第二百二話 その後の日常 其の十九/エステラちゃんのお尻
アリアドナサルダの執務室にて。
ロレナさんとカロリーナさんが試着した美しい下着姿を拝見し、悶々とする。
二人とも私の前で何の躊躇も無く服を脱いだことには驚いたが、ここは仕事として真面目に答えた。
その後は私が妄想をしていたようなムフフな展開も無く、二人は服を着てカロリーナさんは店内へ戻っていった。
今度は猫耳カチューシャに猫しっぽぱんつの試作品を着けてくれるのだろうか?
こりゃたまりませんなあ。
昼食は、昨日モニカちゃんと行ってきたファーストフード店へ。
あの時に客である貴族のおっさんが食べていた唐揚げとビールがどうしても気になって、私も食べてみたくなったからだ。
唐揚げとビール、そして牛肉の時雨煮みたいなものを挟んだパンを注文。
キャベツとレタスたっぷりの時雨煮サンド、揚げたての唐揚げ、そして冷たいビール!
ああ…… 昼間っから酒が飲める幸せ。
野菜のシャキシャキ歯ごたえにしっかり味が付いた時雨煮サンドを頬張り、ビールをゴクゴク。
じゅわっと口に広がる熱い唐揚げのジューシーさを味わい、ビールをゴクゴク。
プハーッ 美味い…… 幸せだ……
たまには一人で気兼ねなく酒を飲むのもいいもんだ。
軽く酔ってフラフラと飛び、王宮の自室に帰る。
モニカちゃんには王宮内でお茶やお風呂以外は通常の仕事をしてもらっているので、一人でドテーンとベッドに寝転ぶ。
アーテルシアが浄化し、エリサレスが撤退してから魔物は出てこなくなったし、やる仕事はランジェリーのデザインを考えることしかない。
基本デザイン料の他に、売り上げに対するバックマージンまでくれるので、大金持ちというほどでもないが遊んでいてもお金が入ってくるのだ。
飛行機が完成すればパイロットとして女王らを運ぶ任務につくだろう。
小さな屋敷でいいから、将来はみんなと仲睦まじく暮らせたらいいな。
軽く昼寝をしたので、デスクに向かい真っ白なノートを広げ、ランジェリーのデザインを考えることにする。
カロリーナさんの下着姿も良かったけれど、ロレナさんも良かったなあ。うへへ
三十代半ばであの瑞々しい肌とスベスベな太股、挟まれたら気持ちよさそうだ。
あの下着の下はどうなってるのだろう……
って、前にロレナさんがインファンテ家のドレスルームで転んで、穴あきショーツなのにぱっくりM字開脚をしてしまい、しっかりと見てしまっていたんだった。
なんて綺麗だったのだろう。思い出すと股間に飛び込んで深呼吸したくなる。
そうだ。穴あきショーツはアリアドナサルダのブランドでもすでにたくさんあったからロベルタ・ロサリオブランドでは作らなかったけれど、少し別の方向で新しいものを考えてみるか。
今までのものは見た目ですぐ穴あきショーツとわかるエグみがあったが、一見普通のショーツのようなものにしてみよう。
ぐふふ…… ロレナさんとカロリーナさんのおかげでインスピレーションが湧いてくる。
――こんなものか。
紐パンをヒントに、紐をスルッとひっぱったらパックリご開帳。
これはエロいし男性パートナーにも喜ばれるだろう。むひひ
コンコン「失礼しまあす。マヤ様、お茶の時間ですよぉ」
「ああ、もうそんな時間か」
モニカちゃんが、お皿にいっぱいお菓子を乗せて部屋に入ってきた。
ノックをしても私の返事を確認せず、遠慮が無い。
仮にベッドで一人悶々をしていた時に入ってきても、多少揶揄ってくるかも知れないが誰かに言いふらすことはしないので、彼女のことはそれくらい信頼している。
「またニヤニヤ気持ち悪い笑い方をしてましたよね。
私のエッチな妄想をしてたんですか?」
「いや、ちょうどランジェリーのデザイン画を描き終えたところなんだよ」
「どれどれ、ちょっと見せてくれますか?」
モニカちゃんはお菓子の皿をテーブルに置いてから私の後に立ち、座っている私の後頭部にわざとおっぱいを押しつけて、デザイン画のノートを覗き込んだ。
「うわー やらしー
こんなことを考えるのマヤ様ぐらいなものですよ。
これを私に履かせるつもりで考えたんですか?」
「え? ああ、まあ…… うん」
実はカロリーナさんが旦那さんといたすシチュエーションを妄想して出来上がったとは言えない。
ロレナさんとインファンテ伯爵でもいいけれど、あの人たちの年齢ではちょっと可愛すぎるデザインなので、大人の穴紐パンも後で考えよう。
「にひひ…… じゃあ商品化されたら私にプレゼントして下さいね」
「たまにボツになることもあるから、まだわからないよ」
「象さんぱんつを売ってるようなお店がこれをボツにするわけないじゃないですか。
くれなかったら、私買いに行くし」
確かにロレナさんのことだからこれはきっと採用されるだろう。
それにしても、モニカちゃんも大概だな。
ぱんつをコレクションしてるだけある。
とりあえず一息ついて、モニカちゃんがお茶を入れてくれた。
彼女も一緒にクッキーをポリポリと食べている。
さっき自分で焼いてきたらしく、お皿に山盛りだ。
こんなの全部食べきれるはずもなく、明日以降のおやつになる。
湿気らないよう、余ったクッキーはモニカちゃんがいつの間にか取っておいた空のお茶缶に入れて退室していった。
私は再びデザイン画を描くことに専念する。
---
夕食をシルビアさんと済ませたが、今晩は何故か女王への夜伽が無いようだ。
まだあの日じゃないと思うが、まあいいや。
時間が遅くならないうちに、懸念していたエステラちゃんのことについて今晩は話をしに行く。
午後九時、この時間エステラちゃんは自室で勉強か読書を始めている頃だ。
少し遅くして午後九時半にポルラス家へ飛んでいく。
――そしてポルラス家の五階窓。
エステラちゃんの部屋は灯りがついているから間違いなく在室している。
部屋に家族が一緒ということはまずあり得ないという話だ。
私は窓ガラスを軽く叩く。
カツンカツン カツンカツン
すぐに窓が開き、エステラちゃんが顔を出した。
薄い水色のワンピースパジャマを着ている。
私は白のブラウスに黒いスラックスの軽装だ。
「やあ」
「マヤ様、来てくれたんですね。さあお入りになって」
まるで私が来ることを察していたかのように笑顔で迎えてくれた。
ああ良かった……
もし放ったらかしにしてマカレーナへ帰っていたらどうなっていただろう。
私は部屋に入り、彼女に勧められてお姫様ソファーに座る。
前回と同じくオレンジブロッサムティーを入れてくれた。
彼女は隣に座るが、まだくっついては来ない。
「本当は昨日来てくれるかと思って、待っていたんですよ」
「ああ、ごめんよ。女王陛下のお使いがあってね」
夜伽だから間違いではない。
もちろん本当のことは死んでも言えない。
「そう…… でも今晩は来て下さって良かったわ。
もしかしたらマヤ様に嫌われてもう相手にしてくれないかと思ってた……」
「嫌うことはないよ」
「私、大人げないのはわかってた。でも悔しかったの。
マヤ様があんな子に誑かされているみたいで、イライラしてきたから……」
「給仕のモニカちゃんはあれで優秀だし、いい子だよ。
それにあんな子といっても、君より一つ年上だからね」
「王宮で給仕をしているくらいだから優秀なのは察しますけれど、やっぱりあの子苦手だわ!」
エステラちゃんはキッと私の顔を睨みながらそう言う。
今晩はそれを始めに言いたかったのだろう。
モニカちゃんみたいなギャルを、清楚で気が強いエステラちゃんが合わないのはわかる気がする。
人の合う合わないがあるのは当然だし、昔やっていたお昼のバラエティー番組で大御所タレントが言っていた友達の友達は皆友達だというわけにはならない。
「前に、もし私と結婚したら私が他の妻たちと仲良くしてても我慢するとか、みんな性格が良いだろうから大丈夫だと君は言っていたんだが、早くも現実は違っていたのがわかったね。
彼女とは結婚するかわからないけれど、私が屋敷を建てたら給仕係として雇うことは決めている。
一緒に生活するんだから、嫌でも顔を合わすことになるんだよ」
「それは……」
エステラちゃんは前にそれを言ったことを忘れていたのかすぐ答えることが出来ず、下を向いて黙りこくってしまった。
二人とも陰湿な子じゃないからイジメは無いと思うが、このままだと顔を合わせてもそっぽを向くことぐらいはありそうだ。
好きな人が、苦手なタイプの異性と自分より仲良しだから悔しいという単純且つ面倒くさい理由なのが今回の問題点だとはっきりしたわけだが、普段は直接結びつく二人でも無いし、私が屋敷を建てるまで当分の間は顔を合わすことも無いだろう。
慌てないで二人の成長を見守っていたら考え方が変わるかも知れないし、それとも何かしたほうが……
そもそもつっかえているのはエステラちゃんのほうで、モニカちゃんのほうがあの時のことを気にすらしていないはず。
エステラちゃんとは個人的にデートをしていないのにモニカちゃんが私にベタベタしたいたことを目撃し、そして身体の関係があるのを知ってしまったことが今回の直接の原因だ。
二人でデートをするのは彼女の親御さんが男女関係に厳しい人なのでハードルは高いし、今ここでの身体の関係はエステラちゃんの心の準備が出来ていないから無理は出来ない。
例え本人の希望があっても勢いでいたしてはエステラちゃん自身の気持ちが晴れやかになるとは限らない。
そういう展開になっても、据え膳食わぬは男の恥という考え方は安直だ。
思いが強い子なので、きっとレイナちゃんとレティシアちゃんより難しい子だろう。
どうしたら良いものか……
「でもマヤ様…… そんな後のことは私にはわからない。
今はこうしてマヤ様を独り占め出来ているのがとても嬉しいわ。
もっと仲良くなりたい」
エステラちゃんは姫ソファーで座っている距離を徐々に縮めすり寄る。
ほら来た。
くっついたら振りほどいても良い結果にならない。
彼女はそういうところで繊細なのだ。
「君の気が済むまでは一緒にいてあげるけれど、朝までというのは勘弁してね」
「わかりました。うふふ」
エステラちゃんは笑顔になって、座りながら私の腰に片腕をまわしてしがみつく。
そして私の方に頬を寄せる。
エステラちゃんの女の子の匂いが鼻をくすぐる。
私も片腕を彼女の腰に手を回した……
と思ったらそこはお尻だった。
「やだ。マヤ様ったら……」
「ごめん」
私は手を彼女の腰にかけたが、彼女は私の手を掴んだ。
「いいの。私のお尻を触って」
エステラちゃんは掴んだ私の手を自らお尻に当てた。
彼女の行動に少し驚いたが、私は揉んだり撫で回したりせず、そのままベタッと手を当ててお尻の感触を楽しんだ。
スレンダーな子なのでお尻も小さめで、無駄にブヨブヨしておらず適度な柔らかさだ。
決してアマリアさんのダイナマイトなお尻が無駄にブヨブヨしてるわけではない。
アマリアさんのお尻は私の中で史上最高だ。
お尻を枕にして寝られたらどんなに幸せだろうか。
それでパジャマ越しであるが、パンティーラインの感触がわかった。
フルバックのぱんつだ。
もしや先日エステラちゃんが買ったロベルタ・ロサリオブランドのものではあるまいな。
そう思うと興奮してきた。前は透かし彫りのレースなんだぞ。
「男の人にこんなにお尻を触られたの、初めて。
ちょっと緊張しちゃうわ」
「君のお尻は可愛いと思うし、とても綺麗な形をしているよ」
「マヤ様にそう言われると嬉しいわ。
でもそれは私のお尻をよく見てらしたってことですね。あはは」
「もう私のことをわかってきているはずだから、ズバリそういうことだよ」
「マヤ様は女の人のお尻が大好きなんですよね。
レイナやレティシアのお尻を見ていたのもわかりましたよ」
「ははは…… やっぱりバレていたか」
ムッツリなのは自覚しているので今更だが、視線を向けているのがこうもあからさまにバレてしまっていると、初対面の女性を相手にしているときは印象が悪くなってしまう恐れがある。
なのに嫌われないのはサリ様の力の影響かも知れないなあ。




