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第十五話 愛のおまじない/裏庭の洗濯物 (改稿)

 2025.11.29 タイトル変更と改稿。心理描写を細かくし、こぼれ話も追加しました。

 アマリアさんとあのことがあってから少し気まずくなり、彼女と話す機会がなかなか無かった。(第九話参照)

 が、ある日の昼間に屋敷の廊下を歩いていると、後ろから誰かに呼び止められる。その声は――


「あの、マヤ様」

「えっ? あ…… アマリア様でしたか」

「マヤ様、今からあなたにおまじないをしてみようと思うの。こちらにいらして」

「はい」


 おまじない? 何だそれは…… また何かの魔法を掛けてくれるのだろうか。

 アマリアさんに付いて行くと、彼女の部屋の前に来た。

 私はあれ以来、再びアマリアさんの私室へ入ることになる。

 私の魅了発動はエリカさんによって解除されているから、もうあんなことにはならないはず。

 だが、内心すごくドキドキしている。


 部屋の中程まで連れて行かれ、姫ソファーがあるのでお互い少し間を空けて座った。

 息子のカルロス君はメイドさんに預けているのか、いないようだ。

 こ、こんなところでまた何をするのかな……

 そしてアマリアさんはこう言う。


「マヤ様…… お話があります」

「はい」

「私はあなたことを家族のように愛しています。初めてお会いした日にこう言いました。この先苦しいことがあるのかもしれないと…… きっと試練が待ち構えているので、私はマヤ様の少しでもお力になりたいんです」

「――力になりたい……」

「はい。それで、おなじないというのは【祝福】の魔法のことなんです。これからそれをかけますね」


 アマリアさんは座ったままズズッと私に近づき、私の頬に両手を当てる。

 また目前に彼女の顔がっ

 こんな西洋風美人の顔が近くにあると、背筋がビビビッと来てしまう。

 彼女は躊躇(ちゅうちょ)せず、私にそっと優しい口づけをした。

 おいおい、恋愛じゃなくて家族のように愛しているんじゃないのか?

 だがこの前のような情熱的なものではなく、唇の柔らかさを感じたら暖かい魔力が流れてきた。

 そうだ、いつの間に魔力を感知できるようになったんだ。

 唇が触れるだけの少し長めなキスだったけれど、切なく胸に熱いものがこみ上げてくる、そんなキスだった。


「手を触れるだけでも出来るんですけれど、キスをするほうがより長く効果があるんですよ。――内緒ですからね。うふふっ」


 私は女性に優しくされると惚れっぽくなるのは昔からだ。

 でも相手が自分のことを本当に好きなのかわからないので、無駄に理性が働いてそこで損をしていることに、過去に思い当たることがいくつもある。

 まして今回は人妻で、普通に考えて許されないことだ。


「アマリア様、私はアマリア様のことを好きになっていいのでしょうか? どうしてキスをしたんですか? 前にも申し上げたように、侯爵閣下にも申し訳ないです」

「ごめんなさい。かえって貴方を困らせてしまいましたね。勿論レイナルドには内緒のことだけれど、私の気持ちの奥底にも(わだかま)りがあるの」


 優しい彼女にも心の中に何かつっかえることがあるようだ。

 夫婦間で何かあるのだろうか。


「ローサはとてもいい子だし嫌ってはいないけれど、やっぱりレイナルドとローサが愛し合っているのを見ると悔しいの。男性ばかり一夫多妻制なんてずるい…… だからこっそりと仕返ししてみたいという気持ちもあるわ。ああっ 勿論あなたに対して腹いせだけの気持ちじゃないのよ。それはわかって下さるかしら……」

「アマリア様のお気持ち、わかりました。良いんですよ。私に本心を打ち明けて下さって嬉しいです」


 なるほどねえ。一夫多妻制ならではの悩みか。

 アマリア様が、ガルシア侯爵とローサさんの何を見たのかわからないけれど、愛する人が別の人と仲良くしていると良い気分にならないのは当然だろう。

 それが合法になっているから手出しは出来ないし、女性に不利だ。


「そうそう、パティも同じですね。嫁が多いのは男の甲斐性だと言っておきながら、私がエリカさんやビビアナと一緒にいたらよく膨れてますよ。フフフッ」

「あの子そんなこと言ってたの? 母娘似ているわね。うふふ―― でもあの子は私よりずっと一途よ。マヤ様、娘のことをよろしくお願いしますね。あの子はあなたのことが大好きなんです。いつも私にあなたのことを話してくるんですよ。この前のデートの後でも一生懸命話してくれて、すごく喜んでいましたわ」


 パティの態度はすごくわかりやすいけれど、そうだったのか……

 私は中身が五十歳だから娘孫みたいな年齢の子を相手にするのは少し距離を取っていたけれど、身体が十八歳に戻ってから中身の心もだんだん若返ってきた気がする。

 私はパティのことを愛しても良いのだろうか。


「私はアマリア様もパティのことも好きになりたいです。こんな我が儘でもいいんでしょうか?」

「いいのよ。でもパティはまだ十二歳だから、大人の関係は早くても成人する十五歳までは待って上げてね。あの子はまだまだ心が子供ですから」

「はい、わかりました」

「――で、私の方は時々で良いから、二人だけでお話相手になってくれたら嬉しいわ」

「ええ、それなら」


 アマリアさんは少し照れくさそうに話していた。

 ちょっと可愛らしい。


「マヤ様、もう一度こちらへいらして」


 アマリアさんがそう言うと私をゆっくり抱いて、頭を撫でてくれた。

 ぽにゅんと豊かな胸に顔が挟まれて、ぱ◯◯ふになってしまう。ドキドキ――

 しばらくジッと胸に挟まれていると、私はすごく安心して涙がほろりと出た。

 ――なんだろう。

 叶わぬ恋だからなのか、安心したのか、大きな抱擁感だからか、早いうちに亡くなった母親のことを思い出したり、いろんな思いが溢れてしまった。

 落ち着いた後、◯ふぱ◯から顔を離した。


「ありがとうございます、アマリア様」

「おやすみなさいね」


 アマリアさんの部屋を退出し、自分の部屋へ帰る。

 私はしばらくベッドの上でボーッとしていたが、右手が私の分身君に伸びてしまい――

 めちゃくちゃ悶々してしまった。

 あわよくば親子丼なんて妄想した私は駄目人間である。

 ある日、パティは私にこう言った。


「マヤ様ご存じですか? お母様って、マヤ様のことも好きなんですよ。ビビアナも、エリカ様も、スサナさんも、エルミラさんも、ローサ様も、みんなマヤ様のことが好き。でも、私がマヤ様のことを一番大好きなんですからねっ!」


 どちらかといえばLOVEよりLIKE寄りの意味で無邪気に言っているんだろうけれど、元の世界ではこんなに女性から好感を持たれることなんて無かったからなあ。

 女性に好かれるって、なんて気分がいいんだろう。


 貴族であるアマリアさんとパティは平民の私を呼ぶときに様付けなんだけれども、聞いてみたら尊敬をしている相手には平民でも様を付けるそうで、何だか恐縮してしまう。

 マルセリナ様も貴族ではないけれど、聖職者は特別か。


---


 こぼれ話。

 日課になっているスサナさんとエルミラさんとの組み手の朝練が終わった後、天気が良いので朝食の時間まで一人でぷらぷらと庭を散歩していた時のことだ。

 すると、行ったことが無い裏庭まで迷い込んでしまう。

 ガルシア家の屋敷はお城と呼べるほど大きな邸宅ではないが、庭は広い。

 そんな庭を歩いていて、屋敷の裏へ来てしまった。


「おー 洗濯物がたくさん干してある」


 メイドのオバちゃんたちが早々と洗濯してくれて、干すことまで完了していて誰もいない。

 オバちゃんたちは、マカレーナへ来た時に手に入れた私の上着、シャツとぱんつも洗ってくれているのだ。ありがとうございます。

 ここは陽当たりが良く爽やかな微風が流れており、乾くのは早そうだ。


 で、今朝干してある洗濯物は下着ばかりのようで――

 物干し竿に掛かっている木製の洗濯ハンガーには、いろいろ吊されている。

 おおっ!? あれはアマリアさんのおぱんつか!

 真っ赤な透け透けTバック紐パン…… あの時のぱんつかもしれない。

 こっちの黒いローライズのぱんつもアマリアさんの物だろうなあ。

 軽くレースが入った白い清楚なおぱんつ…… まさかパティの?

 いや、これはきっとローサさんのだ。

 清楚系若妻のおぱんつ…… うへへ 

 ローサさんの印象通りのおぱんつで、私は嬉しい。

 アベル君のおむつや、カルロス君の小さな子供ぱんつも干してある。

 こっちの紫と水色の派手なぱんつは間違いなくエリカさんのだ。

 ローライズの綿製スポーツぱんつが並んでいるのは、スサナさんかエルミラさんのか。むふふっ

 この国の世界観は、地球の欧州でいう十八世紀か十九世紀相当になると思うが、何故か下着は地球の二十世紀末以降のデザインなので、不思議で仕方が無い。

 でも、カボチャパンツもいくつか干してあるので、メイドさんの誰かの物だろう。

 ああ…… ハイライズの白い綿パンも干してある。

 オバサンぱんつっぽいからマルシアさんのだったりして。

 こっちの白い猿股はフェルナンドさんかパンチョさんあたりか。

 うへっ 青いビキニパンツも干してあるけれど、私のじゃない男物。

 これは…… ガルシア侯爵だな。こんなの履いてるのか。

 あんまり見たくなかったな……

 それはそうと、パティのぱんつらしき物が見当たらない。

 たまたま洗濯物が無いだけだと思うが、ちょっと残念と思いつつも私の心が汚れてきている気がして、誰も来ないうちに裏庭を去った。


 その後皆と朝食を取っているときに、アマリアさんとローサさんをチラチラッと見ながら今日はどんなぱんつを履いているのだろうという妄想を()()()にしてしまう。

 私は際限無いムッツリスケベらしい。


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