第二百五十九話 性転換魔法
パティがアモールに耳打ちされた後、何故かパティは顔を真っ赤にして私がそのことを質問したら強く背中を叩かれた。
何を怒っているのかさっぱりわからない。
『パトリシアさん。私はサキュバスの血も引いてるの。
だからわかったのよ。フフフ』
『私もわかったぞ。色欲の神になったからな。フヒヒ』
「ええ? そうなんですか? ううう……」
アモールがサキュバスの血を引いてるのは先日聞いたとおりだが、アイミまで一体なんだというのだ。
パティは半泣きだが、私からまた聞くわけにはいかない。
気になるなあ。
『じゃあ始めるわよ。マヤさんはそこに立ったままでいいわ』
「はい」
アモールは私の前に立ち、下腹部を手のひらで押さえた。
分身君を握られるのかと思ったよ。
『コルブス エイウス デ マスクロ アド フェミナム イン フェミナム サリバム ムタートル』
アモールは性転換の魔法【ジーナスムタティオ】を唱えた。
詠唱をしているので古代魔法である。
手で押さえられている下腹部が中から熱くなってきた。
カイロを当ててる程度の熱なので苦痛は無い。
詠唱が終わって数十秒もしたらアモールが手を離す。
『終わったわ……
手を押さえていたあたりに子宮が出来る。
徐々に男性器から女性器へ形成されるけれど、それは寝ている間ね。
すぐに変化はしないけれど、朝起きたらすっかり女になってるはずよ』
「わかりました」
『そうそう、よく眠れるように睡眠魔法を掛けておいた方がいいわ。
そうすれば痛みを感じることがほとんど無い。
私が掛けてもいいけれど、パトリシアさんは出来るかしら?』
「はい。私が掛けます」
「おおパティ、よろしく頼むよ」
痛みが無いのならば有り難い。
パティが睡眠魔法を掛けてくれるのならば安心だ。
『よろしい。最低九時間は眠れるように、少し早めにベッドへお入りなさい。
深夜は男の匂いがしなくなってると思うからサキュバスのあの子たちは来ることが無いでしょう。
でもそうね……
パトリシアさんがそのまま一緒に寝てあげたらどう?』
「え!? あ、あの……」
『嫌なら私と一緒に寝てもらおうかしら。
久しぶりに掛ける魔法だから変化の様子も見たいし』
「わっ 私が一緒に寝ます!」
深夜の間に匂いの変化もあるのか。
サキュバスたちは本能で寄ってくるとアモールが言っていたから、匂いも重要なんだなあ。
アモールが一緒に寝ようと言って、寝ている間に私の身体を観察するのか……
パティならパティでこっそり何かされそうな気がするが、悪戯をされることは無いだろう。
『わかったわ。
昔はいろんな種族の何人も性転換をしてきたから、魔法としては完成している。
だから失敗は無いと思うけれど人間に掛けたのは初めてだから、万一何か問題があったらパトリシアさん、夜中でもすぐに知らせて頂戴ね』
「わかりました!」
パティはウキウキと嬉しそうに応えた。
私と一番一緒なのが
魔族の中のいろんな種族に性転換の魔法を掛けてきたってことか。
オーガやオークにもそういう需要があったのかな。
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夕食の時間。
アモールを始め、ガルシア家一行が食事をし、オーガメイド二人が控えている。
私が一時的とは言え女の子になる話で持ちきりになった。
「ええっ!? マヤさん女になっちゃうんでスか!?
わたスと結婚…… いや、他の皆さんともどうされるんでスか!?」
「女好きのマヤさん、ついに自分でも女になってしまうニャ……」
ジュリアさんとビビアナが呆れた顔をしている。
女好きは否定しないがプレイボーイじゃないぞ。
「あいや…… 今ここにいないサキュバスメイドたちがね。
私が寝ているときに悪戯をして困ってたからアモール様に術を施してもらったんだよ。
エリカさんが復活してから帰る頃に男へ戻してもらうから安心していいよ」
「ホッ 良かったでス」
「なあんだ。そういうことかニャ。
ニャっはっはっ なんか面白そうだニャ」
『そうだろう、ビビアナよ。
こいつと一緒にいると退屈しなくていい。うっひっひ』
性転換するって一大事なのに、この子らは軽いな……
アイミが面白半分なのは今に始まった事ではないが。
『ああ…… やっぱりあの人たち、マヤさんの部屋へ忍び込んでいたのか……』
スヴェトラさんは苦笑い。
それを聞いたオフェリアさんは、私が何をされてたのか想像しているのだろう。
顔を赤くしてわなわなと震えていた。
オフェリアの性知識だからどこまで想像しているのかは知らん。
「マヤ様、ちょっと声が変わってませんか?
もう一度声を出してもらえますか?」
「え? うん…… アー アー…… あれ?」
パティがそう言うのでやってみた。
声まで気にしてなかったけれど、アーアー言ってるうちに声質が変わってしまった!
「あらら!? 少年っぽい声になってしまいましたね……
十一歳とか十二歳くらいの男の子みたいに!」
『早速性転換の兆候が現れているわね。
女性の声になりかけているから、咽頭が小さくなってるでしょう。
触ってごらんなさい』
咽頭とは喉仏のことだ。
私はアモールに言われたとおり、自分の喉を触ってみる……
「あ、平らになってる!」
『これからもっと声質が高くなるわ。
そういえば顔や身体も少しだけふっくらしてきてるわね』
「マ、マヤさんだからきっとスごく可愛い女の子になりまス!」
ジュリアさんが興奮気味だ。
彼女は同性に対してイヤらしい感情は持っていないはずだけれど、ビビアナの発情期はベタベタされて困ってると言っていたな。
詳しくは聞いたことが無いけれど、一体何されてんだか。ぷぷっ
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自分の部屋へ戻り、シャワーを浴びる。
裸になると……
確かにアモールが言うとおり、男のゴツゴツさから女性らしく身体全体がぷにぷにとしてきている。
中性的というより、大きな小学生になったみたいだ。
お玉が少しムズムズしてるのは変化してる最中か。
我が分身君とにらめっこ。
こいつともしばらくお別れかと思うと、寂しくなってきたな。
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パジャマに着替えてパティの部屋へ。
実はこの館で泊まるようになってから初めて入る。
ビキニパンツにしようかボクサーパンツにしようかトランクスにしようか迷ったが、分身君とおさらばしてもっこりが無くなると、トランクスのほうが自然だろうとそれを履いてきた。
パティはワンピースで薄いピンクのパジャマだ。
女の子の香りが漂ってくるほど可愛くてよく似合う。
私もそういう女の子になるのだろうか。
「マヤ様。睡眠魔法を掛ける前に、お茶を入れますね」
「うん」
パティ自らカモミールティーを用意してくれた。
睡眠魔法を掛けるのでよく眠れるカモミールティーを飲んでも意味が無いかも知れないが、そこは気分の問題である。
十四歳の女の子が入れてくれるお茶なんて、日本時代だったら羨ましい限りだ。
「パティが入れてくれるお茶はいつも美味しいね」
「嫌ですわマヤ様。マカレーナから持って来たティーパックですよ。うふふ」
「そうだったか。はっはっは」
などと他愛ない話をしながら時間が過ぎていく。
するとゴソゴソと何か音がする。
「あっ プニュとモニョ!」
パスケットからおっぱいプリンたちが出てきた。
連れてきたことを全然知らなかったよ。
「結局連れてきてたんだ」
「ええ。ルナさんにお任せしようかと思ったのですが、やっぱり苦手そうだったので……」
「あまりいい顔はしてなかったね。エルミラさんたちもそうだったし……」
私はおっぱいプリンたちを拾い上げて両手のひらに乗せて観察をする。
久しぶりに触ったけれど、感触は本当におっぱいそのものだ。
「うーん、朝になったらこんなのが胸に付くのか。
いや待てよ。ツルペタという可能性もあるぞ」
「もしそうだったら、代わりにこの子たちを付けてみたらいかがですか? うふふ」
おお、その手があったか。
パティにしてはとんでもアイディアだが、ナイスだぞ。
「そうだなあ。じゃあパティのブラジャーを貸してくれるのかな?」
「あああううう…… 今の提案は取り消します……」
さすがに恥ずかしかったか。
それに私は未だにパティのパンチラどころか洗濯物を干している物すら見たことが無い。
他の使用人の女の子たちのは庭の裏の方で干しているけれど……
そう言えばアマリアさんの下着も干しているのは見たことが無い。
一体どこで干しているのやら。
うっ……
玉がずっとムズムズしてて鬱陶しい。
女になるのに、分身君が元気になってしまいそうだよ。
「いたたっ」
「マヤ様! どうされました!?」
「骨盤が軋んでるのかな。
男性と女性とでは骨盤の形が大きく違うからね」
「私、勉強しました。赤ちゃんを産むために女性は骨盤が大きく広がってると」
「そうだね。また男に戻るから私が子供を産むことは無いけれど、女になるにはどうしても変化が必要なんだろうね。あ痛たたた……」
下腹部までグルグルと痛くなってきた。
いよいよ女性器形成が始まったのだろう。
大帝の術で感じた激痛よりはずっとましだけれど、シクシクと鈍い痛みが続くのはちと辛い。
こりゃ早くパティに睡眠魔法を掛けてもらった方が良さそうだ。
「あの…… そろそろ寝ましょうか」
「そうだね。起きたら女になる以前に、別人になってるというのが不思議だな」
「うふふ。きっと美人さんになってますよ。
今でも少しだけ女の子っぽくなってきてますから、絶対綺麗になってますわ!」
「そう期待しようかな。
じゃあ、眠りの魔法をよろしく頼むよ」
「はい、わかりました。その前に……」
パティは目を瞑り、キスをせがんでいる。
私は軽く、おやすみのキスをした。
男としてキスをするのはしばらく出来ないからな。
女になってもキスをしてくれるのか?
私は布団の中に入り、寝転んだ。
パティが私の額に手のひらを当て、精神を集中させる。
その後、麻酔とは違う感じで穏やかに眠気が増していった。
(パトリシア視点)
「マヤ様……」
魔法が成功したので、完全に眠ってしまわれましたね。
それにしても…… 寝顔が綺麗。
肌が女の人みたいにきめ細やかになってきてますね。
――もう一度キスをしてもいいかしら。
先ほどアモール様のベッドでしたキスはとっても素敵でした。
一生の思い出になりそうです。
下着を汚してしまったのは不覚でしたが……
「ン……」
マヤ様の唇…… 柔らかい。
でもお互いが起きている時にキスをした方が何千倍も嬉しさと愛おしさがありますね。
――クンクン
マヤ様の胸と脇…… いい匂い……
でもさっきと匂いが少しだけ違うのは、性転換の影響でしょうか。
そういえばカメリアさんたちが毎晩悪戯をするから性転換をするという話でしたわね。
一体どういう悪戯をされたんでしょうか。
サキュバスですよサキュバス!
絶対に普通の悪戯じゃないですわ!
きっとあんなことやこんなことまで…… むむむむむ!
そう思ったら腹が立ってきました!
思いっきり両側のほっぺたを抓ってやりました。
でも熟睡されてるから痛くないんですよね。
意味が無いことをしてしまいました……
もういいですっ
私も寝ますっ
――布団の中に入って……
ドキドキして眠れませんっ
もうちょっと触ってもいいかしら……
マヤ様のお腹……
さっきたくさん食べられたから、まだ膨れてますね。うふふ
リリヤさんとオレンカさんの料理がとても美味しくなって、アスモディア風とガルシア家風がブレンドされた新しい料理が出てくるようになりました。
私もお腹いっぱいです。
マヤ様のお腹を触っていると何だか触り心地がいいですね。
あれっ? えっ?
下の方から突然何か硬い物が……
――ここここここれはもしかしてっ!?
あわわわわわわ……
コホン……
ま…… まだ男性から変わってしないようですね……
それにしてもマヤ様の……
私、将来マヤ様を受け入れて子供を産めるのか心配になってきました。
でも小柄なビビアナさんともなさってるんだったら……
いやいやいやっ
他の人たちとのことを考えてたら変な気持ちになりますからやめましょう。
マヤ様と手を繋いで……
おやすみなさい……




