第十八話 大蜂の魔物襲来
2023.10.17 大幅に加筆修正しました。
相変わらず魔物は数日に一度の間隔で、主に飛行系の魔物が街を襲ってくる。
エリカさんと一緒にいることが多いので、魔法の演習がてらに応戦した。
「さあ行くよぉ! どんどん来い!!」
エリカさんはそう言いながら氷結魔法を使って飛んでくる大量の大きな蜂型の魔物を一瞬にして凍らせてしまう。
あれだけの威力なら窒素の融点である-210℃以下になってるだろう。
ただ凍らせるだけなので、威力が大きくても炎の魔法や風の魔法みたいに周りの建物に被害が及ぶ心配が無い。
後で騎士団に魔物の死体を片付けてもらうが、ドライアイスみたいに直接肌で触らなければ楽で良い。
最終的には郊外へ運んで燃やすらしい。
エリカさんは単独攻撃でも十分なので、私はスサナさんとエルミラさんの応援に向かう。
私も氷結魔法が少し使えるようになっているが、威力が低いのでこの蜂の魔物へ使うには実戦的ではない。
そういうことで、グラヴィティをかけて飛んでる魔物を重くし、墜落させてから首を落として処分する。
これはとても楽でいい。
距離があると魔法が届かないが、魔物から勝手に寄ってくるので問題無い。
スサナさんとエルミラさんと連携をとって私がどんどんグラヴィティをかけて彼女たちが落ちた魔物を退治する戦法は効率が良く捗った。
「やー! マヤさんがグラヴィティを覚えてから格段に楽になりましたよ。
落ちてきた魔物の首を落とすだけだから。ねえエルミラ!」
「本当にマヤさんがどんどん強くなって助かるなあ」
「エルミラ、じゃあ今度マヤさんとデートしてあげなよ。ふひひ」
「えっ? ええ?? どうして方向に!?」
スサナさんはそんな感じでエルミラさんをよく揶揄う。
彼女はエルミラさんを私にくっつけたいのか?
エルミラさんは私より背が高いし、イケメン女子だから憧れる存在ではあるが……
よし。一か八か誘ってみるか。
「じゃあお礼代わりでもないけれど、今度買い物にでも付き合ってもらえますか?」
「そ、そういうことなら私は吝かではないから…… よろしく頼むよ」
「やったあ!」
「ウッシッシ。マヤさん良かったねえ。
買い物の後は二人で熱いひとときを……」
「こ、こらあ! スサナあ!」
嬉しい……
とうとうエルミラさんがデートをしてくれることになった。
スサナさんが揶揄っている展開のようなことは無いと思うが、こんな格好いいお姉さんが街で私の隣を歩いてくれるだけでも夢のようだ。
戦いが終わったら早速デートプランを考えよう。
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そんな余裕をこいてるうちに、また魔物がやってくる。
今回はやけに多いな。
エリカさんは別の場所で戦っているので、三人で戦う。
「おっしゃあ! 行きますよぉぉ!」
「さあ行くぞ! マヤさんよろしく頼む!」
私はどんどんグラヴィティをかけて、蜂型の魔物がぼったぼったと道に落ちてくる。
民家の屋根に落としてもしょうがないのでそこはちょっと難しいけれどね。
二人だけでは大変な量だったので、私も手刀でバッサバッサと首を切り落とす。
パティが通っている学校はどうなっているのか心配になってくる。
彼女一人ならばこの程度は問題無いが、他の生徒を守り切れるかどうか。
これらの魔物は人がたくさんいるところに集まる性質なのがわかっているからだ。
「スサナさん、エルミラさん!
学校が気になるから行ってきます!」
「わかりましたあ!」
「おお、行ってらっしゃい!」
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パティが通うマカレーナ女学院。
スサナさんと分かれた現場から学校は距離があり、魔物を倒しながら急いで走っても十数分かかった。
やはりここにも蜂型の魔物がたくさんいたが、どうやら先生や生徒にも魔法使いがいるようで持ちこたえていた。
校庭にはパティがいる。
「パティ! 助けに来ました!」
「マヤさまっ!」
「パティ、みんなを校庭から避難させて下さい!」
「わかりましたわ!」
皆が校庭から逃げると、私はグラヴィティに少し細工をした魔法を魔物にかける。
グラヴィティで重力点を校庭の真ん中に作り、さらに魔物にグラヴィティをかけて落とし重力点に掻き集める。
「パティ! 魔物をフレイムアタックで燃やして下さい!」
「そういうことですね! それでは…… やぁぁ!!」
パティの大火炎魔法で、魔物をまとめて燃やし尽くしてしまう方法だ。
彼女は頭が良いからすぐに察してくれ、実行に移ることが出来た。
校庭は魔法の実技が出来るくらい広いので、周りに火が飛ぶこともないだろう。
「まあ! なんて素晴らしい魔法なのでしょう!」
「さすがですわあ! パトリシアさまぁ!」
「パトリシア様! こちらの殿方を紹介して頂けませんか!?」
校舎へ避難した淑女たちが窓から覗いており、そんな声が聞こえる。
パティが通う学校はお嬢様学校だ。
なんか私のことを言っている可愛い女の子がいるけれど、パティの性格だとご紹介してくれなさそう。
私とは全く縁が無い空間だけれど、もしかしたらお邪魔する機会が来るのだろうか。
憧れるなあ。
教室で深呼吸したらさぞ良い香りがすることだろう。
「パティ、他の学校も襲われているかも知れないから、手伝ってもらえますか?」
「わかりました! 急ぎましょう!」
私たちは近くにある一般の共学学校へ向かい、同じように魔物を片付けた。
あっという間だったので先生と生徒たちはびっくりしていたが、たくさんお礼を言われてその場を後にした。
ちょっと目立っちゃったかなあ。
騎士団や討伐隊も動いていたので、魔物は粗方片付いた。
今日の魔物襲来は、恐らく初めての災害級だということをパティから聞いた。
これからもっと魔物が多くなりそうだから、たくさんの魔法を早く習得しておきたいものだ。