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第二百二十八話 女王、エスカランテ家へ/モニカとエリカ

 シルビアさんは産後の経過が良く、四日後に退院することが出来た。

 それまでの出産の翌日、女王へ出産の報告をする。

 王宮、女王の執務室にて。他にロシータちゃんが執事のデスクで事務仕事を行っている。

 彼女も執事業務が板についてきており、シルビアさんが育休している間はしばらく活躍しそうだ。


「そう、ミカンちゃんっていうの。可愛い名前をつけたのね」


「シルビアさんに似ていますよ。

 目の中に入れても痛くないほど可愛いとはよく言ったものです」


「うーん…… シルビアにも久しぶりに会いたいし、エスカランテ家へお邪魔しちゃおうかしら。

 ロシータ。非公式でエスカランテ家へ訪問するから、来週中にどこか空けて予定を組んでちょーだい」


「はい、陛下」


「明日までには返答するから、マヤさんにはエスカランテ子爵にそのことを伝えてね」


「はい」


 半ば強引だが、女王陛下が貴族宅へ訪問することは大変な名誉であるから、子爵は何としても予定を空けることだろう。

 エスカランテ家へ帰って子爵にそれを伝えると……


「ななななんと!! とうとう陛下の行幸(ぎょうこう)を仰ぐ名誉が我が家にも!

 マヤ殿! 来週なら何時でもおみ足を運び下さいと陛下にお伝えしてくれ!」


 ということで、予想通りだった。

 女王陛下の訪問は基本的に伯爵家以上の貴族ばかりであるが、子爵家へは私的な非公式訪問でシルビアさんが女王の大事な執事だからという異例なのだ。


---


 そしてマルティナ女王陛下がエスカランテ家へ訪問の当日。

 私自身が王宮からエスカランテ家まで馬車で送迎するが、プライベート(ゆえ)にがやがやと騒がれるのを避けるため、通常の貴族の馬車にカムフラージュし護衛は御者役の私だけ。

 同乗者は執事代理のロシータちゃん一人である。


 お出迎えもひっそりと。

 食事会まで考えてやる気満々だったエスカランテ子爵はがっかりしているが、今回の主役は我が子ミカンちゃんで、女王の滞在も一時間ほどで帰る。


「本日は我が孫のために玉体(ぎょくたい)をお運び頂き、誠に恐縮でございます」


「いいのよ。私の親愛なるシルビアの子なのだから、早く顔が見たいわ」


「ははっ」


 出迎えの玄関前でそういう会話があったが、私の名前が外れているのは使用人たちがざわざわと見に来ているからである。

 ちなみにロシータちゃんには女王から事情を話したらしい。


 応接室にて。

 部屋には私の子だと知っている最低限の人だけを入れ、主役であるシルビアさんとミカンちゃんへの面会という形式で行われた。

 女王とロシータちゃん、エスカランテ子爵夫妻、そして私たち親子三人だけである。

 シルビアさんにはお兄さんたちがいるがあくまで女王の私的訪問なので、知らせるだけはして来ていない。

 横長のソファーにはシルビアさんがミカンちゃんを抱いて座っており、女王も隣に座った。


「あら可愛いわあ。本当にシルビアにそっくりね。私に抱かせて頂けるかしら」


「はい、陛下」


 女王は手慣れた様子でミカンちゃんをシルビアさんから受け取り、大事そうに抱きかかえた。


「ミカンちゃ~ん、いい子にしてまちゅね~

 バァッ マルティナおばちゃんだよ~ あらっ 笑ったわ。うふふふ」


 この時ばかりは女王もお母さんのような笑顔で、ベッドの上でエッチなぱんつを履いてお尻をフリフリしている時とは別人のようである。


「ヴェロニカをこんなふうに抱いていたのは二十年近く前かしら。思い出すわあ~」


「陛下が我が孫をお抱きになり、感激の極み! ううぅ……」


「あなた! こんなところで……」


 別の席に座っている子爵が感激のあまり涙を流している。

 それを夫人が(いさ)めているが、まあ女王は国内一の有名人で神様みたいな存在で見ている人たちもいるから自然なことなのかも知れない。

 この機会に一つ確認しておきたいことがある。

 ネイティシスの人間は特に女の子が魔力を持ちやすい体質で、私から遺伝してこの子に魔力があるかどうかを知りたい。


「陛下。せっかくなのでこの子をマジックエクスプロレーションで調べてもらえますか?」


「そうね。ちょうど私もそのことを考えていたところだわ。早速やってみるわね」


 女王はミカンちゃんを抱いたまま小さな手を握った。

 目を閉じて集中し、およそ三分…… 部屋は静まりかえっていた。


「すごいわ…… こんな小さな子なのに、潜在的な魔力量が高位の魔法使いより遙かに大きい。

 シルビアも魔法は使えるけれど、これは明らかにマヤさんからの遺伝ね」


「潜在的…… ということは、まだ隠れているということですよね?

 属性はわかりましたか?」


「そう。勿論魔法はまだ使えないけれど、器がとても大きいわね。

 属性はまだわからないわ。でも何らかの魔法職にはつけそうだし、将来は安泰ね」


「もし水と土属性があれば我が家の農園もこの先安心だ! ばんざ~い!」


「あなた! 気が早いですよ」


 また子爵が騒いでいるが、私の遺伝ならばどちらかの属性には必ず目覚めそうだ。

 それより光と闇のどちらに目覚めるのか気になる。

 まずどこかの学校の魔法学科に入学させるのは必至だな。

 おっと、私も気が早かった。


「ロシータ、あなたもこっちへいらっしゃい。

 シルビア、ミカンちゃんを彼女にも抱かせてあげてもいいかしら?」


「勿論です、陛下。さ、ロシータ。陛下の隣へ……」


「ひゃ、ひゃい!」


 ルナちゃんたち四人グループの中では唯一貴族出身で、生真面目そうな風紀委員っぽい雰囲気を持っているロシータちゃん。

 さすがの彼女も緊張しているようだ。

 ミカンちゃんは女王からロシータちゃんへ受け渡され、少々危なっかしかったが無事に彼女は抱きかかえることが出来た。


「わ、私…… 末っ子だったから赤ちゃんを抱くのは初めてなんです。

 わぁ 手がこんなにちっちゃいなんて…… あっ 笑った!」


 ミカンちゃんがニィっと笑うと、ロシータちゃんはいつものキリッとした表情からは想像出来ないような、にへら~っとした笑いをした。

 今日はご機嫌良いミカンちゃんだった、というかあんまり泣かない子なんだよなあ。


「かかかかか可愛い…… 私も赤ちゃんが欲しい……です」


 ついそんな言葉を漏らしたロシータちゃん。

 それを聞いた女王がニヤリと笑う。


「あらあら。それならあなたも早く恋人を見つけなくちゃね。

 ずっと私の執事をやってるとお嫁に行き遅れちゃうから……

 そうね。あなたもマヤさんと結婚したらどう?」


「ななななな……」


「あの…… 陛下……」


 ロシータちゃんは顔が真っ赤。

 何気にシルビアさんに対して毒を吐いているが、彼女は女王の性格をよく知っているので苦笑いをしているだけだ。

 夫妻は神様のように崇拝していた女王の思わぬ言葉に困惑していた。

 女王は遠慮なさ過ぎだろ。


「ごめんなさい、冗談ですよ。オホホホ」


 緊迫した空気が漂っていたが、ロシータちゃんと夫妻は冗談ということがわかり安堵した。

 ふざけるのも程々にして欲しいが、そもそも女王への夜伽(よとぎ)が発端で今がある。

 だがシルビアさんを好きになったこととミカンちゃんが産まれたことについては一片も後悔していない。


 あっという間に時間が過ぎ、私は女王とロシータちゃんを王宮へ送り届けた。

 和風に言うと、『還幸(かんこう)あらせられた』だろうか。

 本来雲の上の人であるはずが、あまりに慣れすぎて周りから見て不敬になっていないだろうかと時々不安になる。

 公の場では最低限の礼儀をわきまえているつもりなのでうるさい大臣たちに(とが)められたことは無いが、裏で何か言われてないかと勘ぐる私は小心者だ。


---


 そのまま私は王宮で泊まることになり、ミカンちゃんの出産が済んで落ち着いたから今晩は夜伽(よとぎ)を命ぜられた。

 シルビアさんには了解を得ているが、産まれたばかりの子がいるのに他の女性と行為に及ぶのは常識的に考えて心苦しい。

 だが元々女王とシルビアさんと二人で愛し合っていたり、シルビアさんも混じって三人で行為に及んでいたという非常に特殊な事情があるので許されている。

 シルビアさんとは産後一ヶ月で医師から許可が出たら出来るので、まだ先の話だ。

 女王の際限ない性欲が落ちるまでは夜伽(よとぎ)が続くかも知れないが、それはいつなのだろうか。


 夕食の時間までいつもの部屋で寝転んでいる。

 ちょうどエリカさんが声を掛けてくれたので暇を潰すことが出来た。

 エスカランテ家に滞在しているときはなかなか一人になる時が無くて、トイレに入っているときも外へ会話が漏れたら異様なのでやめてもらっていた。


『しかしあなたも好きだねえ。夜伽(よとぎ)が嫌々ってわけじゃないんだから』


「実はずっと溜まってて、今日はその()け口だよ。女王もそれは承知の上さ」


『もうすぐお風呂か夕食でしょ? その時モニカちゃんに言えばいいじゃない。

 喜んで相手してくれるはずよ』


「ああ、まあそうなんだけれど……

 二人を相手にするのに時間差が無いから、女王の時に不発だったらマズいでしょ」


『シルビアさんと陛下の二人相手をしてたじゃない』


「あれはうまく分散させてたんだよ」


 なんという酷い会話。

 まるで私の方が性欲の権化(ごんげ)のような内容だ。

 そこへドアが急にガチャッと開いた。


「失礼しまあす! あれ? さっき誰かいませんでした?

 女の人との話し声が聞こえたけれど……」


「え? ああ…… 私は一人で寂しいと、女性の声を真似て一人で話す癖があるんだよ。

 ほらっ 『モニカちゃんこんばんは』って」


 エリカさんがうまく同期して声を出してくれたけれど、それでいいのか?


「えー マヤ様は変な人だとわかってるけれど、ますます変な人だと認識せざるを得ませんね。

 それにしても…… どこかで聞いたような声ですね……」


 もろにエリカさんの声なんだが、まさかモニカちゃんはエリカさんがここにいるだなんて思ってもいないだろうから、首をかしげて悩んでいる。

 さてどうしたものか。

 このままとぼけて、全裸になってお風呂へ入っちゃおうか。


『あー モニカちゃん。久しぶりだねえ』


「え!? やっぱりその声って????」


「あら!? え? ちょっと…… いいの?」


『エリカだよ。魂だけ最近目覚めて、このペンダントの中にいるんだ。

 元気そうだねえ。プリプリおっぱいで私を包んでくれた夜は忘れないよ』


「あーーーーーー!! やっぱりエリカ様だーーーーーー!!」


 それでエリカさんってわかるんだ……

 モニカちゃんのプリプリおっぱいで何をしてたんだよ。

 ああ、ぱ◯ぱ◯でもしてたんだな。

 確かにモニカちゃんのおっぱいはプリプリでたゆんたゆんだ。

 エリカさんはどういうつもりなのか、モニカちゃんにもいずれ事情を話さないといけないから今が良い機会と判断したのだろうか。


「ま、まあそういうわけで……

 エリカさんはエリサレスの戦いで身体は死んじゃったけれど、わかりやすく言うと魔法で魂だけ分離してこのペンダントに保存してて、ずっと眠っていたけれどつい最近目覚めてこうして会話が出来るようになったんだよ。

 まだみんなには秘密にしていて、出掛ける前にルナちゃんにだけは話したんだ」


「え…… 私まだ信じられなくてドキドキしてる……

 そうなんだ…… エリカ様…… 魂だけ生き返るなんて、すごい魔法使いなんですね」


『だから前に私すごいよって言ってたでしょー? えっへん』


 モニカちゃんは、久しぶりに再会した恋人の前にいるような照れ照れ顔だ。

 女王の部屋へ行く前に、少し二人だけの時間を作ってやるか。


「あのね。お風呂…… 先に二人で入ってきなよ。私は後で良いから」


「え? 三人じゃダメなんですか?」


「今晩は…… 女王とアレの日なんだよ。だから……」


「へー そうですか。ふーん」


『アレもマヤ君のお仕事だから仕方ないよ。いっひっひっひ

 じゃあマヤ君、私をモニカちゃんに渡してちょーだい!』


「はい……」


「はわわわ…… エリカ様……」


 モニカちゃんは私からペンダントを受け取ると、ペンダントを頬ずりして涙ぐんでいた。

 彼女はエリカさんの死を知ったときに号泣状態だったという理由もあって話すことをためらっていたが、今日は落ち着いていて良かった……


『あー モニカちゃん。私ってマヤ君から魔力供給を受けて生きてるから、あんまり離れちゃうと死んじゃうんだ。だから気をつけてねー』


「ええっ? あわわわわわっ」


 モニカちゃんは慌てて私に近寄った。

 エリカさんは言葉足らずなんだから……


「この部屋の中までだったら大丈夫だから、安心していいよ」


「なんだー 良かった ホッ…… じゃあ早速お風呂へ入りましょ」


 モニカちゃんは私の目の前でスルスルと給仕服を脱いで下着姿になった。

 上下純白の、特にデザイン性が無いごく普通のブラとぱんつだ。

 残念ながらロベルタ・ロサリオブランドではないが、十七歳という年齢にあった自然さがいいのだ。


「マヤ様は、今日はここまで。女王陛下と楽しんでくださーい。ふーんだっ」


『じゃ、そういうことで。にっひっひっひ』


「あっ ああ……」


 モニカちゃんとエリカさんはさっさとお風呂場へ行ってしまった。

 一緒に入っても、ペンダント相手に何するんだろうな。


 ――テーブルの上に畳んで置いてある、モニカちゃんの給仕服。

 クンクン……

 いい香りがするかと思ったけれど、洗剤の匂いや厨房の何かいろんな料理が混ざったような匂いしかしなかった。


 ――暇だな。

 ちょっと風呂場のドア越しに聞き耳を立ててやろう。


『ああっ いいよおっ 柔らかいプリプリおっぱい最高だよ!

 身体全体が包まれてプリンの中にいるようだ!』


「えへへっ もっとやりましょうっ それっ」


 ――アレはきっとペンダントを挟んでぱ◯ぱ◯しているに違いない。

 身体が小さくなっておっぱいに挟まれてるような感覚か……

 ちょっとエッチな漫画にありそうなプレイだな。


「今度はこんなところに挟むのどうですかあ?」


『ああっ しゅっ しゅごい! 秘密の花園に囲まれているぅ!』


 ――なんてところにペンダントを挟んでいるんだ!

 うううう羨ましすぎるぞ! 小さくなったらまさに未知のゾーン!


 バレないうちに部屋へ戻り、すました顔で待っていた。

 モニカちゃんはポカポカ温まった身体で、頭にタオルを巻いて下着姿のままベッドに脚を組んで座る。

 考えてみれば私は従事者を馴れ合いとは言えずいぶん好き放題させているが、子持ちの男がこんなことをしていると、端から見たら愛人と火遊びしてるだけにしか見えないよな。


「ねえマヤ様。シルビアさんの赤ちゃん、産まれたんですよね?

 やっぱり可愛いですか?」


「ああ、勿論だよ。ニコッと笑うと今までの嫌なことが全て吹き飛びそうだよ」


「へぇ~ いいなあ。私も赤ちゃん欲しいなあ~ ふひひ」


「そ…… そうか」


 モニカちゃんは私の顔を見てニヤニヤしている。

 本気かどうかわからないが、彼女から子供が欲しいという意志を見せたのはこれが初めてだった。


『ねえねえ、さっきエスカランテ家でさあ。

 ロシータちゃんも赤ちゃん欲しいって言ってたよ。

 陛下が揶揄(からか)って、マヤ君と結婚したら? って言ったら顔真っ赤にしちゃって。あっはっは!』


「へぇ~ あの子もマヤ様に気があるのかな? にっしっしっし」


「お…… おい。将来四人とも私の給仕係になるって話はあるけれど、そこから先は考えてないぞ」


「えー 私だけでも嫁にもらって下さいよお」


「うーん……」


 私は話をそこから濁して、一人でお風呂へ入った。

 エリカさんはうるさいからモニカちゃんに預けている。

 私が風呂から上がった頃、モニカちゃんは服を着て食事を部屋まで持って来てくれていた。

 美味しそうなトマトシチューだったので、またモニカちゃんと「あーん」しながら食べていたら……


『むっきー!! 今日も見せつけてくれちゃってえぇぇ!! 私も食べたいい!!』


 なんて駄々をこねるもんだから、ペンダントをシチューに沈めるフリをしたら……


『ごめんなさいごめんなさい! 熱いからやめてえぇぇぇ!!』


 だってさ。ペンダントになっても熱いのはわかるんだな。

 ぐぬぬと悔しがるエリカさんのペンダントを横に置いて、美味しく頂きました。


---


 女王と夜伽(よとぎ)の時間。

 何を考えているのか、女王が着けてるランジェリーは花輪の紐みたいなオープンブラとショーツで肝心なところが丸見えなんだが、あれはロベルタ・ロサリオブランドではなくロレナさんのセンスだろう。

 私を興奮させたいのか、そういう努力は惜しまないのだな。

 一度、ベージュのおばさんブラとぱんつを履かせてみたい。


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