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第三百七話 マヤ、授乳してみる

 結局スカスカランジェリーをロレナさんに押しつけられたが、この場で履くのはさすがに遠慮した。

 アリシアさんからのサテンシルバーランジェリーもプレゼントとして頂いたので、これは帰ってから有り難く使わしてもらおう。


 それからアリアドナサルダ本店へ来た本来の目的だ。

 デザイン画のノートをロレナさんに渡して、デザイン料とそれとは別の売り上げに対するリベートをもらった。

 色を付けてもらってちょうど白金貨十枚…… 約一千万円。

 この国の下着事情は一体どうなっているんだ?

 そんなにぱんつが欲しいのか?

 とは言えこの大金もルナちゃんへの給金支払いや、将来のために貯金をしておく。


 ロレナさんに、アリアドナサルダ・マカレーナ店への出荷分を輸送してほしいと頼まれたが、また後で取り行くことにした。

 これからエスカランテ家へ行き、シルビアさんとミカンちゃんに会いに行くのだ。


---


 シルビアさんにも私が女になったということを伝えていない。

 驚かそうと思ってるわけではなく、昨日のうちにわざわざ王宮から使いを出して手紙を渡してもらうのも悪いので遠慮した。

 アリアドナサルダから、王都の南部にあるエスカランテ家へ直接飛んで行く。

 門を通らず玄関前に着地しようと思うが、そこからが問題だ。

 女の私がマヤだと説明してすぐにわかってくれるだろうか。


「ん? 庭に誰かがいるのが見える…… あれは!」


 シルビアさんがミカンちゃんを抱いて散歩していた。

 やったあ! なんという幸運。

 びっくりさせないように少し距離を置いて降りよう。


「おーい! シルビアさああん! ミカンちゃああん!」


「――あら、女の子が空から? 私とこの子の名前を呼んで…… どなたかしら」


 私はシルビアさんから数十メートル離れた場所に着地した。

 ああっ 一ヶ月ぶりの、愛しの妻と娘!

 目の前に彼女らの姿が見えると、急に緊張してきた。


「ただいまあ! 帰って来たよぉ!」


 いかにも身内っぽく、両手を上げて大きく振ってみた。

 だがシルビアさんはどう見ても困惑した表情をしている。



(シルビア視点)


 あの子、マヤさんっぽい姿をしているけれど声は女の子だし、体型も……

 ええ? 誰なのかしら?

 でも仕草や振る舞いはマヤさんそのもの。

 ――え? ビンビンと感じるこの魔力はマヤさん本人?

 マヤさんが女の子!?

 そんなことってあるの?



(マヤ視点)


 私は歩いて手を振りながらシルビアさんの元へ向かっている。

 彼女は困った表情から驚きの表情に変わっていた。

 何かに気づいたのだろうか、警戒はしていない。

 そうしているうちに目の前まで着いた。


「あのう、シルビアさん。マヤだけれど、わかる?」


「やっぱりマヤさん? どど、どうして女の子になったの?」


「やむを得ない事情があって、魔女のアモールに魔法で一時的に女なったんだ。

 それで男に戻るつもりが魔法の欠陥で戻らなくなっちゃって…… あははは」


 と、私は悪い癖と思いながらもいつものように苦笑いをして誤魔化す。

 理由はサキュバスにエッチなことをされすぎたからと絶対言えないよな……


「やむを得ない事情って……

 やはり魔族の国って大変なところだったんですね。

 ほらミカン、パパが帰って来ましたよ~

 でもこの子、あなただとわかってくれるのかしら」


 シルビアさんは今のところ細かいことを聞かずにそれで流してくれたが、女王の執事をやっていた頭が良い人だから、何も疑問に思っていないわけ無い。

 後で問い詰められそう……

 さて、女になった私の姿でミカンちゃんは認識してくれるのだろうか。

 ミカンちゃん……

 わあ、一ヶ月も離れていると大きくなっているのがよくわかる。

 ミカンちゃん、くりくりお目目でジッと私を見ているぞ。

 か、可愛すぎる!


「ミカンちゃんただいまあ! パパでちゅよお。わかるかなあ?」


「わぅわぅわぅわあ!」


「まあ!」


「ガハッ ぐうぅぅぅぅぅっ……

 あまりの可愛さに衝撃で、一瞬頭がクラッときてよろめいてしまった。

 女になっているのに私のことがわかるのか?」


 ミカンちゃんは笑顔で声を出しながら、手脚をパタパタ動かしている。

 ジジババがいたらこれで卒倒してしまうほどだろう。

 エスカランテ子爵夫妻は無事なのだろうか


「この子、魔力が日に日に高まっているようなんですよ。

 少し前に王宮へお邪魔して陛下にマジックエクスプロレーションで診て頂いたら、そうおっしゃられてました。

 もしや前にあなたの魔力を感じてから覚えていたのでは?」


「そっかそっかあ。始めからパパだとわかっていたんだねえ。嬉しいよお。

 ねえシルビアさん、抱かせてくれるかな?」


「勿論ですよ。パパなんですから。うふふふ」


 私はシルビアさんからミカンちゃんをそろっと受け取り抱きかかえた。

 うおっ 随分重くなったな。産まれた時より体感的に倍近くだろうか。

 すくすく育っていることにパパは嬉しいぞ。


「わぅわわわぅ~」


「うんうん、パパといっぱいお話しようねえ。

 ぷくぷくほっぺで可愛い~ ぐふふふ」


「さあ、中へ入りましょう。父と母がいますから」


「そ、そうだね。帰還の挨拶をしなくては」


 私はそのままミカンちゃんを抱きかかえながらエスカランテ家の屋敷へお邪魔した。

 クンクン…… 赤ちゃんって良い匂いだなあ。


---


「というわけで、サキュバスは本能的に男を襲う性質があるので魔女アモール様が気を利かせて私を魔法で女にしてくれたんですよ。

 ところが男に戻る魔法が何故か人間には効果が無くて、それで弟子のエリカさんに魔法の改良を託されて、魔法が出来上がるまでしばらく女のままなんです」


「うーむ、そういうことか。ミカンにとってはママが二人になって、不思議に思っていないのかね」


「あわわぅわぁ」


「この通り、とても機嫌が良いですね。

 どうも私の魔力を感知して、男の私と同じだと認識してくれているみたいです」


「ほほぅ! こんな小さな子でもわかるのか!

 この先の成長が楽しみだわい! うんうん」


 屋敷の応接室にて、私たち親子三人とエスカランテ子爵夫妻とで歓談している。

 私はソファーに座ってミカンちゃんを抱いており、エスカランテ子爵は孫娘の成長っぷりを(いた)く喜んでいた。

 この人も孫に対するデレっぷりはそこらのおじいちゃんと変わらない。

 それで私が女になっていることについて子爵夫妻の反応は他の人たちと同じように大層驚いていたが、シルビアさんの説明を始め魔力持ちの家系なのでスムースに信じてくれた。


 昼食をこちらで頂く。

 その間、いつの間にか眠ったミカンちゃんはお婆ちゃんメイドのパウラさんに預け、アスモディアで体験したことを土産話にして楽しい食卓となった。


---


 シルビアさんの私室へ二人でベッドの上に座る。

 ミカンちゃんお腹が空いたみたいで軽く泣いていたから、シルビアさんがおっぱいをあげるために胸を開く。

 彼女はフロントボタンの授乳ブラを着用しており、これも私のアリアドナサルダブランドでこの国初めて発売した物だから、バカ売れらしい。

 地球には既にあるものなので、先人の皆さんありがとう。


「わっ 胸がおっきくなってる」


「ちょっと恥ずかしいですわ。ふふふ

 胸が張ってきますからこの子がたくさん飲んでくれないと困るんです」


「ママのおっぱいをたくさん飲んで大きくなるんだぞ」


 シルビアさんのバストサイズはBカップで大きいとは言えないが、今はCカップかそれ以上になっていた。

 ミカンちゃんはシルビアさんのおっぱいにしゃぶりつき、勢いよくごくごく飲んでいる。

 これならおっぱいの張りは心配ないな。

 何とも微笑ましく見ているだけで優しい気持ちになる、夫だけの特権だ。


「あぶわー あうぅ」


「あら、もういいの?」


 ミカンちゃんは片方のおっぱいを飲んでいる途中でやめてしまう。

 おやつ代わりだったのかな。

 もう片方は私がしゃぶってもいいのかな。

 いやいや、それは冗談。


「私、用を足してきますからミカンを見ててもらえますか?」


「わかったよ、シルビアさん」


「そろそろシルビアさんというのをやめましょう。

 もう夫婦なんですからシルビアと呼び捨てて下さいね、あなた」


「ああ、うん。シルビア…… あなたって呼ばれるのも照れるな」


「ふふふ。じゃあお願いしますね」


 妻子持ちという実感がだんだん湧いてくる。

 実質五十二歳でようやく夢が叶ったのだ。

 私はまたミカンちゃんを受け取り、ベッドの上で抱きかかえシルビアさんを待つ。

 つぶらな瞳で私を見つめる様は、悶絶するほど可愛らしい。

 将来は絶対美人になるよな。

 そして私は「娘はやらん!」と付き合っている男に言ってやるのだ。

 ――ミカンちゃんに嫌われたらヤダな。


 うーん……

 ミカンちゃんが私のおっぱいをペチペチと触ってくる。

 上着を脱いでいるからおっぱいの膨らみが丸わかりなのだが、この子は私が女だと認識しているのだろうか。

 シルビアさんには申し訳ないが、乳が張っている彼女のおっぱいより私の方が大きいのだ。

 でも男に戻った時に、逆に私のことをパパと思われなくなったらどうしよう。

 ミカンちゃんは続けて私のおっぱいをペチペチしている。

 もしかして、まだおっぱいが欲しいのかな。

 シルビアさんはまだ戻ってきそうにない。

 ――よよよ…… よし。私があげてみよう。

 今まで私から母乳が出る気配は無いけれど、もしかしたら母性本能ナンチャラで出たりして!?


 私は(おもむろ)に、シャツとブラを(はだけ)けさせてみた。

 ミカンちゃんを横抱きにして私の右おっぱいを近づけると、早速吸い出す。


 むほぉぉぉぉ!


 と心の中で叫んで見たが、思っていたより気持ちが良いものではなかった。

 触感的にはもにょもにょという感覚だが、それより自分のおっぱいを赤ちゃんにあげている精神的な気持ち良さのほうが(まさ)っている。


 チュッチュッチュ……


 ああ…… なんて愛おしい我が子……

 これが母性本能というやつか。

 あれ? それって心が女化していることだろうか。

 アモールに性転換魔法を施されてから心は男のままだと思っていた。

 女になっている期間が長くなると心が変化してしまうのか、アモールからもっと詳しく聞いておけばよかったな。


 ――え? ミカンちゃん、まだ吸ってる? 私から母乳が出てるの?

 どうしよう。喜ぶどころか、男に戻れるのか心配になってきた。


「びえぇぇぇぇぇぇ!!」


「あらららどうしたのミカンちゃん!?」


 ミカンちゃんは口からおっぱいを離し、突然大きな声で泣き出した。

 何がどうなってなのかわからない。

 少々おどおどしてしまったが、おしめは…… 濡れてない。

 左おっぱいをちょっと絞ってみた。


 ――ええ!?

 僅かだが母乳が(にじ)んで出てきた!

 何てことだ!!

 私から母乳だって!? 信じられない!

 み、右側を絞ってみる……

 こちらはほとんど出なくなっていた。

 そうか、母乳が出なくなってミカンちゃんは泣いたのかな。

 ならば左側のおっぱいであげてみよう。


 チュッチュッチュ……


 おお、一生懸命吸っている!

 やっぱり母乳が切れたから機嫌が悪くなったのだな。

 将来食いしん坊になりそうだから、シルビアさんには気を付けてもらわないと。


「まあ! あなたったら!」


「ああっ シルビアさん! いや、シルビア! どうしよう!

 私から母乳が出ているんだよ!」


 シルビアさんが部屋へ帰ってきた。

 私がミカンちゃんへ授乳しているのだから当然驚いている。


「母乳!? まさか…… 本当にママが二人になってしまうなんてどうしましょ……」


 そこか……

 今まで母乳の一滴も出なかったのに、興味本位で授乳したら本当に出てしまったのだから身体の変化に頭がついていかない。


「急に出てくるようになったから、この先も出るようになってしまうのか心配だなあ」


「そうですね…… 離ればなれになっている時にお乳が張ってしまうと大変。

 時々自分で絞ってあげないといけないわ」


「その問題があったか…… ブラもマタニティの物に変えた方がいいよね」


「勿論です。圧迫されると痛くなって、病気にもなってしまいますから」


「はぁ…… とんでもないことになったな。女の人っていろいろ大変だね。

 あっ そういえば生理がまだ来ていないのに、なんで母乳が出るんだ!?」


「まあ! そうなんですか!?

 特殊な体質となれば、他にも不都合が出るかも知れないので早い内にエリカ様に新しい魔法を作って頂かないと、あなたのことが心配です……」


「うーん…… 思っていたより大事(おおごと)になってきたな……」


 自分の身体について懸念を持ちながらも、自分が動揺していてはシルビアさんにも負担になってしまうので普段通りにしていく。

 ミカンちゃんは、シルビアさんと話しているうちに満足したのかおっぱいを吸うのをやめてスヤスヤと眠ってしまった。

 親が騒いでいたにもかかわらずこの子はお乳を吸うことに一生懸命だとは、なかなか肝が据わっているのかも知れないな。


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