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第百七十二話 強すぎるエリサレス

2024.1.7 軽微な修正を行いました。

 ラフエルの教会前に、アーテルシアの母親である不和と争いの女神エリサレスが現れた。

 幼女に変身しアイミと名を変えたアーテルシアは恐怖で震え、陰に隠れてしまっている。

 女神サリ様に念話で連絡を取って助けを求めたが、アーテルシアに三ヶ月もトイレに閉じ込められ空腹でエネルギー不足となり地上へ行くことが出来ず、食事をして回復するまで二、三時間を要するという。

 エリサレスの強大な魔力を感じ取りやってきたパティ、エリカさん、ジュリアさん、ヴェロニカだが、あまりの力の差に戦力にはならなかった。

 そしてサリ様が来るまで時間稼ぎをするためにエリサレスと一戦し、武術に長けているその邪神に一矢報いた。


 私は八重桜に光の魔力を前より一層に込め、三叉の鉾を構えてニヤニヤと微笑んでいるエリサレスに立ち向かう。

 再び討ち合いが始まるが、エリサレスの鉾は青白く光り、八重桜は光の強さを増してお互い攻撃の威力がさらに増している。


 チンッ! カンッ! キンッ! カキィィン! コォォン!


 鉾と刀が()れあう度に火花がとんでいる。

 エリサレスは渾身(こんしん)の一撃を振るう。


『ええいっ!!』


 コォォン!! カァァン!! パキィィン!!


「ああっ!!」


 八重桜が刀身の付け根のあたりで折れてしまった!

 刀身は回転し、(そば)の地面に突き刺さる。

 愛刀の八重桜が……

 そんな……


『ふっふっふっ さっきは(なまくら)(がたな)と言って悪かったな。

 正直ここまで持つとは思わなかったぞ。

 さあどうする?』


「マヤ! 私の薔薇黄花(ばらおうか)を使うか!?」


 ヴェロニカがずっと後ろのほうで自分の刀を差し出そうとする。

 だが……


「いや、結果は同じになるから気持ちだけ頂いておくよ。ありがとう」


「そうか……」


 ヴェロニカは残念そうな顔をしていたが、彼女がせっかく馴染んでいた刀まで折ってしまったら申し訳ない。

 それに、またも戦線膠着しているため戦法を変えたい。


『ふん 賢明な判断だ。また折れるだけだからな。

 私もこのままではつまらん』


 私は体術戦闘に切り替え、状況に応じて魔法も使うことにして素手で構えた。

 するとエリサレスは持っていた三叉鉾を投げ捨てる。


『ほう、次は素手か、魔法か?

 どちらでも良いぞ。かかって来い』


 エリサレスも素手で構えたが、あんなロングスカートで戦えるのか?

 そう思っていたらエリサレスの姿が霧に囲まれ、すぐに消えるとコスチュームチェンジのようでスカートが短くなっている。

 上は赤いワンショルダードレスのまま、スカートは膝丈になり両側に大きく割けたスリットがある。

 あわわ…… 下はノーパンだぞ。

 気になって集中出来なくなったらどうしよう。

 もしやエリサレスはそれを織り込んだうえで戦うのか。

 さっきぱんつのことを聞いたのがまずかったか、私の性格を見抜いたのであれば狡猾(こうかつ)だな……

 絡まれないように気をつけねば。


『何をしている。早く来い! 来ねばこちらから行くまで!』


 エリサレスは猛スピードで走り込み、私の方へ向かってくる。


『たぁぁぁぁ!!』


 その勢いで片足跳び蹴りをしてきたが、早速スカートの中が丸見えだ。

 それを気にしている余裕も無く私は腕を交差して力尽くで受け止めたが、案の定突き飛ばされてしまった。


「うわぁぁぁぁ!!」


『ふっはっはっはっ 普通の人間なら腕がちぎれ飛んでいるところだぞ。

 やはりおまえとは戦い甲斐があるな!』


 五メートルくらいは吹っ飛ばされたが、私はすぐ立ち上がり反撃体勢に入る。

 私は体内から先に凍結させるナイトロジェンアイスと、高位氷結魔法フリージングヘルを同時に発動した。

 私とエリサレスの間に強烈なブリザードが吹き荒れる。

 瞬く間にエリサレスは氷の像と化した。


「やったのか!? いや……」


 氷の像はすぐにパリパリと堅い皮のように剥がれ、元のエリサレスの姿に戻った。

 氷の魔法は効かないのか、それとも全ての属性でも魔力がまだ足らないのか。

 ナイトロジェンアイスは恐らく強力な魔法障壁で、体内まで届かないのだろう。


『ふっふっふっその程度の魔力では、私の皮一枚しか凍らせぬ。

 マヤよ。やる気があるのか? うん?』


「試し撃ちだよ。本気を出すのはこれからだ」


『ふん、はったりをほざくな。てやぁぁぁっ!!』


 エリサレスはまた私に向かって走り、パンチとキックの連続攻撃を仕掛ける。

 私も応戦し、スサナさんたちとの訓練の成果をここに出す。

 いつも実践では知能が低い魔物ばかりで、剣術や体術を使って敵と戦うのは人型であるアーテルシアやとエリサレスが初めてだ。

 まるで拳法使い同士の戦いで、エリサレスの重いパンチの連続は避けきる余裕が無く受け止めるのが精一杯だから体力を消耗する。

 脚を上げて大きくキックをすればセクシーな太股とスカートの中が見えているが、そんなことを気にしていたら命に関わる。


『てやぁあ! たたたたぁ!!』


 エリサレスの凄まじいキックの連続を受けてしまい、私は吹っ飛ばされ地面に倒れ込んだ。

 そこへ胸ぐらを掴まれ、ヘッドロックを掛けられてしまう。

 顔に当たるおっぱいは柔らかいけれど、そんなことどうでもいいくらい苦しい。


「くあぁぁぁぁっ っくぅぅ……」


『どうだ。このまま首をへし折ってやってもいいんだぞ』


「そうはいかん…… ぬああああっ!」


『うぁぁぁぁ!!』


 私はこのまま、力業で強引にバックドロップをエリサレスに食らわした。

 当然スカートが派手に(めく)れ、お尻丸出しのあられも無い姿になったエリサレス。

 向こうにはパティやヴェロニカの姿が見えたけれど、何故か怒っている顔に見えた。


『おのれ!!』


 エリサレスはバックドロップを決められた体勢から太股で私の首を挟み、首四の字固めを仕掛けられてしまった。


「ぬうぅぅぅ! ぐはっ」


『ハッハッハッ! また首を捕まえたぞ!』


 私は必死にもがくが、完璧に固められて動けない。

 スカートは(めく)れ、ぱんつを履いていない股間に直接絞められているがエリサレスは恥ずかしさなど微塵(みじん)も感じていないようだ。

 アーテルシアと同じよう、体臭の甘い香りが鼻をくすぐる。

 眠気と催淫効果がある香りだが、耐性魔法で何とか即効を防いでいるだけで匂いが鼻に入るとエッチな気分になり目眩(めまい)がする。

 首を絞められていることもあり余計に頭がくらくらしてきた。


『ふっふっふっ 神の股に絞められている感想はどうだ?

 このまま死んだ方が極上の幸せを感じることが出来るぞ』


「ぐっ ぅぅぅ……」


 私は腰を左右にねじって体勢を変えようとした時、一瞬絞めが緩んでエリサレスのほうが体勢を変えてしまった。

 前に訓練でスサナさんにやられたこともある、股間に顔を向けた逆首四の字固めである。

 いろんな意味でますます状況が悪化してしまった。

 香りが股間から鼻に直撃して、耐性魔法があっても意識が朦朧(もうろう)とする。


『ああ…… はぁ…… いいわあぁぁぁ…

 これが戦いでなければおまえともっと楽しめたのにのぅ。

 ふっふっふっ』


「がっ グググ……」



(エリカ、パティ、ジュリア視点)


「クソぅ、マヤ君にあんなことをしやがってぇ!

 帰ったら同じことをしてやるんだから!」


「エリカ様! マヤ様が苦しんでいるときに何てことをおっしゃるんですか!

 はわわわわわわ…… マヤさまぁ……」


(わたスも、戦いが終わって帰ったらマヤさんにスてもらおう……)



(マヤ視点)


 だ、ダメだ…… 本当に意識が飛んでいきそうだ……

 それよりとんでもない圧力で太股に挟まれて苦しい……


『どれ、もう終わりにしようか』


 エリサリスが腰をひねって太股の向きを変えた瞬間……


 コキャ パキィィィッ!!


『ふっふっふっ 首の骨が折れたか……

 白目をむいておるか。間抜け面もいいところだな。ハッハッハッ!』



(エリカ、パティ、ジュリア視点)


「きゃぁぁぁぁ!! マヤさまぁ!! いま治しに行きます!!」


「待ちなさい!! 大丈夫だから。マヤ君からかすかに魔力を感じる。

 まだ意識がある。」


「え…… それでも……」


「まあ見てなさいよ」


「そうですよ。アレがあるじゃないでスか。

 今近づくと、とても危険でス」


 エリサレスはマヤ君から技を外して立ち上がった。

 マヤ君の魔力出力が上がっている。よし!


『なにい!? そうか…… おまえは……』


「マヤ様が立ち上がりましたわ!」


「だから言ったろう。

 マヤ君はフルリカバリーのマクロ術式を戦闘中にはすでに掛けていたのさ。

 少しでも意識が残っていれば自動的に魔法が起動出来るんだよ。

 私が教えておいたんだぞ。感謝しなさい。ふふふん」


「エリカ様…… 何か恩着せがましいですわね」


「私はマヤ君と出会ったときから先生よ。当然でしょ。フフン

 あなたがいくら頭が良くてマクロ術式習得の適正力は人並みだから、マヤ君の適正力を見抜いた私は天才ね」


「ああ…… もういいですわ。

 マヤ様が無事であれば私は素直に嬉しいです」


「んん? パティちゃんも大人になったんだねえ。ふひひ」


「いつまでもエリカ様の煽りに構っていられませんわ」



(マヤ視点)


「つぁ…… 本当に死ぬかと思ったけれど、うまく発動して良かった」


 マクロ術式は最初に首四の字固めを掛けられたときに自動で発動が始まっていたけれど、実際に怪我をした後でないと魔法が動いてくれないから、骨が折れた瞬間が痛くてたまらない。

 どうせならば骨が折れないように改良をしたほうが良い。


『ふん…… 術式を組んでいたか。生意気な人間め。

 魔族でなければ簡単には出来ないんだぞ。

 おまえは魔族とも繋がりがあるのか』


「そうだ」


『ほう。まあいい。

 次は術式が起動する余裕もないうちに叩きのめしてやろう。ふっふっふっ』


 脳を突かれたり、強力な即死の魔法を掛けられたらマクロ術式でもどうにもならない。

 力もあれほど強いとは思わなかった。

 接近戦は危険だから、また戦法を変えないといけないのか……

 サリ様と連絡を取ってからまだ一時間も経っていない。

 どうしたら時間稼ぎが出来るんだ……



(アイミ視点)


 人間が母上にかないっこないのだ。

 弱点があるのも聞いたことが無い。

 いくらマヤが特別な人間で今まで戦ってこられていても、母上の力は無尽蔵だ。

 神が相手ならば、それ以上の力を持つ神が戦うしか無いのだ。

 サリは腕力こそ弱いが、神通力は他の神々と比べても尋常でない。

 早くサリが来ないと、マヤが殺されてしまう……


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