第百六十三話 ぱんつの隠し場所
一週間ぶりの、ガルシア家の自室。
二時間半プラス周回偵察をして三時間以上ぶっ続けで飛んでいるとくたびれた…。
朝は美味しいサンドイッチをたくさん食べたのに、お腹も空いた。
賄いならばすぐお昼ご飯を用意してくれるというので、一旦自室へ荷物を置きに行く。
おっと…
ルナちゃんがリュックの中身を取り出して片付けるかも知れない。
奥にエステラちゃんからもらったぱんつがあるので、それを取っておかないと何を言われるのかわからない。
取り出して、両手で広げて観賞してみた。
おおお… 素晴らしい。
いやいやいや、私はぱんつだけは興味が無いのだ。
女の子に履いてもらってこそ価値があると思っている。
うう… どこに仕舞っておこう。
タンスの引き出し… ベッドの下… みんなルナちゃんに見つかるだろう。
まるでお母さんかお姉ちゃんが部屋を探索してエロ本を見つけるかの如く。
……わからん。取りあえずズボンのポケットに入れておこう。
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お昼ご飯は、ガルシア家の使用人休憩室にて。
ヴェロニカ、スサナさん、エルミラさん。
それから用務のパンチョさんと御者のアントニオさんもいる。
メイドのおばちゃんたちはその後で食事、厨房のビビアナやジュリアさん、マルシアさんたちが一番最後だ。
私はヴェロニカたち三人グループと一緒に賄いのお昼ご飯をご馳走になる。
「いよう! マヤさんがここで食事をするなんて珍しいねえ!」
「やあパンチョさん。ここで食べるのは久しぶりなんですよ。」
「王女殿下は毎日いらっしゃってるし、うちの母ちゃんの料理をいつも食べてもらってるんだから嬉しいよ!」
「うむ。ここの賄い料理はとびきり美味い。
夕食もここでいいんだが、ガルシア侯爵がうるさくてな。ハッハッハッ!
ところでマヤ。母上はお元気だったか?」
「相変わらず元気だったよ。
そうそう、初めてアウグスト王子とお話をしたよ。
空飛ぶ乗り物の製造費用をひねり出してくれて、ずいぶん助かった。
気さくで話しやすかったし、将来の国王に相応しい有能な方だね。」
「そうだろうそうだろう。
兄上は聡明でとてもお優しいから私はとても尊敬している。
心配なのが仕事を頑張りすぎているところだ。
早くご結婚なさって落ち着いて欲しいのだが、王太子妃にも能力を求めてこられるだろうなあ。」
それからしばらく休憩所にいる人たちは、食事をしながらアウグスト王子の自慢話をヴェロニカから延々と聞かされることになる。
私はヴェロニカは私の隣に座っているが、話している最中にチラ見するとタンクトップから覗く胸の谷間は相変わらず深い海溝のようにすごい。
向かい側に座っているエルミラさんは真面目なのでうんうんと聞いていた。
スサナさんの話では、パティは私がいない間にカタリーナさんのバルラモン家でお世話になっているらしい。
今日の夕方には帰ってくるそうだ。
エリカさんはずっといるみたいなので、魔法の勉強がてら後で部屋へ行ってみよう。
その前に銀行だけ行き、口座を作って聖貨五枚を預けた。
これだけの金額を預かってしまったのだから、なんとしても完成させたい。
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「にゅふふーん! マヤ君おかえりー!」
地下にあるエリカさんの部屋へ入るなり、いきなり抱きつかれた。
部屋が乱雑なのはいつものことだが、昼食の間にメイドのおばちゃんたちがささっとシーツを交換しているのでベッドだけは綺麗だ。
「まさか王都まで片道三時間だなんて、常識外れも程があるわよ。
魔法をぶっ続けで四つも五つも並列発動させるなんて、私の魔力量でも出来るのかしら。」
「魔力量はエリカさんでも大丈夫だと思うけれど、精神力と集中力いるかな。
まだ頭が少しボーッとしてる。
ああそうだ。マカレーナへ到着する前に、すごい悪寒を感じたんだ。
まるで大きなデモンズゲート発生した時のような。
でもそれらしいものは見つからなかったし、悪寒も収まったよ。
あれはなんだったのかな。」
「え? マヤ君も感じたの? 何か気持ち悪くなってね。
アマリアさんやジュリアちゃんもそう感じたみたいよ。」
「デモンズゲート発生の予兆だろうか?
魔物か…、もしかしたらアーテルシア直々にお出ましかも知れない。
覚悟の必要がありそうだね。」
「せっかくのんびり出来ていたのに、なんで今頃出てくるのかねえ。
マカレーナは結界があるけれど、他の街が心配だよ。」
デモンズゲートについては一旦話を終え、飛行魔法についてもっと楽に飛べないかエリカさんにもいろいろ考察してもらった。
グラヴィティがかなり負担になっているから高速で飛ぶなら弱めても大丈夫だろう、後は慣れるしかないという結論になった。
まだ一往復しか飛んでいないから、確かに慣れは必要だ。
帰りは時間短縮が出来たので、慣れてきた結果と言えよう。
エリカさんの担当だったモニカちゃんについて話題を変えてみた。
「モニカちゃんには二日だけお世話になったよ。
昔の話はいろいろ聞いたけれど、明るくてとてもいい子だね。」
「そうでしょぉぉ? 私あの子大好き!
すごく私と気が合うの!」
「そうだろうね。若いエリカさんかと思ったよ。」
「それで昔の話って? 昔の男のこと?」
「うん。彼女は純粋すぎたんだよ。
少し男性不信だったようだけれど私に対しては不思議と心を開いてくれてね。
作ってくれたサンドイッチは美味しかったなあ。」
「ああっ もしかして君もモニカちゃんと…」
「私も? 何のことかな?」
「そ、それは… ブツブツブツ…」
いずれバレるかも知れないが、知らんぷりしよう。
エリカさんは知らなくてもいい話をしてくるかもしれないから、今はモニカちゃんとの良い思い出を胸にしまっておきたい。
「ねぇ、マヤ君。休憩しようよー
疲れてんなら寝てるだけでいいからさあ。ねえねえ。」
モニカちゃんとの話からいきなりそっちの話に振ったか。
誤魔化すにしても極端だなあ。
「それ休憩じゃないよね。」
「頼むよぉぉぉ 一週間ぶりなんだからさああ」
「まあ…いいけれど…」
「むふふふっ やったあ!」
エリカさんはあっという間に上着を脱いでブラとぱんつの姿になった。
ここでエステラちゃんのぱんつと同じだったらウケるんだが、新製品なのでさすがにマカレーナには届いていないだろう。
エリカさんは上下黒の、総レースのランジェリーだった。
私もパンツだけになり、ベッドに寝っ転がった。
エリカさんはキスをする前に、私の首筋や脇の下、胸からお腹、鼠径部の順で匂いを嗅いでいる。
「スーハー スーハー あぁぁぁぁいい匂いだわぁぁぁぁ!!」
痴女みたいだが、シルビアさんも女王も私の匂いを掻くのが好きみたいでどうも思わなくなった。
女性もだんだん歳を取ってくると若い男の匂いを欲するのか?
それとも女性にしかわからない匂いを私が発しているのか?
私とふれ合った女性の様子を見ていると、後者の気がしてならない。
エリカさんは私のパンツを脱がし、身体中にキスをして愛してくれた。
私は寝たままエリカさんを受け入れ、彼女はいつものよう存分に楽しんでいた。
そしてエリカさんとの、最後のまぐわいとなった。
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夕方になり、パティはバルラモン家から戻ってきた。
侯爵も行政官庁から帰ってきている。
エリカさんの部屋から自室に戻るときパティと鉢合わせになり、彼女は突進するように抱きついてきた。
一週間ぶりの彼女だから嬉しいような、シルビアさんのこともあって後ろめたさもあって複雑な気分になった。
自室へ帰ると、放っておいたリュックサックが畳んであり、中身の服もみんな洗濯へ出されてしまっている。
間違いなくルナちゃんがやってくれたんだろうが、もしエステラちゃんのぱんつを入れたままだったら大変なことになっていた。
ポケットの中のぱんつ、どこに仕舞おうか…
これからお風呂なので、洗濯に出されてしまうズボンに入れたままには出来ない。
何でこんなことで悩まないといけないのだろう。くうう…
エステラちゃん、とんでもないお土産だよ。
そうだ! デスクの引き出しに入れてある、ぱんつのデザイン画を描いたノートに挟んでおこう!
引き出しならルナちゃんもむやみに開けないし、もし見つかってもサンプルだと誤魔化せる!
我ながらグッドアイディアだ。
ノートに挟み、これで安心する。
タイミング良く、ルナちゃんが部屋へ入ってきた。
「マヤ様、おかえりなさい。お変わりないようですね。
お風呂は今パトリシア様がお入りになりましたので、エリカ様がお上がりになるまでもう少し時間がかかります。」
「ありがとう。あと、ただいま。
王宮でね、フローラちゃんとモニカちゃんのお世話になったよ。
二人ともとてもいい子だね。」
「私の友達だから当然ですよ。
あーあ、早く会いたいなあ。」
「フローラちゃんは私の着替えを手伝うと鼻血を出しちゃうし、モニカちゃんは私の身体にいたずらをするし、びっくりしたよ。」
「あはは… その時の状況が手に取るようにわかります…
でも二人とも、マヤ様が男の人なのに頑張ってやってくれたんですね。
マヤ様は人を信用させる力がすごいです。」
そんなことを言われると心が痛む。
方便とは言えシルビアさんのことについては一生の秘密だ。
それからルナちゃんと当たり障り無い範囲でマドリガルタでの出来事を話して、お風呂までの時間を過ごした。
サンドイッチのことを話したら羨ましがっていたが、確かに玉子サンドとフルーツサンドは思い出の味だったなあ。
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そして夕食が始まる。
食卓にはガルシア侯爵、アマリアさんとカルロス君、ローサさんとアベル君、パティ、ヴェロニカ、エリカさんが揃い、フェルナンドさんとルナちゃん、ジュリアさんが脇に控えている。
「パティ、マヤ君、おかえり。どうだったかね?」
「はいお父様。
カタリーナ様と一緒にバルラモン伯爵のお仕事を手伝っておりました。
業界の内情についてとても勉強になりましたわ。」
バルラモン伯爵家はいわゆる建材商社で、主にマカレーナの建築材料を受け持っている。
家を建てたり道を作ったりするための物をいろんな所から買い付けているのだ。
「おー、そうかそうか。うんうん
あの業界も取引の難しさは一級だからね。
安定した材料の供給には、現場のインフラもきちんとしておかないと作業員が逃げてしまうから投資もたくさん必要だ。
おかげでマカレーナは良質な材料で建物が建ち、道が敷かれて有難いことだよ。」
マカレーナの街の建物が他の街と比べて比較的綺麗なのがそれだ。
カタリーナさんのお父さん、いい仕事してるよ。
「私の方ですが、アウグスト王子から空飛ぶ乗り物の製造費用を国から出して頂きました。
陛下は相変わらずでしたよ。」
「それは良かった。
でも今までは私費や報奨金で賄ってきていたようだけれど、国からお金が出たということは空飛ぶ乗り物を国のためにも使わないといけなくなるが、それでもいいのかい?」
「仕方が無いですよ。
安全第一のためにしっかり作ってもらうにはたくさんお金がかかります。
恐らく陛下の外遊目的にも使われるでしょう。
私の仕事は安泰かも知れませんが。」
「うーん、いつまでも魔物退治で稼げないだろうから、それが良いかもしれないね。」
「滞在中、マドリガルタ周辺の残っていた魔物もほぼ退治してしまいました。
マカレーナ周辺も最近は魔物が出てきていませんよね?」
「うむ。ここらも同じように残敵が時々出てくるくらいだね。
去年までの襲撃が嘘みたいだ。」
「ですがマカレーナへ着く前に、とても嫌な悪寒を感じました。
周辺を隈無く回ってみましたが何も見つからず、大きなデモンズゲートが発生する予兆かも知れません。」
「それはアマリアからも聞いた。
結界があるマカレーナはともかく、近郊の街は臨戦体勢にしておかないとな。」
パティが乗り出すように話に割って入ってきた。
「マヤ様! 私も嫌な感じを受けました!
あの波動はアーテルシアではないのですか?」
「確証はないけれど、あの感じはそうかもしれない。
私も気を付けないとな…」
アーテルシアについてはこの部屋にいる人たちにも全員説明がしてあるので、パティはその名を口に出すことが出来た。
実際にアーテルシアを目にしたのは旅をしてきた六人だけなので、他のみんなはまだピンとこないようだ。
神の時間の流れというのは人間と比べて長いが、三ヶ月以上何も無い期間はアーテルシアに取って何でも無いのかも知れない。
サリ様もあれから出てこないけれど、何をしているんだろう。
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一週間ぶりのガルシア家なので、夕食後はパティの部屋で軽くお茶会。
パティはニコニコしてお茶を入れてくれるが、気分を壊さないようにレイナちゃんたちや他の女性の話をするのはやめておこう。
一時間ほど話をして、おやすみのキスでお茶会を終えた。
自室へ戻ってしばらく寛いでいると、エルミラさんがやって来た。
「マヤ君、久しぶりにマッサージをしてあげるよ。
何だか疲れた顔をしていたから心配でね。」
「ありがとう、エルミラさん。恩に着るよ。」
「マヤ君と私の中じゃないか。いつでもやってあげるさ。」
私は横になってマッサージを受けるが、それよりエルミラさんがいつもより良い匂いで頭がとろけそうになる。
「エルミラさん、さっき運動してたの?」
「うん。さっきは食後の運動でヴェロニカ様と軽く手合わせをしていたんだけれど、どうしてわかったの?
もしかして汗臭い?」
「そんなことないよ。エルミラさんはいつも良い匂いだよ。」
「マヤ君ったら…」
エルミラさんは顔を赤くしてマッサージを続けた。
いつしかエルミラさんの手の動きが怪しくなり、お互い服を脱いで夜の運動会が始まってしまった。