第百五十七話 王宮メイド、モニカちゃんの事情 其の二
魔物探索三回目。
今日でマドリガルタ近郊地域の探索を終えるつもりだ。
魔女の結界がマドリガルタをすっぽり覆って魔物が入ってこなくなったので、女王はマドリガルタに所属していた兵の半分くらいを国内各地へ転勤させ、現地で魔物討伐の任に当たらせている。
マドリガルタ出身の兵士を使うと手当が必要になるので、極力地方からの出稼ぎ兵を使い、彼らの地元またはそこに近い場所を任地とし、費用削減に努めているということだ。
恐らくアウグスト王子の手腕だろうが、私は未だに会ったことがない。
女王は事務仕事の多くを王子二人に放り投げ、マルティン王子はマイペースで仕事をしているので勤勉なアウグスト王子はなかなか出てこられないという話だ。
マドリガルタ近郊の街にも兵力が増強されて、彼らの活躍で目立つところには魔物がほとんどいなくなっている。
だが一回目二回目のように森の目立たない場所に潜んでいる魔物を退治しなければいけないので、今日はマドリガルタの南にある山地へ向かっている。
前にも通ったシルビアさんちの広大なオレンジ畑を過ぎ、小一時間ほど飛んで南の山地に着いた。
そのまま上空を周回しながら魔力探査をする。
案の定、ポツポツと弱い魔力が山地に散らばっているのを感じたので、全体数を把握するため周回を続ける。
よし。一つ一つ潰すのは根気がいるけれど、この数ならば夕方前には終わりそうだ。
まず最初の一つ目を潰していく。
ぎえぇぇぇぇ!!
五十センチ近くあるゴキブリが野ねずみを食っている!
こんな生き物をアーテルシアはこの世界へ持って来るなんて、とんでもない神だ。
きっと逃げられたら早足で見つからなくなるのでそっと近くに寄り、火属性の体液を沸騰させる魔法【ボイリングブラッド】を掛けて即死させた。
念のため小さなライトニングカッターでバラバラにしておく。
もし山にいる魔物がみんなこいつだったら嫌だなあ。
群れになっていないのが幸いだ。
嫌な予感が的中し、午前中に処理をした魔物はみんな巨大ゴキブリだった。
初めて見る魔物だったのでアーテルシアがここだけに放ったのであろうが、デモンズゲートはもう自然消滅しているようだ。
昼食は山麓にある小さな街、アルデアの食堂で。
店主や客にこの街の事情を尋ねてみると、やはりこの街にも巨大ゴキブリが何十匹単位で現れていたが、討伐隊の特に魔法使いの活躍で退治することが出来たそうだ。
直接攻撃だけではとても対応出来そうにないから、必然的に魔法を使う必要があったんだね。
だが噂では、白くてもっと大きなゴキブリみたいな魔物がいたという。
尋ねた時は身分証明のために名前を言って徽章を見せたのだけれど、ここでも私の名が知られていた。
食堂のホール係をやっていた若い娘さんにサインをねだられたので用意された紙に書いたのだけれど、それを食堂の壁に貼られてしまった。
日本でも有名人のサインを壁にたくさん貼っている店があったけれど、それと同じで他にも何枚か有名人らしきサインが貼られていた。
誰なのかさっぱりわからんのだが、この店は隠れた人気店なのか?
確かにこの店の一風変わった山菜と鶏肉のパエリアは美味しかった!
午後の探索もしらみつぶしに巨大ゴキブリ退治を続けた。
思っていたより順調に処理が進み、あとは最後の魔物を見つけて退治するだけだ。
山の上を飛び、一点だけ残った魔力を辿って向かうが、巨大ゴキブリの魔力とは感じ方が違うから別の種類の魔物だろうか。
魔力を感じた山の中の森にある地点に降りて、そのままグラヴィティで浮いてさまよう。
鹿や猪みたいな動物の骨が所々に散らばっている…
これらは魔物が餌にしたのかも知れないから、大きさは数メートルクラスと考える。
ガサガガサッ
音が鳴った方向に魔力を感じる!
出たか!?
ぎょえぇぇぇぇ!!
出たあ! 白い巨大ゴキブリ!!
白くてもゴキブリはゴキブリだ! 気持ち悪い!
大きさは三メートル以上はあるだろうか。
だが動きは異様に速く、私を餌だと思ってガサガサガサッと向かってきた。
せっかく刀を持ってきたけれど今日はゴキブリばかりの日なので、汚れると嫌だから出番がない。
私はライトニングカッターで巨大白ゴキブリを前から直ぐさま真っ二つに切った。
死体の処分は土の魔法で穴を掘り、グラヴィティで死体を浮かせて出来た穴の中へ放り込む。
仕上げに強力な火の魔法で焼き尽くして埋め戻した。
この手順は巨大ゴキブリでもやっており、サリ様に土と火属性の魔法を使えるようにしてもらってから一通り一人で何でも出来るようになり、便利になった。
勿論エリカ先生と一緒に勉強して覚えたのだよ。
アルデアの街に戻り、町長に残った巨大ゴキブリと噂の白ゴキブリの討伐完了を報告する。
大層喜ばれ、側にいた孫娘を将来嫁にもらってくれと言われたけれど、どう見ても五歳くらいにしか見えないので丁重にお断りをした。
将来美人確定のような可愛さではあったが、あまり片っ端から嫁を増やすとパティたちから何を言われるかわからない。。
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夕方前にはマドリガルタへ帰り着き、王宮の正面玄関から部屋へ戻った。
クンクン… ゴキブリを焼いた臭いで服が臭くなっていないかな…。
ちょっと臭うかも。
でもアルデアの食堂では何も言われなかったから大丈夫だろう。
しばらくするとノックが鳴る。
誰にも帰ってきたぞと言っていないのに、相変わらずメイドネットワークは伝達が早い。
「マヤさまぁ! 失礼しまあす!」
ありゃ、モニカちゃんの声だ。
フローラちゃんは今晩も実家でお泊まりかな。
「おかえりなさいませ! マヤ様。魔物退治お疲れ様でしたあ!」
「いつにも増してテンション高いね。何かあったのかな?」
「そりゃあマヤ様のお世話が出来るからですよ。
フローラには申し訳ないと思っているけれど…」
「フローラちゃんのお母さん、元気になっていればいいけれどね。」
「そうですよね…。
クンクンクン… なんかちょっと臭くありません?」
そう言って私に近づいてまた臭いを嗅ぐ。
「クンクンクン… やっぱりマヤ様の服から臭いがする!
何ですかこの臭いは!?」
ルナちゃんといい、王宮メイドはなんで匂いに敏感なのだ!?
訓練でもしているのか?
ゴキブリを焼いた臭いだと言ったらエンガチョされて逃げられるかも知れない。
黙っとこ。ちなみに私の地方ではバリアと言っていた。
「ああ、魔物退治した時に臭いがついたのかな。」
「もう! 洗いますからすぐ脱いで下さい!
ついでにお風呂に入りましょう!」
さしもの女神パワーが付与された汚れが自然に落ちる革ジャンとカーゴパンツでも臭いが残っているのならば、普通の服だと大変なことになっているに違いない。
モニカちゃんは革ジャンとズボンをババッと脱がせてくれたら、お風呂のお湯を入れに行った。
革ジャンをもう一度嗅いでみる。
クンクン… おえええ… なんとも言えないゴミ臭さがする。
「マヤ様! お湯が貯まりましたよ!
ちゃっちゃと入りましょう!」
私はシャツとぱんつ姿のままモニカちゃんに背中を押され、脱衣所に入った。
そして手慣れているようにパパパッとシャツとぱんつを脱がされ、あっという間に全裸になった。
相手が服を着たままなのにこちらが全裸のままというのは、恥ずかしさが増す。
「それではごゆっくり~ ふひひ」
最後の笑いはなんだろう。
私は一人で浴室へ入り、湯を掛ける。
やっぱり背中を流してくれるのはルナちゃんだけなんだねえ。
期待していたが残念だ。
私はバスチェアに座り、シャンプーを始めた。
「お邪魔しまあすっ!」
「おお!? モニカちゃん!?」
シャンプーが目に入ると痛いので私は目を瞑ったままだが、モニカちゃんが浴室に入ってきたようだ。
期待してて良かったあ。
どんな格好をしているんだろう。
「おや、頭を洗ってるんですね。お手伝いしますぅ!」
モニカちゃんは後ろからシャコシャコと丁寧に頭を洗ってくれている。
やっぱり女性に頭を洗ってもらうと気持ちいいなあ。
指の感触がまったりとしてて良い。
感触と言えば、背中に時折ふにょんとしたり何か突起が当たってるこの感じは…
まさか… まさかまさか!?
「じゃあお湯を流しますねえ。」
お湯でシャンプーを流してもらい、そろっと後ろを振り向いた。
「は…? 裸?」
「ふひひ 私も脱いじゃった。」
「何でまた? あっ 最初からそのつもりだったね?」
浴室へ入る前の笑いはそうだったんだろうな。
だからって何故入ってきたんだ?
「バレちゃいました? さすが鋭いですねえ。
エリカ様がマヤ様のことを話してて気になっていたし、今朝お世話してからマヤ様のことを好きになっちゃった。」
「それにしたって急にお風呂で裸になるなんて、どうしたの?
エリカさんとずいぶん仲良しみたいだけれど、それと関係あるのかな?」
「あ… ああ… マヤ様は本当に勘が良いですね。
私はエリカ様のことを愛しています。
身体の関係も、何度もありました。
エリカ様はマヤ様のことが大好きと伺っておりました。
それでエリカ様は、マヤ君とモニカちゃんまとめてラブラブしたいーって言ってましたから、マヤ様がどんな方か気になって。
それに私は何人も男の人と関係を持ちましたから、男の人の前で裸になるのは慣れてます。
今はフラれちゃって誰もいませんけれどね。あはは」
やっぱりエリカさんとは黒だったか。
エリカさんが言いそうなことだな。
男性経験済みなのは察しの通りだった。
だが何人も経験とは予想外だったし、なんかショック。
「はぁ… まったくあの人ったら。
君が何人も関係を持っていることは別にいいさ。
私だってエリカさんだけでなく、何人か関係はあったから。」
「そうなんですかあ。
じゃあ王女殿下とは今どうなってるんですか?
私の婿になれ!ってあの時いきなりおっしゃってましたよね?」
「うっ あれは…押しかけ女房みたいなもので、私自身に気持ちがあるのかわからないんだよ。
それに彼女は今、武術の修行に夢中だし色恋沙汰の進展は無いよ。」
実際の所その通りだし、ヴェロニカはエルミラさんと仲良し過ぎてむしろそれがどうなっているのか気になる。
「ふーん、そうなんですか。じゃあもう一つ聞いて良いですか?」
「なんだい?」
「どうしてマヤ様だけ、女王陛下の部屋がある区画で泊まられているんですか?
私、研修で二年前に一度この区画に入ったことがあるだけで、今朝はそれ以来久しぶりだったんですよ。
陛下やシルビア様のお部屋は、普段は給仕長やベテランさんの一部しか掃除に入れません。
一部で噂になっているんですが、マヤ様は陛下の夜伽をさせるためにこの部屋を使ってるんじゃないかという話になってますよ。」
ひえぇぇぇ…
やっぱりそんな話になっていたのか。
ずばりその通りだ。
さすがにシルビアさんとも相手をしてるなんて漏れてはいないか。
噂の発生源ってルナちゃんしかいないと思うが、面倒なことになっても嫌だから彼女については聞かれるまで放っておこう。
「それは違う。
あの時はまだ魔物がいたから元々女王陛下の護衛でもあったし、忙しい陛下やシルビアさんの話を聞くために便利なこの場所にしたんだと思うよ。」
「ふーん。ま、そういうことにしておきましょう。」
そんな話をしながらでもモニカちゃんは、後ろからシャコシャコと石鹸を着けたタオルで身体を擦ってくれている。
彼女を直視しているわけではないので、分身君はショボンとしている。
「マヤ様、前も洗いますからこっちを向いて下さい。」
「あ… ああ、わかったよ。」
とうとうモニカちゃんと対面になった。
胸はルナちゃんよりは一回り小さいとはいえ、十六歳にしてはよく育っている。
太股は食べたくなるくらいむちむちで、脚が少し開いているそこからは夕陽に当たり黄金に光っている枯れ草のような美しい草原が見える。
いくらこの国が十五歳から結婚をしてもいいからって、こんなことしてもいいのか?
ラミレス侯爵のところのロレンサちゃんも十七歳と聞いたしなあ。
「んふふ 何見てるんですか? 気になります?」
「綺麗事を言うつもりはないけれど、仕事で本当にこんなことをしてていいの?」
「私は好きでしているんですよ。
女性のお客様には仕事で湯着を来てお背中を流すこともありますけれど、マヤ様には私情でやっていますから気にされなくても良いですよ。」
「うーん…」
「納得されません?
そんなことより身体のほうは正直で、とても元気になってますよ。あっはっは」
「あっ これは…」
「ねえマヤ様…」
モニカちゃんは身体を洗っている手を止めて、私の太股に跨がって両手を私の肩に置いて支え、いきなり濃厚なキスを始めた。
うわ… 上手い… とろけるようだ…
彼女は艶めかしい声をあげながらキスを続けている。
私は彼女の膨らみを揉みほぐした。
「我慢出来なくなっちゃった。
久しぶりなんです。いいですよ…最後まで…」
彼女のその言葉で私は衝動を抑えきれなくなり、そのままの体勢で始めた。