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第二百六十三話 マヤのお着替え騒動

 当たり前だが私自身は女物の服も下着も持っていない。

 だが女になってしまい、持っていた男物では思っていた以上に都合が悪い。

 丈は良いがお尻が大きくなってしまい、ズボンはぱつんぱつん。

 ブラウスも胸がキツかった。

 それで館のドレスルームで、今度は皆が服を貸してくれるそうで身体に合う服を見繕うために着せ替え大会が行われることになってしまった。

 その前に下着も女物に替えないといけないので、もしエリカさんが復活するかと思い持って来たブラとぱんつ使うことにした。

 アリアドナサルダの新品であるが、まさか私自身がデザインした物を着けることになるとは、何となく複雑な気分だった。


---


 ぱんつとブラだけでみんなの所へ行くのも恥ずかしいので、上着もエリカさんのものを借用する。

 スーツケースから選んで取り出したのは、白のボタンシャツ、紺色のジャケットと同色のミニスカ。

 エリカさんはこんなのばかり着ているから、スーツパンツとかを持っていない。


『早くしろ。次は何をしてやろうか』


「なんて言いながらお尻を揉むなよ……」


 アイミは私の後へ回って、両手でお尻を撫で回したり揉んでいる。

 まったく、エロジジイみたいなやつだ。

 私はアイミをペイッと振り払い、ジュリアさんに手伝ってもらいさっさと服を着る。

 靴も用意してきたローヒールパンプスを履いてみた。

 つま先がキツい……


「下着よりはましだけれど、ミニスカはスースーして落ち着かないなあ」


「そのうち慣れるものでスよ。

 それにしても……

 背が高いからよくお似合いだし、脚が綺麗でセクシーでス!

 エリカ様が戻ってきたみたい!」


「あはは…… ありがとう」


 エリカさんは見てくれだけは良いからジュリアさんがそう褒めてくれるのは嬉しいけれど、こんなのを履いて外を歩いていたなんて簡単にぱんつが見えそうで恥ずかしい……

 布一枚が(めく)れたらTバックのお尻がぺろんと現れるじゃないか。

 あっ ロングスカートでもぺろんと(めく)れてTバック尻を丸出しにしてたやつがすぐそこにいる……


『ん? 何で私を見てニヤニヤしてるんだ?』


「アーテルシアのお尻がとても美しかったというのを思い出してたんだよ」


『おおそうかそうか。私の尻は天界一、即ち六十四ある宇宙一だからな。

 つまりおまえは宇宙一幸せ者だということだ。ハッハッハッ』


 アイミはチョロい。

 だが宇宙一のお尻なのは事実かも知れない。

 頬ですりすりしてみたあの滑らかでぷるんとした感触は至高だった。

 サリ様のお尻と比べてみたいが、サリ様の方は私に性的な好意を持っていないため、その機会は永遠に無いだろう。


「あれ? どうスてアーテルシア様のお尻をマヤさんが見てるんでスか?」


 げっ 私がアーテルシアとイチャラブしていることは誰にも秘密にしているんだった。

 ジュリアさんがいるのについ口が滑ってしまった……

 適当に話を作っておくか。


「うん、川で一緒に泳ぐ機会があってね。それで綺麗だなと……」


「へえー、そうなんでスかあ。

 子供の時にグラドナの小川で泳いだのを思い出スまスた。

 懐かスいでスねぇぇ」


 ジュリアさんが両手を組んで目を閉じ、思いにふけっている。

 うっ…… 思わぬ純粋な返事に私の良心が痛む……

 幸いアイミは空気を読んでくれ黙っていたが、私を見てニヤニヤと笑っている。


「さあ、遅くなったからみんながいるところへ行こうか」


「はい!」


 ジュリアさんが余計なことに気づかないよう、さっさと移動する。

 それにしてもミニスカの丈が短すぎて、小股で歩かないと簡単にぱんつが見えそうだから背徳感があるよなあ。

 エリカさんはそういうのいつも気にして歩いていたんだろうか。


---


 おしゃべりな女子ばかりなので、アモール以外は退屈をしてなさそうだった。

 そのアモールもせっかちな性格ではないので、じっと待っていた。

 寿命が長いと十分や二十分程度待たされようが気にならなくなるらしい。


『あら。それはエリカの服? よく似合うわね』


「キャー! マヤ様素敵ですぅ!!」


『わぁホントだ。エリカの服だよ』


『エリカの服は私たちには似合わないなあ! ハッハッハッ』


 皆が初見の感想を口々に言う。

 パティは目をキラキラさせながらべた褒めだが、アモールやオーガの二人には余程エリカさんの印象が強いらしい。

 エリカさんは八年もアスモディアにいたから、彼女らのほうが付き合いが長いせいだろう。


 姿見で見ると、エリカさんの服ではあるがエリカさんには見えないな。

 やっぱり童顔でお姉様って感じではない。

 するとファビオラが私に近づいてきた。


『クンクン…… ああー こりゃ完全に女の子だねえ。

 ちょっと期待してたけれど、がっかりだよお』


「こっ こら! そんなとこ嗅ぐんじゃない!」


 完全に女になったのに、何を期待してたんだ。

 ファビオラは私の前でしゃがみ、スカートの中へ鼻を突っ込むようにして股の間を嗅いできたのである。

 ただの変態だ。

 その様子が姿見に映ってるから、妖しい同人誌のようになってしまった。


『私の性転換魔法は完璧よ。女性ホルモンがちゃんと分泌(ぶんぴつ)してる証拠ね』


 アモールはファビオラの変態行為を気に留めず、分泌だなんて露骨に言われて余計に恥ずかしくなる。

 女性ホルモンの話が出たが、感情的には女の子のほうが好きで男が好きという感情が湧いてこない。

 もっとも女になってから男をまだ見ていないから、確認出来ないだけだ。


『さっ 次はこれよ。

 カメリア、ロクサーナ、ファビオラ…… やっておしまい!』


 やっておしまいって、ドロなんとかいう女ボスかよ!

 アモールは自身の替えの服をカメリアに差し出し、残りの二人は私が着ているエリカさんの服を一気に脱がしてしまう。

 せっかく苦労して着けたブラまで外されてしまい、ぱんつとパンプスだけになった。

 そこへあれよあれよと三人でアモールの服を着せられた。


『どう? 私の服の着心地は?』


 黒のチューブトップというやつで、両肩を出したまま胸とお腹の上を巻いてるだけ。

 胸の谷間は見えなくなってるけれど、下へ引っ張ったらポロンと胸がコンニチハする。

 スカートは、片脚だけ開いているロングスリットスカート。

 南欧の女性が着ていそうな衣装だ。

 今アモールが着ている服よりはおとなしめで、思っていたより悪くない。

 あんな胸の谷間パックリで、長いふんどしみたいな両スリットスカートなんか履きたくないぞ。


「ええ、これなら着やすいかも……」


『そう。あまり着ないからそれあげるわ』


「え? でもあと半月で男に戻るし」


『またここに来たら、女にならなきゃいけないでしょ』


 そうか!

 アスモディアへ訪問する機会がまたあるはず。

 その時も女になる必要があるんだ!

 二度と女になることはないと思い込んでいたから、迂闊だったああああ……

 カメリアさんたちがいる限りは避けられないことだろう。


「では有り難く頂戴します……」


『今度もエリカの服を着てもらうわ。

 ロクサーナ。さっき持って来た物を着せてあげなさい』


『はい、アモール様』


 また一気にカメリアさんたちに脱がされ、ブラも瞬間的に着けてくれた。

 さっきジュリアさんに教えてもらって自分で着けたときよりうまく出来ているような気がする。

 瞬く間に、エリカさんがアスモディアで修行中に着ていた服を着せられた。

 デニムのミニスカ、黒のTシャツ。

 すごく普通にギャルっぽい服装だが、今のエリカさんは着ないような服だ。


「わあああ可愛い…… マヤ様は何でも似合いますね!」


「素敵でス! わたスではとても似合いません!」


『それは十年くらい前にエリカが着ていたものかしら。

 魔法の修行中に私に吹っ飛ばされて、よくパンツ丸出しにしてたわね。

 オッホッホッホッ』


『ホントだ。あの時はそんな服をよく着ていたな。あっはっはっはっは』


「ああ…… 手に取るようにわかるよ」


 マカレーナへ初めてアモールがやって来た時も、そんなことを言っていた。

 こんな格好でやっていたのなら、そりゃ丸出しになるわ。

 スヴェトラさんとオフェリアは大笑いしてるし、当時はよほど可笑しかったのだろう。


『エリカったらそれですぐ逃げ出すから、よく私たちが探しに行ったものよねえ。

 その時、街で知らないインキュバスにナンパされてたのを見つけて、アレは危なかったなあ。

 人間なんて珍しいから、あのまま放っておいていたら慰み者にされて干からびたら使い捨てよ』


 ロクサーナがとんでもないことを言っている。

 私の精力が持たなくて見ず知らずの人間だったら同じことをしてたよね?

 パティがいるから黙ってるけれど。


『今度はこれを着てみましょう』


 カメリアさんが手に掲げているのは、彼女らやオフェリアたちも着ている物と同じ、ロングスカートのヴィクトリアン式メイド服だ。

 頭にビロッと広がるカチューシャを着けられ、白タイツまで履かせられた。

 それをまたサキュバスメイド組三人であっという間に着替えさせられる。

 お着替え世界選手権なんてものがあったら高い順位まで行きそうだ。


 着替え完了。

 おお、しっかりとした生地で、量販店で売れてるようなコスプレメイド服とは全然違うよな。

 古びているが、ちょっと良い匂いがする。


『それは私のお古よ。着心地はどうかしら?』


 カメリアさんのメイド服だったか。道理で……

 服をクンカクンカしたいがここではやめておく。


「ええ、丁度良いです」


『それは良かったわ』


 ああ……

 サキュバスじゃなかったら憧れのお姉さんタイプでもっとお近づきになりたいんだが、昼と夜のあまりのギャップには本能的に自分が避けている気がする。


『あら、それもよく似合うのね。

 この館へ永久就職してもいいわよ。

 ボーナス年三回、手当も充実、個室と食事付き、希望があれば長期休暇も有り。

 上級魔法もタダで教えてあげる。どう?』


 アモールが、本気なのか冗談なのかよくわからない就職のお誘い。

 うーん、悪くないな。

 オフェリアたちを見てるとずいぶん緩そうな仕事だし。


「いいいえ是非、私の専属メイドとして!

 ボーナスは年四回にしますわ!」


 パティは負けじと、どさくさに何を言っているんだ。

 結婚はどうしたの?


「あの…… どちらも辞退します。

 他にやりたいこともたくさんありますので」


『そう、残念ねえ』


「やっぱりマヤ様には男に戻って頂かないといけませんわねえ。

 今のは冗談ですよ。

 マヤ様が急に気が変わると思っていませんから。うふふ」


 ジュリアさんは苦笑い。

 うう…… 冗談半分とは言え、女のままだったら本当に彼女の専属メイドをさせられる可能性もあるってことなのか?

 帰る前にはきちんと男に戻してもらわないとなあ。


 でも(あこが)れのメイド服を初めて着ることが出来た!

 あるアニメで見た元傭兵のメガネメイドのキャラが大好きだったんだよ。

 戦闘メイド…… 格好いい!

 私はつい拳法の動きを真似て、姿見に向かって空のパンチや回し蹴りをやってみた。


 シュシュシュッ ババババババッ


『ええー マヤさん何やってんですか?

 いくらタイツを履いてるからって、スカートの中が丸見えですよ』


「えっ……」


『それになあに?

 ミミズみたいにクネクネしたり手が鳥の頭みたいになったり格好悪いぞ。ハッハッハッ』


 うう…… 何てことだ。

 ミラさんとザラさんに言われたように、スヴェトラさんにもカンフーの技が理解されない……

 ()めるか。


『おおお! なかなか甘美な香りがするではないか!』


「うおおおお!?」


 アイミが突然後ろからスカートの中に入ってきた。

 子供の姿だと思ってやりたい放題だ。

ファビオラといい、股の匂いを嗅ぐなあああ!

 でも…… 私も誰かにやってみたい。

 アイミをスカートの中から追い出し、再びペイッと振り払う。


『マヤさん! お次はこのユニフォームですよ!』


 オフェリアが掲げているのは、いつも二人が体術訓練の時に着ているセパレートタイプのユニフォーム。

 上下が青ベースで、二本の角が生えた鬼っぽいマークがオーガ印としてデザインされている。

 格好良いのかどうかわからない。


『ええいっ それ!』


「おうううっ」


 二人のデカ女メイドに、カメリアさんのメイド服を引っ()がされ、またブラも外されてしまう。

 おっぱいが現れた瞬間にパティが嬉しそうに見るので、恥ずかしいったらありゃしない。

 それでも半裸になってから十数秒のうちにユニフォームを着ることが出来た。

 フリーサイズとは言えオーガ用なのでちょっと緩い。


『うんうん。マヤさんもオーガ族の仲間入りだな』


『明日の朝からこれを着て訓練しましょうね! えへへ』


 仲間入りって……

 同じ格好になると親近感が出てくるのだろうか。

 オフェリアはとても嬉しそうだった。

 動きやすそうだけれど、お腹は出てるし何だか落ち着かない。


 ちょっと怖かったのか、魔族たちに遠慮してた我ら人間族と耳族の女子三人がずいっと前に出た。


「マヤ様には私のこの服を絶対に着てもらいますわよ!」


 パティが掲げているのはJK制服のようなブリーツスカート!

 ジュリアさんとビビアナがそれぞれブレザーとシャツを持っている。

 とうとうパティのJK服を着ることになるのか!

 マカレーナ女学院の制服とは少し違うデザインで、パティの成長に伴って別の物を手に入れているようだ。

 まだ十四歳だから制服が似合う年齢である。


「ビビアナちゃん! マヤさんにブラを着けて!」


「にっひっひっ マヤさん覚悟するニャ!」


 ビビアナが手に持ってるのは白いブラ!?

 一体誰のだ!?

 ビビアナのか、もしかしてパティの?


「あわわわ! ちょっと待て!」


「マヤさん、ちょっと我慢するニャ」


 ビビアナが着けてくれた白いブラ、キツいぞ……

 これやっぱりビビアナのブラだよな?

 私がEカップで彼女はDカップのはず……

 ハーフカップだからはみ出ても取りあえずハマるんだけれど、ポッチがもう少しで見えそうだ……


 ジュリアさんにユニフォームのパンツを脱がされ、パティに赤と茶系チェックのブリーツスカートを履かせてもらい、シャツを着る。

 白いシャツだから、黒いブラを着けていたら透けて見えるところだった。

 蝶ネクタイと薄茶のダブルボタンブレザーも着せてもらい、完了。

 ブレザーの胸元が少し開いており蝶ネクタイだとブラが透けているのがわかりそうだったので、白いブラで正解だった。

 そこまで考えてくれてたのかな。

 それにしても、私は二十歳の女の子という設定なのでJK制服など似合うのだろうか。


『へぇー 人間の若い子はそんなの着るんだ。

 オフェリアなら似合うんじゃないか?』


『わ、私が!? ううう…… 服の方が綺麗で似合わないよお』


 スヴェトラさんがオフェリアを煽る。

 オフェリアは童顔だから似合いそうだが、身長二メートル超えのJKはすごいな。


「マヤさん、あてしのブラがハマったニャあ。ふひひ」


「やっぱりビビアナのか。ちょっとキツくてな……」


「Cカップのわたスのブラは、マヤさんには無理でス……

 ビビアナちゃん羨ましい……」


 この二人はそんなに自分のブラを私に着けたがっているのか。

 意味がわからん。


「マヤ様…… すっっっごい可愛いです! びっくりしましたよ!

 是非鏡でご覧になって下さい!」


「そうなの? じゃあ……」


 うおおおお! まさしくJKだああああ!

 五十過ぎのおっさんが、憧れのJKになれたなんて夢のようだ!

 似合うのは童顔のせいだと思うが、これほどまでとは期待以上だった。

 ――自分のJK姿を見て顔が緩んでしまい、ちょっと気持ち悪い顔になってしまった。


「おおおお…… 感激した!」


「でしょう!? スタイルが良いし、羨ましいですう!」


「パティこそスタイルのことを気にしなくていいよ。

 これからもっと良くなるし、アマリア様みたいになっていくから」


「マヤ様ったら…… 照れます」


 パティはいつものように両手を頬に当てて照れている。

 まあこう言って良い気分にさせておくことを積み重ねないと、女の子と良い関係は続かない。


『むうぅぅぅ…… 私も絶対似合うんだから!』


 何故かファビオラが悔しがっている。

 あれでも金髪美少女だから、言うだけあってきっと似合うだろう。

 そうだ。今度アスモディアへ来た時に制服をプレゼントしてやるか。


『ふん。それなら私も似合うぞ。今から見せてやろう』


 アイミがドヤ顔でそんなことを言う。

 こいつが着ると私立小学校の児童にしか見えないと思うが……

 そもそも服を用意していないのに、何故?

 あっ そうか。

 アイミは今着ている魔女っ娘服もアーテルシアから変身したときに神力で同時にその姿になってたんだ。

 ということはまさか今から変身!?


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