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第二百六十二話 ブラとぱんつ装着!

 朝食の時に女になった私の披露会が行われ、今度はドレスルームで私の着せ替え大会が始まろうとしている。

 いくら下着のデザイナーをやっていても元々私自身は服装に無頓着なほうだから、いざ自分がやらされると面倒だ。

 ドレスルームと言えば、インファンテ家のドレスルームでレイナちゃんのお母さんに男物ランジェリーを何度も履き替えさせられたっけ。

 そこで私が日本で流行ってる下着の絵を描いたのがきっかけでデザイナーになった。(第九十八話参照)

 女物の服に着替えさせられたところで、服のデザイナーにはなる気が無いぞ。

 たまたま私が興味本位でネットの下着カタログを閲覧していたから、頭の中残っていたデザインを拝借しただけだ。


 皆が自分の部屋へ帰ってゴソゴソと準備をしている間に、私も一人で部屋へ戻る。

 改めて姿見で全身を映して見ると、胸のポッチが気になって仕方なくなる。

 興奮していないのにこれじゃあねえ……

 それに長時間この状態だと先端がヒリヒリしそう。

 やっぱりブラは必要なのか。

 上着を借りるのはともかく、下着を借りるのはやっぱり気が引ける。

 気持ち悪いというわけでなくむしろ私はワクワクしてしまう変態なのだが、よほど心も体も慣れている子じゃないと何となく後味が悪い。

 そうなるとパティ、ビビアナ、ジュリアさんだけなんだよなあ。

 その中でサイズが合うのはパティだけだから、彼女は遠慮したい。

 さてどうしよう……

 同じサイズのカメリアさんのぱんつとブラを借りるか、これから買いに行くしかないのか。


 同じサイズねえ……

 あ…… 上着はアモールがエリカさんの古着を用意してくれると言っていた。

 エリカさんか…… うーん?

 おおっ 思い出した!

 もしかしたらと思って、マカレーナの部屋から持って来たエリカさんの上着と下着に加えて、新品の下着を何着か持って来ていたのを忘れていた!

 まだ飛行機に置いてある。

 それを持って来て使おう!


 私はすぐに飛行機へ向かい、エリカさんの服や下着が入っている大きなスーツケースを二つ持ちだした。

 館に戻ると玄関ホールでカメリアさんと出会う。


『あら、どちらへ行かれてたんですか?

 皆さんもうお集まりですからドレスルームへご案内しますね』


「え? もう集まってんですか。みんな張り切ってるなあ……」


 カメリアさんに付いていって私はそのままドレスルームに向かった。

 北欧風美女の彼女は実質この館のナンバー2で、雑務を取り仕切っている。

 昼間は真面目だが夜はすごい。

 他の二人は前にファビオラが言っていたように娼館でアルバイトもしているが、カメリアさんはどうやって性欲を処理しているのか不明である。

 旦那も息子も孫もいるらしいが、淫魔族ついては行為が生命の元だから旦那がいようがそんなこと関係なしに好き放題にしていいそうで……

 生命を繋ぐためだからある意味では大変だなと思った。


---


 館内のドレスルーム。

 学校の教室ぐらいの広さはある。

 彼女はいつも同じようなエロいコスチュームを着てるようにしか思えないんだが、ザッとみるとバロック様式やロココ様式のドレスもいくつか掛けてあった。

 使って無さそうな給仕服やコックコートも見えたので、単に館の住人が着る服の倉庫になっているだけのようだ。

 そこに厨房のオーク二人を除いた暇そうなみんながガヤガヤしながら集まっている。

 広い部屋なのでギュウ詰めではないが、背が低いアイミやビビアナらはハンガーラックに掛かっている衣装に隠れて見えない。

 入り口近くにジュリアさんがいたので、彼女から話しかけてきた。


「あっ マヤさん。皆さん集まってまスから早速始めましょう!」


「ああ…… その前に下着を替えたいんだ。

 エリカさんのために持って来た物なんだけれど、使わしてもらうことにしたんだよ。

 ここじゃ恥ずかしいから部屋の隅で…… あはは」


「そういえばアリアドナサルダの新作もお持ちでしたね!」


「それでブラを着けるの自信ないから、ジュリアさんが手伝って欲しい……」


「えっ!? わたスですか?」


「他の人じゃなんか恥ずかしいんだよ。お願い!」


「わかりまスた! お任せ下さい!」


 ベッドの上以外は、あの中でジュリアさんが一番常識あって慣れているので都合が良い。

 パティがダメなのは女の子の身体にも興奮する()があるみたいだから、私の我が儘ボディでは大変なことになりそうだ。


「じゃあカメリアさん、そういうことでちょっと着替えてきます」


「承知しました」


 カメリアさんに断ってから、私とジュリアさんはそろりと部屋の隅へ移動する。

 ドレスの陰になっていてここならみんなに見えにくいだろう。

 早速スーツケースを拡げて中身を確認する。


「うーん…… エリカさんの物だと思って、際どい下着が多いなあ……」


「そ、そうでスね…… これなんて透けてまスね」


 ジュリアさんが取り上げたのは黒いレースでブラもぱんつの前の方も透けてるエロいランジェリーだった。

 自分がデザインした物を自分が着けるとなると、今更恥ずかしい気分になる。

 濃い色の大人ランジェリーが多くて、薄い色の可愛いのが無いなあ。

 他に良い物は無いだろうか……


「これはどうでスか?

 Tバックでスけれど黒の無地でブラもシンプルだから透けてませんよ」


「これで妥協するしか無いかあ」


 次にジュリアさんが取り出した、あまり紐っぽくない黒のTバックと、しっかりホールドしてくれる黒無地のブラだった。

 派手な下着を女性が着けているのを見るのは好きだけれど、自分で着けるのを選ぶだけでもこんなに恥ずかしいとは思わなかった。


「じゃあ、上着を脱ぐね……」


「はい、お手伝いしまス!」


 ジュリアさんがブラウスのボタンを外しているうちに、ベルトをカチャカチャと外してズボンをスルッと下ろす。

 シャツも脱ぐと、自分の胸がぷりんと現れる。


「わあ! マヤさんの胸って大きいだけじゃなくてとても綺麗でス!」


「いやあ、まあ……」


 褒められても恥ずかしいいいいい!

 女の子が胸を見られてる時の気持ちって、こうなのかな。


「じゃあ先にブラを着けますから、着け方を覚えて下さいね」


「よろしく頼むよ」


 私はぱんつの他にブラのデザインもしているが、紐やワイヤーなど細かいところはアリアドナサルダのスタッフに任せている。

 あんまりブラには詳しくないけれど、ぱんつとブラの上下セットも多いから基本デザインが異なると様にならないからだ。


「まずブラ紐を肩に掛けてカップを胸に被せて下さい」


「ふむふむ」


 私は言われた通りに、取りあえずブラを上半身に掛ける状態で身に着けた。

 ホックを留めたり脇肉を寄せたりそういうことはしていない。


「それからブラの(スた)のワイヤー部分を持って、深くお辞儀をスて下さい」


「こ、こうか……」


「もっと深くでス」


 八十度か九十度近くで、腰を折った。

 今は身体が柔らかいから出来るけれど、日本にいた時の私みたいに身体が硬かったらどうするんだ?


「胸の付け根を…… バージスラインっていうんでスが、それをワイヤーに合わせて下さい」


「おふっ……」


 まだ腰を折ったままなのか。

 なかなか重労働だな。

 さ、出来たぞ。


「マヤ様はお胸が大きいですから、そのまま揺らスながらカップを収めて下さい」


 プラプラプラ……

 胸を揺らす。


「おおお、入ったよ」


 ハーフカップのブラだけど、なんとか上手く入れられた。

 サイズが合ってるブラって大事だねえ。


「カップがずれないようにワイヤーを持ってる指を後ろへ持って行って、ホックを留めて下さい」


「こうか…… ううう…… ホックはどこだ? どこにあるんだ?」


 だいたいベッドの上で女の子のブラホックを外すときも、見えてるのに少々戸惑う。

 後ろで見えないのに留めるなんて、慣れるまで至難だな。


「ここでス。ああ…… 最初でスから手伝いまスね」


 ジュリアさんは最初から淡々と口で教えてくれていたけれど、わかりやすい。

 そして助け船を出してくれた。優しいなあ。

 私の手を取って一緒にホックを留める。


「ホックの部分を少ス下げて、ブラ紐の前を持って上へ引っ張りながら身体を起こスて下さい」


「うほっ これは忙しいな」


 両側のブラ紐を持って上へ引っ張る。

 パチンと。

 出来た!


「これで終わりかい?」


「いえ、まだ脇の肉をカップに入れまス」


「ひょええ。この時かあ」


「最初は右手で右カップの上にあるワイヤーの先端を持って、左手をその中に入れて脇の肉を出来るだけたくさんカップに入れて下さい。

 それでワイヤーを顔の方向……

 顎に向けて引き上げ、肉を収めて下さい。

 さっきみたいにお辞儀をしながらのほうがやりやすいのかも」


 これは技術がいるな。

 さっきからジュリアさんは肉肉言ってて、間違いではないけれど複雑な気分。

 よし…… 出来た。


「今度は指を胸の谷間に入れて、右胸のバストラインに沿ってお腹の肉を入れるように引き上げまス。

 胸が全体的に丸みを帯びるような感ズでスね」


 なるほど、そういうことか。

 寄せてなんちゃらなんてよく聞くフレーズだ。


「終わったら左胸を同ズようにスてやってみて下さい」


 そうだ。左もあるんだ。

 ブラ一つ着けるのに大変な作業だよ……

 ふぅ…… 出来た。


「マヤさん見て下さい。胸の谷間がすごいですよ」


「おお! これは!!」


 自分の胸の谷間を見ると、しっかりとお尻の割れ目が出来ている!

 それに、丸くなってさらに胸が大きくなっているように見える。


「うふふ。わたス、胸がそんなに大きくないでスから努力してるんでスよ」


「おー、素晴らしい!

 確かにジュリアさんがブラを着けている胸はすごく綺麗にまとまってるよ!」


「そんなあ。恥ずかスいでスう」


 ジュリアさんは頬を両手で押さえてクネクネしている。

 アスモディアへ来てからジュリアさんとはまだイチャイチャしていなかった。

 マカレーナへ帰るまでお預けだな。


「ブラはもうこれで完成かな?」


「はい! これはわたスのやり方なので、パトリシア様みたいな大きな胸の女性のやり方は違うかも知れませんので、教えて頂いた方が良いですよ。

 あっ もうあと半月だけで男に戻るんでスたよね。うふふ」


「そうそう。男に戻らないと、ジュリアさんといいこと出来ないもんね」


「やんだー! マヤ様ったら!」


 ジュリアさんが照れて、私の背中を軽くペチッと叩く。

 分身君がいなくなって股間がスッキリしてしまったから、やっぱり寂しい。

 自分の身体の一部が無くなった喪失感というのは思っていた以上に大きい。

 永遠の別れでは無いからショック状態にはならないが。


「次はぱんつを履き替えましょうか。ふんふんっ」


「あ…… うん」


 おかしいな。ジュリアさんも何だか興奮気味だ。

 ビビアナとは仲良しだけれど、そういう()は無いはずなんだがなあ。

 まあいいや。

 私はトランクスを一気に下げて脱ぎ捨てる。

 ジュリアさんはじーっと私の股間を見ている……


「わあ…… 薄い……」


「わっ あんまり見ないでくれるかな」


「ごごごめんなさいいいっ! あんまり綺麗だったもので……」


 まあジュリアさんは森林だしな。

 さて、用意したTバックぱんつを履くか。

 私がそれを履こうとして脚を上げた瞬間、ヌッと下から何かが見えた。


『おーおー、しっかりと女のものが形成されているな。大した魔法だ』


「うぉぉぉぉ!?」


「きゃあ!!」


 なんといつの間にか後ろでアイミが床に寝転がって、下から私の股間を覗いていた!

 悪ガキが女の子のスカートの中をふざけて覗くように。

 自分でもよく見ていないのに、アイミに見られてしまった……

 気配も感じなかった。恐ろしいやつ。


「何やってんだよ!」


『おまえらがいつまでもそこにいるから退屈なんだよ』


「はあ…… もうすぐ終わるから待っててよ」


 私はスッとTバックを履く。

 さすがにぱんつの履き方まで教わる気は無い。

 でも、もっこりが無いと不思議な感じだな。

 お尻の食い込みもムズムズして違和感ある……


「わあああ! スタイルいいでスね!」


『私ほどじゃないな。ふっふっふ』


 アイミが言っていることは嘘ではない。

 ややスレンダーだがEカップはあるし、太股は適度な肉付きで色っぽい。

 どちらも何度も頬ずりさせてもらった。


『やっぱり尻は、男のマヤの尻が良い』


 またそれかよ。はぁ……

 俺の尻に対するこいつの執着は変態だからな。



(オフェリア視点)


 マヤさんたちは向こうで下着を着替えているみたいだけれど、女ばかりなんだから恥ずかしがらなくてもいいのに。

 スヴェトラは裸で歩いていたけれど、あれは堂々とし過ぎてるよね。


『スヴェトラ。あっちのほうが騒がしい……

 というか、楽しそうだね』


『そうだなあ。マヤたちが来てからずいぶん賑やかになったな』


『そうね。まるでエリカがいた時に戻ったようね』


 不意にアモール様が口を開いた。

 そうか。今はエリカがいた時みたいだ!


『あっ 確かにそうですよね。

 エリカは毎日のように大騒ぎで、私たちも一日が飽きなかったですよね』


『人間は寿命が短いけれど、その中で精一杯生きている。

 だから私たちが思いつかなかったいろんな物を発明してそれを継承し、年代を追うことに進化してる。

 私たちが人間に勝てることと言えば、寿命と魔法、力ぐらいかしらね』


『特にマヤさんはすごいですよ。

 飛行機という乗り物でここへやって来たのにはびっくりでした』


 私もマヤさんの飛行機に乗って人間の国へ行ってみたいなあ。

 どんなところなんだろう。

 美味しい物もたくさんありそうだし……


 ブラを着けてぱんつを履くだけで一話を使ってしまいました(^^;


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