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第二十四話 二度目の誕生パーティー

2022.10.6 文章の見直し、小規模な加筆をしました。

2025.8.10 文章の最適化と加筆で、大幅な改稿をしました。物語の変化はありません。

 パティの誕生日パーティーが行われた翌週のある日。

 公式の誕生日パーティーではスタッフだった若いメンバーが集まり、屋敷の一室を借りて、改めて内輪の誕生パーティーを行うことになった。

 平たく言えば二次会である。

 参加メンバーは、主役のパティは勿論、ビビアナ、エリカさん、スサナさん、エルミラさん、私の六人だ。

 料理はビビアナが主に作って、マルシアさんたちに手伝ってもらった。

 ケーキは無理だったので近くの菓子店へ予め注文し、日本でも一般的な誕生日ケーキのサイズのものを調達した。

 部屋に皆がぞろぞろと集まる。

 何だか若いときにカラオケボックスで集まっていた雰囲気のようで懐かしい。


「私まで呼ばれて良かったのかな?」

「エリカさんもここの直属兵だし、若いから問題無いですよ」

「若いだなんて嬉しいこと言ってくれるじゃないのーっ うふふっ」


 十代の頃は、二十代半ばのエリカさんであればオバさんに入りかけたお姉さんのイメージだったが―― 例えば学校の先生。

 中身が五十歳のおっさんである私から見たら、二回り半若いピチピチギャルである。


「皆様、今日はありがとうございます。二度も誕生日パーティーが開かれるなんて初めてですわっ」ニコッ


「パティ、誕生日おめでとう!」

「誕生日おめでとうニャ!」

「お誕生日おめでとう!」

「パトリシア様、誕生日おめでとぉ~!」

「パトリシア様、お誕生日おめでとうございます!」


「ふうぅぅぅぅぅっ」


 パティが誕生日ケーキのろうそくの火を吹き消す。


 ――パチパチパチパチパチッ


「それではっ パティの十三歳を祝って、乾杯~!」


 今回の誕生パーティーは私の提案。

 いつも顔を合わせているけれどなかなか集まることはないので、親睦会も兼ねてみた。

 なのに私の両側にはパティとビビアナがべったりしている。おかしい。


「まるでマヤさんのパーティーみたいですね。まさかこれを狙ってた? 次は私とエルミラの番だからね! にっひひひひ」


 と、スサナさんがからかう。

 エルミラさんは戸惑いながらも照れていた。


「じゃあ私の番ではマヤ君を独り占め出来るね。ふふん」


 と、エリカさんが煽る。

 私の方が取り合いの対象になるなんて夢にまで見たハーレムなのだが、こうして年寄り臭く落ち着いた気分でいると、子供達が騒いでいるようにも感じてしまう。


「パティとあてしがマヤさんと結婚するからエリカにはあげないニャ~」

「マヤ君はこの前私に愛してるって言ってくれたけれどネ~」


「ニャニャニャ!? とうとうマヤさんはエリカに(たぶら)かされたかニャ?」


 おい。好きだとは言ったが厳密には愛してるって言ってないぞ。

 ああ、最後のエッチまでしたからエリカさんにとってはそういうことになるのか?


「むむむむむ…… マヤ様、それは初耳ですわねえ。どういうことですの?」


 パティの顔がまるで般若の面のようになる。

 怖いってば……


「まあ…… 一緒に勉強していたらだんだん仲良くなって…… そういうこと…… です……」

「その理屈ならエルミラと私も好きです愛してるってことだよねえ!? マヤさん?」

「お、おーい……」


 スサナさん、何を言ってるのか訳が分からない。

 彼女も私に対してそういう好感を持っているのか?

 これがサリ様の力だとしたら、強力すぎない?


「わ、私は試着の着替えを手伝ってもらった時に…… 裸を見られたから…… せ、責任を取ってもらわないとな……」

「ぐはっ エルミラさん、何てことを!」


 ねえ、ちょっと待ってよエルミラさん。

 人間として好きって言っていたのはやっぱりその場のごまかしかね。

 それに、下着を着けているのに裸っていうのかね?


「あの時のエルミラの顔はそういうことだったのか!」

「なんだあ、マヤ君。やることやってんじゃない」

「そんなに裸が見たいなら、あてしが見せてやるニャ」

「そうですわね。マヤ様はエッチですから、お母様の胸をいっつも見てますからねっ ぷんっ」


 もうしっちゃかめっちゃかだ。

 パティはさっきから機嫌が悪いし、私がアマリアさんの胸の谷間をチラチラ見ているのがバレてるし。


「うわっ パティはそんなところまで見てたのか!?」

「当然です。マヤ様がエッチなのはわかってます! でも、後何年かすれば私もお母様のようになりますから、私をいつも見るようになりますわっ」


 パティの誕生日パーティーじゃなくて、私に対する爆弾発言大会になってるよね?

 だがここは落ち着かせる。

 皆が集まっている良い機会なので話しておきたいことがある。


「みんな! 聞いて欲しいことがあるんだ」

「ん? マヤさん突然なんだニャ?」


「その…… いろいろとあったけれど、せっかくみんなが集まっているからここではっきりしたほうがいいのかな。

 私は五人みんながとても好きです。

 でも今のところ言葉で『愛している』と伝えたのはパティだけなんだ。

 まだ複数の女性を愛していける感覚がわからない。

 それに今は私が平民だから…… 一人しか結婚できない。

 だから、むやみな行動と言葉はこれからも自重していくつもり。

 貴族になれるかどうかも保証は無い」


 ううっ 緊張して喋ってる間も今も、ドキドキしっぱなしだ。

 これは私からの告白になるからな。


「マヤ様…… 私のことをしっかり愛してくれて…… ここここそこそと知らない女性と会ってへへへへ変なことをしなければ、私は複数の女性を愛して真面目なお付き合いをされることは一向にかまいませんっ」


 パティが珍しくおどおどと話している。

 変なことって何?

 と聞いてみたかったけれど、真面目な話だからやめておいた。

 そうかそうか。パティの口からはっきりと聞いて安心した。

 私はナンパ師じゃないからそんな器用に女性と付き合うことなんて出来ないけれど、サリ様の力の効力でこの先もたくさんの女性を知り合うことになるのだろうか?


「ありがとう、パティ。それから…… いずれは旅に出ようと思ってる。いつになるのかは決めてないけれど……」

「最初に日に聞きましたが、やはり旅に出られるんですのね……」


「それならあてしはついていくニャ。あてしはマヤさんのこと大好きに変わりないし、この中の女だったら別にいいニャ」

「私もこのメンバーの娘だったらかまわないよ。旅へ出るならたぶん私も行くよ」

「私もみんなだったらいいかな。旅に出られるかは侯爵閣下がどう考えられるかな」

「スサナと同じだ。私たち二人は代わりを別に見つけないと難しいかも知れないけれどね」


 この流れなら、この機会に私の身の上とここにいる理由を話してもかまわないだろう。

 とうとう私が異世界人ということを話すのだ。


「それで…… これからもっと大事なことを話そうと思う。ショッキングな内容もあるのでここにいる六人だけの話にして、絶対に口外しないで欲しいんだ」


「わかりました。お願いします」

「わかったよマヤ君」


「信じられないかも知れないが、私は元々ここの世界の人間でなくて、別の世界からやってきたんだよ」


「「「ええっ!?」」」

「冗談…… ではないですよね?」

「なるほどね……」


 エリカさんだけが納得したような反応だった。

 頭がいい人だから、私について何か察していたのだろう。


「私は別の世界で死んで、天界へ呼ばれたんだ。その天界にいらっしゃる女神サリ様の願いで、この世界で魔物がたくさん出てきている原因を見つけて解決して欲しいとお願いされたんだよ」


「「「サリさまあ!?」」」

「サリ様って実在してたの? そんなバカな!?」

「サ、サリ様ですって!? マヤ様は神様の使いだったのですか!?」


「そんなたいそうなものじゃないけれどね。そういうわけで、生き返ってこの世界にやってきた。女神サリ様は、このまま放っておくと世界が崩壊する恐れがあるということを、私に警告してきたんだ」


「マヤ君、エクスプロレーションの魔法で君から不思議な感じがした理由がわかったよ」

「私も最初にお会いした時にマヤ様から不思議な力を感じましたし、お母様やマルセリナ様のエクスプロレーションでもそう仰って…… 合点がいきましたわ。しかし本当の女神サリ様にお目に掛かってらっしゃるとは、マルセリナ様が仰っていたことも繋がりますわね」


「私は前々世から大きな力があった人物らしくて、前にいた世界ではその能力が全く使えなかった。今はこの世界で徐々に解放している状態なんだ。最初は弱い魔物を倒せるくらいだったのに……」


「確かにマヤ君が強くなる伸びは常軌を逸していたな……」

「うんうんわかる! 最初は私たちと同じくらいだったのに、どんどん動きにキレが出てきたんだよね」


「今は強いローサさんと戦えるようになったし、魔法も少しずつ使えるようになってるけれど、まだ闇と水の魔法だけ。だんだんとこの街と世界のこともわかってきたし、力も少しずつついてきた。それで頃合いを見て、魔物が出現する原因を探るべく旅に出ようかと思っているところだったんだ」


「マヤ君、君はやっぱり面白いよ! 私は旅に着いていくことに決めたぞ!」

「あてしは料理が出来るから、長旅の食事は任せろニャ!」


「エリカさん、ビビアナ、ありがとう。まだいつ出かけるか見当が付かないし、もう少し力を付けてから出ようと思ってる。ここへ来て半年近くになるけれど、マカレーナの街からあまり遠くへ出ていない。外の魔物退治にも慣れておかないといけないしなあ」


「でしたら今度、隣町のお祖父様のところへ連れて行って頂けませんか? 初めてマヤ様とお会いした時はその帰りだったので、久しぶりにお祖父様とお祖母様にお会いしたいのです。一日で行ける距離ですから」


「わかった。また予定を決めることにしよう」


 そういうことで、この話はいったん終えた。

 魔物退治と、魔物の発生源を見つける旅。

 まるで雲を(つか)むような行き当たりばったりで、上手く行くのだろうか。

 まず、パティのお祖父様の町へ行くことが第一歩になりそうだ。


「さあさあ、せっかくのパティの誕生日パーティーだから、楽しもう! ビビアナの美味しい料理が冷めちゃうぞっ」


「そうニャ。あてしの料理を心して食えニャ」


「やっぱりビビアナのタコスは旨いな。今日のはいつもより手が込んでいて種類がたくさんあって一段と旨い」


「そうだニャそうだニャ、うんうん」


 パティはタコスが大好物なので無言で一生懸命食べている。

 その隙にスサナさんが私を呼ぶ。


「マヤさん、今度は私とエルミラの間に入ってくださいね~ ふひひ」


 スサナさん、ちょっと酔ってないかね。

 私はスサナさんとエルミラさんの間に座ったら、二人から腕を(つか)まれる。


「マヤさ~ん、責任取ってくださいよぉ~ 私の恥ずかしいところを見られちゃって~」

「マヤ様! エルミラさんのななな何を見たんですか!?」

「ちょっと事故でぱんつが見えちゃっただけだからねっ」


 パティがエルミラさんの言葉を聞いて怒る。

 確かにぱんつ越しの股間はじっくり見てしまったが……

 エルミラさんが酔っちゃうと、こんなにだらしなくなるのか?


「私のこと本当はどうなんですか~ 愛してるんでしょ~ クンカクンカ あ~マヤさんいい匂い~」

「ちょちょちょっと、スサナさんやめなさい!」


 スサナさん、酒癖がこんなに悪いのか?

 私の脇や胸のあたりをクンカクンカと嗅いでいる。

 ああああ…… お風呂入った後で良かった……

 二人ともそんなに飲んでいないと思うが…… スサナさんたちが飲んでるお酒をグラスについで、ちびっと飲んでみる。

 うわキツっっ

 これはテキーラにそっくりの味じゃないか。

 酒が弱いくせにこんなものを持って来てどうするんだよ。


「あ~ 私のお酒を飲んで~ 間接キスをしましたね~ 直接でもいいんですよ~」


 むちゅうっとスサナさんにキスされた。

 彼女との初キスがこれかよ……


「スサナずるいですよぉ~ 私は…… 私は……」


 エルミラさんはスサナさんより正気に近く、少し躊躇(とまど)ってから私の頬にキスをした。

 どこかの安っぽいキャバクラのような状況になってしまっているなあ。


 パティは食べるのを止めて、顔を鬼のように真っ赤にして私たちがイチャイチャしているのをジッと見ていた。

 さっき複数の女性を愛するのは一向に構わないと言った手前だから我慢しているんだろうけれど、やっぱり直截そう言うのを見るのは嫌なんだな。

 今にも飛びかかりそうで、後が怖い……

 これからは隠れてイチャイチャしよっと。

 クズなのは承知だが、許された範囲では最大限に楽しませてもらうぞ。


「ニャニャニャ!!」


 と、ビビアナは叫び、パティと同じく()()()という顔でこちらを見ている。

 彼女は嫉妬心よりも、そのうち奪ってやるという気持ちが強い女の子だ。


 エリカさんは私だけしか男を知らないのに、さもたくさん恋愛経験しているような余裕の表情でヘラヘラ見ているがどういう心境なのだろうか。

 エリカさんはともかく、パティとビビアナは埋め合わせを考えないといかんな。

 特にパティは身分と立場上いろいろ世話になっているので、顔を立ててやらないといけない。


 ――そんなこんなでワイワイしながらいっぱい食べてお腹いっぱいになり、パーティーはお開きになった。


---


 さて部屋へ帰ってもう寝ようかーと思ったら、エリカさんに声をかけられる。


「マヤ君、私の番がまわってこなかったわ。私の部屋へいらっしゃい」

「あ…… はい」


 その晩エリカさんは、私の分身君が擦り切れそうになるほど楽しんだ。

 処女をこじらせていたから、今まで何も無かった分楽しもうという魂胆なのか。


---


 そして翌朝の訓練にて。


「お、おはよう…… マヤさん」

「おはようございます……」


 スサナさんとエルミラさんは少し顔が赤くぎこちない表情で挨拶をしてきた。

 二日酔いにならないようあれから飲ますのを止めたんだが、それ故に自分がしたことを覚えているのだろう。

 内心ちょっと面白かったが、若気の至りもまた経験の内だろう。


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