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第二百三十五話 バルラモン家/結婚話のまとめ

 ガルシア侯爵の屋敷から西へ少し離れた場所にある、バルラモン伯爵の屋敷。

 言うまでも無くカタリーナさんのご実家である。

 前にも言ったよう私は一度しかお邪魔したことが無いが、ガルシア家の屋敷より大きく広い。(第百四十七話参照)

 ガルシア家は商売をしているわけでなく、ガルシア侯爵の立場を例えるなら都道府県知事のようなもの。

 貴族として最低限の威厳を保つくらいの生活水準で、大金持ちの貴族のように華美な生活をしていないからだ。

 バルラモン家はマカレーナ近郊の建築資材を扱っている商家で、裕福な生活をしている。

 王都マドリガルタからマカレーナへ帰り、御者のアントニオさんに頼みガルシア家の馬車でカタリーナさんをバルラモン家まで送り届けた後の話。



(カタリーナ視点)


 我が家へ帰ってきてしまいました。

 離れていたのはたった三日足らずなのに、ずいぶん久しぶりのような気がします。

 あのこと…… どうやってお父様とお母様にお話しようかしら……

 飛行機の中でも考えていましたが、まとまりませんでした。


「お母様、ただいま帰りました」


「あらお帰り、カタリーナ。ずいぶん早いのね。本当に王都まで行ってきたの?」


「それは勿論ですわ。マヤ様の飛行機という乗り物は素晴らしいです」


「あの方はいろいろ不思議よねえ。

 ところで浮かない顔をしているけれど、何か嫌なことがあったの?」


「いえ、とても楽しかったです。ガルシア家の皆様やマヤ様もとても良くして下さいました」


「そうなの…… 良かったわ。

 それじゃあもうすぐ食事の時間だから、食べましょう」


---


 帰宅後、間もなくダイニングルームにて昼食です。

 ここにいるのはお母様と私、それから若い給仕のアニタだけで、お父様はお仕事があり出掛けていました。

 せっかく美味しそうなコロッケを作ってもらったのに、やはり食欲が湧きません。


「お、お嬢様。申し訳ございません。

 それは私が作ってみたのですが、お口に合いませんでしたか?」


「そんなことないわ、アニタ。あなたの料理は一度も不味いと思ったことないから」


「恐縮です……」


 アニタはペコリとお辞儀をする。

 最近給仕係として雇ったアニタは健気(けなげ)で、まるで妹のように可愛らしい。

 パトリシア様の次に抱きしめたくなる()なんです。


「本当にどうしたの? 元気無いわね……」


「あのっ お母様! 大事なお話があるんですが、お父様がお帰りになったときにしたいんです……」


「あなたが悩んでいる原因はそれね。

 いいわ。お父様と一緒に聞きましょう」


「はい…… ありがとうございます……」


 先にお母様には話した方が良かったかも知れないけれど、我が家全体に関わる話なのでお父様には一番に聞いて頂いた方が筋だと思いました。


---


 そしてお父様が帰宅後、お夕食の前にお父様とお母様に応接室へ来て頂きました。

 いけない。アニタもいる。


「ごめんなさいアニタ。あなたは席を外してもらえるかしら」


「はい、かしこまりましたお嬢様」


 アニタはお茶を出し終えると応接室を退出して行きました。

 ごめんね。あなたが周りに言い触らすような()ではないとわかっているけれど、私が余計に緊張してしまうから……


「おかえりカタリーナ。王都はどうだったかね?」


「はい。陛下にお目に掛かることが出来てとても感激しました。

 外に出掛けたら、新しい街は街作りが整然としてとても綺麗でした」


「おおそうかそうか。

 私は若いときに一度だけしか王都へ行ったことが無いから、ずいぶん変わったのだろうなあ。

 それで早速本題だが、おまえの大事な話というのはなんだね?」


 もうお父様ったら、話の振りが早すぎるわ。

 もっと陛下のことや街作りの参考にもいろいろ聞いて欲しかったのに。


「それでお父様、お母様……

 陛下と、アウグスト王子殿下ともお会いしました。

 それで王子殿下に後でお呼ばれして、二人でお話したんです……

 で…… あの、あの……」


「ええ!? 王子殿下と二人で!?

 まさか変なことはされていないだろうね?」


「あわわわわ…… うちの娘が手籠(てご)めに……」


「もうお父様お母様!!

 王子殿下はそんな野蛮な方ではありません!

 とても誠実で、頭が良くてしっかりしてらっしゃる素敵な方です!」


 どうしてお父様とお母様はそういう方向へ話を持って行くのかしら。

 マヤ様のことでも疑うような発言があったり、失礼しちゃいます。

 あの方はパトリシア様のことをとても大事にされてますから、他にも仲良くされている女性は何人いらっしゃってもいやらしいことをするはずがありませんわ。

 でも…… 前に大聖堂でマヤ様に抱かれたときは変な気持ちになりました。

 あれは何だったのかしら。(第五十六話参照)


「ああ、悪かった。さすが我が国の次期国王になられるお方だ。

 おまえが王子殿下の人となりをしっかり見てきたのであればこの国の将来は安泰だと信じることが出来るよ。

 それで話の続きだが、王子殿下とお話になってどうしたんだい?」


「それは…… 王子殿下が私に一目惚れをしたそうで、結婚を前提にお付き合いしたいと……」


「あ…… あば…… あばばばばばばばば……」


「ああわわわあなた! カタリーナが…… おろおろおろ……」


 お父様は座ったまま大の字で固まってしまい、お母様は何故か部屋の中をあちこち動き回っています。

 両親にとって自分の娘が想像だにしなかった状況になっていることを知ると、こうなってしまうのでしょうか。

 もし私が怪我をしたり死んでしまったら……

 ううん…… 私はお父様とお母様を悲しませるようなことはしないと誓うわ。


「お父様! お母様! しっかりして下さいまし!」


「はっ ああ…… すまなかったカタリーナ……」


「ごめんなさい、取り乱して……」


 ようやく二人とも落ち着きました。

 アニタを外しておいて良かったわ。きっと怯えちゃうから。


(わたくし)、お返事は保留することにしました。

 それで王子殿下から、王宮で働いてみてそれから考えてみるのはどうかと提案がありましたので、そうしてみようかと思っています」


「うむ…… おまえがそれをチャンスと思うならやってみるがいい。

 私は反対しない。

 だが妃殿下の座を狙っている貴族は大勢いるはず。

 もしかしたら嫌がらせがあるかもしれないから、それが心配だ」


(わたくし)もそれは覚悟しています。

 そういう者たちにあっと言わせるように頑張ります!」


「カタリーナ。あなたは生徒会長をやっていたけれど、それの何倍も周りからの圧力があるのよ。

 それには毅然と立ち向かって蹴散らしてやりなさい。

 あなたにはそれくらい出来るはずよ。

 お母様も応援するわ」


「ありがとうございます、お母様」


 良かった…… お父様もお母様も賛成してくれて。

 私がもし妃殿下になればバルラモン家の格は上がるでしょうが、お父様やお兄様たちの今後の対応も変わってくる。

 バルラモン家の名を(けが)さないようにしなければ。


「私は、おまえがマカレーナのどこか男爵家か子爵家に嫁ぐものとばかり思っていた。

 まさか王家の第一王子とはな。ハッハッハッ

 将来の王子様や王女様を産むことになるのか」


「お父様ったら…… 気が早すぎますっ」


 は…… 恥ずかしい……

 私がアウグスト王子殿下と…… ドキドキ

 異性としてマヤ様は素敵でしたが、王子殿下も格好良くて……

 もし抱かれたら(わたくし)どうにかなってしまいそうです。


---


(マヤ視点)


 マドリガルタから帰った翌日、ガルシア家にカタリーナさんの訪問があった。

 何でもアウグスト王子殿下とのことを早速ご両親に話したそうで、王宮で仕事をしたいから今度マドリガルタへ行く時に一緒に連れて行って欲しいそうだ。

 勿論快く受けたが、この数日のうちにも私たちはアスモディアへ向かわなければいけない。

 その脚でカタリーナさんを飛行機に乗せて、途中でマドリガルタへ寄ることにした。

 一日くらい滞在してミカンちゃんに会いに行ったり、貯まっていたデザイン画をロレナさんに渡しておきたい。


 アスモディアまでの航行計画を立てる。

 アスモディアは、マカレーナから北東へ約三千キロの位置にあり地続きになっている。

 飛行機で行っても恐らく十二時間以上掛かり、アイミと交代しても連続で飛び続けるのは困難だ。

 地球の飛行機ほど気圧対策がされていないため高高度飛行が出来ず、主に平坦な海上を飛ぶことになるがどこか地上で休憩が出来る土地を考えなければいけない。

 距離的に、マルセリナ様の出身国というスオウミ国の南部が妥当だろう。(第五十八話参照)

 イスパル王国とスオウミ国とは一応国交が樹立しているが、距離があるので交流は僅かである。

 飛行機なんてものが外国に降り立つと、見たこともない大きな怪物がやってきたと大騒ぎになりかねないので人里離れた場所へ着陸せざるを得ない。

 それはアスモディアへ降りるときも同じ事だが、出来るだけトラブルは避けておきたい。


 トイレについて。女の子が多いからそれは死活問題だ。

 一応機内の最後部に魔法で動作する簡易トイレを作ってもらっている。

 用を足したら水に流し、その後は閉じ込めてニオイが出ないようにする。

 それからにおい消しの薬も使って熱処理するという、見えないところで手が込んでいる魔道具だ。

 だが処理後の個体はどうしても出てくるので後で捨てなければいけないが、女の子たちが排泄したなれの果てを見ることになるので、そこは心を殺して処分する。


 魔女アモールへの手土産。

 料理が出来るビビアナとジュリアさんそのものが手土産みたいなものだが、アスモディアで取れない食材をある程度持って行くことにする。

 しばらく召喚していないセルギウスのためにもリンゴを持って行こう。

 どうせなら種から育ててもらいたい。


 エリカさんからの提案で、せっかくだからランジェリーをたくさん持って行こういう話があった。

 魔女アモールが使う分と、使用人にはサキュバスの他に女の子の魔族が何人もいるというから、持って行けば待遇を良くしてくれるだろうということだ。

 淫魔のサキュバスがいるとは、嫌な予感しかしない。

 取りあえず上下百着くらい適当に見繕っておこう。

 エリカさんからアモールのスリーサイズを教えてもらったが、90F・60・85という身長173cmに対してやや小尻のスタイルはまるで造形美と言えるだろう。

 エリカさんから、お師匠様に襲われないよう気をつけろと言われているが、女王のようにお務めをさせられる状況にまで追い込まれる可能性は以前のアモールの態度からして大いにありそうだ。

 そうなれば仕方が無いが、パティたちには絶対バレないようにしたい。


 アスモディアへ出発までの数日間、しばらく会えなくなるヴェロニカとエルミラさんとで愛の確認をした。

 相変わらずヴェロニカは二人セットのほうが良いらしく、私とエルミラさんが行為に及んでいるときにはまじまじと見つめてくるようになった。

 ヴェロニカと行為をしているときは、エルミラさんがヴェロニカに膝枕をしていることが多いが……

 性の探究心が目覚めたのか、ヴェロニカが後から覗いていたときはまるでAVを撮影しているみたいでさすがの私も恥ずかしくなった。

 女王とシルビアさんのように女同士で愛し合うことはことは無い。

 精々膝枕や頭を撫でたりするくらいだ。

 ああ…… そういえば女王とヴェロニカと母娘で肉体関係を持ってしまったことに今更気づいた。

 まあ、この二人を同時に愛し合うことは有り得ないだろう。

 普通に考えて子供が母親の乱れている様を見るのはショックである。

 ああ…… リーナは覗いていたか。


 アスモディアから帰ったら課題は山ほどある。

 パティとの結婚式の話は少しずつ進んでおり、誕生日にしないで少し後になるようだ。

 結婚式は大聖堂で。披露宴は後日ガルシア家の屋敷で行う。

 前にマルセリナ様からパティと合同結婚する提案があったが、話半分でそれからマルセリナ様との結婚も話は進んでいない。


 王家と敵対しているガルベス家に対する、ヴェロニカとの結婚もだ。

 極力穏便に済ませるには、やはりリーナと正式に婚約をするしかない。

 ヴェロニカとの結婚とリーナとの婚約を同時に発表することになるが、国内は大変な騒ぎになるだろう。


 ビビアナとジュリアさんについて。

 彼女らは明確に私と結婚したい意思を持っているが、私自身の方がおざなりになってしまい可哀想なことをしていると思っている。

 平民だから後回しで良いだろうという気持ちが少なからずあり、私の卑しさに腹が立ってくる。

 特にジュリアさん本人が強い性欲の処理として私と愛し合っている意味が強いので、私も甘えて都合の良い存在になってしまっている。

 普段は控えめな素直でとても良い子だから、彼女に対してきちんと報いたい。


 ルナちゃん、モニカちゃんも私に対して好意を持ってくれているが、ルナちゃんはずっと私のお世話をしていきたいと言ってるし、モニカちゃんは結婚したい意思を匂わせている。

 みんなまとめて結婚しちゃえって思いたくなるが、未だガルシア家に居候している身の丈には到底合わない。

 まず収入アップと屋敷を手に入れることが目標だ。


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