第二百三十六話 ジュリアとビビアナ/リンゴ飴
アスモディアへ向かって出発する当日の朝。
マドリガルタまで搭乗するカタリーナさんは、前日の晩からパティの部屋でお泊まり。
二人ともしばらく会えなくなるので、仲良く過ごしたらしい。
そうそう。パティのペットであるおっぱいプリンのプニュとモニョも、アスモディアへ連れて行く。
魔族領内の生き物なのか、アーテルシアがデモンズゲートから放った異世界の魔物なのか正体不明なので、向こうで誰かに見てもらおうと思う。
特に悪さをすることなく、拾ってきたときから大きさは十センチくらいで変わらず、飼いやすい。
いつか大人になって集団で囲まれると危険だから増やすわけにはいかないが……
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前日までにラウテンバッハで飛行機の整備を終え、ガルシア家の庭へ持って来て荷物を積み終えている。
トランクルームの他、機体後部の座席にも荷物をいっぱい積んだ。
最後部にトイレがあるので通路には何も置いていない。
初の海外運航になるわけだが、この飛行機が『飛行機』という名に定着している。
よく『マヤさんの飛行機』と呼ばれているが、国のお金でも作られているから私の個人名を入れるのも気が引けるし、いずれ良い名をみんなで考えよう。
朝食を食べた後、早々に出発する。
ガルシア家の居残り組がお見送りをしてくれた。
「得体が知れない魔族の国だ。パティやみんなのことをくれぐれも頼むよ」
「勿論承知してます、閣下」
「パティ。アモール様はお食事の時にはとても上品に召し上がっておられました。
あちらでお世話になると思いますが、あなたもきちんと食事マナーを守りなさいね」
「あ…… はい、お母様……」
魔女アモールは前にガルシア家に現れて食事をしたとき、大食いだったけれど食事マナーはとても良かった。
相変わらずパティはアマリアさんに注意されてシュンとしているが、前より良くなってると思う。
「マヤ様。ジュリアさんとビビアナちゃんに頼んでおいたから、ちゃんと言うことを聞いて下さいね」
「うん、わかったよ」
ルナちゃんからそう言われたが、ジュリアさんとビビアナだと少々不安がある。
もしジュリアさんが朝起こしに来たらぱんつを脱がされそうだし、ビビアナだと布団に潜り込んで一緒に寝てしまいそう。
ヴェロニカ、エルミラさん、スサナさんとも固い握手を交わし激励を送ってくれた。
魔族は全て魔力を持っていて、魔力無しの人間が滞在するにはいろいろ不利だというエリカさんの話だから連れて行けない。
何かお土産があったら持って帰りたいけれど、何か名物があるのか?
パティ、カタリーナさん、アイミ、ジュリアさん、ビビアナ、私とエリカさんのペンダントは飛行機に搭乗し席に着いた。
ジュリアさんとビビアナは初搭乗で、特にビビアナは窓から手を振って子供のように大はしゃぎだ。
「いってきまあああす!」
「バイバイニャー!!」
後の客室からそんな声が聞こえ、外は皆も手を振っているのが見えた。
ルナちゃんとスサナさんは前で大手を振ってくれている。
私からもコクピットから小さく手を振り、グラヴィティで垂直離陸を開始した。
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二時間半後にマドリガルタの王宮に到着し、一晩泊まる。
カタリーナさんはここで降りて王宮で花嫁修業として働くことになるが、具体的なことは聞かされていないのでどんなことをするのだろう?
パティはカタリーナさんの付き添いで、アイミは王宮図書館に閉じこもるそうで三人が王宮へ向かった。
私はジュリアさんとビビアナを王都見物へ連れて行く。
この二人とは普段買い物デートくらいしかしたことが無かったので、アリアドナサルダの用事を済ませながらであるがじっくりマドリガルタの市街をまわることにした。
そして今晩は一緒にエスカランテ家にてお世話になろうと思っている。
せっかくなので最初は二人に王宮内見学をしてもらった。
二人とも、見たこともない豪華絢爛な装飾を見て感激している。
「うニャー! 天井が教会よりすごいニャ! 絵がいっぱい描いてあるニャ!」
「本当、すごいでスねえ。私たちがこのようなところへ来て良いのでしょうか……」
「確かに平民の人は滅多に入れるところじゃないけれど、今日は私の使用人という扱いだから問題無いよ。ハッハッハッ」
などと優越感を持って話したが、直後に自分でいやらしさを感じてしまった。
二人ともそんなことは意に介していないが、地球の一般人からの成り上がりで王族との交流が出来る地位にまでなっているから浮かれてしまっている。
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昼食を食べるために街へ出る。
二人を抱えて飛んでも良かったが、たまには辻馬車に乗って移動してみよう。
その方が街の様子がよくわかって楽しいだろう。
お店はモニカちゃんやアイミを連れて行った、裏通りにあるいつものジャンクフード店。
特にビビアナには堅苦しい高級料理店よりこっちのほうが気に入ってもらえるはず。
ジュリアさんは普通に美味しく食べていたが、ビビアナは大喜びで食べきれないほど欲張って注文してしまい、私はそれを処分するのに腹が破裂しそうになってしまった。げぷっ
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腹ごなしに歩いてアリアドナサルダ本店へ向かう。
代表のロレナさんに用があるだけだが、二人が気に入ったぱんつでもあれば買ってやろう。
「あっ」
「まあ! マヤ様! ご無沙汰しております!」
なんと店内でまたレイナちゃんたち三人と遭遇してしまった。
面倒なことにならなきゃいいが……
「やあみんな、久しぶりだね。このところ忙しいから時間が取れなくて…… ごめん」
「本当よ。散々玩んで忘れちゃったかと思ったわ」
「玩び!? はわわわわ」
エステラちゃんがそう言いながら私の腕に絡みつき、ニヤニヤと笑う。
ジュリアさんが驚きおろおろしている。
玩んだなんて…… ああ……
下着姿にまでさせてしまったエステラちゃんになら言われても仕方がない。
だがこの二人の前で言うのはやめてくれえー
パティにバレたら間違いなく誤解されてしまう。
「何だニャ? こいつら。マヤさんの女か?」
「こらビビアナ! 三人は貴族様だから言葉遣いは気を付けなさい。
彼女らは王宮で叙爵のパーティの時に知り合ったお友達だよ」
ビビアナまでもう片方の腕にまとわりついてきた。
あーぁ…… やっぱり始まってしまったか。
レイナちゃんやレティシアちゃんは苦笑いしているだけだが、エステラちゃんは何かと噛みついてくるからなあ。
「マヤ様は使用人の娘まで手を出してるんですか?
しかも人間と耳族なんて珍しい……」
「へへーん。あてしとそこのジュリアはマヤさんの正真正銘の女だニャ。
使用人は仮の姿。あてしたちはマヤさん率いる大魔法使いだニャ!」
おい。大魔法使いというのはジュリアさんはともかく、ビビアナは魔力量が多いだけで魔法は幼年学校の児童並みの初級魔法しか使えないぞ。
「ぐぬぬ…… マヤ様…… 全然知りませんでした……
まだ恋人がいらっしゃるなんて、マヤ様の周りは女性だらけだと認識しないといけないのですね……」
「彼女らのことは前に言わなかったかなあ……
ゴロツキや魔物から助けて知り合ったという馴れ初めがいろいろあってねえ」
相変わらずエステラちゃんとビビアナは両腕に纏わり付いているが、このままでは埒があかない。
「ごめんね。今日はいつも二人に世話になってるからお礼の気持ちで出掛けているんだ。
この埋め合わせはきっとするから、今日のところは……」
「マヤ様、承知しました。エステラちゃん、また今度お願いしましょ。
これ以上はご迷惑になるわ」
レイナちゃんが声を掛けてくれて、私がエステラちゃんの頭を撫でると半泣きでそっと腕から離れた。
この娘は思っていた以上に一途のようで、彼女が学生の間はこのままでも良いかもしれないが、卒業後に彼女の気持ちが変わらなければ私もけじめをつけるべきだろう。
レイナちゃんたちと別れて、ジュリアさんとビビアナには好きなランジェリーを選んでもらう。
その間にロレナさんと用事を済ませるが、彼女はまた隣にべったりくっついて座りタイトスカートから美しい太股を晒す。
やはり視線が太股にいってしまうが、私の病気なのでどうにもならない。
あと数センチスカートが上がったらぱんつが見えそう。
ロレナさんはにやにやしながら打ち合わせを続けて、私の反応を楽しんでいた。
ロレナさんとの用事が終わり、ジュリアさんとビビアナは気に入ったランジェリーを選ぶことが出来たようだ。
「マヤさん、あてしもたまにはこういうのも履いてみたいニャ。
これからは大人のコーディネートニャ」
ビビアナが掲げたのは真っ赤なレースのブラとTバックだった。
ロベルタ・ロサリオブランドではないが、そういうのを着けたいお年頃なのか……
顔が童顔だから白ベースの花柄ぱんつみたいなものが似合うだろうに……
と思っていたらそれも手にしていた。
どれもローライズなので尻尾に干渉しないから問題無い。
ジュリアさんは……
白い数珠のようなものがついたぱんつや、お尻の部分が全く無いOバック、完全に透けてる紐パンなどを手にしてグヘヘとヨダレをたらしていた。
まあ、何を考えているのかはわかったことなので好きにさせてやろう。
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会計を済ませてまた辻馬車を拾い、インファンテ家の近くにある屋台市場へ。
少し腹の隙間が空いたのでおやつタイム。
なんとリンゴ飴の屋台を見つけたので、それを三本買ってみた。
懐かしい味……
大人になってから初めて食べたので何十年ぶりだろうか。
二人にも、美味いニャーとか言われて喜んでもらえた。
セルギウスもリンゴ飴を食べるかなと思って、お土産にもう五本買っておいた。
今ここで召喚してもいいんだが、今日の市場は混んでいるのでやめておこう。
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まだ日が暮れないが、エスカランテ家に着いた。
ジュリアさんとビビアナについては完全に飛び込み来客になってしまうので申し訳なかったが、エスカランテ子爵やシルビアさんは快く受けてくれた。
玄関前ロビーで出迎えてくれたシルビアさんは、ミカンちゃんを抱いている。
「おおおおお人間の産まれたばかりの赤ちゃんをこんなに近くで見たのは初めてニャ!
可愛いニャぁぁぁぁ……」
「本当でスね。わぁぁぁぁ うふふ」
「ふふふ、そうだろう。シルビアさんと結婚したら私の子になるんだぞ」
当然二人にも、私とミカンちゃんは血が繋がっていない設定で話してある。
シルビアさんはニコニコと初顔あわせの二人を迎え入れてくれた。
「まあ、耳族のお客様は初めてね」
「あてしはビビアナニャ。こっちがジュリア。二人ともマヤさんの恋人ニャ!」
「ジュリアでス…… よろスくお願いしまス……」
ビビアナは胸をふんぞり返しながらドヤ顔で自己紹介している。
ジュリアさんはやや緊張気味だ。
「シルビアです。うふふ。お二人のことはマヤさんから聞いてますよ。
さあ、中にお入りになって。
部屋は用意させますからそれまでお茶でもどうぞ」
私たちは応接室に案内され、早速ジュリアさんとビビアナはミカンちゃんを抱っこして可愛がっていた。
この二人にも母性本能が目覚めたのか、見たことも無いような優しい笑顔でミカンちゃんをあやしていた。
これなら将来二人に子供が出来ても安心かな。
半時もすると部屋の用意が出来たとおばちゃんメイドから案内があり、二人は付いていった。
後で聞くと客間はキングサイズベッドで二人仲良し寝るらしい。
すごいふわふわベッドだとはしゃいでいた。
皆で夕食をご馳走になり、その後私はいつものようにシルビアさんの寝室へ。
シルビアさんがミカンちゃんにおっぱいをあげたら、ぐっすり眠ってしまった。
「ねえマヤさん…… お医者様からもう大丈夫って言われたんです……
久しぶりに…… どうでしょうか?」
シルビアさんは真っ赤な顔をしてそれを知らせてくれた。
わくわくわくわく……
分身君もむくむくむく……
ミカンちゃんが起きるといけないのでシルビアさんは声を殺していたが、何ヶ月ぶりかのベッドの上の運動でギシギシと頑張ってしまった。
今回は避妊の魔法をかけたけれど、二人目はどうしようかなあ。




