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第二百六十九話 強大な三ツ目の力

 私たちが出掛けた後のこと。

 パティは館で借りている部屋に籠もり、デスクに向かって再び魔法書で勉強を始めるが……


(パティ視点)


 ううう…… 勉強が手に付きませんわ……

 マヤ様がお部屋であんな声を……

 それに、あんな近くでお尻の中まで全部見てしまいました……

 マ、マヤ様は気を抜き過ぎです!

 女の子なってるうちは尚更デリカシーを身に着けて頂かないと。

 男のマヤ様ではありませんから…… あ、あれはノーカウントです!

 でもでも…… 自分以外の女の人であんなにはっきり見たのは初めてでした。

 いえ、エリカ様も前にお風呂場の脱衣所で転んだんでしたっけ。

 もうっ! 揃ってあの人たちはドジなんだからっ


 お母様やカタリーナ様と一緒にお風呂は入れますけれど、マヤ様とはいくら身体が女同士でも恥ずかしいです。

 でも十五歳はもうすぐ……

 キスやハグは出来ても、裸を見せるのはまだ無理です。

 マヤ様の裸を見るのも…… は、裸!? ボムッ

 ううう…… マヤ様の裸を想像したら頭が爆発してしまいました……

 いいいいつか男のマヤ様と裸で抱き合う時が来るんですよね……

 ううん。私がしっかりして腹をくくらないと、マヤ様に不快な思いをさせてしまう。

 男女の営みは愛し合っている者同士でとても大切なこと。

 心の準備はしておかないといけませんわ。

 これからもっともっとマヤ様とスキンスップをしなければっ



(マヤ視点)


 謎の金髪ギャルの名はマイ。

 オープンカフェにて、彼女とジュリアさんと三人でお茶をしていたら一見優しそうなイケメンが二人、声を掛けてきた。

 マイはこの時すでにイケメンの正体がインキュバスと気づいており、彼女は何とかこいつらを懲らしめてやろうと、相談の結果ナンパに誘われたふりをして付いていった。

 ジュリアさんはインキュバスの魅了に掛かってしまい状態異常になるが、インキュバスたちにではなく好きな相手である私の方に(せま)ってきた。

 ジュリアさんと私の絡みに興奮したインキュバスはだんだんと本性を現し、私たち三人にイケナイことをしようとする。

 マイは危険を感じこれ以上インキュバスたちにやらせまいと、前髪に隠れていた額を見せて自分の正体を明かした。

 彼女の額には三つ目の眼。

 強力な魔力を持ち、レア魔族である三眼族(さんがんぞく)だった。


『くぅ…… 三眼族だったとはね。

 でも僕たちはタダではやられないよ。

 このままでは淫魔族としてのプライドが許さない』


『ふん、プライドねえ……

 許されている範囲ならまだしも、無理矢理やって誇るとは程度が知れてるよ』


『むぅぅぅ……』


 赤髪が偉そうなことを言うが、マイはそれをあっさり(くつがえ)す。

 こいつら頭が悪いんじゃないのか?

 無理矢理って、カメリアさんたちが私にやってたのはどうなの?

 キリが無いからこうして女にしてもらったわけだけれど、行為自体は今まで最高のテクニックで良い思いをした。

 そうか。だからアモールにはそれがわかっていて彼女たちを咎めることしなかったんだな。

 どうせなら今度は一人ずつがいいな。

 カメリアさんの濃厚なプレイ…… むふふ。

 おっと。戦闘が始まろうとしているのにまた妄想をしてしまった。


『僕たちの力を甘く見ないで欲しいね。はあああああ……』


『はあああああ……』


 黒髪がしゃべると二人とも両拳を握り、力を込めているようだ。

 魔力がどんどん上がっていくが、何をするつもりだ?

 このまま指をくわえて見ているわけにはいかない。


「だああああ!!」


 私はインキュバスの出方を見るために、赤髪の方に蹴りを食らわす。

 すると赤髪の股間から何かが飛び出した…… 腕!?


『むううううん!!』


「うわああああ!!」


『おいマヤあ!』


 私は赤髪の何かに弾き飛ばされ、マイに受け止められた。

 一体何が起こったんだ!?


「ああ、ありがとうマイ」


『それより見ろ。あの二人……

 あわわわわわ…… あんなの初めて見た……』


 マイはインキュバスたちを見て狼狽(うろた)えている。

 私もやつらを見ると……


「ぎええええ!!」


 ふ、二人の股間に、筋肉ムキムキマッチョの腕のような超巨大マツタケが……

 ズボンを履いたままなのに、マツタケの大きさに合わせて穴が開いている。

 アレに跳ね返されたってことは、触っちゃったってこと?

 ひいぃぃぃぃぃ!!


『僕たちの(ピー)は手脚よりも強靱で、全種族で最強の(ピー)なんだよ。

 でも安心してくれたまえ。

 女の子に合わせて(ピー)の大きさは自由自在に変えられるからね』


『そんな情報は無用だってば!』


 露骨に(ピー)なんて言うから可笑しいやら気持ち悪いやら。

 マイの言うとおり聞きたくない情報だった。

 それはともかくあのマツタケをどう対処すべきか……

 アレと組み手なんてやりたくないよ。

 触らずに済ますには魔法しかないか。

 施設には被害を出さないようにするには……

 あの魔法だ!


「だったら使い物にならなくしてあげるよ!」


 私はナイトロジェンアイスの魔法を掛け、範囲を狭めて威力を集中させた。

 それを赤髪のマツタケに目掛けて放つ!


 シュウウウウ…… ピキピキ


「よしっ 凍ったぞ!」


 マツタケは氷の棒になった。

 ちょっと可哀想だけれど仕方が無い。


『ふうぅぅぅぅぅむ!!』


 パリイィィィィィン!


「なっ なにいぃぃぃ!?」


 赤髪が気合いを入れると、凍ったはずのマツタケの(がわ)が割れて元に戻ってしまった。

 正確には周りの水分を凍らせていただけだった。


『フフフ。そんなものは淫魔族にとって何百年も前から対策済みだよ。

 言ったろう? 全種族最強だって』


 赤髪が爽やかイケメン風に、自慢げに話す。

 だが巨大マツタケを(あら)わにしていてはただの変態である。

 今度は黒髪がずいっと前に出てきた。


『次は僕の技を味わってもらおうかな』


『けっ 遠慮するよ』


『まあそう言わずに…… フフ』


 今度はマイが応戦するようだ。

 黒髪も格好良くしゃべっているが、丸出しではただの変態だ。


『じゃあ召し上がれ!』


 黒髪はそう言うと、マツタケ自身が連続パンチをするようにマイに向かって高速の突きを放った。

 マツタケがまるで生き物のよう。

 マイはそれを手の平で受け止めたり、拳で打ち返している。

 すげえ…… よく素手で触れるな……

 黒髪のマツタケのほうもマイのパンチを余裕で受け止めているので、なかなかどうして強力だ。

 数分打ち合いを続けていたところで止まる。


『さすが三眼族だね。魔力だけでなく素手の攻撃も強い』


『あんた、思った以上にやるね』


 二人ともニヤッと笑う。

 正統な戦いに見えるが、相手はマツタケ丸出しである。

 あまりにも滑稽(こっけい)で、私は心の中で笑っていた。

 広い部屋といえど戦えるのは一対一でしか出来ない。

 同族が経営してるホテルの破壊行為はしたくないのだろう。

 どこまで本気なのかわからなくなった。

 ジュリアさんは下着姿のまま、よだれを垂らしていつの間にか眠っていた。

 魅了が掛かっているので、たぶんエッチな夢を見ているに違いない。


『でも、いつまでも時間は掛けられない。

 終わりにさせてもらうよ』


 マイはこいつらをすぐ倒せる手札があるというのか。

 そろそろ館へ帰らなくてはならない時間だ。

 出来れば早く片付けて帰りたい。


『そうはいかないよ。

 君たちを頂くまで抵抗させてもらうから』


『三眼族のララちゃんと、アンナちゃんはどの種族かな?

 こんな強くて良い女をハイそうですかと手放すわけにはいかないね』


 インキュバスたちはあくまで抵抗するつもりか。

 微笑していたマイは真剣な表情に変わり、魔力がどんどん上がってきた。

 そして額の目がピカッと光る!


『ハァァァァァ!!』


『『ぐぁぁぁぁぁぁ!!』』


 マイはインキュバス二人のマツタケを両手で(つか)んだ!

 するとやつらは苦しみだした……

 というより、苦しみから快楽の笑みに変わっていく。

 俗に言うアヘ顔というやつだ。

 これではイケメンも台無しである。


『エヘヘヘヘヘ…… はうっ』


『き、気持ちぃぃぃ……』


『それそれっ どうだ!』


 三眼族の技…… なんて恐ろしい。

 あの巨大マツタケを(つか)んで魔力を送り込んでいるだけでインキュバスを腑抜(ふぬ)けにしている。


『や、やめっ もうダメだ!』


『ぐうぅぅぅぅ! 我慢出来ない!』


『残念だけれど、終わりたくても終われない。

 ずっとこのままの苦しみを感じていてもらうよ』


『なっ そんなバカなぁぁぁぁ!?』


 つまり快楽の頂点に達する寸前で止めるという非情なことをするのだ。

 マイが何故、インキュバスを凌駕(りょうが)する性的な攻撃が出来るのか。

 インドでは三ツ目の信仰が厚いし、カーマ・スートラもある。

 それと関連があるのだろうか。


 インキュバスの二人はそのままずでーんと倒れ、マイは手を離した。

 二人はピクピクとして昇天できず苦しんでいる。


『あがっ がっ がっ』


『はひっ うううっ』


 なんか見てると、男の立場として可哀想になってくる。

 でもこれから、こいつらをどうするんだ?


『そろそろ来る頃かな』


 マイがそんなことを言ってると、廊下からドタドタと何人かの走る音が聞こえる。

 彼女が呼んだのか? いつの間に?

 ドアがガチャッと開いた。

 ドヤドヤと数人、制服姿の魔族が突然入り込んで来た。

 真ん中にいる青い顔の制服魔族がマイに話しかける。


『警部! 容疑者は!?』


『そこに転がってるよ』


『おおっ もう倒したんですか!』


『ああ。それでこの()たちは協力者でアモール様のお客様だから失礼の無いように』


『なんと! はいっ』


 警部ってマイのこと?

 そしてこの制服の魔族は……

 彼らは他にオーガや角有りなどいろいろな種族が混じっていた。


「ねえ。マイって何者なの?」


『ああ、ごめんごめん。マヤたちを巻き込んでしまったよね。

 あたし、これでもディアボリの警察官やってんだ。

 で、彼らはあたしの部下だよ。

 今日は午後から非番だったから街を歩いていたらたまたまこういうことになって、こいつらを見逃すわけにはいかなかったからね』


「へえー、そういうことだったんだ」


『いやあ、結果的におとり捜査になったけれど、マヤとジュリアの協力で早く片付いたよ!

 ありがとう! ハッハッハッ』


 マイは私の肩をポンッと叩く。

 協力って、ベッドの上でジュリアさんが私を押し倒したアレのこと?

 何とも…… まあジュリアさんに怪我が無くて良かったけれど。


『警部、処置が終わりました』


『うん、ご苦労さま。このまま連れて行ってよ』


『はっ 承知しました!』


 さっきのリーダーらしき青い顔の制服魔族が敬礼する。

 インキュバスたちは、今もなおムキムキになっているマツタケに白い布を巻かれ、マイの部下たちに連れて行かれてしまった。

 爽やかイケメンでも捕まっては哀れな姿である。


『最近インキュバスが女の子を騙して強要する事件が多発しててね。

 まあこういうことは昔から珍しくないけれど、あいつらはなかなか捕まらなくて困っていたんだ。

 アルマンとラウルの名前も間違いなく偽名だね』


「いつ部下に連絡を取ったんだい?」


『ああ、あたしは念話が使えるんだ。この部屋へ入った直後に部下へね』


「なるほどそうだっだんだあ」


 手際が良くて感心するよ。

 念話が使えるとはかなり高位の魔法使いでもある。

 それはそうと、マイには私が男だと早めに話しておかないといけない。

 マイとは友達になりたいし、いつか再会した時に男の姿で会うことになるから。


「女の子を騙してと聞いて、騙してたんじゃないけれど、私もマイにまだ話していないことがあるんだ……」


『へえ、なあに?』


「実は私…… 男なんだよ」


『ハッハッハッ 嘘だああ』


「本当だよ。訳あってアモール様の魔法で一時的に女にしてもらったんだ」


『ええっ? アモール様に!?』


「うん。使用人にサキュバスが三人もいて、館内唯一男の私の匂いにつられて襲ってくるかも知れないからやむを得ず……」


 カメリアさんたちの名誉のためにも、警察官のマイには実際五日連続サキュバスの三人に襲われてしまったことは黙っておく。


『あー、そういうことだったんだ。

 確かに淫魔族の性欲は天井知らずだし、アモール様ならそんな魔法が使えそうだね!

 いや、二百年位前に性転換魔法で誰かが女になったというニュースがあった気がするから、それのことかな?

 その魔法の当事者が目の前にいるなんて、マヤはどこからどう見ても女の子にしか見えないよ! 

 いやあ、すごい!』


 マイはわくわく楽しそうに私の身体をあちこち見つめていた。

 あっけらかんとしていらぬことを考えない性格はギャルらしくて良い。

 でも三眼族で、確か部下に警部と言われていたから見かけによらず年齢は高そう。

 一体何歳なんだろう?


「あの…… レディに歳を聞くのは失礼と承知で、何歳なの?」


『ん? 三百十五歳だよ。

 三眼族の寿命はだいたい二千年と言われているから、三百過ぎなんてぷりぷりの()()()()()()だよ。えへっ』


「そ、そうか……」


 マイは昔のぶりっ子みたいに両手の人差し指で頬を押さえている。

 ()()()()()()って言った……

 どこの昭和の日本人だよ。

 そういうアピールをするのであれば、たぶん三眼族にとって本当のヤングは百歳か二百歳以下なんだろうな。


「さて、ジュリアさんを起こさないとな……」


『まだ気持ち良さそうに寝てるんだね。ふふふ』


 私はベットの上に乗り、ジュリアさんを揺さぶって起こそうとする。

 脚を開いていて寝ていたので、股割れぱんつではだらしない。


「おーい、起きろジュリアさん。帰るよ!」


「ああ…… マヤすぁん大しゅきでふう。むっちゅぅぅ……」


『あっはっは。ジュリアは本当にマヤのことが大好きなんだね』


 ジュリアさんは寝ぼけて口をチューの形に(とんが)らせ、私にまた抱きつこうとした。

 しょうがないなあ……


「服を着せてこのまま帰るよ。ちょっとだけ手伝ってくれるかな?」


『うん、いいよ』


 私はジュリアさんをグラヴィティで浮かせて、マイに手伝ってもらいメイド服を着せた。

 ジュリアさんはまだ半分寝ている状態だ。

 そして私はジュリアさんを背負う。


「これで帰るけれど、明後日は休みでアモール様の館に遊びに来てくれるんだったよね?」


『勿論だよ。もっとマヤのことを知りたいし話したい!』


「ふふ、楽しみにしてる。マイはこれからどうするの?」


『ホテルに事情聴取をする必要があってね。

 もしかしたらあいつらとグルかもしれないから探ってみるんだ』


「それはあり得るね。

 じゃあ気を付けて、頑張ってね」


「うん。マヤもね」


 マイはそのまま部屋へ残り手を振ってくれた。

 私も手を振りながら、ジュリアさんを背負って退室した。

 ジュリアさんは買い物するって言っていたけれど、どんな野菜を買うのか聞いてなかったしまた今度にしてもらおう。

 明後日マイが来たらみんなに紹介しなければいけないけれど、パティはまた女の子が増えてしかめっ面するに違いない。


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