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第三百九話 マカレーナの家族

 王都を飛び立ち、お昼前にはマカレーナへ着いてしまった。

 アスモディアへ行った一番の目的であったエリカさんの復活はともかく、私が女になってしまったことと、マイたちを連れてきたことをどう説明したら良いやら未だ悩んでいた。

 なるようになるしかない。


 最初はパティ、ビビアナ、ジュリアさんが先に降りて、アマリアさんとローサさんに事情を説明した。

 ガルシア侯爵と執事のフェルナンドさんは仕事へ出掛けていて屋敷にはいない。

 マイたちのことについてもアマリアさんに了解を得たので、ぞろぞろと屋敷の応接室へ向かった。


 応接室にはアマリアさんとローサさん、そして子供たちのカルロス君とアベル君がソファーに座っており、ルナちゃんが側に控えていた。

 ヴェロニカとスサナさん、エルミラさんは近所へ買い出しで外出中らしい。

 護衛の二人と戦士のヴェロニカも抜け出せるなんて、とても平和なんだな。

 一ヶ月しか離れていなかったのに、アスモディアでの出来事が濃すぎてこの屋敷のみんなと会うのも随分久しぶりのような気がする。


「お母様、ローサ様。エリカ様が戻ってこられましたよ」


 パティがエリカさんに手を差し伸べてそう言うと、エリカさんが前に出る。


「いやあ、どうもどうも。ご心配をおかけしましたあ!

 この通り、元通りになりましたよお! ポンポン」


 エリカさんは自分の上胸を叩いてヘラヘラしながら復活の報告をした。

 彼女らしいとは言え、軽すぎるだろ。


「あ、あなた……」


「エリカ様、おめでとうございます…… 

 それにしても…… お若くなってませんか?」


 アマリアさん、ローサさんともエリカさんの復活を喜ぶことよりも、エリカさんの顔が明らかに若返っていることに困惑していた。


「ああっ 私が十八歳の時の身体からお師匠様が遺伝子を採取して身体を作ってもらったから、当然この身体は十八歳の時そのものよ。

 それから私はこの身体によって魔族になった!

 寿命も何百年になるかわからないけれど、不老長寿で当分の間はこの姿のままよ。

 ふふふ…… アマリアさん。羨ましいでしょ」


「ぬくく…… あなたって人は、祝ってあげる場で言うに事欠いて……」


「アマリア様、落ち着きましょう。いつものエリカ様に戻ったということで……」


「そ、そうね。あの子のペースに乗っていたらキリが無いわ」


「うっひっひ。そういうことで、今後ともよろしくう」


 ローサさんがアマリアさんを(なだ)めてこの場は収まった。

 昔からエリカさんと張り合っていてだんだんオバサンになっていくアマリアさんにとっては、急にピチピチ若くなってしかも不老長寿のエリカさんを見たら内心穏やかではいられないだろう。

 アマリアさんだったら四十過ぎても人妻感が増してエロいだろうに。むひひ


「えと…… じゃあマヤ様です。どうぞこちらへ……」


 パティに呼ばれ、エリカさんに代わってアマリアさんたちの前に出た。


「なっ…… あなた…… 本当にマヤ様なの?」


「はい、アマリア様。訳あって一時的に女になるつもりが、アモール様の性転換魔法に不都合があって男に戻らなくなったんです……」


「でもお顔に面影がありますし、背丈と服装は男のマヤ様と同じですから……」


「マヤさまあ! 何でそんなに可愛くなっちゃったんですかああ!?

 私より絶対に可愛いですよおおお!」


 たぶんパティは先ほど前もって説明したときにアモールの名を出したんだろうから、性別変換だろうがあの魔女のすることならば何でも有りという認識なのだろう。

 だから全くデタラメだとか別人だとかそういう反応ではない。


「――確かに…… この魔力はマヤ様に違いないわ。

 そうね、久しぶりにマジックエクスプロレーションをさせてもらえないかしら?」


「はい」


 私はアマリアさんに両手を差し出した。

 彼女の柔らかく、白く美しい手に握られドキッとする。

 アマリアさんに対しては未だに緊張するんだよなあ。

 人妻という背徳感もあるが、神秘的な美しさとうのはアモールとも共通した点がある。



(アマリア視点)


 まあ…… 手まで女の子そのもの。

 まるでパティの手みたい……

 魔法でこんな……

 何をどうしたら身体のつくりまで変えられるなんて、全く理屈が分からないわ。

 さて、マヤ様の中身を見てみましょう。


 ――確かに魔力の波長はマヤ様そのもの。

 やはり本人に間違いないわね。

 ただ質と密度が桁違いに上がってる……

 私ではとても深くまで覗き込めないわ。

 それにしても、私の方が包み込まれるような柔らかくて暖かい魔力……

 ハァ…… ハァ……

 何だかお腹の下が気持ちよくなってきました……

 だんだんその感覚が強くなってムズムズしてくるわあ……

 こ、これって…… もしかして? え?

 ちょっと…… こんなところでダメえ!


 ビクゥん!


「ひっ……」


 ううっ 軽く昇天してしまいました……

 みんながいる前で、恥ずかしいわ……

 変に見られてないかしら?

 ヤダわ…… 後で下着を換えないといけませんね……



(マヤ視点)


 アマリアさんが顔を赤くしてモジモジしている。

 何があったんだ?


「ママどうしたの? 病気?」


「ううん、大丈夫よカルロス。マヤ様がとても凄くてびっくりしちゃった」


「そうなの? マヤ…… お姉ちゃん? やっぱり強いんだねえ! うふふ」


「そうだよ。お姉ちゃんになったけれど、いつも強いんだぞ」


 そう言いながら、私はもう四歳になるカルロス君を高く抱き上げた。

 出会ったときは二歳だったのに、大きくなったなあ。

 愛娘ミカンちゃんの成長もこういう気持ちになるんだろうね。


「わぁぁぁぁ!! キャッキャッキャッ! ハハハハハ!」


 アベル君を高い高いし終えると、普通に抱っこした。

 男の子でも小さい子供は可愛いねえ。


 モミモミモミ


「わわっ」


 するとアベル君は両手で、私のおっぱいを無邪気にモミモミと揉んだ。


「わあ、ママよりは小さいね。でもお姉ちゃんと同じくらい?」


「こ、こらアベル! 人様の胸を勝手に触ってはいけません!」


 おいおいアマリアさん…… 勝手じゃなかったらいいのか?

 子供相手でも余程堂々としてる女性以外は同意を得るのが難しいと思うぞ。


「マヤ様と同じくらいなんですね…… 照れ照れ」


「え、ええ……」


 ガルシア家の人たち、やっぱり変わってるなあ。

 でも楽しく和気あいあいしているからとても居心地が良い。


「コホン…… 女性のマヤ様が本当にマヤ様と同一人物だと今はっきりわかりました。

 外出しているヴェロニカ様やレイナルドにも説明が出来るでしょう」


「ホッ それは良かったです。

 では次に、アスモディアから連れてきたオーガ族のオフェリア、三眼族のマイ、エルフェディア国のエルフ族マルヤッタさんを紹介します」


 私は彼女らを連れて来た事情をアマリアさんたちに話した。

 またガルシア侯爵にも説明しなければいけないので、アマリアさんが関係する範囲までにしておく。


「わかりました。レイナルドが帰ってこないとわかりませんがダメとは言わないでしょう。

 皆様ようこそマカレーナへいらっしゃいました。

 この街、この国でたくさん学んで下さいね」


『『『はい、ありがとうございます』』』


「でも早速困ったことが出来たわ。

 皆さんに泊まって頂く部屋が足りないの」


「アマリア様! マルヤッタさんは料理の勉強をするから、あてしたち使用人の部屋で寝てもらうニャ!」


「そう…… いいの? 狭い部屋だけれど」


『勿論! 旅ではいつも木の根元で寝てましたから、お部屋を貸して頂けるだけで大満足です!』


「わかりました。ではビビアナさん、あとはお任せしますね」


「はいニャ!」


 マルヤッタさんは使用人用の空いている部屋へ案内することになった。

 別棟に住み込みのパンチョさんマルシアさん夫妻は除いて、今は四人が使ってるから残りは二部屋くらい空いていたかな。

 あまり大きな屋敷ではないから、来客用の部屋を私とヴェロニカ、アイミが使ってしまっているのでもう空きは無い。


「オフェリアとマイだなあ……

 私は残った使用人の部屋で良いから、私の部屋を二人で使ってよ」


「いけません! あなたは子爵なんですからそこらへんはわきまえなさい」


「あ、はい……」


 アマリアさんに怒られた。

 いまだに貴族って自覚があんまり無いし、そもそも自分の屋敷を持たずに居候している身だから今のはちょっと恥ずかしかった。


「じゃあ私の地下室へおいでよ。お師匠様の匂いは慣れたし…… うひひ」


「もっといけません! マヤ様に悪戯(いたずら)をする人の部屋にどうして一緒の部屋へ勧めることが出来ますか!

 フェルナンドが帰って来たら相談しますので、一先ずお二人はマヤ様のお部屋で休んでもらって下さい。

 ルナさん、お願いしますね」


「はい、奥様」


 アマリアさんは、(すで)に私がエリカさんの地下室でよくイチャラブしていたことを知らなかったのかな。

 それでなくても私とエリカさんが仲良くしていることに嫉妬している様子。

 この国の人たちは愛がいくつあっても足りないのか。


 その間にマルシアさんとジュリアさんが昼食を作ってくれて、皆で賑やかな食卓になった。

 イスパル風にアレンジしたアクアパッツァのような海鮮系のメニューもあり、マイたち三人は見たことも無い料理に目をキラキラさせながら美味しく食べていた。


---


 お腹いっぱいになったし、飛行機を飛ばすのに使った魔力を回復するのに部屋で少しごろ寝をしたいところだったが、飛行機を点検してもらうのにラウテンバッハは持って行かなくてはならない。

 それからオフェリアの服と下着も作ってもらわなければいけないので、マイも一緒について早速三人で出掛けることにした。

 だが私が女になったことをオイゲンさんやミランダさんにもまた一人で説明するのが面倒になったので、パティにも来てもらうことにした。


 まずラウテンバッハへ飛行機を預ける。

 パティが受付のアンネさんに説明して、大層驚いていたが私のことをすぐ信じてもらえて良かった。

 オイゲンさんとテオドールさんも、飛行機を操縦できるのは私だけなのであっさりわかってもらえた。

 私という存在そのものがデタラメみたいなものだからというのが理由だそうで、釈然としないが自分の力にもっと自覚を持った方が良いのだろうか。

 飛行機は点検のために一週間はかかるそうで、グアハルド侯爵へ女王の親書を届けるのは私一人でひとっ飛びしよう。

 それからマラガのプライベートビーチで水着回だ! むふふふ


 次はアリアドナサルダのマカレーナ店で店長ミランダさんに会う。

 パティが説明してくれたのですぐに信じてくれたけれど、女になった私にミランダさんはすごく興奮したようで、下着の着せ替え人形にさせられそうになったから遠慮させてもらう。

 オフェリアには店内の品をいくつか見繕ってもらうがそこは女の子なので選ぶのに時間がかかる……

 気に入った品をオフェリアのサイズで作ってもらうのにメジャーを使って店長室で計ってもらうのだが、オフェリアとパティに私だけ追い出された。

 今は女同士なのに……

 オフェリアの生おっぱいをじっくり見られるチャンスだったかも知れなかったのにね。

 オーダーメイドは通常品の三倍以上の値がする。

 多少はサービスしてくれるが、作るのは縫製室のおばちゃんたちなのでそこはきちんと払う。

 そう、払うのは私。そもそもオフェリアはイスパルの通貨を持っていない。

 代わりにぱ◯◯ふさせてくれないかな。

 品は早くて三日後に出来上がるそうだ。


 今度はオフェリアの服をオーダーメイドしてもらいに洋品店へ行く。

 貴族向けの店だがカジュアルもたくさん扱っており、私の行きつけでパティの顔も利くからとても都合が良かった。

 ここでもやはり服を選ぶのに時間が掛かる……

 大男向けの軍服がちょうど在庫有りで、二着手に入れた。

 ヴェロニカが着ていた陸軍兵風のズボンとシャツである。

 早速明朝からヴェロニカたちとの訓練で使ってもらおう。


 オフェリアが選んだ物はキュロットスカートやブラウスとスラックス、ショートパンツとTシャツ各種、それからパティもよく着ている学生服のようなブレザーとプリーツスカートまで頼んだみたいだ。

 オフェリアもこういうのを着て街を歩いてキャッキャうふふしたいのだろうか。

 健気な彼女を私は止めることが出来なかった。


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