第二十二話 エルミラさんと武器防具屋で
2026.3.10 全体的に見直し、加筆修正を行いました。
今回はやや変態チックな主人公です。
今日は前に約束した、エルミラさんと出かける日だ。
パティにそのことを話すと、正妻の余裕のような表情で了解してくれた。
エルミラさんと私もボタンシャツとスラックスという軽装なので、遠目から見ると二人とも男に見えるだろう。
まず屋敷から貴族向けの商店街を歩いてみるが、あちこちで淑女の注目を浴びる。
間違いなくエルミラさんにであり、決して私にではない。
何故ならばスサナさんと歩いた時やビビアナと買い物をしたときもそんなことがなかったからだ。
エルミラさんはメンズ服の専門店へ入って行く。
いくら彼女がイケメン女子でも、そっちの店を利用するものなのか。
スラックスをいろいろ見て、それを自分に当てて丈を会わせているけれど――
脚が長い! 丈を調整する必要が無いというか、むしろ丈が足りないくらい。
羨ましい…… 典型的な日本人体型の私ではそんなこと絶対に有り得ない。
「私はサイズもメンズのほうが合っていて、種類も多いから気に入っているんだ」
「昔は給仕服以外にスカートを履いたことがあるんですか?」
「学校の制服ではスカートだったけれど、プライベートではこういうスラックスを履いたりパンツスタイルが多いねえ」
制服姿を見たかったなあ。
彼女の容姿では、誰かが見てるロ◯・ギガ◯ティアより凄いかも知れない。
だが、この国の学生服はセーラー服ではなく、パティが通うマカレーナ女学園のようにほぼブレザーだそうだ。
「女の子にモテたんじゃないですか?」
「私は平民だけれど十五歳から侯爵家に仕えていて、閣下の助力でパトリシア様と同じマカレーナ女学院へ三年間通っていたんだ。
そういうわけで、こんな身なりだから女の子がたくさん寄ってくるんだけれど、男性に興味が無いってわけじゃないんだよ」
その言い方だと、男性も女性もイケる意味にも取れるが……
ま、まあ…… 男性に興味があるなら良かった。
「誕生パーティーでもたくさん女の子が集まっていましたもんねえ。――あ、あの時貴族の息子に睨んだときは格好良かったですよ。一時はどうなるかと」
「あのバカ息子は最近あちこちで評判が悪いので目を付けていたんだ。
十四、五歳のくせにで自分の屋敷にいる若いメイドを慰み者にして、辞められたという噂もある。
去年も呼んだ時は何も無かったけれど、今年は案の定やってくれたよ。
侯爵には報告してあるから、何らかの音沙汰はあるかも知れないね」
そんな雑談をしながらの買い物だったが、私は替えのシャツとパンツを買っただけだった。
元々気さくな彼女ではあるし、男友達と一緒に遊びに出かけてるような気楽さがあって楽しい買い物だった。
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「マヤ君をちょっと連れて行きたい面白いところがあるんだ」
「へぇー どんなところだろう?」
そう言う彼女に期待して着いていくと、武器・防具屋であった。
店構えこそ高級ブティックのようであるが、RPGではお馴染みの武器屋と防具屋が目の前に!
最初の町の周りで弱いモンスターを倒しまくってお金を貯めて、やっと弱い剣を買って安心した思い出があったなあ。
この世界に来てからしばらく忘れていたよ。
「むぉぉぉぉぉ! すげえよ!」
店の壁にはズラッと見本の剣や斧、弓矢などが飾られており、トルソーという簡易マネキンのようなものに鎧が装着され展示されている。
如何にも某有名RPGようなものもあって、ワクワクする。
「喜んでくれたようで良かった。私設の討伐隊の連中や騎士団が個人的に買っていくが、美術品として貴族も買い物していくんだよ」
エルミラさんが一人で見てまわりたいというので私も一人で店内を見ていると、有名RPGのデザイン画で見かけたような武器防具がたくさん並んでいた。
実用重視なので無駄に派手だったり奇抜なデザインのものは無いようだ。
ビキニアーマーも無かったし、ミスリルやアダマンタイトで作られた品はありますかと店の人に聞いてみたら、なんですかそれはと困った顔で言われた。
店内のある一角には日本刀のような格好いい刀が展示してあって、『花水木』、『胡蝶蘭』、『山茶花』とローサさんが持っていた刀のように花の和名がついている刀が並んでいる。
欲しい…、欲しいけれどどれも他の剣と比べてずば抜けて高く、白金貨一枚と金貨何枚の値段なので無理して買えない。
「ぉーぃ、マヤ君、ぉーぃ」
エルミラさんがどこかで呼んでいる声がすると思ったら、試着室からだった。
カーテン越しに話しかけてみる。
「エルミラさん、どうかしたんですか?」
「自分で脱げなくなったから、中に入って手伝って欲しいんだ……」
「えっ? 何がどうしてそうなったんですか?」
「男性用の防御強化ボディスーツを試着してみたんだけど……」
はひ?
そろっとカーテンを開けて入ると、身体にピチピチ張り付いている黒くて薄い布地のボディースーツを着ているエルミラさんの姿があった。
「胸はなんとかなりそうだけれど、お尻がどうもまずくなって……」
「あの…… スーツの下は下着だけなんですよね?」
「う、うん…… スポーツ向けのショーツだからちょっと際どいんだ…… でも、マヤ君なら大丈夫かなと思って……」
さすがのエルミラさんでも顔が赤くなっている。。
元の世界ではDTじゃないから狼狽えることはないのだが、こんな美女の裸を見てしまうことになるなんて、彼女の気持ちがよくわからないから喜ぶ前に不安になる。
マヤ君ならって、心を許しているのか、男として見ていないのかどっちなのだろうか。
「腕からゆっくり外していくので慎重に……」
両腕を外したところで、薄手の白いブラが現れた。
レースが無く無地で実にシンプル。
本来こんなボディースーツは全裸になって着るものだけれど、試着はそうもいかない。
白い肌が綺麗…… それより女の人のちょっとミルクっぽいイイ匂いがする。
「エルミラさん、大丈夫ですか?」
「は、恥ずかしいけれど…… よろしく頼むよ……」
スンスン―― 鼻をくすぐるエルミラさんの肌の匂いが気になって仕方が無い。
彼女の匂いは強めでこのまま嗅いでいると癖になってしまいそう。
スンスン―― いかん、嗅ぎすぎたらバレてしまう。
抱きついてクンカクンカスーハースーハーしてみたいが、そんなことをしたら一発で嫌われてしまう。
私は手を腰にまわしてお尻の引っかかりに気をつけ、ゆっくりとスーツを下に下ろす。 わっ 確かに際どい。アスリート用の生地が薄い白のTバック。
これは私にも刺激が強すぎる……
彼女のお尻はとても良い肉付きで、だらしがないと表現するにはかけ離れている、プリッとした素晴らしい形をしていた。
エルミラさんは恥ずかしさのあまり、目を強く瞑っている。
早く終わらせてあげたいけれど、数センチの目前にぱんつがあるこの状況――
顔を埋めてスーハーと深呼吸したくなるが、ここで理性を失うわけにはいかない。
――何とか我慢して、足まで下げて無事にボディースーツを脱ぐことが出来た。
この状態でカーテンを開けると、外に他の客がいる。
結局着替えが終わるまで私は試着室に入っていたが、なぜか着る手伝いもした。
「どうしよう。ボディースーツがちょっと伸びてしまったんだけど――」
「もしかしたら私が着られるかも知れない」
その後、私が試着してみたらぴったりだったので、思ってたより安かったし私が買うことにした。
エルミラさんが身につけていた……と思うとドキドキする。
後でクンクンしたら……
いや、これでは私がムッツリから変態へジョブチェンジしてしまう。
「マヤ君には迷惑をかけちゃったね……」
「いいえ、仲間だしいつも世話になってるし…… その…… エルミラさん綺麗でしたよ」
「マヤ君ったらもう!」
照れたのか、エルミラさんはそう言って私の背中をポンと軽く叩いた。
兄貴分みたいな存在の彼女であるが、やっぱり女の子なんだなあ。
少し遅くなった昼食。
近くにあった食堂で、パエリアを二人で分け合って食べた。
鶏肉と野菜中心の、元の世界で言うバレンシア風パエリアのようでとても旨かった。
食事を終えてミルク多めのコーヒーを飲んでいると、エルミラさんが話しかけてきた。
「君はあの時何もしなかったけれど…… 正直言うと少し怖かったんだ…… 私はあまり男性に慣れていないしね」
「あの場でそういうことをしても公平じゃない。私の考えは男女が性的に愛し合う時はお互いがちゃんと気持ちを解き放てる時だと思ってるんです」
「ありがとう…… 君のことがもっと好きになったよ。えっ あぁ…… 人間としてだよ。あははははは」
「私もエルミラさんのことが好きですよ」
「うううっ……」
エルミラさんはまた顔を赤くして照れていた。
この人がこんなに可愛らしい人だとわかって、今日は一緒に出かけて良かったなあ。
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屋敷へ帰ると玄関近くの庭でメイド服姿のスサナさんと出くわし、にたぁっと笑っていた。
「お二人さんおかえりー おやおやぁ? エルミラぁ、なんかいいことあったんですかねえ?」
勘がいいスサナさんは、エルミラさんのいつもと違う表情を察し、いつものように揶揄ってくる。
「な、何もないからなっ」
「んーふふふっ わかりやすいねえ。いいなあー 私もそういうのに肖りたいよ。うひひひっ」
スサナさんは意地悪な笑い方をしながらあっちへ行ってしまう。
彼女も女の子だし、そういうことを何と思っているのか知らないがイチャイチャしたい願望があるのだろうか。
「じゃあエルミラさん、また明日の朝ね」
「マヤ君、今日はありがとう。また明日!」
その場で私たちも分かれる。
いつも厳しい早朝訓練が楽しみになってくるよ。
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自分の部屋に帰って、ベッドへバタンとゴロ寝する。
今日の試着室ではヤバかったよな。
今晩もいつものように一人で悶々するため、試着室での出来事を思い出してエルミラさんのぱんつをスーハーしている妄想をする。
あのイイ匂いが癖になりそうで、また彼女の間近でクンクンしてみたい。
うあーっ 本当に変態になってしまう!
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数日後にパティから聞いた話。
エステバン伯爵がバカ息子を連れて、侯爵閣下の執務室で土下座をして謝ったという。
未遂だから侯爵からのお咎めは無かったが、パティもその場に呼ばれており、伯爵が「父ちゃん情けなくて涙が出てくるわ」みたいな勢いではっちゃけている息子をその場でぶん殴ったという。
当分は大人しくなりそうで安心したよ。




