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第三百一話 王都へ帰還

 邪神エリサレスとの戦いで身体を失い、魂だけとなったエリカさんを復活させる目的で魔族の国アスモディアにて約一ヶ月滞在した、私とガルシア家の一行。

 エリカさんは師匠である魔女アモールの秘術によって、無事に新しい身体を得た。

 それでアスモディアへ渡航した目的を果たすことが出来たのだが、新たな難題が私に降りかかってしまう。

 私は、アモールの使用人であるサキュバス娘三人に性的な襲撃を毎晩のように受け、それに耐えられずアモールに相談し一時的に魔法で性転換し女になった。

 ところが男に戻らない!

 アモールの性転換魔法を解除するには人間の私だと作用しないことがわかり、帰国後にアモールに代わってエリカさんが新たに魔法を作り変えることになった。


 そしてアスモディアからの帰途、夜間停泊のために再び立ち寄ったスオウミ国の集落で現地の皆さんとパーティーを行い、ある者は酔い潰れ、ある者は二人でこっそりいちゃいちゃと……

 おっと、それは余計なことだ。

 私たちは機内で夜を明かし、翌朝は王都マドリガルタへ向けて出発する。


『おっはようございます! マヤさん!』


「ええ…… ううん……」


『朝のトレーニングをしましょう!

 ここの空気は爽やかで美味しい!

 身体を動かすには最高ですよ!』


 操縦席で寝ていた私を起こしに来たのはオフェリアだった。

 トレーニングだって?

 わざわざセパレートユニフォームに着替え、やる気満々である。

 ゆうべはあれほど酒を飲んでいたのに、何ですっきり爽やか笑顔なんだ?


「ああ…… オフェリア。

 君はあんなにお酒を飲んでいたのに、二日酔いはしてないの?」


『二日酔いって、何ですか?』


「え……? 飲み過ぎたら翌朝になっても頭が痛くなったり吐き気がする病気だよ」


『オーガ族は一晩寝たら必ず酔いは覚めますよ。

 へーそうなんですか。人間族はお酒をたくさん飲んだらそんなことになるなんて。

 あんなに美味しくて楽しいのに不便ですね』


「ああ、そう」


 二日酔いの概念が無いとはな。

 ファンタジーストーリーではドワーフが酒飲みの定番なのだが、この世界はオーガ族がそうなのか。

 そもそもネイティシスにドワーフがいるとは聞いていない。

 血気盛んなオフェリアはニコニコしながら私を外へ連れ出そうとするが、私はこれから飛行機の操縦をしなければいけないので遠慮する。


『そうですか…… 残念です。じゃあ私はマイさんとやってきますね』


「え? ああ、わかった」


 窓の外を見たら、すでにマイが一人で拳法の構えを練習していた。

 ううむ、カンフー映画みたいで格好良いな。

 オフェリアが外へ飛び出すと、早速二人で組み手を始めていた。

 あの二人は武闘派同士気が合っていそうだ。

 マカレーナへ帰ればきっとヴェロニカやエルミラさんたちと仲良くやれそう。


 私は眠い目を擦り、ダラダラと起き上がる。

 客室内を見れば他の皆はブランケットを掛けてスヤスヤとまだ眠っている。

 アイミなど後ろの座席で頭を下にし足をヘッドレストに上げ、逆向きでよだれを垂らして寝ていた。

 どうやったらあんな寝相になるのだ。

 ぱんつが見えなくてホッとした。

 私は幼女のぱんつなんて興味ない。

 さて、運動はしないけれど空気が美味しいのは間違いないから朝の散歩をしよう。

 ……ますます年寄りじみてきたな。


---


 集落の方へ歩いて行くと、とても良い匂いがする。

 朝食…… ではない。お菓子を焼いてる匂い!

 きっとトゥーラさんが作っているに違いない。

 挨拶がてらお宅をちょっと覗いてみよう。


「あのお、おはようございます。ごめん下さい」


『あっ マヤさん! おはよう!』


「やあアウリちゃん、おはよう」


『マヤさんたら、絶対にママが作ってるお菓子の匂いに引き寄せられたよね!』


「あっはっはっはっ バレたか。

 カバンを持ってるということは、アウリちゃんはこれからお出かけ?」


『うん! 昨日はお休みだったけれど、今日はこれから学校へ行くんだよ。

 馬に乗ってパパに送ってもらうんだあ!』


「そっかあ。こんな早い時間だと学校がずっと遠いのかな。

 私たちの出発より早く出掛けるんだね…… 寂しいなあ」


『そうなの…… また…… 会えるよね?』


 アウリちゃんは瞳をウルウルしながら私の手を掴む。

 うっ か、可愛い……

 そんな純粋な目で見つめられるとこっちまで悲しくなっちゃう。


「勿論だよ。すぐじゃないけれど、絶対行くよ。私もアウリちゃんに会いたいからね」


『良かった。嬉しい……』


 アウリちゃんは濡れた目を擦って笑顔で応え、私は頭をなでなでした。

 もう! 可愛すぎてギュッと抱きしめたい!

 あっ 今は女だからいいのかな。


「抱っこしていい?」


『うん!』


 私は両膝を地に着かせ、アウリちゃんを両腕で抱きしめた。

 ああああ癒やされるううっ

 愛娘ミカンちゃんも大きくなったらこうなるのかなあ。


『わあっ マヤさんってママよりイイ匂いだね!』


「そ、そうなの?」


『うん! おっぱいも大きい!』


 ふにょふにょふにょ

 私もアウリちゃんに抱きつかれながら横乳を揉まれてしまった。

 タンクトップにノーブラだからまともに手の感触がある。

 男の子だったら軽くひっぱたいてやるところだったが、女の子なら許す!


『おーいアウリ! そろそろ出掛けるぞ! あっ……』


 ヘンリッキさんがアウリちゃんを呼びに来たが、アウリちゃんが私のおっぱいをモミモミしているところを見られてしまう。


『おおおアウリ、何をやってるんだ……』


『あー、パパのエッチ』


『何でだよぉぉぉぉ!』


 朝から騒がしくなってしまったが、アウリちゃんとヘンリッキさんは何事も無く出発し、私は彼らに手を振って見送った。

 あれで親子仲は良いのだから羨ましいな。

 私とミカンちゃんの将来もそうでありたい。


『あら、声がすると思ったらマヤさんでしたか。おはようございます』


「おはようございます、トゥーラさん」


 台所からトゥーラさん出てきた。

 ライ麦パンがたくさん入った(かご)を抱えている。


『小麦の美味しいパンではありませんけれど、皆さん朝食はいかが?』


「とんでもないです。有り難く頂戴します」


『ここじゃ狭いし…… ああ、ゆうべの土のテーブルは片付けちゃったわね』


「また出してもらいますよ」


『じゃあ温かいスープも用意しますね』


「ありがとうございます。みんなを呼んできます」


---


 私は飛行機へ戻ると、すでにパティたちは起きていた。

 ただ一人、アイミは逆さの体勢で寝ていたままなのでたたき起こす。


「おい朝飯だぞ。起きろ!」


『あうう…… ああ…… おおマヤか、早いな。私は何で逆さになっているのだ?』


「寝相が悪すぎるんだよ」


『お、スカートが(めく)れておる。私の美脚に見惚(みほ)れるなよ。ひっひっひ』


「おまえ、前にも同じことを言った気がするぞ。私が興味あるのは大人の女だ」


『そんなことなら元に姿に戻っていつでも相手をしてやるぞ。あ、今おまえは女だからダメだな。つまらんつまらん』


「しっ 声が大きい」


 アイミはそう言いながら起き上がり、崩れた魔女っ子服を整える。

 今の会話はパティたちに聞こえてないよな。

 私がアーテルシアと合体してたことは誰にも秘密なのだ。


---


 外にいるマイとオフェリアも呼んで、今度はパティに土属性魔法でテーブルを庭に作ってもらう。

 王宮にあったような凝ったデザインのテーブルと椅子が出来たので、トゥーラさんが気に入ってしまったから壊さずにそのまま残しておくことにした。


 タハヴォさん夫妻も朝早く仕事で出掛けてしまったので、サロモンさん夫妻を呼んでままた大勢になって食事をした。

 ライ麦パン単体ではお世辞にもさほど美味しい物ではないが、ベリーのジャムやパターを着けたり、サロモンさんが持って来てくれた野菜を挟んだりしてとても美味しく頂けた。


「いやあ、こんな至れり尽くせりで申し訳ありません」


『何を(おっしゃ)います。リューディアを治してくれたばかりか、子供が出来るまで体調が回復出来たんですからこちらがお礼し足りないほどです。本当にありがとうございます!』


『このテーブルもアウリが帰って来たらびっくりするわ。うふふ』


 出発前の朝食も、とても楽しく過ごすことが出来た。

 ウチには食いしん坊の女の子がたくさんいるから、トゥーラさんは作り甲斐があるよとニコニコしている。

 そのうえまたトゥーラさん特製のお菓子までたくさん頂いて、みんな大喜び。

 たくさん御馳走になり、スオウミの皆さんとお別れをする。


『じゃあマヤさん、皆さんお気を付けて!』


『次にいらっしゃるときは私たちの子供が産まれているかしら。うふふふ』


「そうですね。次はそのくらいになると思います」


『楽しみにしているわ。その時も美味しいお菓子をたくさん作りますからね』


「ありがとうございます。それではお元気で!」


 サロモンさん夫妻の赤ちゃんも可愛いだろうなあ。

 是非見てみたい。

 私たちは飛行機に搭乗し、三人に手を振って見送ってもらい飛び立った。


---


 飛行中は向かい風になっているところが多く、スピードが落ち魔力消費が大きい。

 操縦にも気を遣うので疲れてくる。

 アイミは…… また寝てる。こいつ本当に何しに来てたんだろう。

 客席では、海が見えるとみんなが騒ぎ、特にマイ、オフェリア、マルヤッタさんは海を初めて見るのではしゃいでいた。

 長生きしていても内陸地に住んでいると海なんてなかなか見られるものじゃないのかねえ。

 エリカさんは静かにボーッと窓の外を見ていたようだ。

 ホルモン分泌が治れば治ったでうるさいかも知れないが、彼女が大人しいと不安になってくる。


 王都の上空に着いたのは夕方前。

 その時も皆がザワザワと騒ぎ出す。


『ひぇぇぇぇ!! ディアボリよりずっとデカい街だ。人間ってすげえな!』


『マイさん見て下さい! ディアボリ城より大きな屋敷が見えますよ!』


「あれはガルベス公爵家のお屋敷ですわ。王族とはあまり仲がよろしくないですが国の中ではとても影響力が強い家なんです」


『ふーん、やっぱり人間も面倒くさいところがあるんですね』


 マイとオフェリアが大騒ぎし、パティが応え、マルヤッタさんが冷ややかに言葉を発する。

 会話が聞こえてくるだけで個性がわかりやすい、実に楽しいメンバーである。


 一ヶ月ぶりの王都だ。

 シルビアさんとミカンちゃんにもうすぐ会える!

 何だか緊張してくるなあ。

 あ…… 私が女になってることをすぐに理解してくれるだろうか。

 パティがいるから大丈夫だと思うけれど、ミカンちゃんは難しいかなあ。

 ママが二人になっちゃうけれど、そもそも生まれたばかりの小さな赤ちゃんにはわからないかな。


 マルティナ女王、アウグスト王子とカタリーナさんも元気かなあ。

 アリアドナサルダへ寄って、アモールの館で描きためておいたランジェリーの新たなデザイン画も渡さないといけないし、マカレーナへ帰る前にいろいろ忙しくなりそうだ。


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