽しみにしておるぞ」
「元気でね」
私はリーナの頭を撫でながら立ち上がり、エレオノールさんの顔を見た。
心配そうな表情をしている。
ここで二人きりだったら、熱いベーゼを交わすところなのだが。
まあ女同士で誰もが出来るわけではないから、ニコッと笑顔を向けた。
「エレオノールさんもお元気で」
「マヤ様――」
「ほれ、エレオノールもマヤにキスをしろ」
ドン!
「ええっ!?」
リーナが不意にエレオノールさんのお尻を強く押すものだから、エレオノールさんがびっくりして私の方へ倒れ込む。
私は彼女を優しく受け止めたが……
んちゅ――
ああ…… まるで甘いジュレのような唇。
背の高さが同じなうえに顔同士が真正面になってしまい、ラブコメお約束の展開に。
ほんの二、三秒であるが……
すぐにエレオノールさんの肩を掴んで離した。
男の時にキスをする時より感覚が違うのは、気のせいだろうか。
もっと時間があればちゅるんちゅるちゅると食べてみたいが、リーナもいるし何だか小っ恥ずかしくなってしまった。
「あの…… マヤ様……」
「ああっ おまえたちばかりズルいぞ! 妾にも口キッスしろ!」
エレオノールさんは頬を赤らめて両手先で唇を押さえていた。
嫌われてはなさそうだな。
リーナに構っているとまた面倒なことになるからこれで退散する。
「今日は女同士だからノーカンかな。あははは……
じゃあ私はこれで失礼しますう!」
「待てマヤあああ!!」
私はリーナの部屋の窓から飛び出して、一目散に空高く上昇した。
リーナは窓辺で大声を出して何か言ってるようだが、もう聞こえない。
また機会を作ってお邪魔することにしよう。
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今日の目的はエスカランテ家での滞在だが、その前にもう一件。
私個人の重要取引先であるアリアドナサルダ本店へ向かった。
前回からまだ一週間も経っていないのだが、仕事のことなので覗けるときにそうしている。
日本みたいにスマホですぐ連絡が取れないからね。
そして店長のアリシアさんに会うことが出来たので、ロレナさんの執務室へ案内される。
ロレナさんは、さっき女王に水着の件で王宮へ呼ばれていったので入れ違いで不在だ。
「マヤ様、ちょうど良かったですわ!
予定より大変遅れまして申し訳ございません。
以前、プレゼントのためにご注文された品が出来たんです!」
それは私がパティとカタリーナさんのためだけにお揃いのデザインを描き上げ、アリアドナサルダに注文した物だ。
アスモディアへ行くさらに前、ミカンちゃんが生まれる前のことだったのですっかり忘れていた。(第二百二十三話参照)
アリシアさんがデスクに置いていた高級感ある白い化粧箱を二つ、私が座っている所まで持ってくる。
くっついてはいないが、すぐの隣に座っているのでマダムの妖しい香りがする。
座ると制服のタイトスカートがずり上がって太股丸出しになり、ぱんつが見えそう。
キャバクラのエロいオヤジみたいにすりすり触ってみたいが……
――んー、まあ早速箱を開けて見させてもらう。
「おお、流石ですね。想像以上の良い出来です」
ブラとショーツの上下セットで、レースをふんだんにあしらっているが、透けを無くし清楚且つ高級感あるデザインにしている。
カタリーナさんが純白で、パティのは淡いピンク。
ショーツはハーフバックにしてある。
パティにはちょっと早いかも知れないが、身体ばかり成長が著しいのですぐに似合うようになるだろう。
「マヤ様のために最高の物をお作りしようと、我が社で一番の職人が丹精込めて作り上げました。
ただ身体の調子が悪かったそうで、それで遅くなり……」
「とんでもない! 素晴らしいですよ! その方に是非報いたいです!」
私は懐から金貨三枚を取りだした。
三十万円相当なのでランジェリーの代価としては多すぎるかも知れないが、その技術を称えたい。
「アリシアさん、これをその方に……」
「マヤ様、これは私どもからのお礼の品にしたいのです。
ですから頂くわけにはまいりませんわ」
「いえ、いけません。受け取って下さい。
私は一生懸命作って下さった職人の方に報いたいのです」
「困りましたわね…… どうしたら……」
「では私がその職人の方に直接お会いして、ロベルタ・ロサリタから特別賞としてお渡ししたいと思いますが、如何ですか?
幸いしばらくの間は王都を往復する機会が多くなりますから」
「それは良い考えですね! わかりました。
その者は別の場所で働いておりますので、日程はマヤ様に合わせて追って沙汰をしましょう」
「よろしくお願いします」
そういうわけでランジェリーが入った箱を紙袋に詰めてもらった。
二人に渡す前に、じっくり眺めて妄想しちゃおう。うへへ
是非カタリーナさんには、アウグスト王子との勝負下着に使って欲しい。
おおっ これなら妄想が捗る!
「マヤ様、どうかなさいました?」
「いえ、何でもありません。あははは……」
「マヤ様はせっかく女性になられたんですから、同じデザインのものを作らせて頂けませんか? 完成品は職人から直接お渡しするということで」
「え!? いいんですか? それは是非ともお願いしたいです!」
オーダーメイドの下着なんて初めてだな。
気に入った下着を着て楽しむなんてことは男ではなかなか無かったことだ。
ハマってしまうと男に戻りたくなくなるかも知れない。
「色はどうしましょう?」
「うーんと―― じゃあ黒で」
「承知しました! 絶対お似合いですよお! オーッホホホホ!」
アリシアさんは興奮気味で高笑いをしていた。
お店での堅そうな印象だと想像も出来ないのだが、前回私がアリシアさんのためにロベルタ・ロサリタブランドの下着をデザインすると言ったら目が眩んであっさりぱんつを見せてくれたっけ。
あっ そのデザイン画を描いてくるのを忘れてた! (第三百六話参照)
バタバタしていたが、全く描く時間が無かったわけではない。
「それで思い出したんですけれど、先日お話ししたアリシアさんのためにデザインすると言っていたんですが、まだ出来ていないんです……」
「とんでもないです! ついこの前のことではないですか。
ゆっくりで構いませんので……
デザインして頂けるだけで、もう夢のようです! ハァハァ」
「それなら良かったです……」
その話をしたらアリシアさんはさらに高揚し、性的に興奮している顔になっている。
一体どうしたというのだ?
「マヤ様…… 私、反省したんです。今日の下着、ご覧頂けますか?」
「ほえ?」
アリシアさんはソファーから立ち上がり、スカートの裾をたくし上げる。
まさか今日もぱんつを見せてくれるとは思わなかった。
綺麗な女性のぱんつならいくらでも見ますよ!
「ほほぅ、これはロベルタ・ロサリタブランドのショーツですね!」
アリシアさんが履いていたのは、私がデザインしたぱんつだ。
ハーフバックでサイドが紐のように細く、鼠径部がかなり際どいので肌が綺麗な女性でないと着こなせない。
透けてはいないが黒薔薇のレースが施されている大人のぱんつである。
完璧だ! 美しい鼠径部に私は目を奪われてしまった。
「そうなんです…… これを履いたらですね、旦那が三年ぶりに……
思い出したら…… ハァ ハァ ハァ」
アリシアさんはスカートの裾を上げながら顔を赤くしてデレている。
その様は、彼女が見せたがりのMっ気があるように思えた。
そうかそうか。あれからとうとう夜の仲良しにマンネリだった旦那さんを誘うことが出来たんだな。
ランジェリーのデザインで夫婦が仲良しになれば、この国の人口増加に貢献できそうだ。
「それなら旦那さんがもっと喜ぶデザインを考えなければいけませんね」
「は、はい! よろしくお願いしますぅ!」
「それならばもう一度、アリシアさんの下半身をじっくり拝見させてもらえますか?」
「勿論です!」
今ここには私とアリシアさんしかいない。
前は出来なかったことをさせてもらおう。
就活生にイケナイことをする悪徳面接官オヤジみたいだけれど、私は女だし彼女も望んでいることなので合法だぞ。
「では失礼します」
「やふんっ」
私は自分の鼻筋をアリシアさんの股間にハマるように押しつけた。
人妻のフェロモンの香りがフワッと鼻をくすぐり、それから汗の匂いとほんのりツンとしたものが香る。
スゥゥゥハァァァァ
ああ…… やってることは変態だよね。
でもいいんだ。私は幸せだ……
「あのぅ…… これで本当に素敵なランジェリーが出来上がるんでしょうか?」
「ふがふが…… 今どんどんインスピレーションが湧いてきてますよ。ふがふが」
「そうなんですね! 楽しみですぅ!」
これは本当に何か来そうだ。
何というか、こう…… 喉まで出かかっているアレだ。
もうちょっとなんだ。
「アリシアさん、今度はお尻を向けてもらえますか?」
「え? はい」
アリシアさんがスカートの後ろをたくし上げると、黒薔薇レースのハーフバックに包まれたやや小さめのお尻が現れる。
私は同じように、鼻筋をお尻の割れ目にハマるよう押しつけた。
まるでそのためにあったかのように、鼻筋と割れ目がぴったりフィット。
「うう…… お尻にマヤ様の息が…… 変な感じですぅ」
前の方より、アリシアさんの肌の匂いをより一層感じる。
スゥゥゥハァァァァ
む!? これだ!!
「ふがふが…… 考えがまとまりました! ふがふが
これで新しいランジェリーが出来上がりそうです! ふがふが」
「まあ! マヤ様にこうしてご覧頂いた甲斐がありました!
はぁぁぁぁ 嬉しいですぅ!」
私はアリシアさんのお尻から離して、二人とも体勢を整えた。
穴だ! 露骨に見えるただの股割れショーツじゃなくて、隠れた穴を作る!
男性用ブリーフの穴を女性用に改良し、左右に開く楽しみを付加するのだ!
機能的には違うのだが……
「アリシアさんのためだけにと思っていたんですが、もし気に入ってもらえれば量産化したいのですがよろしいですか?
恋人や夫婦が仲良しになるすごいアイディアなんです!
アリシアさんのおかげで新商品が出来上がるんですよ!」
「し、新商品…… 私の…… はぅ…… 感激しすぎて立ち眩みが……
願ってもないことです。よ、よろしくお願いします……」
「ああ…… 大丈夫ですか? 頑張ってデザイン画を描きますからね」
私はアリシアさんをもう一度ソファーに座らせて、退室した。
思いついたのは脱がす楽しみとお手軽さを兼ね揃えた、我ながら良いアイディアだと思う。
よーしっ 時間があるときにノートを取り出して徐々に形にしていこう。
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ようやく目的地のエスカランテ家へ到着。
今朝王宮へ着いたときに使いを出してもらっているので、昼食の用意に間に合った。
エスカランテ子爵夫妻は外出中とのことで、早速シルビアさんと二人で昼食を取ることにする。
ミカンちゃんはメイドのパウラさんが面倒を見ているそうだ。
食事が終わったらすぐ会いに行くぞ!
「それにしても急にどうされたんですか?
この前マカレーナへ帰られたばかりなのに……」
「元々陛下からガルシア侯とグアハルド侯へ親書を届けることになっていたから、その返事が思っていたより早かったのでこうしてまた届けに来たわけさ」
「それで陛下はどんな内容の親書を送られたんですか?
ああ、今私は秘書官ではありませんから機密内容を聞いてはいけませんね」
「大した内容ではないよ。
陛下がマカレーナとラガを訪問することになってね。
それでグアハルド侯がビーチリゾートへ陛下を招待したもんだから、陛下はとても乗る気で十日後にはもう出発することになったんだよ」
「まあ。そんな大きな行事をするのに僅か十日なんて……」
陛下にも困ったものですね」
「ガルシア侯とグアハルド侯の慌てふためく様子が手に取るように想像出来るよ」
たぶん街中をパレードしたり、実際運営するのは侯爵サイドだから大変だよね。
私は護衛をしていれば良いので、その他のことは丸投げである。
「もし良かったらシルビアとミカンちゃんも一緒に来てみる?」
「うーん…… この子がまだ小さいですからね……
一歳ぐらいになればもう少し動きやすくなるんですが……」
「そうか。そうだよね。その時になってプライベートでのんびり行った方が良さそうだね」
「私もそれが良いと思いますわ。うふふ」
こうしてシルビアさんとの夫婦睦まじい会話をしながら昼食がとれた。
食事が終わる頃に、パウラさんがミカンちゃんを抱いてやって来たので私が直接抱かせてもらう。
「ほーら、パパですよ。あら、二人目のママのほうが良かったかしら。ホホホ」
「やだなあパウラさん。パパでいいですよお」
「あぶー わぁ」
ミカンちゃんはご機嫌良く、手足をパタパタと動かしていた。
あまりに可愛すぎて、自分でも顔がニタァと崩れているのがわかるくらい。
魔力も小さいながら、元気いっぱいで躍動感に満ちている気がする。
若いっていいよねえ。
「さあ今度はミカンちゃんのご飯ね。あっちでおっぱいあげましょうね」
「わうわうわうぅ」
シルビアさんがそう言うと、ミカンちゃんはさらに手足をバタつかせている。
もう言葉がわかるのかな。
きっとシルビアさんのように聡明な子に育ってくれるだろうから、将来は王宮勤めでアウグスト王子やその子の執事をやってくれるといいな。
ちょっとマンネリ変態展開になってすみません。




