表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
301/388

第二百九十六話 再びディアボリ城へ

『マヤさん、起きて下さい。アモール様がお呼びです。

 あら? 仲良しですね…… フフフ』


「うぅ…… あ…… あれ? カメリアさん?」


 今朝は珍しくカメリアさんが起こしに来た。

 たまにオフェリアが起こしに来ることがあるだけで、いつもは一人で起きている。

 ――アモールが何だって?


『おはようこざいます。マヤさんたちがお帰りになる前、これから大帝へご挨拶しにお城へ出掛けられるようですよ』


「ええ? 大帝!?」


 そういえばアモールが前にそんなことを言っていたのを思い出しだ。

 私はガバッと起き上がる。


「あっ……」


『まあっ そういうことでしたの。マヤさんったらやっぱり…… うふふふふ』


「いや、これはそういうことじゃなくて」


 布団を被っていたから起き上がるときに(めく)ったら、私とマイが裸になっているのを忘れていた。

 二人ともおっぱい丸出し状態になっているのをカメリアさんに思いっきり見られてしまう。

 マイはまだ爆睡中……


『朝食後にすぐ出掛けるとのことなので、お支度なさって下さいね。

 ああ、正装でなくても構わないとのことですよ。

 それでは…… うふふふふふふふ……』


「あ、あの……」


 カメリアさんが部屋を退出する。

 はぁ…… あの笑い、絶対誤解しているよな。


「おーい! マイ、起きてくれ!」


『うーん…… むにゃ…… うー』


「急に出掛けることになった。マイはゆっくりしてていいよ」


『ええ…… 私も起きる……』


 マイは寝ぼけながらモゾモゾと起き上がり、二人で軽くシャワーを浴びる。

 昨夜(ゆうべ)からお互い無防備に裸体を晒しているが、私の中身は男のままだから興奮が湧き上がって仕方が無い。

 マイは程々のCカップで張りがあり、可愛くて吸い付きたくなる。

 あああっ も、もう……


『やだマヤったら、そんなにジロジロ見ないでよお』


「ごめんマイ、我慢出来ない!」


『ちょっとマヤ! わわわっ』


---


 私はお風呂の中で調子に乗ってしまうが、マイは意外にも抵抗することなく受け入れてくれた。

 さすがにマイから攻めてくることは無かったが……

 そしてお風呂の後。


『もう…… びっくりしたよ……』


「あはは…… ごめん」


 マイは照れくさそうな表情で、髪の毛をタオルで拭いていた。

 あんなことをしたのに、まだ裸のままタオルで身体を隠そうとしない。

 私に対して心も完全に許しているということかな。

 という私もいろいろ丸出しであるが。

 おっと、早く服を着なければ。


「マイも朝食を食べて行ってよ」


『それじゃ、御馳走になろうかな』


---


 朝食準備中のカメリアさんに言ってマイの朝食も用意してもらえることになり、二人でダイニングルームの席に着く。


「あら、マイさん。いらしてたんですね」


『や、やあパティ。みんなが帰るみたいだから顔を見に来たんだ……』


「どうかされました? あまり顔色が良くないですけれど……」


『うん、ちょっとね……』


 国の要人であるアモールの前なので、公僕のマイはとても緊張していた。

 前にマイが館へ来た時、アモールには一度会っている。(第二百七十二話参照)


『アモール様。ご、御馳走になります……』


『あら、あなたは中央警察署の…… そう。

 せっかくだからあなたもマヤと一緒に大帝のお城へいらっしゃい』


『え…… えええっ!? たたたた大帝のお城へ私もですかあ!?』


『ディアボリでは三眼族がとても珍しい。

 それにあなたはとても犯人検挙率が高く優秀と聞いた。

 大帝にお言葉を掛けて頂きましょう』


『あわっ あわわわわっ』


 ただでさえアモールの前で緊張していたのに、大帝のことを聞いて気が動転し言葉が出ないようだ。

 普段堂々としている彼女がここまで動揺しているのは初めて見た。

 大帝のあの姿を目の当たりにしたらチビってしまうんじゃないか?

 それにしても警察署での評価が高いとは素晴らしいな。


「マイ、すごいよ。こんな機会はなかなか無いだろうから一緒に行こうよ」


『う、うん……』


 せっかくの美味しい朝食だが、マイは味が分からなそう。

 それでも食べてる分、立派だと思う。

 他のメンバーは相変わらず食事の方に熱心だが、エリカさんは今朝もお(かゆ)をもそもそと食べている。

 そうだ。マイと初顔合わせのマルヤッタさんを紹介しておこう。


「マイ、向かいの席にいる彼女はエルフ族のマルヤッタさんだよ。

 街で偶然出会って、一緒にイスパルへ行くことになったんだ。

 マルヤッタさん、こちらは三眼族のマイ。

 彼女も偶然街で出会ってから友達になったんだ。

 ディアボリ中央警察署の警察官なんだって。すごく強いんだよ」


『エルフ!? その長い耳はどこの種族かと思ったけれど、初めて会ったよ。

 あたし、マイっていうんだ。よろしくね』


『マルヤッタです。私をそこらへんの魔族と一緒にしないで下さいね。ムシャムシャ……』


 マイは緊張しながらも精一杯の自己紹介をしたが、マルヤッタさんは案外素っ気なかった。

 エルフ族があまり魔族を好んでいないせいもあるだろう。

 三眼族はアスモディアの中へ取り込まれているが、魔族とは体質が異なっており立場的にはエルフ族に近い。

 それをマルヤッタさんは気にすることなく、一括(ひとくく)りにしている。

 まあ、彼女らは今日だけの一期一会になりそうだからそれについて干渉しないでおこう。


『マヤ、マイ。食事が済んだらすぐにお城へ出掛ける』


『え? 私、この服装で……』


『構わない。大帝は服のことでとやかく言わない、心が広いお方なの』


『?? そうですか……』


 前回、私はアモールに言われるがまま普段の服装でお城へ行っていたから、正装で出掛けるなんて考えもしていなかった。

 街では半裸みたいなやつらもたくさん歩いていたし、そもそも魔族に正装なんて概念があるのかな。


---


 ディアボリの街の中心にどーんとそびえるディアボリ城。

 アモール、マイ、私の三人は空を飛びやって来た。

 アモールの後ろに付き長い通路を経て、玉座の間へ入る扉の前に着く。

 マイは緊張して無言になっているが、私と手を繋いでビシッと前を向いて歩いている。


『あなたたち、仲が良いのね。()いちゃうわ。フフフ』


「同格の友達だから気が合うんですよ」


 マイはそれについて何も言わなかったが、表情が少し緩んでいた。

 ほんの少し緊張が解けたかな。

 さっきのアモールの言葉は彼女なりの気遣いかも知れない。


 ガガガガゴゴゴゴ……


 オーガの近衛兵が重い扉をゆっくり開ける。

 玉座には大帝が座っており、両側にはミラさんとザラさんが休めの姿勢で立っていた。

 相変わらずデカい。

 私とマイは大帝の前で(ひざまず)く。


『大帝、連れて参りました』


『うむ、よく来たな。マヤ、それからマイとやら。顔を上げい。

 うん? 何故マヤは女の姿になっておるのだ?』


『申し訳ございません。そのことをお伝えしていませんでした。

 ウチで雇っているサキュバスが……』


『ああ、サキュバスだな。わかった。

 それでおまえの魔法が何故か効かずに男に戻れない、というところか』


『さすが大帝。すべてお見通しなのですね』


 すごい。大帝は何もかもお察しというわけか。

 私の姿が変わっていても最初から私と認識していた。

 きっと視覚的よりも、魔力の波長を優先に感じていたわけだな。

 マイが来ることをすでに知っていたのは、アモールと念話していたのだろうか。

 ミラさんとザラさんは今の会話で私だとわかったようで、すごく睨んでいる。

 あの時に二人とも気功波ですっぽんぽんにしちゃったからなあ。(第二百五十六話参照)


『マヤよ。その後の調子はどうだ?』


「はい。ゆっくりですが力と魔力が上がっています」


『ふむ。エリサレスが再び復活するまでに力を付けてもらいたいところだが、一気に上げたらおまえの身体が壊れてしまう。

 これからも身体が自身の力に耐えられるよう、人間の国へ帰っても十分に鍛えておくことを怠らぬようにな』


「はい、心得ております。ありがとうございます」


 大帝が掛けてくれた、本来の力を完全に目覚めさせる術は耐えられないほどの激痛で、アーテルシアやエリサレスと戦った時の怪我よりも痛かった。

 身体中の神経全てが痛覚を感じた。もう二度とされたくない。


『して、マイよ。おまえは中央警察署で随分な功績をあげているそうではないか』


『いえ、とんでもございません。仕事を忠実にやっているだけです』


『何を言う。近頃はインキュバスの婦女暴行、ギガスの強盗、ラミアの食い逃げ多発など数々の事件を解決したそうではないか。

 だがそれだけ犯罪が多いのは、わしの不徳だ。何か良い案が無いものか』


「大帝、意見を申し上げてもよろしいでしょうか?」


『なんだ? マヤ』


「はい。この街には大きな警察署があっても、街の各所に駐在所がありません。

 数百メートルごとのエリアに一つ、小さな駐在所を作ってそれぞれに警察官を数人配置するというのはいかがでしょう?」


 日本の交番システムそのものだ。

 マカレーナにも警備兵の詰所があり、交番と同じ効果を備え持つ。

 とくにこの国は荒くれ者が多いので間隔を狭めて提案した。

 ディアボリの街を歩いていると駐在所や交番が無く、意外に思っていたところだ。


『うーぬ…… おまえの意見は聞くべき価値がある。

 警察の大幅な組織改革が必要になってくるから時間は掛かるが、試しに治安が悪い地域に二、三、駐在所というものを建ててみようか』


「私もそれがよろしいと思います」


『うむ。おまえはこの国のこともよく考えてくれているのだな』


『まあ。大帝にお褒め頂けるなんて、素敵よシュウシン…… ポッ……』


「どういたしまして……」


 女になって、アモールから久しぶりにシュウシンという名を聞いた。

 彼女は顔を赤くして右手を頬に当てている。


『そこでだ。マイは休暇をあまり取っていないと聞いた。

 褒美に一ヶ月休みをやろうと思うが、どうだ?』


『そんなにお休みを頂けるんですか!?

 でも解決していない事件やこれから起こる犯罪が気になって仕方がありません……

 同僚への負担もありますし……』


『ふん、仕事熱心だな。このわしに出来ぬことなど無い。おいっ ミラ! ザラよ!』


『『はいっ!』』


『二人ともそこのマイに代わって今から一ヶ月間、中央警察署へ出向しろ』


『『『はいいいい!?』』』


 大帝は思いつきなのかどうかわからないがマイにいきなり一ヶ月もの休暇を与え、代わりにミラさんとザラさんを警察署にやると言い出したから、三人とも目が飛び出るほど驚いていた。


『おまえたち、いつもこんなところで立っているだけでは退屈だろう。署長には話をしておいてやる』


『し、しかし…… 大帝のお世話と護衛が……』


『バカもんっっ!!!!』


『『ひいぃぃぃぃぃぃっ!!』』


 大帝の大きな怒鳴り声が玉座の間に響く。

 アモール以外の全員がびっくりして、ミラさんとザラさんはずっこけて大開脚。

 当然ぱんつ丸出しである。

 いいものを見せてもらった。むふ


『おまえたちがいなければ、このわしが何も出来ないと思っているのか!

 気にせずともたまにはわしから離れて、修行だと思って行ってこい!』


『『承知しましたああああ!!』』


 ミラさんとザラさんは慌てて玉座の間から飛び出して行った。

 それにしても今からって…… 二人とも大変だな。


『大帝。たまには私も来ますから』


『うむ』


 アモールがそんなことを言っているが、何だか愛人みたいだな。


『それからマイ、オフェリアにも一ヶ月の休みを出してマヤさんたちと一緒にイスパルへ行くのだけれど、あなたもどう?』


『えっ!? いいんですか?』


『良いも何も、休みなんだからあなたの好きになさい』


「私も賛成だよ」


『ありがとうございます!』


「良かったね、マイ。早速準備しなくちゃね」


『ワッハッハッハッハッハッ!! 鋭気を養い、人間の国で見聞を広めてくるがよい!』


 大帝が笑うと、玉座の間が振動しているようだ。

 何もかもビッグサイズだよな。


『それだと留学ね。大帝、一ヶ月と言わず十年くらいどうかしら?』


『いや、十年は長い。一年にしてくれ。ミラとザラが不貞腐(ふてくさ)れる』


『わかりました。オフェリアにも一年行ってもらいましょう。いい? マヤさん』


『あいや、はい。構いません……』


『すごいよマヤ! ありがとうございます大帝!!』


 マイは御前(ごぜん)にも構わず私に抱きついた。

 アモールは最初十年って言っていたけれど、魔族の寿命が長いとは言え適当だろ!

 それにしても一年かあ……

 マルヤッタさんはいつまでマカレーナに滞在するのかわからないし、オフェリアは一年間に延びてしまい、まさかアスモディアから三人もマカレーナへ連れて帰るなんて出発するときは思いもしなかった。

 本気で別宅を探さないとなあ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ