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第百八十三話 飛行テスト 其の二

 ラウテンバッハの工場から、完成した飛行機のテストを行いマカレーナの街の上空二十メートルのところを飛んでいる。

 下に見える道を行き交う人々から「なんだあれ?」というように見上げられたり指をさされているが、ガルシア侯爵からの通達で大騒ぎというほどにはなっていないようだ。


 街を出たところでいよいよテスト本番である。

 推進力は私自身の魔力からなのでスロットルレバーは無く、操舵と減速、車輪の出し入れが魔道具としての扱いだ。

 マカレーナから西へ三キロほど離れた空中で一旦停止。

 そこからいよいよ揚力だけで飛ぶ。

 私が過去に作った模型飛行機の記憶だけを頼りに設計した、ラウテンバッハ製の飛行機。

 妙にはっきり記憶に残っていたのはサリ様の力のおかげなのか。

 それがこれから大空を飛ぼうとしている。


 車輪を出したままだったので格納する。

 ここから直接見えないが、動作OKと思う。

 これより風魔法の出力を上げる。


「後のお二人さん、これから上昇しますので座席にしっかり座っていて下さいね。

 加速すると身体が押しつけられる感覚で気分が悪くなるかも知れないので、そうなったら座席の前の網に備え付けてある袋に吐いちゃって下さい。」


「ひいぃ…、そんなこと初めて聞いたぞ。」


「馬車酔いみたいなものだろ。

 俺は今日、まだ食事していないから吐く物が無い。

 ハッハッハッ!」


 意外にオイゲンさんが弱気で、テオドールさんはどんとこいという感じだ。

 隣の座席のアイミは、ワクワクにやにやした表情になっていた。


『マヤ、早く飛んでくれ。楽しみだなあ。』


「それじゃあ行くよ。」


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオ…


 一般の旅客機が空港の滑走路から離陸するような感じで、一気に加速する。

 水平飛行から、機首を上げて上昇飛行に移る。

 本物の飛行機のように機内の気圧をコントロール出来るわけではないので、今回は上空数百メートルのところまでにする。


「うおおお! なんだこの下から突き上げる感じは!


「ぎえぇぇぇぇぇ!!」


『ハッハッハッ! うるさいジジイたちだな。』


 初めて文明に触れた人らしく、予想通りの反応だ。

 飛行機は時速二百六十キロぐらいのところで上昇を開始し、時速三百キロぐらいのところまで行ったらそこで巡航に移る。

 さすがに飛行機単体ではこのスピードでも機内の気圧がおかしくなってきたので、耳がツンとしてきた。

 こんなこともあろうかと、気圧コントロールの風魔法で機内を包んでおいたので調整して元に戻した。

 魔法の複数同時発動が出来ないと誰でも操縦が出来ないのだ。


 上昇開始してから数分。

 機体は時速三百キロの速度にも耐え、壊れそうな様子は無い。

 さすがラウテンバッハの技術だ。

 マドリガルタへ往復したときに使った馬車も頑丈で、一線を画した極上の乗り心地だったからな。

 飛行機はラフエルの上空に到達し、そこで旋回をしてみる。

 エルロンの動作も問題無い。

 下を見ると、ひと月ぶりにラフエルの街が見える。

 すっかり片付いて復興が進んでいるようだ。


『おー、あの街ではないか。すいぶん綺麗になったものだな。』


「おまえが壊したんじゃないか。」


『あれは私と違う何かがやったのだ。知らん。』


「えー…」


 アイミはアーテルシアの時にやったことを無かったことにしているのかよ。

 マカレーナでやってくれている償いの作業もそういうつもりでなく、アーテルシアが前に言っていた暇つぶしと同じなのかも知れない。

 何もしないよりいいが、困った色欲の神様だ。


 旋回を終えてマカレーナに向けて着陸態勢に入る。

 後ろを見たら二人とも静かになって、特にオイゲンさんは顔が真っ青だ。

 早く降ろしてあげた方がいいな。

 飛行機は降下しながらマカレーナの街に戻った。


---


 ラウテンバッハの上空で停止し、ゆっくり垂直着陸をする。

 下にはスタッフの人たちが手を振って出迎えてくれていた。

 トータルで四十分、揚力だけで飛んでいたのは十数分の短いフライトだったが、一先ず成功を収めるとが出来た。

 着陸後は、細かいところで機体が痛んでいないか検査をして、痛んでいれば見直す。

 二回目のテストまでは少し時間が空くだろう。


 オイゲンさんとテオドールさんは先にヨロヨロとタラップを降りた。

 スタッフたちが取り囲み拍手して出迎えてくれている。


「ああ… 空を飛ぶのがこんなに辛いとはな… おぇっぷ」


「俺たちゃ乗るのは当分ごめんだな。

 地上で工具を握ってるほうがお似合いだ。」


 うーん、実際に体感して不具合があれば直してもらうのが一番なんだが、巡航飛行になればコクピットから離れられるので私でも大丈夫だろう。

 オイゲンさんたちはよたよたと工場へ戻っていった。

 私とアイミがタラップから降りると、アンネさんが駆け寄って両手で私の手を握ってくれた。

 ゲルマン美人の人妻に手を握られるドキドキ感。

 向こうにいるスタッフの旦那はニコニコしてこちらを見ているが、私が邪な気分になっているのもつゆ知らず。


「マヤ様! 初飛行おめでとうございます!

 上手く飛べたでしょうか?」


「はい。上々な結果でしたよ。

 オイゲンさんたちは乗り物酔いをしてしまいましたが…」


「うふふ。あの人たちって馬車は作るけれど、馬車には普段乗らないですからね。

 アイミ様もお楽しみ頂けましたか?」


『うむ。自分で飛ぶより楽で速かったな。

 おまえも今度乗ってみるといい。』


「は? はあ…」


 アイミが空を飛ぶとは思っていなかったので斜め上の返答にアンネさんは困り顔。

 このマイペースな魔法幼女と一緒にいると、天才魔法使いにしても極端なことを言い出すことがあるのでヒヤヒヤする。

 私が空を飛べるのでびっくり仰天にはならないが。


 飛行機をまた整備してもらわなくてはいけないので、格納庫へ移動させた。

 オイゲンさんたちは格納庫の隅でぐったり座り込んでいる。

 この飛行機にも名前を付けたいけれど、完全に完成するまでに考えよう。


---


 一度屋敷へ帰って、今晩はラウテンバッハの皆さんと飛行機が離陸した工場の広場で、打ち上げのバーベキューパーティーだ。

 パーティは仮設のテーブルで立食形式。

 バーベキューといってもよく見るアメリカンな串焼きではなく、スペイン風バーベキューのトーラと呼ばれるもので、金属の網に肉を中心にウインナーや野菜を焼いて皿に盛って食べる。

 その他にパン類やフライドポテトなどのジャンクフードも用意される。

 材料や料理の多くはビビアナたちに準備してもらって、私がまとめてグラヴィティで浮かせて持って来た。

 アイミにも食わせてあげる条件で手伝ってもらった。

 パーティー開始の合図は、オイゲンさん。

 皆がビールジョッキを持っている。

 アイミはオレンジジュースだが、ビールを飲みたげな不満顔である。

 幼女の姿じゃさすがにヤバい。


「それではマヤさんの飛行機がテストに成功したことを祝して、乾杯!!」


「「「「「乾杯!!!!」」」」」


 実に簡単な挨拶でとても良い。

 日本にいたときは上司の長い挨拶でウンザリだった。

 乾杯の酒は、ブロイゼンから輸入してきた黒ビール。

 これがもうとてもコクがあって美味い!

 オイゲンさんとテオドールさんはいきなりがぶがぶ飲んでガハハと騒いている。

 乗り物酔いをするくせに酒豪なんだな。


 オイゲンさんに飲まされて酔いが回ってきたので席を外す。

 アイミが一人で勝手に食べていたので、私もそこで食うことに徹する。


「マヤさまぁ。お屋敷の食材はとても上等ですねぇ。

 肉が柔らかいし、とても美味しいですよぉ。

 ありがとうございますぅ。」


 ビールジョッキを持ってアンネさんが、私とアイミがいるところへやってきた。

 もう出来上がってしまい、白かった顔が真っ赤っかだ。


「お酒強いんですか? ほどほどにして下さいね。」


「大丈夫れすよぉ。ブロイゼンの人間はお酒大好きな人が多くて強いんれすう。」


 あ… こりゃダメなやつだ。

 アンネさんはジョッキを置き、テーブルに片脚だけかけて座るもんだからタイトスカートがずり上がってぱんつが丸見えである。

 何というラッキースケベ!

 ベージュでちょっとおばさんくさいが、それがいい!


「あら、どこを見てるんですかあ?

 こんなおばさんのを見ても楽しくないでしょお。」


 あっさりバレてしまった。嫌がってはいないようだ。

 隣にいるアイミは下からジロッと見上げてから、にやっとする。

 ちっとも幼女のいたいけさがない。


「いやあ、アンネさんはまだ三十前でしょう。十分お若いですよ。」


「うっふっふ うれしいぃぃー」


 アンネさんはよろめきながら私に抱きついた。

 ちょっと酒臭いけれど、大人の香水の香りがしてとろけそうだ。


「あああアンネさん、旦那さんがいるじゃないですか!」


「あの人はほらあ、向こうでまだオイゲンさんたちと大騒ぎで飲んでますよお。

 こっちのほうまで気づかないわあ。」


 それでもさすがにまずいので、身体から離した。

 もしこの場にパティがいたら激怒するだろう。


「じゃあねマヤさあん。楽しんで下さいねえ。」


 アンネさんはよろよろと旦那さんがいるところへ戻っていった。

 次に会うとき、どういう顔をしていけば良いのだろう。

 ぱんつを見たこと忘れていてくれないかな。


『おまえは女の方から卑猥なことが寄ってくるんだなあ。グビグビ』


「ああっ!! ビール飲んでる!」


 アイミは、アンネさんが飲みかけて忘れていったビールを豪快に飲んでいた。

 私の飲みかけのビールまでいつの間にか空になっている。

 いくら六百歳近い神でもアイミの姿ではビジュアル的にヤバい。


『ぷは-っ やっぱりジュースなんかより酒が美味いな。うんうん』


「頼むからその姿で飲むのはやめてくれえ。」


『誰もこっちを見ていない。ほれ、ビールをついでこい。』


 渋々と、私が飲むフリをしてビール樽からジョッキ二杯分をついできた。

 アイミはジョッキを二つとも受け取り、またグビグビと飲んでいる。


『ぷわぁぁぁ!! 今宵の酒は最高だ!』


 アイミは顔が赤くなく、まるで麦茶をごくごく飲むように黒ビールを飲んでいる。

 結局ビールをつぐのに五往復してしまった。

 あんな小さな身体のどこにビールが入っていくんだろうか。

 まるでうわばみのようだ。


 アイミは飲みに徹し、私は食に徹してお腹いっぱいになった。

 周りの人たちもぐったり酔って、座り込んで寝ている人もいる。

 明日はお店が臨時休業になったりしてね。

 パーティーはフェードアウトするようにお開きになった。

 アイミは全く酔っていない…


『ふわぁぁぁ 飲んだ飲んだ。今度はいつ飲ませてくれるのだ?』


「パーティーじゃ飲ませられないよ。今度は部屋で飲ませてやるから。」


『部屋じゃつまらん。やはり元の姿に戻ろうか。」


「ダメだって。もしかしたら前にどこかで誰かが見ていたかも知れないのに。

 おまえがアーテルシアだと知ってるのもガルシア家で数人だけなんだぞ。

 部屋で我慢してくれ。」


『はぁ… 酒も満足に飲めないとはな…』


 私とアイミはそんな話をしながら夜景の空をふわふわと飛んで帰った。


---


 屋敷に帰ると、起きている者はいるだろうが館内はひっそりしていた。

 もうそんな遅い時間である。

 自分の部屋に戻り、上着を脱いでベッドの上に置いた。


「ふぅぅ 食べ過ぎたな。朝までに消化できるだろうか。」


『ああ… 私も飲み過ぎた。おしっこしたい。』


「うおっ! 何で俺の部屋にいるんだ!?」


 一人で部屋へ入ったつもりが、アイミがいつの間にか入り込んで後にいた。

 おしっこって…

 まあ神様でも過去に苦い経験があるくらいだからな。


『今日はとても気分がいい。久しぶりにおまえと交わりたいぞ。』


「おいちょっと待て。さすがに子供とは出来ないぞ。」


『当たり前だ。おしっこしてから元の姿に戻る。』


 アイミは一旦部屋を退出し、トイレに行ってからすぐ戻ってきた。

 そして星の形の魔法少女ステッキを振るとアイミの姿はまた黒い霧に包まれ、ひと月ぶりにアーテルシアの姿がだんだんと現れた。


「裸じゃないか!」


『脱ぐのが面倒だ。さあおまえも早く脱げ。』


 黒い霧が晴れたらアイミはいきなり裸になっていた。

 相変わらず透き通るような白い肌で美しいが…

 気のせいか前よりエッチになっている気がする。

 そうか! 色欲の神になってたんだった!

 いったい何をされるんだろうと思いつつ、私も全裸になった。


『はぁ… はぁ… いいぞ。』


 アーテルシアはそのまま私に抱きつき、向こうから攻めの濃厚なキスを始める。

 だが私としか経験が無いから、あまり気持ち良くない。

 こちらからキスの反撃をする。

 あれ? アーテルシアの色欲って私が教えていることになるの?


『ううむむ…』


 アーテルシアがとろけそうになり、腰がガクッと落ちたのでお尻を支える。

 お尻のぷよぷよな感触が心地よい。

 たぶん尻の美しさは今まで見た女性の尻の中で一番綺麗なのかも知れない。

 私の分身君もむくむくと元気になった。

 キスを終えると、アーテルシアはベッドの上で四つん這いになり美しいお尻を私に向ける。


『マヤ、もう来てくれ…』


「まだダメだ。」


 私は白桃のようなお尻にむしゃぶりついて、ゆっくり味わった。

 今宵は長くなりそうだ…


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