表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
227/388

第二百二十二話 可愛いチビにゃんたち

 明日から王都マドリガルタにてしばらくの間滞在するので、今日は休みを取って午前はビビアナと、午後はパティとカタリーナさんとでデートをすることになっているので忙しい。

 ゆうべはビビアナとベッドの上でにゃんにゃんフェスティバルを行ったので、私の隣にはビビアナがヨダレを垂らしながら眠りこけていた。

 布団の中で私たちは素っ裸である。


「おい、ビビアナ起きるんだ。」


「うニャぁ…… うぅ……

 何でこんなところにめん棒(料理で使う木の棒)があるニャ?」


「ちがーう! そりゃ俺の棒だ!」


「あ~ マヤさんおはようニャ。男の人はこれでパンをこねるかニャ?」


「出来るわけないだろ。ルナちゃんが来ると面倒くさいから一旦部屋へ帰ってくれないか」


「あい~」


 ビビアナは寝ぼけて、朝で元気になっている分身君を握りしめていた。

 彼女も休みで朝はゆっくりしたいだろうが、ルナちゃんに見つかるとまた変な顔をされるので、さっさと起こして部屋へ戻ってもらった。


---


 早朝訓練と朝食を終え、朝からビビアナと一緒に東の市場へ食材の買い出しに出掛ける。

 その食材を使い、ビビアナの家でビビアナとビビアナママが料理を振る舞ってくれるそうだ。

 以前ビビアナとは月に一度くらい出掛けていたが、忙しくて今回は何ヶ月かぶりになってしまった。

 プライベートでビビアナの服装はいつもシャツとショートパンツなので、私も合わせてシャツとスラックスの庶民スタイルだ。

 エリカさんのペンダントはこの服装だと合わないのでスラックスのポケットに入れているが、何も見えないのは我慢してもらおう


 ビビアナを背負って飛んでいけば十分足らずで東の市場へ到着する。

 彼女は私の腕にべったり巻き付くようにくっついて歩いており、人間と耳族のカップルは珍しいので通行人にチラチラと見られている。

 人間の男が耳族の娼婦を相手にするのは普通だが、愛し合っても生まれてくる子供が耳族になってしまうのは抵抗がある人が多いらしい。

 私は耳族の子供でもかまわないと思っているし、ビビアナの弟妹(ていまい)であるチビにゃんたちが可愛すぎて今日会いに行くのも目的の一つである。

 チビにゃんたちは私のことをちゃんと覚えててくれてるかなあ。

 市場では芋やインゲン豆など野菜各種、(いわし)(たら)っぽい魚も買ったので、今日のお昼ご飯は魚中心の料理らしい。

 ちなみにマカレーナは港町から五十キロほど内陸にあるが、魔法で魚を冷蔵または冷凍して運ばれてくるので美味しく食べられるのだ。

 料理を作る時間があるのでゆっくりしていられず、ビビアナの実家へ向かった。


---


「ただいまニャー!」


 ――バタバタバタバタバタッ


「あ! ネエネエが帰ってきたニャ!」


「ネエネエ!!」


 到着し玄関へ入るなりチビにゃんたちが奥の方から駆け寄ってくる。

 初めて会ったときは二歳だったけれど、今は四歳になるかなあ。

 ビビアナの実家へは時々遊びに行っていて今日で五回目だけれど、行く度に大きくなっている。


「アー! アー! アー! マヤーーーーーーーー!!!!」


「マヤーーーーーーーー!!!! キャーーーーーーーー!!!!」


「やああ! セビー! フェリス! 元気だったかぁ!?」


 チビにゃんたちは私を見つけるなり大騒ぎ。

 私は両腕で二人を抱き寄せた。

 私のことを覚えてくれてて良かったよ……


「ありゃりゃ。あてしも久しぶりなのに、マヤさんは大人気だニャあ」


「むニュー」


「ちゅうー」


 両側からチビにゃんたちが私のほっぺたにキスをした。

 クッ も、もう…… むっひょーーーー!!

 可愛すぎて萌え死にしそうだ……

 爺ちゃんが、久しぶりに会った孫が目に入れても痛くないほど可愛いというのがよくわかるよ。

 私も中身はそんな歳になってしまったか……

 ガルシア家のアベル君とカルロス君も可愛いけれど、耳族の子供の可愛さは格別な上に人間の四歳より見た目は幼い感じだ。


「あらあらマヤさん、いらっしゃい。こんなにたくさん買ってきたニャ~

 うう…… 美味しそうなお魚だニャあ…… じゅる」


「こんにちはママさん。今日もよろしくお願いします」


 猫らしくママも魚は好物である。

 ビビアナのママは三十代半ばなのにどう見ても二十代にしか見えないうえにビビアナにそっくりすぎる。

 しかも今日はミニスカだからラッキースケベが期待できるか。うひょひょ。


「これだけ材料があるなら作るのも大変だニャ~

 ビビアナ、早速作るから手伝うニャ」


「あいあいママ~」


「んじゃあ、いつものようにチビにゃんと遊んでますね」


「お願いニャ~ ニャふふ」


 ママとビビアナは食材を持って台所へ向かい、私は両腕でチビにゃんたちを抱きかかえて奥の部屋で一緒に遊ぶ。

 子供と遊ぶのは体力がいるから、爺の身体じゃなくて良かったよ。


「キャーーーハハハハハハハハッッ」


「アハハッ うふふっ 面白いニャ~ うわー!」


「ぐるぐるぐるだぞ~!」


 私は弟のセビーを抱えて飛行機の体勢にさせてぐるぐる回り、妹のフェリスは私の頭によじ登って乗っかっている。

 あとグラヴィティで浮かせてやれば奇声をあげて大喜びだ。

 外では目立つのでやめておく。

 二時間も遊んでいたから私もチビにゃんたちもくたくたでお腹が空いた頃にママから声が掛かった。


「みんなご飯ニャ~!」


 チビにゃんたちはそれを聞いてトテチテタと走ってダイニングルームへ向かい、私は後からゆるりと行く。

 昭和の日本の一般家庭でもよく見かけるような普通のテーブルと椅子である。

 そこにはずらりと料理が並べられていた。

 まず最初に目に付くのが(いわし)の焼き魚。完全に日本と同じで懐かしい。

 それからコロッケ。何が入っているか聞いてみたら、芋と(たら)の身が入っているらしいから考えただけでも美味そうだ。

 インゲン豆の天ぷらに、野菜と(たら)のリゾット!

 私の記憶を辿(たど)ると、どうやらポルトガルの家庭料理に近い。

 日本人の口にも合いそうでどうしようもないほどの食欲が湧いてくる。


「ママと頑張って作ったニャ! 心して食うニャ!」


「うーん 美味しそう過ぎてたまらないよ」


「それじゃあみんなで頂きますニャ」


「「「「「いただきま~す!」」」」」


 席はママとチビにゃんたち、対面にビビアナと私に分かれている。

 パパはお仕事、上の妹のエリアナちゃんは学校で私がよく平日に行くもんだからあんまり会えていない。


 料理の味はどれも美味しすぎて、特に鱈のコロッケは感激したから今度またビビアナに作ってもらおう。

 焼き魚は普通にナイフとフォークで食べたが、箸が欲しくなる。


「あっ」


「セビー 落としたらダメだニャ。お行儀良くニャ」


 セビーちゃんがフォークに刺さっていたコロッケの欠片(かけら)を床に落としてしまった。

 ママがそれを拾おうとしゃがんだ時、太股の間から白いぱんつが時間にして一秒足らずだがはっきり見えた!

 ラッキースケベの神が舞い降りた!

 ――って神って誰?

 まさかサリ様が覗いてていたずらしたのではあるまいな?

 しかし良いものを見せてもらったわ。

 今朝は娘の裸を見たばかりなのに、パンチラのロマンにはかなわない。


 食事を終えてチビにゃんたちは眠たそう。

 さっきまであれほど大騒ぎをしていたから疲れたのだろう。

 ママが片付けを始め、ビビアナと私はチビにゃんを抱っこして部屋へ連れて行き寝かせた。


「マヤさん今日もありがとニャ。

 この子たちがこんなに人間のマヤさんに慣れてくれるなんてすごいことだニャ」


「可愛いし、俺は普通に遊んでいるだけなんだけれどな」


「もし…… もしニャ。マヤさんとあてしの子供が産まれても安心だニャ」


「あ…… ああ、そうかい。ははは」


 ビビアナは照れながらそう言った。

 彼女は適当な性格だけれど、はっきりと子供が欲しいという気持ちを聞いたのは初めてだった。

 もっとも、彼女の気持ちが遊びで付き合っているのではないとわかっているし、私も行動に責任を持っているつもりだから、今はどう応えたら良いかわからず濁したけれどいずれきちんと話し合わなければいけない。

 今日の所はビビアナをそのまま実家に置いて、次のデートの待ち合わせ場所まで向かう。


---


 貴族向けの商店街にある広場、初代領主ラファエル・デ・アギラルの像の前に降り立った。

 ちょっと時間が早かったのか、パティとカタリーナさんはまだ来ていない。

 初代領主のお家は何百年も前に断絶しており、ガルシア家が領主になったのも百年ほど前だ。

 ガルシア侯爵の母上は早い内に馬車の事故で亡くなり、先代領主の父上もパティが産まれたころに病で亡くなってしまったという不幸な経歴がある。

 侯爵がアイミに道の整備を優先的にさせているのも馬車事故が減るようにということだろう。

 現在のガルシア家は皆が元気なのが幸いである。


「マヤさまーーっ お待たせしました!!」


 おっ ようやくパティたちが来たようだ。

 二人はクレープっぽいものを手に持っており、さっき私に叫んだ後もムシャムシャと頬張っていた。買い食いか……

 マカレーナ女学園では二人とも優等生でカタリーナさんは生徒のお手本である生徒会長だったのに、卒業したらこれかよ。まったく(たる)んどる!


「由緒あるマカレーナ女学園卒業の淑女(しゅくじょ)が買い食いとは感心しないなあ」


「あっ ああ…… これはさっき新しいお店を見つけて美味しそうでしたからつい……」


「そ そうですわっ このクレープが美味しいのがいけないんですっ」


「はぁ…… まあいいや。そこで座って食べなさい」


「「はい……」」


 二人は少しシュンとしており、銅像の近くにベンチがあるので二人に(すす)めた。

 私もそのベンチの隅に座る。

 パティは緑基調のチェックで膝丈スカートの可愛いドレス。

 カタリーナさんは対照色である赤基調なのだがひらひらのミニスカドレスだ。

 風でも吹いたら絶対にぱんつが見えそうなのに、やっぱり卒業後デビューしちゃったんだろうか。

 カタリーナさんはもう二十歳になるんだからそろそろ落ち着いて欲しい。


「でもそのクレープ美味しそうだね」


「でしょー!? いちごとクリームのバランスが絶妙で、チョコレートソースのほんのり苦みがたまらないんです!」


「おお そうかあ」


 パティが興奮気味で目をキラキラさせながら語っているが、意外に普通だな。

 日本のクレープを食べさせたら卒倒するかもしれん。

 今度ジュリアさんかビビアナに作ってもらおう。

 ルナちゃんもパンやお菓子作りを勉強しているみたいで、今朝食べたパンはルナちゃん特製でちょっと形は変だったけれど美味かったから、クレープも出来るかな。

 私は料理が出来ないので、あくまで監修である。


「ああああ 美味しかったですわあ~」


「本当に。次に出会えるのはいつなのかしら」


 数分もしないうちに食べ終えたが、二人とも相変わらず甘い物が好きなんだな。

 いつかお茶会にクレープを並べてびっくりさせてやろう。


「さあマヤ様、パトリシア様、参りましょう」


「はいっ」


 パティとカタリーナさんが先に立ち上がる。

 すると……

 ぶぶっ カタリーナさんのミニスカの後に折り目がついて、ぱんつが半分見える!

 フルバックの薄いピンクのぱんつなのだが、あれは私のデザインじゃないな。

 ここで声を掛けるのも何なので、グラヴィティを使ってそっとスカートを直した。

 初めてこんなことやってみたが、うまくいったな。

 魔物を倒すために使うより、魔法の平和利用はとてもいいことだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ