第二百七十話 お下品夕食会と天然ビビアナ
久しぶりのビビアナとジュリア回です。
謎のギャル、マイと偶然出会う。
彼女の正体は三ツ目を持つ三眼族であり、アスモディアの首都ディアボリの警察官だった。
連れて行かれたホテルにてインキュバスの二人を連続婦女暴行の容疑で捕まえ、私とジュリアさんは無事に館へ帰ることが出来た。
いや、ジュリアさんは魅了の魔法が掛かったままだが……
アモールの館、玄関ホール。
帰るのがすっかり遅くなってしまったが、夕食には何とか間に合ったようだ。
背負っているジュリアさんは眠ったままだ。
「にゅふーん マヤさぁぁん……」
私の背中で寝ぼけ、そんなことを言っている。
一緒に食事は出来そうにないなあ。
部屋へ連れて行って、後でビビアナに食事を持って行ってもらおうか。
そこへバタバタと忙しそうに歩いているカメリアさんと遭遇する。
夕食の準備中だと思う。
『あらマヤさん、遅かったですね。
ん? ジュリアさんはどうかされたのですか?』
「実は出先でインキュバスの魅了にやられてしまったんですよ。
それ以外の被害は無かったんですが……
彼女、どうにかなりませんか?」
『まあ大変! インキュバスの魅了は、私たちサキュバスでは解除出来ないの。
女に掛けるのと男に掛けるのとでは、術式と魔力の使い方が違うんですよ……』
「それじゃあどうすれば!?」
『症状が軽いようですから一晩寝かせておけば大丈夫ですよ。
眠っているのは満足した副作用ですから問題ありません』
「良かった…… じゃあ彼女の部屋へ寝かせてきます」
『ふふふ。夕食の時に詳しく話を聞かせてもらいますからね』
「ああ…… はい」
カメリアさんはそう言って仕事へ戻っていった。
こりゃ夕食は報告会になってしまうな。
私はジュリアさんをそのまま背負い、彼女とビビアナが借りている部屋へ向かう。
――コンコン。お邪魔しまあす……
ビビアナはいない。
ああそうか。厨房で食事の準備をしているところだな。
私はジュリアさんをベッドへ寝かせ、靴を脱がした。
半分口を開けて幸せそうに眠っている。
「マヤさぁん…… ああ…… そこがいいでス…… うふ……」
はぁ……
今の私は女だから構ってあげられないので、せめて夢の中で楽しんで欲しい。
――夕食の前に自室へ帰る。
インキュバスに触られてなくても何だかニオイがついてそうなので、着替える。
本当はシャワーを浴びておきたかったけれど時間が無いので後にする。
ビビアナのブラはキツい! もういらん。
さっき買ってきたブラとぱんつは洗ってから使う。
着けるのが面倒だし、ノーブラのままでいいや。
どうせすぐ男に戻るんだから垂れる心配をする必要無い。
ブラを外し、ぷりんと胸が現れる。
まだ自分の胸に慣れなくて、ドキッとした。
ああやっぱり…… ブラの跡がくっきり付いてる。
上着はドレスルームでも着た、エリカさんの古着である黒のTシャツとデニムのミニスカ。
ぱんつ見えそうだけれど、これが一番楽だ。
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ダイニングルームで夕食。
みんな集まっているけれど、オフェリアたちがいないから非番かな。
食事が始まると早速アモールが口を開く。
『カメリアに聞いたわ。
マヤさん、詳しく聞かせて頂戴』
「はい……」
私は、衣料品店でマイと出会ったこと、オープンカフェでインキュバスたちにナンパされたこと、ホテルへ連れて行かれてそこで襲われそうになったこと、マイの正体が三眼族の警察官で、インキュバスを秘術で倒したことを事細かく話した。
その後、最初に口を開いたのは後ろに控えているカメリアさんだった。
『そういうことでしたか。
その三眼族がいなかったらマヤさん危なかったですね。
淫魔族にとって三眼族は天敵なんですよ。
話のインキュバスたちはたぶん私たちが知らないやつらだと思うけれど、彼女を甘く見たようですね』
「天敵!? それであの…… アモール様。
明後日、彼女がここへ遊びに来たいって言うからいいよと言ってしまったんですが……」
『それは構わないわ。天敵と言っても戦うわけじゃない。
警察に三眼族の子が一人いると聞いたことあるけれど会ったことは無いし、この国の田舎で村を作ってる少数魔族の彼らを見るなんて何百年ぶりかしらね。
私も興味あるから会ってみたいわ』
「良かった。ありがとうございます」
事後承諾になったけれど、招き入れることを受けてもらえて良かった。
ここでもガルシア家でも人様の家なのに、勝手なことをしたらいけないね。
早く自分の屋敷が欲しい。
『それにしてもインキュバスに捕まったら、あなたといえど無事ではなかったかもしれないわ。
本当に何もされなかったの?』
「そうですよマヤ様!
誰でも簡単に付いていかないで、女の子の身体は大事にして下さいまし!」
「う……」
パティに怒られた。
マイもいたしインキュバスは倒せそうな目論見はあったけれど、アモールがそう言うのならば本来危険な種族なんだな。
「いいやあ、本当に三眼族の警察官と一緒にいて良かったです。
それと、女になっても男が好きになる訳じゃ無いみたいで、魅了も自分には効かなかったですよ」
『ふうむ…… 魅了についてはマヤさんの力が大きくなってるから弾いたとしても……
男の魔族に性転換の魔法を掛けたときは心も女になったけれど、人間族には精神に作用しないのかしらね』
「そうだったんですか……
でも男の精神のままで良かったですよ。
男を好きになって、後で男に戻って女の時の記憶を思い出したらゾッとするところです」
『ふふ…… それもそうね。
性転換して元の性に戻ったのは全体の二割以下だったわ。
その中で性交渉をしてる場合がほとんどだったから、あなたが言うとおり戻ったときに後悔していたわね』
「うへぇ……」
今、女の身体で女の気持ちになって男とエッチなことをして、身体と気持ちが男に戻った時にそれを思い出したらオエーッだからな。
ビビアナとアイミは話半分食欲優先でモリモリ食べていたが、アイミが食べながら口を開く。
『それで…… モグモグ……
インキュバスたちはどんな攻撃をしてきたのだ? モグモグ……』
それを聞いてきたかあ。
股間のアレを腕のように使って戦っていたと言うだけで通じるのか?
「食事中に言うようなことではないんだが……」
『言えないこと? 余計に聞きたいわ。構わん、言え』
ああ…… 面倒臭い。
アモールは知っているのか、ニヤッと微笑んだ。
女の子に卑猥な言葉を無理矢理言わすようなアレだ。
この世界ではマツタケなんて生えてないから、代わりに使える言葉が無い。
もういい。サラッと何も考えずに言おう。
「イケメンインキュバスの股間から筋肉モリモリの腕のようなものが生えてきて、私がキックをしてもそれに弾き飛ばされたんだよ。
氷結魔法を股間の腕に掛けても、薄皮一枚しか凍らすことが出来なかった」
『ほう、腕とはどんな形なんだ?』
くううう! わかってて言ってるだろう?
アイミは私にどうしてもアレでナニと言わせたいのか。
「おまえは男の股間から生えてるモノぐらいわかってるだろう?
(ピー)だよ(ピー)! 筋肉マッチョの腕みたいな(ピー)だ!」
そう言った途端、アイミは笑いを堪えて今にも口が爆発しそうだ。
後ろでもサキュバスメイド三人も大笑いしたいのを我慢してる小さな笑い声が聞こえる。
『うひっ ぷぷぷ……』
『ぷっ うぷぷっ ククク……』
一応ディナーという手前大声で笑うのは控えているようだが、アイミの顔はギャグ漫画のように崩壊している。。
パティは顔を真っ赤にして不機嫌そうな顔をしながら食事を続けていた。
「もうマヤ様ったら…… 品性がありません!」
またパティに怒られる。
アイミはしつこいからさっさと言ってしまったほうが早く済んで良いが、パティはあまりふざけた冗談が通じないんだよなあ。
「ニャニャ? (ピー)がどうかしたかニャ?
お風呂へ一緒に入るとパパの(ピー)はおっきいし、弟のセベリノの(ピー)はとっても可愛いニャあ」
『『『あ…… ああ……』』』
『フフ…… 猫耳族の家庭はそうなのね』
ずっと食事に一生懸命だったビビアナはほとんど話に参加しておらず、たまたま耳に入った会話を聞いてそんなことを言う。
無邪気に微笑ましく言うので、みんなは私が言ったことがどうでもよい空気になってしまった。
アモールは私たちが来て微笑む機会が増えた。
ビビアナの天然さに助けられたぞ。
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そんなこんなで、女になった一日目はいろんな出来事が有りすぎてどっと疲れが出た。
お着替え大会に、ヒュスミネルという邪神エリサレスの息子が襲来、三眼族のマイに出会い、インキュバスと戦った。
早くシャワーを浴びて今晩はさっさと寝よう。
シャァァァァァァァァァ……
お風呂でシャワー。
一日目ではとても女の身体に慣れない。
こんなエッチな身体だから、エッチなことを考えると際限が無くなる。
お昼過ぎに一人で変なことをしていたら声をパティに聞かれてしまったのだ。
ここは我慢我慢……
――はぁ
我慢出来なかった。
洗っているときに手が胸やお尻に触れると止まらなくなる。
自分で勝手に変な声を出してしまう。
そして下へ指を這わせると、あっという間に軽くブルッと痙攣してしまった。
もしインキュバスに捕まっていたらどうなっていたのだろう。
考えたくもない。
エリカさんにあげるはずだった赤いTバックを履いて、ブラは無し。
パジャマは男の時の物を着用した。
よしっ寝るぞ!
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ギィ……
ドアが開いて、気配を感じて目が覚めた。
まるで猫が抜き足差し足忍び足のように歩いているようにこちらへ近づいてきた。
魔力を感じるが……
それはシャツとショートパンツ姿のビビアナだった。
「夜遅くどうしたの?」
「ああ…… マヤさん起こしたかニャ……
ジュリアが寝ぼけていろんなとこ触ったりキスしたりしつこいニャ……
ここで寝かせて欲しいニャ……」
「そ、そうか……」
ジュリアさんがああなったのは自分にも責任があるからな。
ビビアナとは朝まで通して一緒に寝た覚えはないけれど、いいだろう。
「じゃあ寝よう」
「ありがとうニャ……」
彼女はよほど眠かったのか、パタッとベッドへ倒れ込むようにすぐ寝てしまった。
反対にビビアナから何かされるかもと思ったけれど、これなら安心だ。
彼女を布団の中へ押し込んで…… よし。
おやすみなさい。
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ああ…… 顔が重い。
?? 太股?
目を開けると、顔がビビアナの太股に挟まれていた。
もう朝か……
そういえばこいつ、寝相が悪いと聞いたことがあった。
それにしてもどうやったらこんな寝相になるんだ。
ちょっと脚を曲げれば首四の字固めで死ぬところだった。
いや、その前に息苦しくて起きるけれど。
ベッドが広いと落ちないから、余計におかしな寝相になるんだな。
それにしても猫耳族の脚は形が良くて綺麗だよな。
マカレーナでも娼館街で人気があるのはわかる。
スンスン
ああ…… ビビアナの肌のニオイはいいなあ。
おっと。これ以上はやってることが魅了を掛けられたジュリアさんと同じになってしまう。
「おーい、ビビアナ。起きろー 朝だぞー」
「スー スー スー ニャ……」
まあこれだけじゃ起きないのはわかっていた。
こういう時は脇腹を指でツンツン……
「ニャひーーーー!!」
「やあビビアナ。おはよう」
「ああ…… マヤさんニャ……
なんであてしの下にいるのかニャ?」
「ビビアナの寝相が悪いからだよっ」
「うニャあ!?」
私は強引に起き上がり、ビビアナの脚を持ち上げて私の腰に挟ませてから彼女の上半身を抱き寄せた。
ベッドの上で座ったままハグをしている。
ビビアナは少々驚いていたが、彼女もすぐに私を抱きしめた。
「にゅふふーん、これが女のマヤさんかニャ。
おっぱいが大きくてふかふかだニャ。
まるでママみたいだニャ」
ビビアナは上機嫌で私を抱きしめながら上半身をぐねぐね動かす。
彼女の胸はDカップあるので私のEカップと擦れあい、ふにょふにょと良い感触。
母親であるリリアナさんのことを思い出しているのだろうか。
野暮なことをするのは止めておこう。
「朝食の準備はいいの?」
「朝はもうしなくていいニャ。
オレンカとリリヤが上手く出来るようになったから。
それよりジュリアがどうなってるかマヤさんも見に行くニャ」
「おお、そうだった。ちゃんと正常に戻ってるか確認しないとね」
私たちはジュリアさんとビビアナが借りてる部屋へ向かう。
私はマイナス思考もあるので、容態が急変してどうにかなったということが頭の中をよぎった。
いやいや、そんなことがあってたまるか。
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「ジュリアあ。起きてるかニャー?」
ビビアナが部屋のドアを開け、声を掛ける。
反応が無い。
ベッドがあるほうへ向かうと……
「わっ すっぽんぽん!」
ジュリアさんは素っ裸になり、脚を大開脚して気持ち良さそうに寝ていた。
なんてエッチな格好だろう。
「給仕の服を着たままだったから脱がしたけれど、ぱんつとブラはきっと自分で脱いだニャ。
風邪を引いてないかニャ?」
「うーん、起こしてみるか」
私はビビアナを起こしたように、ジュリアさんの脇腹を何回かつついた。
プニプニ…… 気のせいか少し太ってるような。
「ひゃいっ!?」
「あ、起きたニャ」
脇腹つつきは効果抜群だな。
ジュリアさんは飛び起きて、何が起きたのかわかっていないように眠い目でキョロキョロしている。
「あ…… あれ? ビビアナちゃんとマヤさん?
ブルル…… 寒いよ…… え? 何でわたス裸!?」
「ああ良かった。正常に戻ったようだね」
「ジュリアがあてしにエッチなことをしようとしてたから、マヤさんの部屋で寝たニャ。
その後に寝ぼけて自分でぱんつとブラを脱いだんだニャ」
「えー!? わたスそんなことをスてたの? 覚えてない……」
「ジュリアさんはあのインキュバスに魅了を掛けられていたんだよ。
でも安心して。何もされていないから」
「ああ…… その…… ホテルのベッドでマヤさんといいことをしていたまでは覚えているけれど……
なんかいろいろご迷惑を掛けたようでスね。すみません……」
「なんだ、女のマヤさんともいいことをしてたのかニャ?
しょうがないやつだニャ」
ジュリアさんは裸のままシュンとしている。
まあ、あの件で一番被害に遭ったのはジュリアさんになるから責めることでも無い。
「ジュリアさんは悪くないよ。
インキュバスのあいつらが一番悪い。
実はマイって警察官だったんだ。
だから捕まえてくれたんだよ」
「そうだったんでスか!? どこか強そうな魔力の感じはスてました」
「そういうことだね。
ジュリアさん、昨日から何も食べてないでしょう?
服を着て朝食を食べに行こう」
「そ、そうでスね。そう言えばスんごくお腹が空いてまス……」
「早く服を着ないとモミモミするニャあ。ひひひ」
ビビアナは両手の指をぐねぐね動かして、早速ジュリアさんの胸を揉み出した。
なかなかの見物で面白い。
ああ…… アイミの面白半分な気分が今わかった。
「ああああああやめてビビアナちゃあああん!! くすぐったいよおお!!」
「ゆうべの仕返しニャああああ!」
いやあ、若いっていいもんだねえ。
新鮮な気持ちでいられるのは幸せなことだ。
歳を取って経験を積めることは良いが、心が擦れてしまう。
この世界に来てからの生活はとても楽しいから、私の気持ちは若返ったのかな?




