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第二百八十八話 覆水盆に返らず?

 そして翌朝。

 う―― 目がしょぼしょぼして開けにくい……

 もしかしてドライアイになったのかな。

 何とか薄ら開けると、もう明るい。

 ああ…… 最後の一人遊びをしようと思ってたのに、瞬間で寝たような気がする。

 性転換魔法で身体が変化する時に痛みがわからないよう、アモールが眠りの魔法をこっそり掛けてくれたのかな。


 パティが私を抱き枕のように抱いてスヤスヤと寝ていた。

 彼女の右手は私のおっぱいを(つか)んでいる……


「プニュ…… モニョ…… あっちへ行っちゃダメですぅ……」


 パティはペットのおっぱいプリンの夢を見ているのか。

 彼女が私の部屋にそいつらを入れているバスケットを持って来て、テーブルの上に置かれている。

 中に入れておくと、大人しくして動かない。


 ――え? おっぱい? 胸が膨らんだまま!

 なんでおっぱいがまだあるの!?

 ちょっと待てよ、おいっ!

 私は直ぐさまに、トランクスの中に手を入れてみた。


「無い! えええっ!?」


 私は大声を上げ、ガバッと上半身を起こした。

 今朝になって生えているはずの分身君がいない!

 なんてこった……

 アモールの性転換魔法が失敗したのか?


「うううん…… おはようございます……

 どうかされたんですか?」


 私の声でパティが目を覚ます。

 まだ寝ぼけており、目を擦っていた。


「おっぱいが有ってアレが無いんだよ! あううう……」


「むにゃむにゃ…… ええっ!?」


 パティが私の姿を見て、状況を理解したようだ。

 彼女も起き上がり、ベッドの上で女の子座りをして私のおっぱいを見つめる。


「ええ…… 確かに女の子の身体ですね……

 それであの…… ししし下のほうは……?」


「無い……」


「とにかく、アモール様へ急いでお知らせをしないといけませんね」


「そうするよ。はぁ……」


 私は肩を落としながら、パジャマのままでアモールの寝室へ向かった。

 まだ朝早いし、寝てるかな……

 心配しているパティも付いてくる。


---


 アモールには書斎とは別の執務室があり、その奥に寝室がある。

 私は寝室のドアをノックした。


 ――コンコン


「開いてるな。失礼します……」


 この部屋へはいつのは、男から女になる前にパティと熱烈キスをした時以来だ。

 私はそろっとドアを開けて、キョロキョロと中を覗くようにして部屋へ入る。

 パティも恐る恐る、私のパジャマをの端を掴んで付いていく。

 するとアモールはすでに起きており、鏡台に向かって座りブラシで髪を解いていた。

 黒のロングネグリジェで、意外にエロくない。


「あの、おはようございます……」


『なあに? こんな朝早くから…… えっ?』


 アモールは私やパティの魔力を感じ取っているからこの部屋へ入ったことについては驚きもしないようだったが、彼女が私たちの方へ振り返るとギョッとした顔になる。


『どうして…… 女のままなの?』


「わかりません…… 起きたら何も変わってないんです……」


『下半身は? ちゃんと見たの?』


「いえ、自分でちょっと触っただけです……」


『パトリシアさん、ちゃんと見てあげたの?』


「そそそそれは恥ずかしくて…… 見られません…… ぅぅぅ……」


 パティは顔を赤くして縮こまってしまった。

 まあ、女の子同士でもまじまじと見るところじゃないからな。

 男同士ならば尚更だ。

 温泉などの公衆浴場で爺さんたちがプラプラさせているのを遠く視界に入ったことはよくあったが。


『はあ…… 仕方ないわ。

 マヤさん、服を脱いで裸になりなさい。脱いだらベッドへ横になって』


「はい……」


 アモールに言われた通り私はパジャマを脱いでトランクスだけになり、おっぱい丸出しになった。

 アモールは顔色一つ変えず私を見ている。

 女の身体に対しては性欲が湧かないのだろう。

 パティは手で顔を塞いでるのに、思いっきり指の間から覗いているのがわかる。

 これで彼女もむっつりスケベの()があるのを確信した。

 トランクスをズルッと降ろし、床にファサッと脱ぎ捨てた。

 前にコケてパティにお尻を見られたりしたが、とうとう全裸を見られた……

 まあ、女の身体だからノーカウントということにしている。

 そしてベッドへ仰向けに寝転んだ。


『女の部分を見させてもらうわ』


 アモールもベッドの上に乗っかり、私の脚を拡げてその間に入った。

 アモールに対してその女の部分が丸見え状態である。

 ひっ ひいぃぃぃ!

 女の身体だと、男の裸を見られる時より恥ずかしいいぃぃぃ!!

 私は思わず両手で顔を塞いだ。


『ふぅーん、どれどれ』


 アモールは両手の親指でその部分を拡げて、顔を近づけてじっと見ている。

 そんなに見るなあ! 匂わないのかな……


「はわわわわっ」


 パティは変わらず顔を塞いで指の間から私を覗いていた。

 アモールもあれから顔色一つ変えない。


『おかしい…… まるっきり女のままね。

 どうしてジーナスムタティオで男に戻らないのかしら……

 女になった時は完璧だったのに』


 アモールはそう言いつつ、両手で私の両胸を鷲づかみした。

 そしてぐにょぐにょと揉む!


「あああっ あひぃっ」


『胸の柔らかさも、女そのもの。一体どうして……』


 一体どうしては俺の方だよっ

 アモールはそのまま揉み続けた。


「あうっ はふっ」


「はわわわわっ」


 なんか…… 気持ち良くなってきた……

 もはやパティは顔も隠さず好奇心で私を見ていた。

 そういえばパティ自身、第三者としてこのような場面を見るのは初めてではなかろうか。

 カタリーナさんと一緒にお風呂へ入ったというのは聞いたことがあるが、二人で何をしてるかまでは聞けなかった。そりゃそうだ。


『ふーむ、いいわ。服を着なさい』


「はふぅ……」


 私は顔が火照ってしまうが、アモールは難しい顔をしておりエロいことをしたという自覚が無いようだ。

 パティがチラチラと私の裸を見ているので、私はサッとトランクスを履いてパジャマを着た。


『マヤさん、今あなたは男から仮の状態で女になっているのだけれど、その仮の女から男へ戻る方向へ魔法が全く機能していないの。

 恐らくあなたが人間だからそうなんだと思う。

 男に戻るジーナスムタティオの記述を人間用に書き換えなければいけないわ』


「それはどのくらい時間がかかるのですか?」


『この魔法、完成するまでに十五年かかったの。

 人間用に改変するだけだから、そんなには掛からないと思うけれど……

 もしかしたら数年掛かるかも知れないわね』


「「ええええええっ!?」」


 私とパティは叫んだ。

 五、六年掛かるとして、それまでパティや他のみんなとも結婚はお預けになる。

 まだみんなは若いから良いものの、愛娘ミカンちゃんの弟か妹をシルビアさんに産んでもらうことが難しくなってくる。

 それに、女王から飛行機でアスモディアへ滞在する期限は約一ヶ月と言われている。

 こんなことなら我慢してカメリアさんたちに毎晩食べられていたほうが良かったのか。


『確証は持てないけれど、人間の男の新鮮な血液か唾液が必要だと思う。

 だがこの国には人間の男がいない。

 ここへ連れて来て、実験しながら魔法を作り変えるしか無い』


「そ、それは…… ぬくく……」


「マヤ様、それって…… えええっ!?」


 男の血を飲むか、唾液を飲むのか!?

 ぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!


「あの、お父様の血を頂くというのは如何でしょう……?」


「えっ えええ……

 ガルシア侯爵をアスモディアまで連れてきて、長期間マカレーナを空けると仕事に差し支えがあるんじゃないかな」


「そうですね…… でも、マヤ様が他の殿方と交わるのは嫌ですわ」


「交わるって言うなよお…… トホホ」


 アスモディアまで来てもらえるほど親しい男性は、マカレーナにはいない。

 他の街に、私のことを信用してくれて、それほど忙しくない男性っていたかな?

 それでも飛行機運用の関係で、私自身がアスモディアに長期滞在出来ないという問題がある。


「アモール様がマカレーナへ来て頂いて実験をするというわけにはいきませんか?」


『私もこの国の仕事があるから、あまりここを離れられないの。

 転移魔法はすごく力を使うからむやみに使えないし、この前のように魂だけの疑似転移も本体の身体を制御しながらだから、魔法実験するには向いていないわね』


「ううう…… どうすることも出来ないのか……」


『いや、私が作った魔法を解析して実験が出来る頭脳を持っている人間が一人だけいるわ。

 それなら人間の国で実験が出来る』


「人間!? 誰かいるんですか!?」


『あなたがよく知ってる子よ。もうすぐ復活する暇人が……』


「エリカさん!!」


 そうか! エリカさんの頭だったらアモールの魔法を十分に扱える!

 それに有り余るほどの暇を持て余している!

 あっ 魔物退治が無くなって収入も無いから、私が養わないといけないのか……

 でも希望が少し見えてきたぞ! よおしっ


「そうですね。エリカ様なら出来そうですよねっ

 それならお父様の血をいくらでも……」


「ああ、ううん……」


 パティの唾液のせいで、私の顔を基本にパティのスッと通った美しい鼻筋になっている。

 ガルシア侯爵はどちらかと言えばイケメン寄りだからパティの顔も美人になっていると思うんだが、あの濃い髭面が移ってしまったら嫌だなあ……

 本当に誰かいないのか。


「マヤ様はお父様の血を飲むのがお(いや)なんですか?」


 パティはやや不機嫌そうな顔をしている。

 イスパルは地球の諸外国のように日本と比べて親子の信頼と愛情はずっと熱いから、相手が自分の親を嫌がると気分を悪くすることがあるのはわかる。

 それにしたって、ガルシア侯爵が自分の血を私にあげる前提というのはどうなのか。

 唾液でもけっこうな量だったから、血の一滴二滴じゃ済みそうにない。


「うーん、(いや)ってわけじゃないけれど、もしかしたら髭を剃るのが大変になるのかなってね。

 ほら、私の鼻筋ってパティに似てるじゃない。

 髭の濃さが似てきたらどうしようと思ったんだ」


「それもそうですわね。

 私は男のマヤ様のように髭が薄いほうが好きなことは秘密ですよ。うふふ

 それで私、思い出したんです。

 あの方ならばお顔が美しくて、お時間も頂けるんじゃないかと思うんです。

 とっても素敵な方で、私も大好きになりました」


「ええっ!? そんな人いたっけ?」


「セレスでは、私やルナさんにとても良くして下さいましたわ」


「セレス!? セシリアさんかあ!」


 セシリアさんなら、何とか頼んでマカレーナまで来てもらえるかも知れない。

 彼…… いや、彼女は美形だし、髭は生えてないし、男の私がイケメンになれるのか!?

 むふっ むふふふふ。

 いやまてよ……


華奢(きゃしゃ)なセシリアさんに、血をたくさん出させるなんて出来ないよな……」


「私、知ってるんです。前にエルミラさんから聞いたんですよ。

 マヤ様…… セシリア様と…… キキキキスをされたんですよね?」


「あいやあのあうあうあうあー!!」


 エルミラさんはあれで口が軽いと思っていたけれど、あのことまで!

 はぁ…… まいったなあ…… どうしよう。


「いいんです、それは……

 むふっ むふふっ マヤ様とセシリア様の熱烈なキッス!

 どうか私にも見せて下さいませっ むうふーっ」


 パティが興奮しておかしくなった!

 あっ! 絶対パティが読んでたBL小説の影響だ!

 エルミラさんと言えば、同じくBL小説愛好家だからそう言う繋がりだったのか!

 二人はBL友!? なんてこった!

 パティがとうとう真性のあっちの世界の住人になってしまったのか!

 でも今の私は女だから、心が男で身体が女の私と、心が女で身体が女に近い男のセシリアさんであれば何とも複雑だけれど男と女の関係だから()いのか……

 えっ ()いの?


『何だかよくわからないけれど、エリカさえ復活出来ればマカレーナで解析と実験が出来るから大丈夫ってことでいいのね?』


「ああっ はい、まあ…… そういうことです……」


『決まりね。エリカが復活したら、あなたを見てさぞびっくりすることでしょう。ふふ』


「その問題があったか…… うぐぐ」


 エリカさんとの感動の再会になるところだったのに、見ず知らずの女がいたらどう思われるのだろうか。

 まあアモールが説明してくれるから信じてくれるだろうけれど、分身君がいないしがっかりするだろうなあ。

 それよりもっと問題なのが、王宮で女王に説明しないといけないし、アリアドナサルダのロレナさんたちにも……

 リーナは女に変わったって信じてくれるかな?

 マカレーナでも皆に説明を…… うわあ!

 皆に信頼厚いパティに助力を請うしかないよね。

 そのパティはまだ鼻息荒く興奮していた。


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