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第二百六十八話 イケメンにナンパされたマヤ

 衣料品店【ポールクラ】で知り合った謎の金髪ギャル魔族に誘われ、オープンカフェで彼女が勧めるつぶつぶ茶を飲んでいる時のこと。

 突然二人の優男(やさおとこ)が私たちに声を掛けてきたのだ。

 二人とも温厚そうなイケメンで、身体もすらりとして完璧なモテ男の姿だ。

 髪型。一人は真っ赤なメンズボブヘア、もう一人は日本人にもよくいる黒髪のシェードセンターパート。

 見た目は小綺麗で嫌みは全く無い。

 だが強く異様な魔力をぷんぷん感じ、これがわからないと容姿で騙されてしまう。

 それをマイは素早く察知したようで、不快な顔をしていた。


『私たち三人で楽しくしてるんだけどさあ。あんたたちナニ?』


『そんな怖い顔しないで。

 僕たち、一緒に楽しくしたいだけなんだ』


 最初に声を掛けてきた男は私の後ろで見えなかったが、声からしてたぶん赤髪のやつ。

 今度は黒髪のやつが、機嫌悪くなったマイに話しかけてきた。

 ジュリアさんはおろおろとしており、もしかしたらこいつらの魔力をうまく感じ取れていないのかも知れない。

 彼女のことは責任持って守るぞ。


『ふーん、ちょっと待ってよ。相談するから』


 マイはそう言って立ち上がり、私に寄り添って耳打ちで話しかけてきた。

 彼女の息で耳元がゾクゾクする。


(あいつら間違いなくインキュバスだよ)

(ああ、やっぱりそうだったのか)

(さすが、マヤも気づいていたんだね。危ないからここで解散してジュリアを連れて逃げてよ。あたしはこいつらを()らしめてやりたいから)

(ダメだって。一人ならともかく二人相手は心配だ。私もあいつらぶっ飛ばす自信あるからこのまま三人で行くよ)

(うーん、マヤは強そうだし…… 一緒に来てくれる?)

(OK. じゃ、そういうことで)


 アモールが注意しろと言っていたように、インキュバスだった。

 一見人間のように見えるのはサキュバスたちと同じということか。

 それにしても、イケメンを見てもときめかないのは私が男の心のままだということがこれではっきりした。


「はわわわわ…… 格好いいでスぅ!」


 ありゃ! ジュリアさんがインキュバスたちを眺めてうっとりしている。

 もしかして、こいつらが魅了を使って誘惑しているのか?

 私は魔力が強いので、弱い状態変化魔法を掛けられても自動的に(はじ)く体質になっている。

 マイの様子を見ても、恐らく私と同じだろう。

 ジュリアさんは決して弱い魔法使いではないのに、このインキュバスたちの魔力はそれほど強力なのだろう。


『決まった。あんたたちと一緒に行くことにしたよ』


『そうこなくっちゃ!』


『じゃあ、僕たちに付いてきてよ』


 マイが返答すると、インキュバスたちは爽やかな笑顔で喜んでいた。

 こんな顔をしていても、襲うときはカメリアさんたちみたいに豹変するのかねえ。

 私とジュリアさんはつぶつぶ茶を飲み干していたが、マイはしゃべってばかりだったので残っていた。

 彼女はぶどうをスプーンで口に掻き込み、一気に飲み干した。

 そこは律儀に食べ物を大事にする性格なんだな。感心感心。


『ごっそさま! さあ行こうか』


 マイが立ち上がり、私たちも立ち上がる。

 ジュリアさんがポーッとしているので、正気はありそうだけれど心配だから手を繋いで行く。


---


 インキュバスの二人は歩きながら勝手にベラベラしゃべっており、そこで自己紹介。

 赤髪がアルマン、黒髪がラウルというらしい。

 ナンパ男の名前などこの際どうでもいい。


『君たちの名前を聞いていい?』


『ああ、あたしはララ。

 こっちがアンナで、メイドはリリイというんだ』


 こいつらが私たちの名前を聞いてきたので、マイは偽名で応えていた。

 私はアンナということになった。

 マイが私に向かってウインクで信号を送っていたので、以後の名に合わせることにする。


『君たちはどこに住んでるの?』


『うーん、もっと仲良くなってから教えるね』


『残念だなあ。是非親密になりたいね』


 マイは適当にはぐらかす。

 インキュバス、しつこい。

 アモールの館と言ったら来るだろうか。

 その前にカメリアさんたちの知り合いなのか?

 サキュバスとインキュバスが鉢合わせになればいろんな意味で大変なことになるのが想像出来る。


 数分歩いて裏通りに入り、五階建てで洋風建築の大きな建物の前に着いた。

 見たところホテルのように見えるが……

 いきなり直行かよ!


『ねえ、ここ何のお店なの?』


『見たとおりだよ。ここは私たちの種族が経営しているホテルなんだ。

 部屋は広いから五人で遊ぶにも十分だよ』


『ふーん、そう』


 マイも想像と一致していたのか、無表情で応えた。

 正直、私はここに入るのは気が引ける。

 ホテルの前でぶん殴ってやりたいけれど、また騒ぎになるのは嫌だなあ。

 再びマイが私に耳打ちしてきた。


(マヤ、ここに入るよ。部屋に入ったらこいつらを()らしめてやるんだ)

(そうか。わかった)


『じゃあ入ろっかあ』


『へー、積極的でいいねえ』


「ホホホホホテルでスかあ。うひひ」


 ジュリアさんがちょっとおかしくて、笑って喜んでいるように見える。

 魅了の魔法が精神に浸透してしまったのかなあ。

 生憎、私は魅了の魔法解除のやり方を知らない。

 放っておけばそのうち直るけれど、もっと勉強をしておかないとなあ。

 マイが積極的になっているから、インキュバスたちはマイと私も魅了にかかっていると思っているのかも知れない。


---


 チェックインはインキュバスがして、金も払ってくれた。

 向こうがそういうことをしたい目的なんだから払って当然だ。

 魔力で動くエレベーターで、一番上の五階まで上がった。

 五階の一番奥の部屋へ入ると……


『へぇぇ、すっごい広いねえ!』


『でしょう? このホテルで一番良い部屋なんだ』


 ああ…… 日本のラブホテルによく似てる。

 さすがに回転ベッドではないが、ワイドキングサイズって言うのか幅が二メートル以上のベッドが置いてある。

 ここで楽しいことをしたいってか?


「ふーん、どれどれ」


 ベッドの枕元にボタンがたくさんある。

 ラブホテルではお約束の設備なので、ここでもそうなのか試してみる。

 私は早速ベッドの上に乗っかり、ポチッとボタンを押してみた。


『おお!? ピンク!』


 マイが驚いている。

 魔力灯が白色からピンクに変わった。

 妖しい雰囲気たっぷりである。

 もう一つのボタンを押してみる。


「紫に変わったでス!」


 ジュリアさんも驚く。

 正確には赤紫で、ピンクより妖艶(ようえん)な感じがする。

 ここの魔力灯はフルカラーLEDかよ。

 次のボタンは何だ? ポチッ


『ひええ! キラキラ回ってるよお!』


 マイが口を開けてまた驚いている。

 天井にある小さなミラーボールがゆっくり回って、天井や壁をキラキラと照らしていた。

 淫魔族のセンスってちょっとダサいあたりが親近感を覚えた。


『ハッハッハッ 楽しんでもらえて何よりだよ』


『でさあ。そろそろ始めようよ』


 ほーら、本性が出始めた。

 次はどう出ようか。

 取りあえず照明をポチッと……


『うわっ!?』


「あ…… 真っ暗。ボタン間違えた」


「うふふ…… そうですね。始めましょうか」


 あれ? ジュリアさん?

 何を始めるの?

 スルスルスルって服を脱いでるような音が聞こえてるが……

 えいっ 照明を点けるボタンはこれか。

 元の白い照明が点くと……


『おおおおお!! リリイちゃんすげえ!!』


『なんてセクシーな下着なんだ! 初めて見たよ!』


『ジュ…… リリイ!?』


 なんとジュリアさんは暗くなっていた時に、メイド服を脱いでしまっていたのだ。

 魅了の効果のせいで痴情にまみれた姿に。

 あれ? これってベッドの上ではいつもの姿じゃないか。

 彼女は白い透け透けブラと、ぱんつも白いが……

 アレは俺がデザインした透け透け割れぱんつ!

 ああ…… もう半分見えちゃってるよ……


「ふふふ……」


「リリイ! ダメだ!」


 サキュバスに誘惑され、やつらのほうへ行くと思ったらベッドの上に乗り、四つん這いになって私の方へ向かってきた。

 え? なんで?

 私は両手を後ろについて、向かってくるジュリアさんにたじたじとするだけだった。

 マイは、あまりの出来事に私たちを見てポカーンとしている。


『うおおおお! 割れてる! 見えてる!』


『まさか一番大人しそうなリリイちゃんが一番エッチだったなんて!

 むぉぉぉぉぉ!! 俺すごく興奮してきた!』


 げっ インキュバスたちの股間はズボン越しでパンパンにテントを張っていた。

 あれは特大サイズだろう。

 あんなモノに私の初めてを奪われてはならない。

 早くこいつらを倒さないと!


「うふふ…… いつも愛スてますよ……」


「むぐぐっ」


 ジュリアさんは私に覆い被さり、顔を両手で押さえられ濃厚なキスをしてきた。

 キスが上手すぎて身体に力が入らない……

 むぅぅ…… 脳がとろけそう……


『うひょう!! 見ろよ! アンナちゃんのぱんつもすげえぞ!』


『本当だ! お尻が丸見えじゃないか!

 あのぱんつも初めて見たぞ! 何者なんだ、あの()たちは!?』


『ああ…… あああっ アンナ!? リリイ!?』


 しまった!

 ジュリアさんが私の両脚を押しのけて覆い被さってるから、あいつらとマイにぱんつ丸見えじゃないか!

 最初は爽やかだったのに、あいつらの言葉は段々とゲスになってきている。

 くううう……

 恥ずかしいやら、むかつくやら。

 もういい加減、ジュリアさんにはやめてもらおう。


「えいっ!」


「きゃっ!」


 私は横に反転して逆に私がジュリアさんに覆い被さった。

 それでもジュリアさんはとろんとした表情をしている。


『ヒュー ヒュー いいもの見せてもらったよ』


『お、俺…… 我慢出来なくなった……』


 黒髪のラ何とかいうやつが、自分で股間を揉み揉みしていた。

 うへぇ……

 女になっている自分が男の性的対象になると気持ち悪いもんだな。


「おいっ しっかりしろ!」


 ペチンペチンペチンペチン!


 私は二往復のビンタをジュリアさんにやった。

 麻痺か眠りの魔法を掛けても良いけれど、魅了の魔法に掛かっているうえに少々身体に負担が掛かりそうなのでやめておいた。


「あーん! 痛いでスぅ!」


 完全に操られてはいないようで、これで正気に戻ったのか。

 それにしてもアリアドナサルダの透け透けランジェリーをジュリアさんが着てるとエロいな。

 ジュリアさんって濃いから…… うへへ。

 いや、そんなことを考えている場合じゃない。


「マイ。取り乱してしまってごめん」


『ああ…… うん……』


 苦笑いのマイに謝ってから私は起き上がり、ベッドから降りて体勢を立て直した。

 ジュリアさんはベッドに寝転がったまま、うへへと半分夢を見ている状態だ。

 やっぱり正気に戻っていないのか、魅了が掛かっていても最初はインキュバスたちに反応していたのに、さっきは私に欲情していたのは何故だ?


『ふふ…… リリイちゃんの魅了は簡単に覚めないよ。

 威力は弱めにしているけれど、僕たちの魅了はそこんじょそこらの魔法使いとは訳が違うからね』


 赤髪のアル何とかが言う。

 淫魔族の魅了とはそれほど強力なのか。

 確かにカメリアさんたちは私より弱いから簡単に()()けられるはずなのに、いつも捕まって好き放題されていた。


「ほう。私の大事なリリイに何てことをしてくれるんだ!」


『せっかく魅了を掛けたのに、リリイちゃんは僕たちじゃなくてアンナちゃんに愛情を向けたなんて、よっぽどアンナちゃんなことが好きなんだねえ。

 女の子同士もけっこうけっこう。フフ』


 黒髪の…… ああ、もう名前忘れた。

 ジュリアさんはあれで健気(けなげ)()だから好きだし大事にしたい。

 よく言うことを聞いてくれるから自分も甘えて頼み事が多くなってしまい、申し訳なく思っているが。

 もう赤黒のバカにムカついてしょうがない。


『そろそろ君たち二人と楽しみたいね。

 でも…… 魅了があまり効いていないような?』


『あたしにはおまえらの魅了など最初から全く効いていないよ』


『なに!?』


 赤髪の表情が攻撃的になったが、マイに魅了が効いていないことを知り驚愕(きょうがく)していた。

 マイの魔力が徐々に上がっていくのがわかる。

 私も魔力を少し解放しよう。


「私も魅了は効いていないよ。アモール様のお気に入りなんでね」


『何だとおおお!?』


『アモール!? こんな娘がバカなっ』


『あっはっはっはっは! ナンパした相手が悪かったようだね!

 近頃インキュバスの中に、無理矢理女の子に悪さをしているやつらがいると聞いててね。

 それがおまえらだったということだ』


 マイはそう言うと、前髪を右手で掻き上げ、額を出した。

 その額には…… あっ! 思い出した!

 初めて街を散策したときに見かけたあの()! (第二百四十六話参照)


『なっ…… 三眼族(さんがんぞく)だと!?』


 インキュバスはマイの正体を知り、震えだした。

 こいつらも強い魔力を持っているのに、三眼族(さんがんぞく)が余程の強さだと知っているのだろう。

 額にある第三の眼の瞳は黄色く、鋭い眼光でインキュバスたちを(にら)んでいた。

 格好いい……

 アモールの瞳も黄色いが、それと関係あるのだろうか。

 さあ、これから()らしめだ! 腕が鳴るう!


---


☆三眼族

★マイ(315) 三ツ目の魔族 金髪ショートヘア 肌の色は東洋系

   172cm Cカップ


淫魔族インキュバス

★アルマン(121) 真っ赤なメンズボブヘア 183cm

★ラウル(125) 黒髪のシェードセンターパート 179cm


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