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第二百十九話 三人と三人

 ルナちゃんは、私との二人っきりドキドキタイムをエリカさんに覗かれていたのを知ってしまい、私のベッドでゴロゴロ転げ回っている。

 裸になって淫らになっているわけではないのだが、普段の自分とは違う姿を他人に知られることになれば恥ずかしいだろう。


『ルナちゃんごめんよぉ。そんなに恥ずかしがるとは思わなかったよ』


「……」


 ルナちゃんのゴロゴロは()んだが、枕に伏せて()ねてしまった。

 汚れないよう靴はいつの間にかご丁寧に脱いである。

 エリカさんはいちいち口が過ぎるから反省して欲しい。


『そんなに枕や布団にべったりしてると、後でマヤ君がルナちゃんのニオイを嗅いじゃうよ』


「ちょっと、おい!」


 エリカさんが大変失礼なことを言っているが、ルナちゃんはそれにピクッと反応してしばらくした後に起き上がる。

 私の前にちょこんと立つと、おもむろに両腕の袖や給仕服の胸の部分を引っ張ってクンクンと匂いを嗅いでいた。


「あの…… マヤ様。私、臭くないですか?

 匂いには人並みに気をつけているつもりですが、貴族様みたいに香水は着けていないのでマヤ様がどう思っているのか考えたこともなかったです」


「臭いと思ったことは無いよ。女の子っぽい香りがしてる」


「ホッ…… それなら良かったです」


 無難に答えたが正直言うと、給仕服はパンやクッキーを焼いた匂いが染みついているし、たぶんオリーブオイルリンスを使っているだろうから美しい黒髪のツインテールからほのかにフルーティーな香りがする。

 エルミラさんやヴェロニカみたいなミルクっぽい匂いはしていない。

 直接ルナちゃんの肌をクンカクンカしたことがないのでそれ以上のことは何も言えない。

 それよりも私が後で枕や布団を本当にクンカクンカすると思っているのか?

 私に対するルナちゃんの認識は変態主人なのか、ホッと安心していたのはその変態主人が自分の匂いを嗅いでも構わないという意志なのか。

 そう思うとルナちゃんも大概だし、私に感化されてしまったのかも知れない。


「そういうわけで、エリカさんは邪神との戦いで肉体は死んでしまったけれど、魂だけは魔法でこのペンダントに乗り移っていたんだ。

 私がそれに気づいたのもつい最近でね。話が出来るようになってびっくりしたよ」


『そうよそうよ。よく寝たわ~』


 エリカさんは最近目覚めたことにしているが、だったらお風呂や飛行機のことを黙っててくれていたら良かったのに。


「そういうことでしたか……

 世の中は不思議なことがたくさんあるんですね」


「まだ喋れたり喋られなかったり不安定だし、そもそも死んだ人間が生き返るなんて前代未聞だから慎重にしていきたい。

 このことはルナちゃんにしか話していないんだ。

 シルビアさんとの子とも合わせて、絶対秘密にしていて欲しい」


「かしこまりました。約束します」


「うん。じゃあ、下がってよろしい」


「その前に、ベッドのシーツを崩しちゃったんで換えますね」


「いや、汚れてるわけじゃないし洗濯物が増えるだけだからこのままでいいよ」


「やっぱり匂いを嗅ぐんですか?」


「……」


 当然だ。特に枕カバーにはルナちゃんの香りが染みついていることだろう。


『あっひゃっひゃっひゃっひゃ!! ウケるぅぅ!!』


「やっぱり引き出しの中へ閉じ込めたほうがいいのかな。

 うっかり忘れちゃわなければいいけれど」


『あああああそれだけは勘弁ををををを!!』


「そうそうルナちゃん。言い忘れていたけれど、エリカさんの魂が入っているこのペンダントは私からの魔力供給でエリカさんが生きていられるんだ。

 だからあまり離れたり時間を置いてしまうとエリカさんは本当に死んでしまう。

 ペンダントは身に着けているか部屋の中へ置いてその範囲内でしか動けない。

 私がこの目で見て聞いていることはエリカさんには筒抜けになるから、そこは心得て欲しい」


「えー 他に誰か魔力がある人に預けることは出来ないんですか?」


 それはもっともな質問だ。

 私じゃないといけないと勝手に思い込んでいたから、ルナちゃんは魔法が使えないのによく気づいたよ。


『最初ペンダントを渡したときマヤ君にセットしたからマヤ君からの魔力供給でないといけないと思うんだけれど、お師匠様から詳しいことを聞いていないから本当にそうか私にもよくわからないんだ』


「魔女も適当だなあ。じゃあ魔力の相性が良い誰かだったらというのも確証が持てないわけなんだね」


『魔力の相性ねえ。ガルシア家だと魔法が使えるのがパティちゃんとアマリアさん、ジュリアちゃん、ビビアナね。

 パティちゃんとだったら…… つぼみが開きかけている花びらのように瑞々しく……

 うっひうっひうっひひ』


「私、魔力を持っていなくて良かったです」


「パティの裸をエリカさんのいやらしい目に晒すことはさせないぞ!

 私だって見たことが無いのに……」


「へへーん、もうお風呂場で見ちゃったもんねー ふひひ」


「うっ…… 羨ましい」


「何言ってんですか二人とも!!」


「あーでもたぶんダメだわ。あの子やアマリアさんは光属性が強いから私と相性は良くないよ。

 闇属性を持ってるジュリアちゃんしか選択の余地がないわね。

 ジュリアちゃんって私よりエッチなんだよね。むふ」


「……」


 ルナちゃんはそれを聞いて黙り込んでいる。

 ジュリアさんはアレの時に声が大きいし、お一人様の時もそうだろう。

 きっと悩ましい声がルナちゃんの部屋にも聞こえているに違いない。

 仲良しの友達が淫らになっていればショックだ。

 もしかしたら、ジュリアさんが私の部屋へ来ているときにも……


「ルナちゃん、ジュリアさんをここへ呼んできてくれないかな」


「はい。でも今は夕食を作っている最中で忙しいと思いますが」


「そうか…… ならばまた今度で良いよ」


 その間にエリカさんの声がまた聞こえなくなってしまうかもしれないが、どうしても急ぐわけでは無いからまたの機会を考えよう。

 料理はそれだけ大事である。


---


 いつも通りに夕食が終わった。

 あれからまたエリカさんの声が聞こえなくなってしまい、非常に不安定である。

 いつになったら好きな時にしゃべられるようになるのかわからないが、アスモディアへ行くためにはシルビアさんの出産と飛行機の完成を待たなければならない。

 アスモディアへ行く人員も考えなければいけないが、今は頭がいっぱいなので後にする。


 今晩はジュリアさんとビビアナが作ってくれたトマトシチューが特に美味しかった。

 ジュリアさんを無理に呼ばなくて良かったよ。

 今日も疲れたし、よく眠れそうだ。

 食堂を退出して部屋へ戻ろうとしたら、ヴェロニカが廊下の陰で待ち伏せており呼び止められてしまった。


「おい。マヤ……」


「おおっ!? びっくりした。どうしたんだヴェロニカ?」


「あ、後で私の部屋へ来い。エルみごにょごにょ……」


「え? 何だって?」


「とにかく十時になったら私の部屋へ来い。いいな!」


「あ…… あぁ」


 ヴェロニカは言い終えると、スタスタと自分の部屋へ戻っていった。

 もしかしなくても、この前のリベンジか?

 エルミラさんと相談したみたいだから、何かうまく出来る方法を思いついたのだろうか。

 それにしても女友達同士で初体験はどうしたら良いのか話し合う二人もすごい。

 今晩はとうとうヴェロニカと結ばれることになるのか。

 もう一度お風呂に入って綺麗にしておこう。むふふ


---


 十時になり、ヴェロニカの部屋の前だ。

 わかっているけれど、緊張するな……


 コンコン「マヤです」


「入れ」


「失礼します…… ぶっ え!?」


 部屋に入り、ベッドに腰掛けているのが二人見える……

 ヴェロニカは勿論だが、なんとエルミラさんがその隣に座っている。

 エルミラさんは普通にシャツとショートパンツだが、ヴェロニカはタンクトップであれはどう見てもノーブラだよな……

 しかも下はレディースブリーフになっていて、これは前回の続きからというつもりなのだろうか。


「あの…… どうしてエルミラさんが?」


「私はエルミラと一緒にいると緊張が解れるのだ。

 だからおまえと契りを結ぶのを手伝ってもらうことにした。

 エルミラは何度もおまえと契りを結んでいるというから、打って付けの相手だろう」


「う…… エルミラさんはそれでいいの?」


「うん。親友が悩んでいるなら私は快く受け入れるよ。

 私はマヤ君もヴェロニカ様のことも大好きだから」


 ヴェロニカは顔を赤くして照れており、エルミラさんと手を繋いでいた。

 もうこの二人で結婚しちゃいなよと思うが、それこそヴェロニカのスキャンダルになってしまう。

 私がこの二人と結婚すればこの国の法では合法で一緒にいられる。

 彼女らがそこまで考えているのかわからないが、二人が私のことを好きなのならば何も問題は無い。

 三人での相思相愛とは夢のような関係だ。

 ところでヴェロニカとエルミラさんとは肉体的な繋がりはあるのだろうか。

 一緒にお風呂へ入っているとは聞いたが、それ以上は何となく聞きづらい。

 だが答えがこれからわかるかも知れない。


 ヴェロニカがその格好なら、私も服を脱いでぱんつだけになる。

 今日はフルバックの黒いビキニパンツにしてみたぞ。

 私とヴェロニカはベッドの上で向き合い、ヴェロニカの真後ろにエルミラさんが座っている。


「マヤ、キスをしてくれ」


 私は無言でヴェロニカに寄り手を繋いで、前回と同じ手順でキスを始めた。

 するとエルミラさんはヴェロニカの腰を後から抱いて、彼女の肩にキスをするように顔を寄せた。

 ヴェロニカは完全に私とエルミラさんに挟まれている格好だ。

 三人での行為は女王とシルビアさんの時と、セシリアさんとエルミラさんとで経験があるが、そもそもセシリアさんの時はそのうちに入るのだろうか。(第百二十一話参照)


 ヴェロニカと時間を掛けてたっぷりキスをした。

 心なしか彼女は前回より積極的になり、舌の弾力ある触感に私もうっとりしとても気持ちよく出来た。

 まさかエルミラさんと練習だなんて…… ないよね。


「さあ、ヴェロニカ様。上を脱ぎましょう」


 ヴェロニカは両手を挙げて万歳をし、エルミラさんが後からスルッとタンクトップを脱がす。

 するとパティが飼ってるおっぱいプリンより素敵なものがぷりんぷりんぽよよ~んと姿を現した。

 まだ恥ずかしいのか、ヴェロニカはすぐに両腕で胸を隠してしまう。


「ダメですよ、ヴェロニカ様。

 とても綺麗なんですからお見せになられたらどうですか?」


「ううう……」


 ヴェロニカは顔を真っ赤にしてそっぽを向いている。

 エルミラさんが後からヴェロニカの両腕を手に取ってゆっくり(ほど)こうとしたらあっさりと自分で両腕を解いて二つの美しい膨らみを見せてくれた。

 谷間は体術訓練の時によく見たことがあっても、全体をまじまじと見るのは今が初めてだ。

 さすがに若いだけあって張りがあるが、女王の膨らみと酷似しているのは親子だな。


「むむむむ…… そんなに見るな……」


「とても綺麗だから見入ってしまったよ」


 ヴェロニカはさっきと変わらずそっぽを向いたままだ。

 そりゃ前に魔物と戦った後に鎧を脱いだらぷりんと胸がさらけ出しちゃったら、大声でキャーと叫ぶくらい恥ずかしがっていたからな。

 それからを思うとずいぶん心を許してくれたものだ。


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