第二百十五話 ルナちゃんと二人で
ラウテンバッハへ向かい、工場広場に駐機している飛行機へルナちゃんも搭乗する。
彼女を工場へ連れて行くのは初めてだったので、飛行機を見て目を白黒させていた。
「へぇ~ こんな大きな物が鳥のように空を飛ぶなんて不思議ですね」
「乗ってからもっと驚くと良いよ。ふふ」
異世界転生ストーリーで現代地球の物を持って来て、主人公がその世界の人々を驚かせて優越感に浸っているシーンをたくさん見かけるが、私は記憶にあったものを復元したこの飛行機と、ランジェリーだけである。
地球のランジェリーが普及して国中の女性が喜んでくれたのは嬉しいが、飛行機は膨大な魔力使用量の関係で普及は実質不可能だ。
それはともかく、ここネイティシスでは衣食住のインフラにはそれほど困っていないし、食べ物は美味しい。
大きな文明開化をもたらしてやろうという気はあまり無い。
私たちは操縦席に座ろうとすると、一つ問題に気づいた。
「身体を固定するためにベルトを着けてもらうんだけれど、しまった……
ルナちゃんはロングスカートだったね」
股間にもベルトを通さないといけないので、スカートが邪魔になるのだ。
彼女がズボンを履いているところを見たことなかったから、ズボンを履いてもらおうという意識が無かった。
「ああっ 大丈夫です! スカートをこうやってたくし上げたら……」
おおっ 久しぶりの太股と、かぼちゃパンツまで見える!
ヴェロニカと違い少しぷよっとした太股はとても美味しそうだ。
「マヤ様と二人だけだからこんなことしてるんですよ……」
ルナちゃんは照れ顔でそう言った。
良かった…… しばらくこんなことが無かったし、嫌われてるかもと思ってた。
可愛い太股を眺めながらかぼちゃパンツの股間にベルトを通し、ベルト全体の装着完了。
そう言えばロベルタ・ロサリオブランドではかぼちゃパンツを作っていないけれど、構造がよくわからないし他のブランドと棲み分けたほうが良いので、特に手を出していない。
この国ではかぼちゃパンツの普及率がまだ高いので、あえて作る必要無いだろう。
「じゃあ今から飛ぶよ。身体が押しつけられるくらいスピードを上げるから、五分くらいしっかり座っててね」
コクコクと不安そうな顔で頷くルナちゃん。
これから初めてジェットコースターに乗る中学生のようだ。
飛行機は垂直離陸し、そこから急加速で前進して空高く上がっていった。
「ひぇぇぇぇ!! 何ですかあこれぇぇぇぇ!!
うううっ ちょっとぎぼぢわるい……(気持ち悪い)」
「あとちょっとだから我慢してね。
下に見える景色がすごく綺麗だから、それ見てるといいよ」
「ふえぇぇぇぇ!! お家や畑があんなに小さく見える!
あっ マヤ様! お屋敷が見えます!!」
ルナちゃんは子供のようにはしゃいでいる。
せっかくなので巡航飛行へ入る前に、マカレーナ上空を旋回飛行してみた。
機体をルナちゃん方に傾けた方が、下がよく見えるからだ。
巡航飛行中も、地球の旅客機のように雲の上を飛べるわけではないでずっと地上の景色が見えている。
それをルナちゃんは目に焼き付けるように、夢中になって見ていた。
私はそんなときにチラッと褐色の太股を観賞する。
若い子はスベスベ肌でいいなあ。
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約二時間後、マドリガルタ上空に到着したので旋回飛行ををする。
ルナちゃんにとっては八ヶ月ぶりだろうか。
歳を取ったら八ヶ月なんてあっという間だが、若い子には懐かしかろう。
「わあ! 王宮だ! 上から見てもすごく広いんですね!」
「向こうに見えるのがガルベス家だよ。庭園を入れたら王宮より広いかもね。」
私が指を指して、少し見えにくいがガルベス家がある場所を示すと、ルナちゃんは身体を乗り出すように見ようとする。
ベルトで固定されているためほとんど動けないが、おっぱいがベルトに押しつけられて大変なことになってそう。
「本当ですね! 国内屈指の大貴族だけあって、遠くでも目立ちますね!」
ルナちゃんは航行中の二時間、日常雑談と景色を眺めている間はほとんどしゃべりまくっていた。
ちょっと疲れたけれど久しぶりに二人だけで話せたと思う。
そして王宮広場の隅っこへ着陸し、早速玄関へ向かった。
「わあ、ずっといた王宮なのにお客様扱いされてるなんて不思議です!」
それもそのはず、王宮でずらっとメイドさんたちが並んで出迎えられるなんてルナちゃんには今まで無かったことだからだ。
ルナちゃんはキョロキョロメイドさんの列を見渡し、誰かを探している。
「あっ モニカちゃん!」
「あれれえ? どうしたのルナ!?」
「ルナちゃん、せっかくだからみんなに会っていきなよ。
私はいつもの部屋で休んでいるから。
ああそれとモニカちゃん。
ルナちゃんと一緒に食事をするから二人分用意してくれないかな?」
「いいんですか!? ありがとうございます!」
「了解ですぅ!」
列の中にモニカちゃんを見つけた。
ルナちゃんはペコリとお辞儀をし、モニカちゃんは元気よく返事する。
メイドさんの列の真ん中でこんなことやってるので、年増のメイドさんにジロッと睨まれた。
今後は自重しよう。
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一人でいつもの部屋へ。
しばらく女王の相手をしてあげていないので、溜まっていることだろう。
娘のヴェロニカにはああなって欲しくない。
朝早くからいろいろあって二時間かけて飛んできたから疲れた。
昼食の時間まで余裕があるのでベッドへ横になる。
うつらうつらしながら小一時間もすると、ルナちゃんが部屋へやってきた。
コンコン「失礼しまあす!」
「やあ。この部屋では久しぶりな感じだねえ」
「うふふっ そうですね。部屋も相変わらずですね。
そうそう。言伝があって、シルビア様からのお手紙を預かってきました」
「シルビアさん? ありがとう」
私はルナちゃんから手紙を受け取ると、早速中身を読んでみた。
――内容は、今日から数えて三日後にシルビアさんのご両親に会って欲しいということだ。
その日にエスカランテ家へ赴くわけだが、飛行機で直接行ったほうがいいのかな。
返事を書いてモニカちゃんにでも出すのを頼んでおこう。
シルビアさんのお腹の子は私の子なのに、架空の男との子供ということにしてシルビアさんと結婚するという複雑な話になっているんだが、シルビアさんのことだからうまくご両親に話してくれていると思う。
出産予定日まであと半月も無い。
今からもう緊張してきた。
「あのぉ、何と書いてあるか伺ってよろしいですか?」
「ああ。シルビアさんが亡くなった兵士の子を妊娠していて、それで私がお父さんになるという話は前にしたと思うけれど、三日後にシルビアさんのご両親へ挨拶しに行くことになったんだ」
「そういうことでしたか。それにしてもマヤ様の周りは女性ばかり増えますね……」
「はは…… 生まれてくる子が男の子だと祈ったら良いよ」
本当にそうだ。
生まれてくる子の性別はどちらでも良いけれど、男の子だったらどういう風に育てよう。
魔法はともかく子供にまで高い攻撃能力が付与されるとは思えない。
シルビアさんのことだから、男女どちらにしてもきっと品の良い子へ育つようにするだろう。
さて、あと一時間ほどで昼食時間なのだが、朝の訓練後は風呂へ入らず着替えただけなので、少々汗でべたついている。
久しぶりに、ルナちゃんにお風呂で洗ってもらおうか。
「あの…… お願いがあるんだけれど、お風呂に入りたいから久しぶりにどうだろう?」
「え? そうですね…… かしこまりました! 喜んで!
ただいま準備します!」
「ありがとう……」
妙にウキウキ張り切ってお風呂へ入る準備を始めるルナちゃん。
私の身体に興味があっても性欲が強い子ではないと思うのだが、単に私のお世話がしたいだけなのだろうか。
お風呂にお湯が溜まり、ルナちゃんは白いキャミソールとかぼちゃパンツの姿になった。
「あ…… あんまりジッと見ないで下さいね」
前は堂々としていたのに、久しぶりだからなのか顔を赤くして恥ずかしがっている。
Fカップはあろう胸の谷間は目の保養になるが、気のせいか少し大きくなった?
そうか。少しぷよっとしてるから太ってて恥ずかしいのか。
ビビアナやジュリアさんが美味しい料理やお菓子をたくさん作ってくれるからなあ。
ある意味幸せ太りだろう。
以前のように手慣れた感じで服も下着もあっという間に全部脱がされ、私は全裸状態でルナちゃんに押されるように風呂場へ入った。
「じゃあお背中を流しますからね」
垢すりタオルで丁寧に洗ってくれるから気持ちいい~
見えない場所は自分でタオルを擦ると雑になるから、モニカちゃんに洗ってもらう時も含めてとても有り難い。
なんと贅沢なサービスだろうと、絶対にこの世界に来て良かったと思えるいくつかの内の一つだ。
「次は前を向いて下さい」
垢すりタオルでシャコシャコと腕、胸、お腹、太股、脚の順で擦り、一旦終了。
次は手で石鹸を泡立てて、分身君を手洗いしてくれている。
「ああ…… うん その…… なんだろう。こうなっちゃって」
「大きくなるのは仕方が無いです。わかっていますから。にこっ
そうででした! この前起こすときに叩いてしまいすみませんでした!
今更ですけれど、もう大丈夫ですか?」
「大丈夫…… だよ」
「それは良かったです。腫れてはないようですね」
「別の意味で腫れそうだよ」
シャコシャコシャコ……
「ああっ だからってそのまま続けないで…… ちょっ あっ」
「きゃっ」
とうとうルナちゃんの前で……
昨夜と今朝のヴェロニカの時に不発だったからずっとムズムズしていたので、ルナちゃんに洗ってもらっただけで暴発してしまった。
「初めて見ました……
噂には聞いていましたが、これが男性の生命の神秘なんですね……
わっ まだ出てるっ すごいっ」
分身君は彼女の好奇心によるおもちゃになっている。
すごく惨めだ……
まあ、大人の階段をまた一段昇ったんだ。良かったね。
残った頭と顔を洗ってもらい、湯船に浸かる。
ああ…… スッキリした後にお風呂へ入るのは二度気持ちいい。
「ねえ、ルナちゃんも一緒に入らないの?」
「やだマヤ様のエッチ!
私は先に上がりますから、ごゆっくりなさいませ! うふふ」
何かはぐらかさせてしまった。
結婚しないと裸は見せないよってことかな。
身体を洗ってくれた女の子には、モニカちゃんや、セレスのロレンサちゃんたちみたいな子もいるし、いろんな考えがあるんだね。
お風呂から上がると、ルナちゃんが新しい下着と服を準備してくれていた。
持って来たあの大きなカバンから……
そうか。わざわざマカレーナから着替えを持って来てくれたんだ。
この部屋にも着替えのストックがあって、汚れたらいつもモニカちゃんかフローラちゃんが回収して洗ってくれているから特にいらなかったんだが、まあいいや。
「さあマヤ様。ぱんつ履いて下さい」
「はい……」
コンコン「失礼しまあす!」
「あっ」
「あれれれれえ? お邪魔だったかな? にっひっひっひっ」
「モニカちゃん! 違うの! これはお仕事よ!
あなたもエリカ様にやってたでしょ!」
ルナちゃんが私にぱんつを履かせるタイミングで、昼食の準備が出来たら呼びに来たと思われるモニカちゃんがいつも通りのノリで部屋へ入って来た。
ああそうか。ルナちゃんは、モニカちゃんがお風呂の世話までしたりベッドの上でのことなんて知らないから、エリカさんの世話のことを言っている。
今モニカちゃんのことがルナちゃんに知れたら関係がこじれてしまいそうなので、頼むからいらないことが言わないでよぉ……
「私もお仕事だからさあ。手伝ってもいい?」
「ダメ! マヤ様のお世話は専属の私がするから!」
「おお~ 怖い怖い。食事の用意が出来たら呼びに来ただけだよ。
マヤ様。いつもの個室ですからね。
では失礼しましたあ! ふひひひっ」
モニカちゃんは用件を済ませたらさっさと退室していった。
余計なことを言われなくて良かった……
「すみません。モニカちゃんがいらないこと言って……
さあ、ぱんつを履きましょう」
また着替えの途中で全裸のまましばらく放っておかれたが、ルナちゃんは機嫌を直して着替えを手伝ってくれた。
しかし着替えひとつで過去にもいろんなことがあったなあ。
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昼食を用意された個室。
ルナちゃんと二人だけで食事をすることは滅多に無い。
側に控えているメイドはいないので、気兼ねなく食事が出来そうだ。
「良いんですか? 私がお世話をしなけばいけない立場なのに……」
「今日はルナちゃんもお客さんだから遠慮しなくて良いよ。
じゃあいただきます」
「い、いただきます!」
ルナちゃんが驚くのもそのはず、牛ヒレ肉のステーキをメインにした豪華な料理が並んでいる。
王宮の賄い料理でもさすがに余った食材でこれは出来ない。
女王たちもたぶん同じメニューを食べていておこぼれをもらったような感じもするが、美味しい物を食べられるのだから感謝しよう。
「もぐもぐ…… うう…… 感激です。
こんなに柔らかくて美味しいお肉が食べられるなんて……」
半泣きでステーキをバクバク食べている。
ルナちゃんをマドリガルタまで連れてきた甲斐があったもんだ。
彼女については専属従者なのにマカレーナで放っておき過ぎたので、今後はそうならないように反省したい。




