表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
155/388

第百五十話 今日は鼻血の日?

2023.8.10 微修正を行いました。

 以前と同じ部屋で貴族向けの服に着替え、出かける。

 今は給仕係の誰もいなかったが、いろいろ思い出がある部屋でたった三ヶ月の間が空いていても懐かしく感じた。


 中央街にあるアリアドナサルダの本店レジ前にて。

 経営者であり、レイナちゃんの母親でもあるロレナさんに、店員さんに取り次いでもらった。


「まあ! 急にどうなされたのですか?

 ささっ どうぞこちらへ。」


 ロレナさんに執務室…… いわゆる社長室へ案内された。

 相変わらず化粧は濃いし、今日も穴あきぱんつを履いているのかな。


「急にアポ無しでお邪魔まして申し訳ないです。

 陛下からお呼び立てがありまして大急ぎでマカレーナを今朝出発したんです。」


「ええ!? 半日で着いたんですの!?

 さすが勇者様は私みたいな凡人の考えが及ばないことがお出来になるのね……

 それに陛下ならば多少の無茶なお願いは珍しくないですからね。オホホホ……

 あら、失言」


 さすがロレナさん。

 女王との付き合いは長いそうで、よくわかってらっしゃる。


「そうそう、マヤ様の新ブランド【ロベルタ・ロサリタ】の名も好評ですよ!

 売り上げも……

 んんんんもうっ! 大変なことになっていますっ!

 先月はアリアドナサルダ立ち上げ以来最高の売り上げで、今月はもっと多くなりますわっ!」


 ロレナさんは興奮気味で私に話してくれた。

 マカレーナでも売り上げが好調なのはわかっていたけれど、王都はそんなに売れまくっていたのか?


「それで新しい下着のデザイン画を持って来たんですけれど……」


 私はマカレーナで暇なときに描いていたデザイン画のノートを、ロレナさんに差し出す。

 ロレナさんは鼻息を荒くしながらノートをパラパラと凝視していた。


「んまああああああああああ!!!!

 素晴らしすぎて、私倒れちゃいそうですぅ!」


「あの…… 鼻血出てませんか?」


 ロレナさんの鼻から赤いものが垂れかけていたので、私は手持ちのティッシュペーパーを出して拭いてあげた。

 この国ではティッシュペーパーが高級品であるが、存在するのだ。

 携帯用サイズ五つのセットで銅貨一枚(千円相当)もするんだぞ。


「ふがふがふがっ ああ、お世話になります……

 取り乱してしまい失礼しました。

 一つ質問をしますが、これはなんでしょう?」


 ロレナさんが指したノートのページは、『腹巻き』だった。

 暖かい国のせいなのかわからないが、この国には腹巻きが無いのである。

 だからデザイン画に加えた。


「これは腹巻きといって、お腹が冷えないようにお腹に巻くものです。

 私がいた国では昔、男性が歳を取るとよく着けていました。

 女性でも色をカラフルにすれば好まれると思いますよ。

 毛糸のパンツがあるじゃないですか。

 理屈はそれと同じです。

 妊婦さんにも使えるものはよく伸びる材質が良いですね」


「んまあ!

 この国の人々に、お腹が温かくなる腹巻きを広めてみようということですのね!

 マヤ様のお気遣いには感服いたしました!

 是非商品化してみたいです!」


「よろしくお願いします。

 お腹を壊す人も減るかもしれませんね」


 早めに商品化が出来れば、シルビアさんには是非腹巻を使ってもらいたいな。

 女王にも、あの歳ならなおさら使って欲しい。

 冷え性に毛糸の靴下もセットでな。

 うぷぷっ 腹巻着けて毛糸の靴下を履いた女王の姿を想像してしまった。


「それからマヤ様、デザイン料については数日中に準備します。

 かなり高額になりそうなので、期待して待っていて下さいね。うふふ」


「それは嬉しいです。また新しいデザインを考えなくては」


「マヤ様がデザインされた下着は長期に渡っての売れ筋になりそうな商品が多いので、売れた分だけ定期的なデザイン料支払いも見込めます。

 だからマヤ様にとって魔物退治より安定収入になりそうですね。

 私としてはもっと刺激的なデザインをたくさん描いて欲しいわ。」


「が…… 頑張ります……」


「レイナにはマヤ様のことを伝えておきますね。

 今晩はうちで夕食はいかがかしら?」


「すみません。

 今晩は王宮で食事をしたいと思っておりましたので、レイナさんとお会いしたときにでも」


「わかったわ。楽しみにしていますね」


 滞在期間が限られているので、出来るだけシルビアさんと一緒にいてあげたい。

 そもそも今回マドリガルタへ来た目的はシルビアさんのためだ。

 他の皆には挨拶ぐらいだった。

 今日は早いけれどもう帰ろう。

 朝からの連続高速飛行で、今になってどっと疲れが出てきたのでこれで失礼する。

 もしかしたらロレナさんもマカレーナのミランダさんみたいに脱いだりするのかなとハラハラしたが、そんなことはなかったのでホッとした。

 ロレナさんも変わってるけれど、ミランダさんが特別なのだろう。


---


 王宮で用意してもらった部屋にて。

 上着を脱ぎ、ベッドでゴロ寝をする。

 約一ヶ月間世話になった部屋の天井を見るのも、ちょっと懐かしい。

 ああ… 眠くなってきた。

 きっとフローラちゃんが起こしてくれるさ……


---


「マヤ様…… あの…… マヤ様……」


「ううん…… ルナちゃんか…… もう朝か…… おはよう……」


「フローラです、マヤ様」


「あいや? フローラちゃんだったか…… おはよう……」


「まだ朝ではありませんよ。うふふ

 間もなく夕食のお時間でございます」


 毎日の生活でルナちゃんに馴染んでしまい、寝ぼけて間違えてしまった。

 フローラちゃんは黒髪のお団子頭、目はやや小さめで目立つような顔立ちではないが整っていて、清楚で可愛らしい。

 ルナちゃんたち四人のメイドの中では一番大人しくて、守って上げたいと思ってしまうほどだ。


「夕食の前に軽くお風呂へ入っておきたいのだけれど、時間は大丈夫かな?」


「それくらいでしたら大丈夫です。すぐお湯を入れますね」


 フローラちゃんはお風呂場へ行き、準備を始めた。

 パティは確か身体を洗ってもらうまでのサービスはしてもらっていないから、(よこしま)な期待をしないで待つ。


「マヤ様、準備が出来ました。

 脱衣所にはバスローブを用意しておりますので、お上がりになったらそれをお召し下さい」


「ありがとう」


 私は一人で普通に脱衣所で服を脱ぎ、普通に身体を洗い、普通に湯船に入り、普通にバスローブを着てお風呂から上がった。

 だよね…… それが普通だよね。

 彼女がそういうことなので、ルナちゃんは自分から進んで身体を洗ってくれ、ただ男の身体に興味津々だったことが確証された。

 もうすぐ夕食の時間なのでバスローブ姿でくつろいでいる時間は無い。

 火照った身体が少し冷えた数分の後、服を着たいのだがフローラちゃんはどうするつもりなのだろう。

 フローラちゃんはベッドの脇に立ち待機している。

 何だか恥ずかしくて気まずい。


「うーん…… これから服を着ようと思うけれど…… ちょっと恥ずかしい」


「いえ、ああああああの…… お手伝いさせて頂きます……」


「大丈夫…… なのかな?」


「実は殿方のお着替えを手伝うのは初めてなんです…

 向学のためにも今回は挑戦したいと思っておりますので。ふんふん!」


 張り切ってやや興奮気味のフローラちゃん。

 向学ってね…… 勉強するほどのことだろうか。

 だが彼女にとっては新世界なんだろうなあ。

 私も粗相が無いようにしよう。

 リュックから下着の替えと黒いズボン、ブラウスを出す。

 ルナちゃんがきちんと畳んで入れているのでシワが無い。

 それらをフローラちゃんに手渡した。


「じゃ、じゃあ、よろしくお願いするね…… ははは」


「そ、それでは失礼します……」


 フローラちゃんはバスローブをゆっくりそろっと脱がしてくれた。

 私は全裸になった。ちなみに分身君は沈静している。

 意志に反して元気にならないよう注意をしたい。


 ――フローラちゃんは固まりながら私の身体を黙ってじっと見つめている。

 そんなことをされたら分身君が反応してしまうじゃないか。


「あのぅ、ぱんつを履かせて欲しいけれど……」


「あううっ! 失礼しました!」


 フローラちゃんは黒のビキニパンツを用意する。

 ミランダさんが何故かプレゼントしてくれた新品のビキニパンツだ。

 それを広げ、しゃがんで私に履かせようとしたが……


「きゃあ!」


 フローラちゃんはバランスを崩し、彼女の顔面と私の分身君がゴッツンコ!


「わぷぷっ」


「うわわわっ!」


「ふごふごっ…… 

 はわわわわわわっ ごめんなさいっ!」


 良かった…… 口に入らないで。

 フローラちゃんはすぐに体勢を直したが、その弾みで分身君が元気に起立してしまった。

 静かにしていると思っていたのに、なんてみっともないヤツなんだ。


「はぁ はぁ はぁ……」


 フローラちゃんは顔を真っ赤にして、しゃがんだまま動かなくなってしまった。

 そして彼女の鼻から赤いものがつーっと……

 興奮したからなのか、鼻をぶつけてしまったからなのか、今日は鼻血に縁がある日だな。

 私は直ぐさま高級ティッシュで鼻血を拭いてあげた。

 分身君が起立したまま全裸で。


「ふがふがっ…… うううう…… 申し訳ございません……」


「ああ…… まあ…… いろいろあるさ。はっはっは」


 私はその間に落ちていたビキニパンツを拾い、自分でささっと履いてしまった。

 フローラちゃんにはこれ以上見せるわけにもいかず、刺激が強い分身君には隠れてもらう。


「殿方の裸を見るのは今までお父さんと弟だけだったんです……

 あの…緊張してしまって…… お◯◯◯ンがあんなふうになるなんてびっくりで……」


 まさかフローラちゃんの口からお◯◯チ◯という言葉が出るとは思わなかった。

 ちょっと興奮してしまったよ。

 たぶん家族間ではそういう言葉が日常だったのだろう。

 男家族がいる家庭とはそういうものだ。

 着替えの続きはまたフローラちゃんにやってもらう。

 誤魔化すためか、フローラちゃんは作業をしながら違う話題を振ってきた。


「ルナは元気ですか?

 あのご様子では、きっと毎朝ちゃんとルナに起こしてもらっているんですね。ふふふ」


「ああ、元気にやっているよ。

 彼女は今、苦手な料理を練習しているところなんだ。

 少しずつだけれど、野菜を切ったりして上手くなってきているね」


「そうなんですかあ!

 王宮にいたころはハムサンドぐらいしか作れませんでしたからね。

 うふふ 良かった」


 フローラちゃんは笑顔を取り戻し、着替えを終える。

 夕食の時間が迫っているので、食事の場所を案内してもらった。

 昼食を食べた場所と同じ、小さな個室である。

 部屋にはシルビアさんだけが待っていた。


「マヤ様、お待ちしてました。食事を頂きましょう」


 フローラちゃんには席を外してもらい、未婚の夫婦として二人だけで水入らずの時間を過ごすことが出来た。

 シルビアさんの顔を見ていると、以前と違いお母さんに変わった(ほが)らかな表情になっているように見えた。


---


 夕食の後、暇なので王宮図書館で戦記ものの本を借りて時間を潰す。

 この国はやたらと恋愛ものの本が多くて、読みたい戦記ものが少なくてがっかりだ。

 夜が更けた頃、ドアノックが鳴る。


「マヤ様、お待たせしました。陛下の用事が遅くなって……」


「お疲れ様でした。大変でしたね」


 シルビアさんはピンク色のワンピースのパジャマでやってきた。

 ますますお母さんっぽい感じ。

 早速二人で(とこ)()く。

 布団の中で手を繋いだ。


「なんだか照れちゃいますね。うふふ」


「私もですよ。あはは」


 ――間が空いて何となく話しづらい。

 そうだ、忘れていた。


「お休みのキスをしていませんでしたね」


「そうですね…… じゃあ」


 シルビアさんに寝転んでもらったまま、私が顔を上にして軽くキスをした。

 彼女はニコッと微笑む。


 ――また間が空く。

 チラッとシルビアさんの顔を見ると、また起きているようだ。

 だは少し息が荒くなっている。


「はぁ…… はぁ…… はぁ……

 マヤ様…… 私…… 我慢が出来ません……」


「え?」


「少しだけで良いんです。まだ三ヶ月だし、心配いりませんわ。」


 妊娠三ヶ月でも、人それぞれだが安定していると性欲が高まるという。

 シルビアさんは掛け布団を剥ぐって、ふんどしショーツを脱ぎ、私のパジャマとビキニパンツを脱がして、馬乗りになった。

 私は起き上がり、彼女を後ろ向きにさせて抱きしめた。

 この体勢の方が無理ないと、前世では結婚もしていなかったくせに研究していたからだ。

 彼女は早い内に満足してしまい、すやすやと眠ってしまった。

 元々性欲が強かった彼女であるが、なんて幸せそうな寝顔なのだろう。

 マカレーナへ帰ってもまた時々会いに行ってあげないといけないかな……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ