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第十五話 アマリアさんの愛のおまじない

2022.9.13 軽微な修正を行いました。

 アマリアさんとあのことがあってから少し気まずくなり、話す機会がなかなか無かった。

 ある日、廊下でアマリアさんに呼び止められて彼女の私室へ入った。


「マヤ様、今からおまじないをするわ。こちらにいらして。」


 もう魅了発動はエリカさんによって解除されてるからあんなことにはならないはずだが、内心すごくドキドキしている。


 私はアマリアさんの前に立った。


「私はあなたことを家族のように愛しています。

 初めてお会いした日にこう言いました。

 この先苦しいことがあるのかもしれないと…。

 きっと試練が待ち構えているので、私はマヤ様の少しでもお力になりたいんです。

 おなじないというのは【祝福】の魔法のことなんです。

 これからそれをかけますね。」


 アマリアさんは私に近づき、そっと優しい口づけをした。

 え? 家族愛と同じでもキスはするのか?


 だがこの前のような情熱的なものではなく、唇の柔らかさを感じたら暖かい魔力が流れてきた。

 そうだ、いつの間に魔力を感知できるようになったんだ。

 唇が触れるだけの少し長いキスだったけれど、切なく胸に熱いものがこみ上げてくる、そんなキスだった。


「手を触れるだけよりキスをするほうが長く効果があるんですよ。

 内緒ですからね。うふふ。」


 私は女性に優しくされると惚れっぽくなるのは昔からだ。

 でも相手が自分のことを本当に好きなのかわからないので、無駄に理性が働いてそこで損をしていることに、過去に思い当たることがいくつもある。

 まして今回は人妻で、普通に考えて許されないことだ。


「アマリア様、私はアマリア様のことを好きになっていいのでしょうか?

 どうしてキスをしたんですか?

 前にも申し上げたように、侯爵閣下にも申し訳ないです。」


「ごめんなさい。かえって貴方を傷つけてしまったようね。

 勿論レイナルドには内緒のことだけれど、私の気持ちもあるの。

 ローサはとてもいいこだし嫌ってはいないけれど、やっぱりレイナルドとローサが愛し合っているのを見るとちょっと悔しいの。

 男性ばかり一夫多妻制なんてずるいわ。」


「それはパティも同じですね。

 嫁が多いのは男の甲斐性だと言っておきながら、彼女も焼き餅焼きだ。」

「あの子そんなこと言ってたの? 母娘似ているわね。うふふ

 でもあの子は私よりずっと一途よ。

 マヤ様、娘のことをよろしくお願いしますね。

 あの子はあなたのことが大好きなんです。

 いつも私にあなたのことを話してくるんですよ。

 この前のデートの後でもすごく喜んでいましたわ。」


 パティの態度はすごくわかりやすいけれど、そうだったのか…。

 中身が五十歳だから娘孫みたいな子相手に遠慮をしていたけれど、身体が十八歳に戻ってから中身の心もだんだん若返ってきた気がする。

 彼女のことを好きになってもいいのだろうか。


「私はアマリア様もパティのことも好きになりたいです。

 こんな我が儘でもいいんでしょうか?」


「いいのよ。でもパティはまだ十二歳だから、大人の関係は早くても成人する十五歳までは待って上げてね。

 あの子はまだまだ心が子供ですから。

 私の方は、ほんの時々で良いので二人だけでお話相手になってくれるつもりでいて欲しいの。」


「わかりました。」


「マヤ様、もう一度こちらへいらして。」


 アマリアさんはゆっくり抱いて、私の頭を撫でてくれた。

 豊かな胸が当たるのはドキドキするけれど、私は涙がほろりと出た。

 なんだろう、叶わぬ恋だからなのか、安心したのか、大きな抱擁感だからか、早いうちに亡くなった母親のことを思い出したり、いろんな思いが溢れてしまった。


「ありがとうございます、アマリア様。」


「おやすみなさいね。」


 アマリアさんの部屋を退出し、私はこの後自室のベッドでめちゃくちゃ悶々してしまった。

 あわよくば親子丼なんて妄想した私は駄目人間である。


 またある日、パティは私にこう言った。


「お母様って、マヤ様のことも好きなんですよ。

 ビビアナも、エリカ様も、スサナさんも、エルミラさんも、ローサ様も、みんなマヤ様のことが好き。

 でも、私がマヤ様のことを一番大好きなんですからねっ!」


 どちらかといえばLOVEよりLIKE寄りの意味で無邪気に言っているんだろうけれど、元の世界ではこんなに女性に好かれることなんて無かったからなあ。

 好かれるってなんて気分がいいんだろう。


 アマリアさんとパティは平民の私を呼ぶときに様付けなんだけれども、聞いてみたら尊敬や敬愛をしている相手には貴族から平民でも様を付けるそうだ。

 照れる前に、恐縮してしまう。


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