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第二十二話 エルミラさんと武器防具屋で

2023.10.18 微修正を行いました。

 今日は前に約束した、エルミラさんと出かける日だ。

 パティにそのことを話すと、正妻の余裕のような表情で了解してくれた。

 エルミラさんも私もボタンシャツとスラックスなので、遠目から見ると二人とも男に見えるだろう。


 まず屋敷から貴族向けの商店街を歩くが、あちこちで淑女の注目を浴びる。

 間違いなくエルミラさんにであり、決して私にではない。

 何故ならばスサナさんと歩いた時やビビアナと買い物をしたときはそんなことがなかったからだ。

 エルミラさんはメンズ服の専門店へ入っていった。


「私はサイズもこっちのほうが合っていて、種類も多いから気に入っているんだ」


「昔は給仕服以外にスカートを履いたことがあるんですか?」


「学校の制服ではスカートだったけれど、プライベートではこういうスラックスを履いたりパンツスタイルが多いねえ」


「女の子にモテたんじゃないですか?」


「私は平民だけれど十五歳から侯爵家に仕えていて、閣下の助力でパトリシア様と同じマカレーナ女学院へ三年間通っていたんだ。

 そういうわけで、こんな身なりだから女の子がたくさん寄ってくるんだけれど、男性に興味が無いってわけじゃないんだよ」


「誕生パーティーでもたくさん女の子が集まっていましたもんねえ。

 あ、あの時貴族の息子に睨んだときは格好良かったですよ。

 一時はどうなるかと」


「あのバカ息子は最近あちこちで評判が悪いので目を付けていたんだ。

 あの年で自分の屋敷の若いメイドを慰み者にして、辞められたという噂もある。

 去年も呼んだ時は何も無かったけれど、今年は案の定やってくれたよ。

 侯爵には報告してあるから、何らかの音沙汰はあるかも知れないね」


 そんな雑談をしながらの買い物だったが、替えのシャツとパンツを買っただけだった。

 元々気さくな彼女ではあるし、男友達と一緒に遊びに出かけてるような気楽さがあった。


---


「マヤ君をちょっと連れて行きたい面白いところがあるんだ」


 期待して着いていくと、武器・防具屋であった。

 

「むぉぉぉぉぉ! すげえよ!」


 RPGではお馴染みの武器屋と防具屋が目の前に!

 最初の町の周りで弱いモンスターを倒しまくってお金を貯めて、やっと弱い剣を買って安心した思い出があったなあ。

 この世界に来てからしばらく忘れていたよ。


「喜んでくれたようで良かった。

 私設の討伐隊の連中や騎士団が個人的に買っていくが、美術品として貴族も買い物するんだ」


 エルミラさんが一人で見てまわりたいというので私も一人で店内を見ていると、有名RPGのデザイン画で見かけたような武器防具がたくさん並んでいた。

 実用重視なので無駄に派手だったり奇抜なデザインのものは無いようだ。

 ビキニアーマーも無かったし、ミスリルやアダマンタイトで作られた品はありますかと店の人に聞いてみたら、なんですかそれはと困った顔で言われた。


 店内のある一角には日本刀のような格好いい刀が展示してあって、『(はな)(みず)()』、『()(ちょう)(らん)』、『()(ざん)()』とローサさんが持っていた刀のように花の和名がついている刀が並んでいる。

 欲しい…、欲しいけれどどれも他の剣と比べてずば抜けて高く、白金貨一枚と金貨何枚の値段なので無理して買えない。


「ぉーぃ、マヤ君、ぉーぃ」


 エルミラさんがどこかで呼んでいる声がすると思ったら、試着室からだった。

 カーテン越しに話しかけてみる。


「エルミラさん、どうかしたんですか?」


「元々男性用で防御強化のボディスーツを試着してみたんだが、自分では脱げなくなったから中に入って手伝って欲しいんだ」 


 はひ?


 そろっとカーテンを開けて入ると、身体にぴっちり張り付いている黒くて薄い布地のボディースーツを着ているエルミラさんの姿があった。


「胸はなんとかなりそうだけれど、お尻がどうもまずくなって……」


「あの…… スーツの下は下着だけなんですよね?」


「う、うん…… マヤ君なら見られても大丈夫かなって……」


 さすがのエルミラさんでも顔が赤くなっている。。

 元の世界ではDTじゃないから狼狽(うろた)えることはないのだが、こんな美女の裸を見てしまうことになるなんて、彼女の気持ちがよくわからないから喜ぶ前に不安になる。

マヤ君ならって、心を許しているのか、男として見ていないのかどっちなのだろうか。


「腕からゆっくり外していくので慎重に……」


 両腕を外したところで、白いブラが現れた。


「エルミラさん…… 大丈夫ですか?」


「は、恥ずかしいけれど、よろしく頼むよ……」


 鼻をくすぐるエルミラさんの肌の匂い……

 いかん、これは女性独特の香りだが彼女のは強めで良い匂い過ぎる!

 私は手を腰にまわしてお尻の引っかかりに気をつけてゆっくりとスーツを下に下ろすと、飾り気が無いスポーツタイプのような白いぱんつを履いていた。

 彼女のボディは、アスリートのような肉付きで美しい。


 エルミラさんは恥ずかしさで目を強く瞑っている。

数センチ目前にぱんつがあって、顔を埋めてスーハーと深呼吸したくなるが、ここで理性を無くすときっと関係が崩れるだろう。

 そして足まで下げて無事にボディースーツを脱ぐことが出来た。


 この状態でカーテンを開けると外に他の客がいるから、結局着替えが終わるまで私は試着室に入っていたが、なぜか着る手伝いもした。

 ボディースーツがちょっと伸びてしまった気がするがどうしようかなと、私が試着してみたらぴったりだったので、高くなかったし私が買うことにした。

 エルミラさんが身につけていた…と思うとドキドキした。

 この時ばかりは、私もムッツリから変態へジョブチェンジしたかと思ったよ。


「マヤ君には迷惑をかけちゃったね……」


「いいえ、仲間だしいつも世話になってるし……

 その…… エルミラさん綺麗でしたよ」


「マヤ君ったらもう!」


 照れたのか、エルミラさんはそう言って私の背中を軽く叩いた。

 やっぱり女の子なんだなあ。


 少し遅い昼食に、近くのお店でパエリアを二人で分け合って食べた。

 鶏肉と野菜中心の、元の世界で言うバレンシア風パエリアのようでとても旨かった。

 食事を終えてミルク多めのコーヒーを飲んでいると、エルミラさんが話しかけてきた。


「君はあの時何もしなかったけれど…… 

 正直言うと少し怖かったんだ……

 私はあまり男性に慣れていないしね」


「あの場でそういうことをしても公平じゃないし、私の考えは愛し合うならばお互いがちゃんと気持ちを解き放てる時だと思ってるんです」


「ありがとう…… 君のことがもっと気に入って好きになったよ。

 えっ あぁ、人間としてだよ。あははははは」


「私もエルミラさんのことが好きですよ」


 エルミラさんは顔を赤くして照れている。


 この人がこんなに可愛らしい人だとわかって、今日は一緒に出かけて良かったなあ。


---


 屋敷へ帰ると玄関近くの庭でスサナさんと出くわし、にた~っとした表情をしている。


「おかえり~ おやおやぁエルミラ。

 なんかいいことあったんですかねえ?」


 勘がいいスサナさんは、エルミラさんのいつもと違う表情を察してからかう。


「な、何もないからなっ」


「んーふふふ。わかりやすいですねえ。

 いいなあ~ 私もあやかりたいですよ」


 スサナさんは意地悪な笑い方をしながらあっちへ行った。


「じゃあエルミラさん、また明日の朝ね」


「マヤ君、今日はありがとう。また明日!」


---


 今日はヤバかったな。

 目前にあったエルミラさんのぱんつをスーハーしてる妄想をして、今晩もいつものように一人で悶々してしまった。

 エルミラさんの肌の匂いがたまらん!

 汗っかきなのかなあ。


---


 数日後、エステバン伯爵がバカ息子を連れて、侯爵閣下の執務室で謝って土下座をしたという話をパティから聞いた。

 未遂だから侯爵からのお(とが)めは無かったが、パティもその場に呼ばれており、伯爵が「父ちゃん情けなくて涙が出てくるわ」みたいな勢いではっちゃけている息子をその場でぶん殴ったという。

 当分は大人しくなりそうで安心したよ。


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