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第二十八話 名刀『八重桜』

2023.9.23 読みやすく加筆修正しました。

 ラフエルの魔物退治の件で、アマリアさんからお礼に白金貨一枚ももらってしまった。

 日本円だと百万円相当だ。すごいな……

 これはアマリアさんのポケットマネーからで、恐縮だがありがたく受け取った。


 さて、礼金の使い道を考えてみる。

 欲しい物で高価な物かあったかどうか頭を捻らせていたら…… あったぞ。

 この前エルミラさんと行ったときに見つけた、日本刀のような刀だ。

 白金貨一枚あれば、あと少し足せば買えそうである。

 しかし自分に合った刀をどう選べば良いかわからない。

 そうだ、ローサさんに聞いてみよう。


 あれからも毎日ではないがローサさんから剣術の指南を受けている。

 木刀で型を徐々に覚えてきたのだが、肝心な自分の刀をまだ持っていない。

 屋敷の廊下でアベル君を抱いたローサさんを見かけたので、刀を買うことについて聞いてみた。


「それでは明日にでも、私も武器屋へご一緒しましょう。

 気分転換にもなりますから」


「え? ありがとうございます。よろしくお願いします」


 ローサさんが一緒に行ってくれるなんて思ってもいなかったが、目利きが出来る人が付いていればとても助かる。


---


 翌日の午後、アベル君を乳母のおばちゃんに預けてローサさんと出かける。

 彼女はブラウスのロングスカートで軽装だが、刀を背負っていること以外は大人らしい格好でとても綺麗だ。


「少し運動したいので、今日はお店まで歩いて行きましょう。

 なんだかデートみたいで楽しみですね」


「大丈夫なんですか? 侯爵閣下が焼き餅を焼きませんか?」


「侯爵はマヤ様のことを信用なさってますから大丈夫ですよ」


 それはありがたいことだけれど、アマリアさんとはあんなことがあったし、人妻とプライベートで二人だなんて背徳感がある。

 武器店がある商店街までは歩いても三十分ほどだけれど、侯爵家の奥方がこうやって外を歩くのも変わっているだろう。

 本人が強いから護衛が不要というのもあるが、それにしてもロングスカートに刀を背負ってるのはなんだか不自然だし、たすき掛けだから豊乳が大変なことになっている。


---


 前にエルミラさんと行った武器・防具店に着くと、早速刀が置いている場所へ向かった。

『胡蝶蘭』などの刀が並べて飾ってある。


「それじゃあ…… マヤ様と私の身長差は……」


 ローサさんが急に対面になって手をかざして身長差を見ているんだが、豊乳が私の胸にふにょんと押しつけられてるし、顔も結構近い。

 天然人妻の破壊力はすごい……

 スサナさんたちもだけれど、私をあまり男としてみていない節があるのではないか。


「マヤ様の身長と男性だということを考えたら、私の『白百合』よりほんの気持ち長いだけのほうがいいのかな」


 ローサさんは顔をかしげながら刀をいろいろ見比べている。

 私は刀について全くわからないから、やっぱり付いてきてもらってよかった。


「この中だったら、きっとこれがマヤ様に一番合うと思います」


 ローサさんが差し出したのは『八重桜』という刀。

 奇しくも鍛冶師が『白百合』と同じ、東の国の『セトヤマデンジューロー』という人だ。


「お店に頼んで、広い別室があるので一振りしてみませんか?」


「それは是非とも」


 お店の人に聞いたら隣にある別室を貸してくれたので、そこで試しに振ってみよう。

 (さや)から抜いて…… おおずっしりくる。

 両手で持って前へ振る。うーん、いい感じだ。


「せっかくなので私と刀を合わせてみませんか?」


「はい、お願いします」


 まだ売り物なので打ち合いはしないが、『白百合』と刀先を合わせる格好だけをする。

 いい感じだ。ゾクゾクする。


「ローサ様、決めました。これにします!」


「それはよかったです」


 ローサさんはにっこり。

 童顔でとても可愛いいから子持ちの人妻には見えない。


「あ、ローサ様。スカートの後ろが鞘に引っ掛かってますよ」


「あら、ありがとうございます」


 引っ掛かっていた時に、ローサさんの白いハーフバックぱんつが丸見えだったことは黙っておこう。


 お会計は、白金貨一枚と金貨二枚だった。

 高い物を()()()()()の感じはとても気分がいいものだ。

 百二十万円相当になるが、値打ち物は日本でもそのくらいしていたし、貴族向けの高めなお店なのでそんなものだろう。

 ちなみに店員さんはよくアニメで出てくる荒くれ者風のおっさんではなく、普通の品の良さそうなおじさんだった。

 刀を研ぐのはこのお店でもやってくれるが、東の国【ヒノモト】の職人にやってもらうのが一番良いそうだ。

 いつかその国へ行く機会があるかも知れない。


---


 良い買い物をしてホクホク顔で屋敷へ戻り、このまま早速ローサさんと庭で打ち合いをしてみることにした。

 丁度スサナさんとエルミラさんが訓練をしていて、エリカさんが向こうのガーデンテーブルで暇そうにしていた。


「お、戻ってきましたねー それが新しい刀なの?」


「マヤ君もとうとう自分の武器を使うようになるのかあ」


 刀を右手に持ち、二人に見せびらかす。


「ふっふっふ、ついに手に入れた私専用の武器『八重桜』なのだ」


 ワーイパチパチと二人に喜んでもらっていると、エリカさんが気づいたようで「え?何々?」と言いたさげにこちらへやってきた。


 三人の前で打ち合いすることになった。風が少し出ている。

 居合抜きだと負けそうなので、ローサさんも私も普通に構える。

 ローサさんが先に動いた!

 打ち合いが始まりカキンカキンカキンと刀が鳴る。

 いったん離れてまた打ち合いの繰り返しをしているが、風も吹いてることもあってそのたびにロングスカートがふわっと(めく)れて白いおとなぱんつが見えてしまう。

 だがそんなことを気にしていると命に関わるので集中しないといけない。

 ローサさんも自分で気づいていないようだ。


「マヤ様、最初より少し調子が悪くなっていませんか?」


「あーいや、刀はしっくりきてますよ」


「あの…… ローサさん。さっきからスカートが(めく)れて下着が……」


 打ち合いの最中にエルミラさんがボソッとそう言う。

 彼女は空気が読めないんだから、黙ってくれていた方が良かったのに。


「え!? あっ あ……」


 ローサさんは動作を止め、顔を真っ赤にして固まっている。

 ちなみにエルミラさんはローサさんとは付き合いが長いうえに元後輩なので、さん付けで呼んでいる。


「ローサ様がスカートのままですからどうなるかと思いましたが、やっぱりマヤさんは見ていたかあ!」


 空気が読めない二号スサナさんは何を言っているんだ。

 主人の嫁に恥を掻かせるんじゃない!


「あっはっは。本気でぱんつを見ていたらマヤ君は反撃されて死んじゃうよ」


 一番空気が読めない三号エリカさんがとどめを刺す。


「けっ 剣士たる者、殿方に下着を見られたぐらいで…… 

 ど、動じませんわ!」


 これはクッコロ精神なのか、既婚者の余裕なのか。

 どう見ても動揺しているが、落ち着こうと必死になっているのがまた可愛らしい。


「さあ、今日はこれくらいにしましょう。マヤ様、それではまた明日も!」


 生真面目なローサさんは顔が赤いままスタスタと足早に屋敷の中へ帰っていった。

 ぱんつが見えたことは無かったことにしておかないとかわいそうだ。


「まったく三人とも、ローサ様に恥を掻かせちゃだめじゃないですか」


「えー、だってぇ。

 あそこでやめておかないとむっつりマヤ君の首がうっかり飛んでしまいそうだしぃ」


 むっつりは余計だ。自覚はしてるけれどな。

 今も脳裏にはローサさんのぱんつがしっかり刻み込まれている。


「ローサさんはエリカさんみたいにうっかり者じゃないから、すんでところで止めてくれますよ」


「うっかり者じゃなかったらぱんつ見せないんじゃないの?」


 エリカさんは言いたい放題だな……

 もう小学生みたいなやりとりになってきたからやめよう。

 しかし『八重桜』は最高だなぁぁぁ。これからのパートナー、よろしく頼むよ。

 うひひひ……

 私は思わず刀に頬ずりしてしまう。


「マヤさんってば、ニヤニヤしながら刀にスリスリするなんて……

 刀は女の子なの? マヤさん変態?」


「マ、マヤ君って……」


 スサナさんは遠慮なしにそう言うし、エルミラさんは残念そうな目で私を見る。

 私はMではないので、好意を持っている女性からのその視線はキツい。


「マヤ君、そういうことなら今晩はお姉さんとスリスリしないかい?」


 エリカさんはこんな場所で性欲を()き出しに……

 ダメだこりゃ。


 夕食の時間になり、ローサさんはアベル君を抱いていつもの澄ましたお母さんの表情になっている。

 今日はローサさんのいつもと違う一面が見られて良かったな。

 真面目で普段は慣れている女性のぱんつが急に見えたら、すごく興奮するよね。


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